東京、四谷にある「紀尾井ホール」に行った時の話です。ここはホテル・ニュー・オータニの目の前にあり、ワシにとっては馴染み深い場所のひとつ。
いつものように開演15分前座席に着くと、隣にはハイソで裕福そうな老婦人が2人座っておられました。彼女らの会話は聞くとはなしに耳に入ってきます。「先日はどこそこへ旅行に行ってきましたのよ」とか「○●の食器は素敵よ。あなたも購入されたらいかがかしら?」などなど、ワシにとっては全く興味のない話が延々と続けられていました。
そして話題はこのホールのシャンデリアに。光ものに目がない彼女らはこれを見て、しきりに「素敵ね」「いいわね」を連発。挙げ句の果てには
「これって、掃除はどうするのかしら…」
「そうよね。大変そうよね」
ははは、主婦目線ですな。心の中でそう呟いていたまさにその時です。
「あなた、どう思います?」
なんと会話のボールがこちらに飛んできたじゃありませんか。いやいやいや、おかしいでしょ。彼女たちとは初対面ですし、それまで会話すらしてないんですから。なんたるフレンドリーさ! いや、困るんですけど。
「え? あ? 私ですか?…う~ん、ぁ、どうでしょうね、わかりませんけど」
「そうよね、わからないですよね。あら、ごめんなさいね」
本当はわかってます。シャンデリアのクリーニングってのは実際大変な作業なんです。学生時代に掃除屋さんのバイトをしたことがあってですね、某有名企業の社長宅のハウス・クリーニングをしたことがあるんです。そこで目にしたのが絢爛豪華なシャンデリアでした。
昔の話ですからね、間近でシャンデリアを見るなんて、そんな経験ないわけですよ。ましてや、それをピカピカにせよとのこと。一体どれだけのパーツで構成されているのかサッパリわからないほどそのシャンデリアは凄かったわけです。
結局、構成パーツである小さなガラスひとつひとつを丹念に磨くしかありませんでした。ガラスとか金属類ってえのは適当に磨くとすぐにバレてしまうんです。磨き方ひとつで輝きが全く違うんですからね。シャンデリア班長(といってもワシひとりなんですが)としては、ひたすら小さなガラス・パーツと格闘するしかなかったのです。休憩なしで5時間も…。
こんなことを説明したところで何の意味もありません。だから彼女らには「わかりません」と言ったのです。それにしても、あの社長宅のシャンデリアは個人が所有するにしては強烈すぎました。お手伝いさんが美人だったのはどうでもよい情報ですけどね。
あ~、遥か彼方の記憶だなあ。
「そうよね。大変そうよね」
「あなた、どう思います?」
↓
大阪では
↓
「あれ、掃除どないすんねやろ?」
「そら、大変やで~」
「お兄ちゃん、どない思う?」
う~ん、そういう場面には遭遇したくないね!
そう、まったくその通り!
でも東京の人間からすると同じ会話でも大阪の人のほうが親近感があっていいなあと思う。
「ミヤネ屋」なんかではよく大阪でのインタヴューの模様が出ますが、見ていてホノボノしてきますもんねえ。
おかげでスッキリしました。
うちのは15分で掃除完了でしたけど・・・(笑)
なんとなくカミナリさまが傘をさしてる図を想像してしまったわい。