ブリキ星通信

店主のひとりごと

ブリキ星通信/2009年12月

2009年12月06日 | 2009年

善福寺公園のザワザワとした震えがくるような紅葉を見ることなく、
はや師走になってしまいました。

先月、新聞の書評がきっかけで、一冊の本を読みました。
早川書房の『ザ・リンクーー ヒトとサルをつなぐ最古の生物の発見』です。
この本は、1980年代にドイツで発見された4700万年前の霊長類の化石、
イーダと名づけられているのですが、その化石をめぐる話。面白かったです。
読んでいると、時間の感覚がわからなくなり、頭がクラクラするような体験でした。
6500万年前、直径約10キロの小惑星がメキシコ・ユカタン半島に
衝突したことによる気候変動で、恐竜が滅びたという仮説は、
今では定説になっているとか。
恐竜は、それまで1億3000万年の長きにわたって
地上を支配していたのですから、ヒトはまだ新参者なのです。
ハツカネズミのような小さな原始霊長類は、
気候変動の有利な条件のなかで進化していったそうです。
ヒトとチンパンジーのDNAを調べると、
500~600万年前に共通の祖先がいて、そこから分かれていったこと、
共通の祖先と思われる化石も発見されているそうです。
ヒトは、万物の支配者のようにふるまっていますが、
他の生き物よりすぐれていたというよりも、
「たまたま」の条件があったからなのですね。
何億、何千万年という気の遠くなるような時間の流れに思いをはせると、
宗教とか民族とかの争いでどうにもならなくなっているヒトは、
進化の迷路に入っているのではないか? と思ってしまいます。

写真の石器は、縄文時代よりもっと前の時代、
後期旧石器時代を代表するナイフ型石器です。
シャープな形、鋭い刃、肉を切ったり木器を加工する道具だったのでしょうか。
今から約2万年前、東北地方辺りに住んでいたヒトがつくったものです。
美しいですね~
ヒトも、ヒトが暮らしていた痕跡もみんな土にかえってしまったのに、
石器だけは残っている・・・
その存在に感謝したいような気持ちです。