himikoの護国日記

長年の各種自虐史洗脳工作から目覚めた一人の愛国者の日記。
日本をおかしな反日勢力から守り、真の独立国にしたいです。

【転載】余命3年時事日記 2344 どんたく滋賀弁護士会②

2018年02月01日 | 在日韓国・朝鮮人
夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20160114.html
1.2015(平成27)年12月16日、最高裁判所大法廷は、女性のみに離婚後6ヵ月の再婚禁止期間を定めた民法第733条について、「100日超過部分」は、合理性を欠いた過剰な制約を課すものとして、憲法第14条第1項、同第24条第2項に違反するものと判断し、他方、夫婦同氏の強制を定めた民法第750条については、憲法第13条、同第14条、同第24条のいずれにも違反しないと判断した。
2.当会は、2010(平成22)年5月11日、「民法(家族法)の早期改正を求める会長声明」において、個人の多様な生き方を認め合い、男女共同参画社会を実現する為に、選択的夫婦別姓の導入及び女性の再婚禁止期間撤廃等を内容とする民法改正を速やかに実現するよう国に求めてきた。
すなわち、民法第733条については、現在では、DNA鑑定の普及により低廉な価格で高精度に父子関係の判定ができるのであるから、再婚禁止期間というかたちで、婚姻の自由を大きく制約する必要性は失われていると指摘し、また、民法第750条については、現実には、ほとんどの場合(96%)、女性が氏を変更していること、氏を変更した者の中には、やむなく改姓し、社会生活上、職業上の不利益を被っている者も少なくないこと、夫婦同姓を強制する国は、今や先進国においては日本のみであること、氏名は人格権の一内容を構成するものとして尊重され、婚姻後も人格の象徴としての姓を継続して使用することは憲法上の要請といえることから、選択的夫婦別姓制度を導入すべきであると指摘してきた。
3.まず、民法第733条については、最高裁判決が現行規定の違憲性を明らかにしたことは評価できる。しかし、再婚禁止期間というかたちで女性の婚姻の自由を制限すること自体、合理性は失われているのであるから、100日未満の期間についても、なお問題であり、立法府において、議論を継続する必要がある。
4.次に、民法第750条については、最高裁判決が「家族の呼称を一つに定めることには合理性が認められる」「夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではなく、夫婦がいずれの氏を称するかは、夫婦となろうとする者の間の協議による自由な選択に委ねられている」「氏の変更による負担は、通称使用の拡充によって一定程度緩和される」等として、憲法に違反するものではないと判断したことは、個人の尊厳や両性の本質的平等の要請に反する上、個人の生き方の多様化、男女共同参画社会推進の流れに反するもので、極めて不当である。
この点、岡部喜代子裁判官(櫻井龍子裁判官、鬼丸かおる裁判官、山浦善樹裁判官も同意見)は、氏の変更により、個人識別機能に対する支障や自己喪失感などの負担が生じるところ、96%もの多数の女性が夫の氏を称しており、氏の変更の負担はほぼ妻に生じていること、その背景には、女性の社会的経済的な立場の弱さ、家庭生活における女性の立場の弱さ、種々の事実上の圧力など様々な要因があり、妻が夫の氏を称する意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用していることを指摘し、その点の配慮をしないまま夫婦同氏に例外を設けないことは、「個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っており、憲法第24条に違反するものといわざるを得ない」との意見を述べており、当会の主張と合致するものである。また、通称使用についても、便宜的なものであること、通称名と戸籍名との同一性という新たな問題を惹起すること、夫婦同氏の強制により婚姻をためらう事態が生じている現在において、不利益が若干程度緩和されるからといって、夫婦同氏に例外を認めないことの合理性が認められるものではないと指摘しており、正当である。
 選択的夫婦別姓制度の採用については、すでに1996(平成8)年の法制審議会で答申されていた。また、女性差別撤廃委員会は、国に対し、2009(平成21)年、2011(平成23)年、2013(平成25)年と、再三にわたって家族法改正を勧告しており、夫婦の氏の選択に関する差別的な法規制が含まれることに懸念が表明され、その廃止が要請されるにまで至っている。
