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高校未履修問題救済の逆転の発想

2006-10-28 | アカデミック
はじめに断っておきます.以下の内容はあくまで冗談です!

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高校必修科目の履修漏れの問題で,冬休みや入試後の補習授業などの救済策が取りざたされていますが,ふと,全く逆の発想の救済策を思いつきました.

簡単なことです.単位不足の生徒は高校を卒業しなきゃいいんです.

そのかわり,国内のすべての大学に,「高校に3年間在学したが履修漏れで卒業できなかった」生徒に入学を認めるように要請するのです.

現状でも,学校教育法第56条第1項および同施行規則第69条で,18歳以上で高卒相当以上の学力ありと大学が認めた者は大学入学可とされていて,各大学の入試出願資格もそれに準拠しているので,その条文の拡大解釈で運用すればよく,荒唐無稽な話ではありません.

高校を卒業しなくても大学に入れるなら,受験対策で必修科目をごまかしていた高校は,補習授業などする必要はありません.開き直って「卒業証書を出さない」と宣言して,堂々と受験一辺倒の授業に突っ走ればいいんです.それでもきちんと生徒を卒業させたいと思う高校は,きっちり不足単位分の補習授業を行うでしょうが,生徒はそれを受けない(卒業を放棄する)という選択が可能になります.

受験対策で必修科目のごまかしを行っていた学校の大半は進学校でしょうし,「受験科目を集中的に勉強したい」のが生徒の本音なのですから,大学の入学資格さえあれば,形式的に高校を卒業できるかどうかなんて,彼らにとってはどうでもいいのではないですか?
彼らの形式的学歴は高校「退学」ですが,大学入試合格という事実をもって,ある程度客観的な学力水準の証明がなされます.
現実的には,社会に出るときに大学卒業は高校卒業の「上位互換」でしょうし,大学に入学したという事実だけでも高校卒業の上位互換としてある程度機能するでしょう.

要するに,「受験科目の勉強に集中したい(させたい),受験科目以外の勉強は無駄」というのが高校・生徒・保護者の一致した言い分なのですから,学習指導要領を履行させることに失敗した教育行政の側が折れて,彼らの言い分を丸呑みするのです.
そのかわり,履修漏れの生徒には「卒業証書を受け取れない」というペナルティを与えることで,行政として示しをつけます.なし崩しで卒業を認める形での救済よりは,筋が通っています.
もっとも,たとえば大学が「高校で情報履修済みの前提で情報教育の授業計画を立てていた」などという場合は,あてが外れて,大学が教育行政の失敗の尻拭いをする結果になりますが,その程度のことは,昨今の学力低下や高校カリキュラムの多様化の影響で,ほとんどの大学がすでに(不本意ながら)やっています.

この方法にはもうひとつ利点があります.過去にさかのぼっての適用が可能なのです.単位不足状態で既に卒業した人には,単に卒業証書を返上させて,大学在学の資格はそのまま保持させればよいのですから(卒業証書を手放したくない人には,高校が大学の休みにあわせて補習授業を実施するとか).

そうなると,履修漏れがなくて順調にいけば卒業できる高校生も,「なんだ,卒業できなくても3年間在籍さえすれば大学に入れるんだ,それじゃ世界史も情報もさぼって自分で受験勉強したほうが得だよね」といって,多くの生徒が雪崩を打って卒業を放棄して,受験に関係ない授業をさぼり始めます.高校のほうも「ウチは進学校だから形式的卒業より合格率アップのほうが大事」とばかりに,受験に関係ない必修科目の授業提供を堂々と放棄するでしょう.
正規のカリキュラムを提供し続ける高校を選んで,まじめに授業を受ければ,卒業証書がもらえますが,それは,高卒で就職する人のためか,あるいは,大学を中退したときのための「保険」程度の役割を果たすことになります.

やがて,高校の卒業証書を得た学生と,そうでない学生が,ともに大学を卒業して,社会に出ます.そのとき,高校で学習指導要領に則ったカリキュラムで世界史も情報も学んだ人が,そうでない人と比べられたときに,社会においてどれだけのアドバンテージを得るでしょうか.実のところ,周囲からは大学を卒業した事実しか注目されず,何のアドバンテージも生じないことは十分考えられます.

かくして,「高校卒業って何? 必修科目なんて何の役に立つの?」という世論が支配的になり,学習指導要領に基づく高校カリキュラムは崩壊します.その一方で,大学入試は事実上の高校卒業検定として,本来とは異なる役割を負うことになります.

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4 コメント

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Unknown (だきわ)
2006-11-05 07:17:33
奥村さんのところから来ました。
結論で若干問題点があります。
大学入試の正当性、妥当性が検証されません。
大学でも高校でも大学入試センターでもない、第三者機関が認定すべきこととされるのがよいかと。
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逆説的批判 (boiseweb)
2006-11-05 11:20:35
うーん、困りましたね。たぶん、だきわさんは重々承知の上でコメントされたと思うのですが…
私は「大学入試を高校卒業検定とみなせ」と主張するつもりは全くありません。むしろ「大学入試が高校教育水準の担保として使われるのはおかしい」という逆の主張をするための、逆説的批判として書いたのです。だから、わざと露骨に「それはおかしいでしょ!?」という結論に導いています。もちろん「でも現実はそれに近いでしょ、それでいいの?」という批判をこめてです。
そういうわけで、外部機関による高校卒業検定に話を膨らませることには、私は消極的です。別記事で「大検」改め「高卒認定」に言及しましたが…
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失礼 (boiseweb)
2006-11-05 12:07:09
ごめんなさい,だきわさんのコメントを誤解していました.
「大学入試を高校卒業検定に流用する」という冗談の延長として,「それなら大学入試の(高校卒業検定としての)妥当性を第三者が検証する必要がある」とおっしゃるのですね(外部機関による高校卒業検定制度を確立せよとの主張と勘違いしました).
でも,そこまで現実的に考えると,「それはおかしいでしょ!?」という逆説的批判が効かなくなるので,やっぱり本文はこのままにしておきます.
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Unknown (だきわ)
2006-11-07 10:40:12
そうです。大学入試自体大丈夫か?という疑問があったので。(予備校に作ってもらっている学校もありますし。私の書き方がまずかったですね。
私自身は大学入試資格のための外部機関を作るべきだと思っています。(そうでないと大学入学資格の質を担保できないですし。)

ええ,実は書いた後にあ,これ「本気の冗談」だから突っ込んじゃダメだ,と思いました。失礼しました。
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