ブリキ星通信

店主のひとりごと

ブリキ星通信/2007年4月号

2007年04月02日 | 2007年

「そうだ、京都に行こう」という広告文がありました。
そんな気分で、思い立ってふらりと行っても、
いつも満足させられるのが京都です。
あんなに壊れてしまってはしょうがない、
と言う人もいるけれど、
混沌として、古くて、新しいところは、ここしかないのでは。
3月の下旬 、伏見の醍醐寺に行って来ました。
秀吉の「醍醐の花見」で有名な所だけあって、
枝垂桜がそれはそれは見事に咲き誇っていました。
それよりも一番びっくりしたのは、三宝院の襖絵。
京都葵祭の行列が描かれている葵の間の襖絵と、
勅使の間の襖に描かれた竹林花鳥図(桃山時代、長谷川等伯に連なる一派の作といわれている)がすばらしかった。
これらの襖絵は、岩絵の具が剥落してひどく傷んでいるのですが、
淡い外光に反応して、まるで生きもののように見えました。
人間のつくったものは、所詮自然そのものの美しさには敵わないと思うけれど、
ときに、自然そのものより美しいと錯覚する体験でした。
以前、モネ晩年作の「睡蓮」を見たときもそのような感覚になりましたが、
こうゆうのを、「至福のとき」というのでしょうか。
絵を観て、涙が出そうになったのは、久しぶりのことでした。
庭園や五重塔や霊宝館の名品の数々を堪能し、
そのあと本当は山の上の上醍醐まで行きたかったのですが、
体力と時間の不足で、途中で断念。
宿の主人に「頂上の開山堂まで行かないなんてもったいない」
と言われてしまいました。次回の楽しみにします。

帰り間際に寄った所は、骨董店春風堂さん。
店主の阿部さんは、義理の甥っ子に似ていて、いつも親しみを感じる人。
最近移転した店は、平安神宮近くにあります。
以前は彼の好きなものばかりが並んでいるような店だったのが、
今は外国の観光客向けの着物や帯が置かれるようになっていました。
でもやっぱり、奥のほうにありました。
彼の大事にしている唐津や李朝のやきものが。
そこにひっそり佇んでいたのが李朝の皿(写真)です。
薄っすらとシミがあったりして器量よしではないけれど、
あったかい魅力があります。
これをいただいて、新幹線に乗って一路東京へと帰りました。