 上記状況を踏まえ、山浦善樹裁判官の反対意見は、1996(平成8)年の法制審議会の答申以降の相当期間を経過しても国会が改廃等の立法措置を怠っていたのは、国家賠償法上も違法であると指摘している。
よって、当会は、国に対し、本判決の合憲判断を理由に議論を停滞させるのではなく、民法第733条及び同法第750条等の民法(家族法)の差別的規定を速やかに改正するよう、強く求める
2016(平成28)年1月14日  
滋賀弁護士会 会長 中原淳一

司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20160120.html
司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)については、日本弁護士連合会・各弁護士会に対して、多くの国会議員から賛同のメッセージが寄せられているところ、先日、同賛同メッセージの総数が、衆参両院の合計議員数717名の過半数である359名を超えた。
まずはメッセージをお寄せいただいた国会議員の皆様に対し感謝の意と敬意を表するものである。
メッセージを寄せられた国会議員は、与野党を問わず広がりを見せており、司法修習生への経済的支援の必要性についての理解が得られつつあるものと考えられる。
そもそも、司法制度は、社会に法の支配を行き渡らせ、市民の権利を実現するための社会的インフラであり、国はかかる公共的価値を実現する司法制度を担う法曹になる司法修習生を、公費をもって養成すべきである。このような理念のもとに、我が国では、終戦直後から司法修習生に対し給与が支払われてきた。しかし、2011年11月から、修習期間中に費用が必要な修習生に対しては、修習資金を貸与する制度(貸与制)に変更された。この修習資金の負債に加え、大学や法科大学院における奨学金の債務を負っている修習生も多く、その合計額が極めて多額に上る者も少なくない。法曹を目指す者は、年々減少の一途をたどっているが、こうした重い経済的負担が法曹志望者の激減の一因となっていることが指摘されているところである。
こうした事態を重く受け止め、法曹に広く有為の人材を募り、法曹志望者が経済的理由によって法曹への道を断念する事態が生ずることのないよう、また、司法修習生が安心して修習に専念できる環境を整えるため、司法修習生に対する給付型の経済的支援(修習手当の創設)が早急に実施されるべきである。
昨年6月30日、政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において、「法務省は、最高裁判所等との連携・協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」との一節が盛り込まれた。
これは、司法修習生に対する経済的支援の実現に向けた大きな一歩と評価することができる。法務省、最高裁判所等の関係各機関は、有為の人材が安心して法曹を目指せるような希望の持てる制度とするという観点から、司法修習生に対する経済的支援の実現について、直ちに前向きかつ具体的な検討を開始すべきである。
 当会は、司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)に対し、国会議員の過半数が賛同のメッセージを寄せていること、及び、政府においても上記のような決定がなされたことを踏まえて、国会に対して、給付型の経済的支援(修習手当の創設)を内容とする裁判所法の改正を求めるものである。
2016(平成28)年1月20日  
滋賀弁護士会 会長 中原淳一

消費者庁・国民生活センター・内閣府消費者委員会の地方移転に反対する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20160614.html
政府は、「まち・ひと・しごと創生本部」に「政府関係機関移転に関する有識者会議」を設置し、政府関係機関の地方移転を審議している。そして、同会議において、消費者庁・国民生活センター・内閣府消費者委員会(以下「消費者庁等」という。)の地方への移転に向けた検証が行われている。
しかし、当会は、以下の理由により、消費者庁等を地方へ移転することに反対する。
