写真は20年以上も前のものとなりました

つれづれなるまゝに日ぐらしPCに向かひて心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつづっていきます

朝三暮四

2019年03月17日 | 随想

2010年1月22日の衆院予算委員会でのこと、だという。ときの首相ぽっぽ鳩山が自民党の茂木敏充幹事長代理から「朝三暮四の意味を知っているか」と尋ねられ、「よく知っている」と前置きした上で「朝決めたことと夜決めたことがすぐ変わるという意味だ」(ドャッ)とやってもぅた。すかさず茂木幹事長代理は「それは朝令暮改!」と指摘したうえで、「朝三暮四」の故事の意味を首相に説きながら政府の予算編成を「ごまかしだ」と批判した。・・・・っちゅうことだったようだが、背景は何だったかというと、「政権交代」する前の麻生政権で編成されていた2009年度1次補正予算の事業を執行停止しながら、こっそりと次補正予算で復活させていた、というもの。「うまい言葉でだましていた」と指摘された訳だ。

朝三暮四」とは、エサ代に困った宋の国の狙公(猿回し)がエサを減らそうと考え、猿たちに「これからはトチの実を朝に三つ、夕方に四つにする」と告げたところ、猿たちが「少ない」と怒り出したので、「それなら朝四つ、日暮れに三つにする」と言い直したら喜んだ、という中国の故事。狙公橡を賦る(そこうとちをくばる)という句にもなっている。

 

goo辞書によれば「目先の違いに気をとられて、実際は同じであるのに気がつかないこと。また、うまい言葉や方法で人をだますこと。」となっているが、ぅ~ん、今いち、よぅわからん。

猿がそこまで言葉を理解するはずはないので、この故事に出てくる猿というのは何を表しているのだろう、というのがまず点。(因みに、猿の惑星の猿は日本人がモデルということで一時盛り上がって、その後、実は都市伝説だったということで落ち着いた・・・と、されるが、「フランス人」の原作者は他にも「戦場にかける橋」で日本人を「言葉を話す猿」扱いしているし、イェローモンキーという蔑称も消えていない。「白人」に刃向かってきた非キリスト教徒の黄色い日本人への原爆投下には、正義感はあっても罪悪感を感じることはない。まぁ、人種差別ってもんは、無いほうがいいに決まっているが厳然として存在していることも事実。身近に感じないからといって世界の常識まで否定しようとしても始まらない。)

また、「朝に3個、夕方4個」で怒ったので「朝4個、夕方3個」にしたら喜ばれた、とのことで、結局は同じ数じゃん、で終わるようなことなら、朝と夕方の分け方を、朝2個・夕方5個または朝1個・夕方6個の場合、あるいはその逆だったらどうなっただろう?などと余計なお節介をかまして・・・。

エサの話をしていた訳だが、合計が「7」ということから「一週間」の「休み」を連想してみると、まぁ、一般的には「4連休」とかは特殊な事情でもない限り、そうそうあるものでもないので、先に4日休むか3日休むかというくだらない展開になりそうなので、これはこのまま留め置く。

そこで、もう一度「朝三暮四」をよく読んでみると、『荘子斉物論に出てくるのは、言葉の順序によって感情は変わるものだ、ということを指摘しているのに対し、『列子』の話の眼目は、言葉に踊らされて騙す、あるいは騙されるというところが強調されている。

 

閑話休題。

神経経済学」なる学問分野がある。たとえば「すぐにもらえる小さい報酬か、将来にもらえる大きい報酬か」どちらをより重視するか、というような「人間の行動」を読み解こうとする研究分野である。

もっとくだいて言えば、「すぐに食べられるハンバーガーか、行列の出来る店で長時間待ってでもごちそうを食べるのか、どちらをあなたは選びますかというときの行動、あるいは「夏休みの宿題、いつやってました?」ということで、学期直前の「追い込み型」なのか、休み当初に終えるタイプなのか、という性格とかの研究なのだそうで、現在と将来の報酬の喜び度合いが「時間」とともに変化していくことを「時間割引」というのだそうだ。

将来の報酬が現在の報酬に比べてどの程度割り引いて感じるか、ということを「時間割引率」というのだそうで、この時間割引率の形が双曲線になっている場合を「双曲割引」という。

 

「双曲割引」の特徴は、短時間で割引率が非常に大きく、かなりの時間が経った後の割引率はそれほど大きくないという特徴があり、その曲率が強ければ強いほど「せっかち」、ゆるやかなら「我慢強い」となる。

また、「時間割引率が大きい」ということは、「将来の価値よりも現在の価値を重視する」という傾向が強い、つまり、「将来の楽しみのために今の楽しみを我慢することが難しい」ということなので「貯金する」ことが苦手だったり、夏休みで「遊び」を優先して「宿題」を後回しにしたり、体に悪いとわかっていてもついつい美味しいものをたらふく食べてしまって糖尿病を発症したり、などという傾向が強いのだそうである。

更に調べるには、

神経経済学で「人間の行動」を読み解く

時間割引率から見る 都市化の行動経済的分析24ページ)

都市化と時間割引率の関係21ページ)

などへ。

 

朝三暮四」の猿が朝に多くもらえると喜んだのは、実は、早い時間に多くもらったほうが価値があるという「時間割引率」が大きいことが理由だった。

 

ところで、「年金」についてはどうだろう?「繰り上げ支給と繰り下げ支給の損益分岐点」も試算されているようだが、計算上は金額が出ているものの、今の100万円は1年後の100万円より価値があるという「時間割引」の要素は加味されていないようだから、表に出ている金額もあまり参考にならないのでは?と思われる。



んで、「朝三暮四」の言う「」とは・・・・、この句が生まれた当時のことはわからないが、年金のこととか考えてみると、どう~も「国民」のことを風諭しているのでは、と思われてしかたがなくなってくる。