constructive monologue

エゴイストの言説遊戯

短評連作

2006年01月11日 | knihovna
『論座』2月号は興味深い論考が並んでいる。

・「靖国を語る 外交を語る:渡辺恒雄(読売新聞主筆)×若宮啓文(朝日新聞論説主幹)」

いつものことながら『朝日』と『産経』が靖国参拝をめぐって非生産的な独話を続けているが(産経抄1月11日)、『産経』の教条的な主張に、保守を自認する『読売』もさすがについていけなくなっているのだろう。

・芹沢一也「『子どもを守れ』という快楽――不安にとりつかれた社会で」

ここでも『産経』の社説が「安全神話の崩壊」を喧伝する代表的言説として取り上げられているが、「子どもの安全」をめぐっては、『朝日新聞』が継続的に報道している「子どもを守る」特集も同じ思考パターンであり、さらに公共広告機構のキャンペーン「子どもを守ろう」も著者が指摘する「恐怖と治安のスパイラル」に拍車をかけているといえるだろう。

・今井隆志「日本発の性・暴力表現は通用しない――『ソフトパワー』が抱えるリスク」

『論座』1月号のコラム「潮流05」で東浩紀が、アニメやマンガに代表される最近のコンテンツ産業をめぐる言説や陶酔感を痛烈に批判した大塚英志の著作(『「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか』角川書店, 2005年)を取り上げ、「苛立ち」を真摯に受け止める必要性を説いたことなど無にするかのような論調。しかもいっそうの普及のために内容の「無害化」を求める「純潔主義」の発想はそれこそ「オタク文化」の潜勢力を奪い、馴致するものであり、大塚がもっとも忌み嫌うところだろう。

・篠田英朗「平和構築の限界と無限――ジョン・レノンのメッセージは消えていない」
・ブルース・ブエノ・デ・メスキータ、ジョージ・W・ダウンズ「経済成長は本当に民主化を促すのか――中国の民主化はなぜ進展しない」
・ジョン・M・オーウェン「民主化途上にある国の危うさ――イラク民主化構想の落とし穴」

内戦後の国家再建が現代の重要課題となっていることを受けて、年末に「平和構築委員会」の創設が決まった(「国連:平和構築委員会創設の決議案採択 安保理でも」『毎日新聞』、「『平和構築委』創設決議を採択…国連が内戦荒廃国支援」『読売新聞』)。しかし、国家再建に関する制度が作られたとき、すでにそれが担うはずの「平和構築」の内実は大きく変わっている。篠田が指摘するように、その担い手は国連から有志連合や地域機構に移り、またポスト内戦社会のありうべき国家制度としての民主主義、そしてそれを達成する方法としての民主化や市場経済化に関して、現実との齟齬が指摘されている。和平合意、武装解除、選挙の実施といった一連の平和構築戦略が機能しない事例が1990年代を通じて見られたこともその背景にある。こうした平和構築をめぐる状況が流動的になっているところに、「平和構築委員会」が設置されるわけである。

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