 消費者庁等がその機能を果たすためには、各省庁及び国会と同一地域に存在すること等が必要であり、地方移転は大幅な機能低下をもたらすおそれが大きい。すなわち、①消費者庁が特命担当大臣の下で政府全体の消費者保護政策を推進する司令塔機能を果たすとともに消費者被害事故などの緊急事態に対処し所管する法制度について適切な企画・立案・実施を行う機能を果たすためには、各省庁及び国会と同一地域に存在することが必要である。また、➁国民生活センターが全国の消費生活相談情報の分析を踏まえて消費者保護関連法制度・政策の改善に向けた問題提起及び情報提供を行うためには、消費者庁及び内閣府消費者委員会と密接に連携して分析及び情報交換を行うべく同庁等と同一地域に存在することが必須であるし、同センターが全国にある消費生活相談窓口等支援の中核機関としての機能を果たすためにも、各省庁のほか神奈川県にある同センターのテスト・研修部門と近接した場所に存在することが重要である。さらに、➂内閣府消費者委員会が他省庁への建議等の監視機能を果たすためには、他省庁・関連行政機関・事業者との間で相互の意見交換及び協議を十分に行える環境が重要であるし、同委員会が消費者庁を含む関係省庁からの諮問に対する調査・審議を迅速かつ円滑に行うためには、関係各省庁と同一地域に存在することが必要である。加えて、➃消費者庁等の機能は、消費者問題について専門的知識と豊富な経験を有する多数の任期付き公務員、職員、専門委員等により支えられている。このような必要な専門家を地方で確保することは困難が予想され、専門家確保の面からも地方移転による弊害は否定できない。
 現に、消費者庁が本年3月に実施したICTを活用したテレビ会議・テレワークによる業務の執行に関する検証について、坂東久美子消費者庁長官は、一定の評価をしつつも、他省庁との連携の困難性や緊急事態への対処困難性をはじめとする地方移転に伴う様々な問題点を指摘しているが、現時点において、これら問題点の改善策は示されていない。
なお、本年5月25日に成立した消費者契約法の一部を改正する法律に関し、参議院特別委員会において「消費者庁、消費者委員会及び国民生活センターの徳島県への移転については、本法等消費者庁所管の法令の運用に重大な影響を与えかねないため、慎重に検討すること。」との付帯決議がなされている。同決議のとおり消費者庁等の地方移転は、法令の運用の観点からも慎重に判断すべき事項である。
 以上により、消費者庁・国民生活センター・内閣府消費者委員会の地方への移転は、消費者庁等が果たす機能を低下させ、消費者行政の推進を阻害しかねないので、当会は、消費者庁等を地方へ移転することに反対する。
2016(平成28)年6月14日  
滋賀弁護士会 会長 野嶋直

【転載】余命3年時事日記 2343 どんたく三重弁護士会③

2018年02月01日 | 在日韓国・朝鮮人
集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明
ttp://mieben.info/archives/topics/435/
1.集団的自衛権とは、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」である。従前、歴代政府は、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないとしてきた。
2.日本国憲法は、平和的生存権を確認し(憲法前文第2段)、戦争放棄、戦力不保持及び交戦権の否認を規定する(憲法第9条)など、徹底した恒久平和主義の理念を掲げている。戦争と武力紛争、そして暴力の応酬が絶えることのない今日の国際社会において、日本国民が全世界の国民とともに、恒久平和主義の理念に立脚し、平和的生存権の実現を目指す意義は極めて大きく、重要である。
恒久平和主義の理念に立脚し、平和的生存権の実現を目指す意義に鑑みれば、自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであるとした従前の政府の憲法解釈は、現在もなお合理性を有している。
3.ところが現在、政府は従前の憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を容認しようとしている。しかしながら、集団的自衛権の行使は、恒久平和主義の理念を定めた憲法前文、第9条に反する。
また、集団的自衛権を行使することは憲法上許されないとする確立した憲法解釈は、憲法尊重擁護義務(憲法第99条)を課されている国務大臣や国会議員によってみだりに変更されるべきではない。さらに、確立した憲法解釈を変更することは、憲法に違反する政府の行為を無効とし(憲法第98条)、政府の行為が憲法に制約されることとした立憲主義に反するものであって、到底許されない。
4.よって、当会は、憲法の諸原理を尊重する立場から、政府が集団的自衛権の行使に関する確立した憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を容認することに、強く反対する。
2014年5月14日
三重県弁護士会 会長 板垣謙太郎

特定秘密保護法制定に反対する会長声明
ttp://mieben.info/archives/topics/430/
政府は今臨時国会において、特定秘密の保護に関する法律案(以下「本法案」という。)の成立を目指し、平成25年11月26日に衆議院本会議で本法案の強行採決がなされた。当会は、これまでも秘密保全法制の制定に反対してきた。反対の理由として、①「特定秘密」の範囲が広範かつ不明確であること、➁「特定秘密」の指定が行政機関の長により恣意的になされうること、➂適正評価制度によりプライバシー権、思想信条の自由の侵害のおそれがあること、➃国民の知る権利が侵害され、民主主義の根幹を揺るがせる事態となること等の問題点を指摘した。
しかし、以下に述べるように、このたび強行採決された法案では、当会が指摘した問題点の根本的な見直しはなされていない。基本的人権、国民主権原理を始め、憲法上の諸原理と正面から衝突する多くの問題点を孕んでいることは、これまでの秘密保全法制法案と何ら異ならないのであり、当会は、特定秘密保護法の制定に強く反対するものである。
1①「特定秘密」の範囲が広範かつ不明確である。
まず、法案は「特定秘密」として指定する範囲を、「別表に掲げる事項に関する情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの」としている(3条1項)。そして、別表では「防衛に関する事項」、「外交に関する事項」、「特定有害活動の防止に関する事項」及び「テロリズムの防止に関する事項」を列挙している。
しかし、「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれ」は極めて抽象的な判断基準にとどまり、どのような情報が指定されたかを検証する手立てが本法案には規定されていないため、実質的に無限定に等しい。
また、別表の「防衛に関する事項」は自衛隊に関連する事項が網羅的に列挙されており、「外交に関する事項」は「その他の安全保障に関する重要なもの」が広く対象になっており、「特定有害活動の防止に関する事項」や「テロリズムの防止」についても、「特定有害活動」、「テロリズム」の定義が不明確で、拡大解釈される可能性がある。このままでは、違法秘密や疑似秘密(政府当局者の自己保身のための秘密)が特定秘密として指定される危険性がある。
更に、本法案が漏えい対象とする特定秘密自体が広範かつ不明確であることは、過失や独立した共謀、教唆、煽動をも処罰の対象としていることとあいまって、本法案の罰則規定は、犯罪と刑罰を予め具体的かつ明確に定めることを要請する罪刑法定主義(憲法第31条)に違反する疑いが強い。
2.➁「特定秘密」の恣意的・濫用的な指定がされる可能性がある
次に、法案は「特定秘密」の指定に関して、「特定秘密の指定及びその解除並びに適正評価の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定めるもの」とし(18条1項)、その「基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、我が国の安全保障に関する情報の保護、行政機関等の保有する情報の公開、公文書等の管理等に関し優れた識見を有する者の意見を聴かなければならない。」(同条2項)としている。
しかし、18条については、「優れた識見を有する者」の意見を聴いて決められるのは抽象的な運用基準でしかなく、実際に行われる個々の秘密指定については、これをチェックする機能はなく、恣意的な秘密指定がなされ得ることに変わりはない。
加えて、特定秘密の指定は、通算して30年まで延長できるうえ、さらに内閣の承認を得ればそれ以上の延長が可能とされている。このように、本法案は、限界の不明確なまま広範な領域にわたる政府情報を長年月あるいは半永久的に秘匿することを可能にするため、政府の恣意的・濫用的な運用が可能となる。
3.➂適正評価制度による個人のプライバシー権侵害の可能性がある。
次に法案は「特定秘密」を取り扱う者の管理を徹底するための手段として、行政機関の長による適正評価の実施(適正評価制度)を導入している。(12条)。そして法案は「適正評価は、適正評価の対象となる者について、次に掲げる事項についての調査を行い、その結果に基づき実施するものとする。」とし(12条2項)、調査対象事項として「特定有害活動及びテロリズムとの関係に関する事項」(12条2項1号)、「犯罪及び懲戒の経歴に関する事項」(同2号)、「情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項」(同3号)、「薬物の濫用及び影響に関する事項」(同4号)、「精神疾患に関する事項」(同5号)、「飲酒についての節度に関する事項」(同6号)、「信用状態その他の経済的な状況に関する事項」(同7号)を列挙している。
このように、調査対象事項は、評価対象者の精神疾患、飲酒についての節度、信用状態など重大なプライバシーにかかわる事項にまで及び、更に調査対象は、対象者の配偶者(事実婚の配偶者も含む)、父母、子及び兄弟姉妹などの家族(配偶者の父母及びその子も含む)や同居人などにも及び、調査対象が無限に広がる可能性を有している。
しかも適正評価を口実に思想・信条の調査をするなど、悪用される危険性もある。
4.国民の「知る権利」を侵害し、民主主義の根幹を揺るがす
次に、法案は「この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」(21条1項)、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする(21条2項)こととした。
しかし、21条1項の報道又は取材の自由に十分配慮するとの規定は、抽象的な訓示規定に過ぎず、これにより報道又は取材の自由が法的に担保される保障は何もない。
また、本法案は、取材目的を「専ら公益を図る」場合に限定している点で問題であり、さらに「著しく不当」という抽象的かつ不明確な文言では正当業務に該当するか否かの予測が困難である。したがって、このような配慮規定では、本法案のもつ取材活動に対する重大な萎縮効果や自己規制ないし過剰反応の歯止めには全くならない。
さらに、「出版又は報道の業務に従事」しない者である一般市民や市民運動家、市民ジャーナリスト等には同条項が適用されず、不合理な差別となっている。
これらの規定等の追加によっても、国民の知る権利が侵害され、民主主義の根幹を揺るがせる事態の危険性はなお高いものと言わざるを得ない。
さらには、国会議員も処罰対象とされていることからすれば、国会議員による行政機関への種々の調査活動や国会議員間での自由な討論及び有権者への国政報告活動をすべて、刑罰をもって禁止することも可能となり、国民主権に基づく議会制民主主義にも抵触する。
5.秘密保護よりも情報管理システムを適正化すべきである
これまで指摘したように、本法案は、基本的人権尊重主義、国民主権原理、議会制民主主義、罪刑法定主義をはじめ、憲法上の諸原理と正面から衝突する多くの問題を含んでいる。
また、数多くの憲法・メディア法学者や刑事法研究者も本法案に反対する旨表明している。
更に、政府が実施した本法案の原案に関するパブリックコメント募集においては、2週間という短期間に、9万通を超える意見が寄せられ、そのうち、約77%が制定に反対する趣旨であったというのであるから、このことは、政府及び国会において重く受け止める必要がある。
重要な情報の漏えいの防止は、情報管理システムの適正化によって実現すべきであって、特定秘密保護法案の制定によって対処すべきではない。
むしろ今必要なのは、情報を適切に管理しつつ、情報の公開度を高め、国会が行政機関を実効的に監視できるようにするために、公文書管理法、情報公開法、国会法、衆参両議院規則などの改正を行う事である。
当会は、特定秘密保護法の制定に強く反対するものである。
2013年11月27日
三重県弁護士会 会長 向山富雄

憲法改正発議要件の緩和に反対する会長声明
ttp://mieben.info/archives/topics/427/
近代憲法は、国家権力に縛りをかけ、国家権力の濫用を防止して国民の権利と自由を保障することを目的とする(立憲主義)。ここには、多年の歴史を通して国家権力による専制から自由と権利を獲得してきた人類の叡知が込められている。
日本国憲法が採用する国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義は、将来の世代にわたって永続的に受け継いでいかなければならない基本原理である。
そして、日本国憲法96条が憲法改正の発議に国会の各議院の総議員の3分の2以上の賛成を必要とする特別多数決を要求しているのは、この憲法の基本原理が時々の国家権力によって容易に変えられないようにするための制度的保障である。この憲法改正手続条項は、憲法の最高法規性の宣言(憲法第98条)、違憲立法審査権(憲法第81条)及び憲法尊重擁護義務(憲法第99条)とともに立憲主義を支える礎である。
ところが、近時、憲法第96条の憲法改正発議要件を衆参両議院の総議員の過半数に緩和をすることを複数の政党が主張し、今回の参議院議員選挙で改憲勢力が大勝したことから改憲問題が現実味を帯びつつある。
そもそも国家権力の濫用を防止して基本的人権の侵害を防ぐためには、憲法の基本原理が時々の国家権力によってみだりに変えられないという制度的保障が必要となる。現状では、法律制定の場面において激しい政治的対立の下、十分な審議を経ないまま、国会での強行採決が繰り返されてきた。憲法改正発議要件の緩和(単純過半数)は、国民の代表である国会での熟議による合意形成の機会を奪い、時々の国家権力による恣意的な憲法改正に道を開き、立憲主義の土台を揺るがすおそれがある。
しかも、昨今の憲法第96条改正の動向は、まず改正要件を緩和して憲法改正のハードルを下げ、その後に憲法第9条をはじめ、国民主権主義、基本的人権の尊重、恒久平和主義という憲法の基本原理の改正にも適用されるものであって、このような基本原理についての発議要件の緩和は到底容認できない。
また、日本国憲法の憲法改正要件は、アメリカ、スペイン、韓国などの先進各国と比較して特に厳格ではない。個別の憲法改正が実現するか否かは、国会の熟議を経て合意形成を成し遂げることができるか、その憲法改正の内容が政治的・社会的要請に応えたものであるか、国民が真に求めているものであるかによるのである。戦後日本の国民は、日本国憲法が保障した自由と権利を享受し、この憲法を基礎として社会的、経済的な発展を実現させてきた。これまでに日本国憲法が一度も改正されなかったのは、国民の多数がそれを望んでいなかったからに他ならず、憲法改正手続を定めた憲法第96条に原因があるわけではない。
更に、2007年5月18日に成立した日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正手続法」という。)には、国民投票における最低投票率の規定がなく、国会による発議から国民投票までに十分な議論を行う期間が確保されておらず、憲法改正に賛成する意見と反対する意見とが国民に平等に情報提供されないおそれがあるという問題点がある。憲法改正手続法の問題点にはまったく手が付けられないまま、現在、国会の発議要件の緩和の提案だけがなされているのは、本末転倒と言わざるを得ない。
基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士で構成される三重弁護士会は、日本国憲法の立憲主義を尊重し、基本的人権の擁護に力を尽くしてきた。三重弁護士会は、憲法改正発議要件の緩和が立憲主義の根底を覆すおそれがあることを深く憂慮し、憲法96条にかかる改正案に強く反対する。
2013年7月26日
三重弁護士会 会長 向山富雄

「共通番号法」法案成立に対する会長声明
ttp://mieben.info/archives/topics/425/
2013年(平成25年)5月24日、「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用に関する法律」案(いわゆる「共通番号法」案)が参議院本会議で可決され、成立した。
本法案は、昨年の11月の衆議院解散により廃案となった同名の法案を一部修正したものである。
本法案は、国民と外国人住民全員に付けた個人番号(マイナンバー)をマスターキーとして、あらゆる個人情報を名寄せできるようにするものである。政府は、マイナンバーの利用を、税と社会保障に限定せず、民間でも利用する予定であるから、プライバシー権が侵害される可能性が旧法案よりより高くなっている。
また、マイナンバーが記載された個人番号カードが民間でも利用されるようになると、アメリカで被害が続出している成りすましによる不正利用の可能性が飛躍的に高まる。
政府は、国民にマイナンバーを付ければ、行政事務が簡素化するというが、現時点でも、どの程度、行政事務が簡素化できるのか具体的に説明することができない。
民主党政府では、マイナンバーを活用することにより、正確な所得の把握をして、「給付付き税額控除」制度を創設して、真に手を差しのべるべき低所得者に対して現金給付をするとの理由で導入を図ったが、自民党政府は、「給付付き税額控除」の制度よりも「軽減税率」の制度により低所得者対策を講じると述べており、マイナンバー導入の理由が不明確となっている。
政府は、このシステム構築費用として2~3000億円、毎年の運営費用が350億円程度かかると述べているが、費用対効果についての試算はされておらず、国家財政が逼迫する中、このようなシステム構築の必要性について具体的に説明できない。
以上のとおり、本法案には、日本社会の今後のあり方や財政に重大な影響を与える問題、プライバシー権の侵害、成りすましによる不正利用の可能性等、多くのリスクがあるにもかかわらず、十分な審議に基づく抜本的な見直しを行うことなく、国会が拙速に本法案を成立させたことは極めて問題であり、強く抗議する。
共通番号法は、2016(平成28年)年1月から施行が予定され、法施行後3年を目途に個人番号の利用範囲の拡大について検討を加えるとされているが、当会は、重大な問題を抱える本法の施行の停止ないしは廃止法の制定を求める。
2013年6月28日
三重弁護士会 会長 向山富雄

生活保護基準の引下げに反対する会長声明
ttp://mieben.info/archives/topics/423/
昨年8月10日、社会保障制度改革推進法が成立した。そして、同法附則2条には「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化」を含む「必要な見直しを早急に行うこと」をの文言が明記された。これを踏まえて閣議決定された「平成25年度予算の概算要求組換え基準」では、「特に財政に大きな負荷となっている社会保障分野についても、これを聖域視することなく、生活保護の見直しをはじめとして、最大限の効率化を図る」「生活保護の見直しをはじめとして合理化・効率化に最大限取り組み、その結果を平成25年度予算に反映させるなど、極力圧縮に努める」との基本方針が示されている。
第二次安倍内閣の田村憲久厚生労働大臣も、本年1月16日、生活保護の支給基準が低所得者の生活費の平均を上回るケースがあるとした社会保障審議会生活保護基準部会の検証報告書を受けて、総額全体についての引下げを明言した。
さらに、同大臣は、本年1月27日、平成25年度政府予算案における財務大臣との折衝の結果、本年8月から3年間をかけて、生活保護のうち生活扶助を段階的に約6.5%削減する等の内容で合意した、との報道もなされている。
しかしながら、生活保護基準は、憲法25条が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であって、我が国における生存権保障の水準を決する上で極めて重要な基準である。それだけでなく、生活保護基準が下がれば、最低賃金の引き上げ目標額が下がり、労働者の労働条件にも大きな影響が及ぶ。また、生活保護基準は、地方税の非課税基準、介護保険の保険料・利用料や障害者自立支援法による利用料の減額基準、就学援助の給付対象基準など、福祉・教育・税制など多様な施策の適用基準にも連動する。つまり、生活保護基準の引下げは、現に生活保護を利用している人だけでなく、国民全体に多大な影響を及ぼすのである。
そもそも、低所得者世帯の消費支出と生活保護基準を比較検証し、これを生活保護基準引き下げの根拠とすることには全く合理性がない。平成22年4月9日付けで厚生労働省が公表した「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」によれば、生活保護の捕捉率(制度の利用資格のある者のうち現に利用できている者が占める割合)は15.3%~29.6%と推測され、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている「漏給層(制度の利用資格のある者のうち現に利用していない者)」が大量に存在する現状においては、低所得世帯の支出が生活保護基準以下となるのは当然である。当会では、昨年11月28日に全国一斉生活保護ホットラインを実施したところ、合計41件にも上る相談が寄せられた。その中には、制度の利用資格があるのに市役所又は福祉事務所の対応によって制度を利用できていない方からの相談が数多くあった。
低所得者世帯の消費支出と生活保護基準の比較を根拠に生活保護基準を引き下げることを許せば、生存権保障水準を際限なく引き下げていくことにつながり、合理性がないことが明らかである。
なお、生活保護基準の引下げの背景には、生活保護の「不正受給」が増加しているとの見方があると思われる。「不正受給」自体は許されるものではないが、「不正受給」は金額ベースで0.4%弱で推移しており、近年目立って増加しているという事実はないのであって、生活保護基準の引下げにつながるものではない。また、最低賃金や国民年金が、就労や保険料納付を前提としない生活保護費よりも低いのは不当との見方もある。しかし、これは最低賃金や年金支給額の引き上げによって解決すべき問題であり、生存権保障の根幹をなす生活保護基準の引き下げによって解決すべき問題ではない。
憲法25条に定める生存権保障の根幹をなす生活保護基準は、生活保護利用者を含む市民各層の意見を聴取した上で多角的かつ慎重に決せられるべきものである。財政の支出削減目的の「初めに引き下げありき」で政治的に決せられることなど、到底許されるべきことではない。
貧困と格差が拡大する中、生活に困窮する人たちに対する施策が未だ不十分な現状においては、むしろ、最後のセーフティネットである生活保護制度は積極的な運用が望まれる。
よって、当会は、来年度予算編成過程において生活保護基準を引き下げることに強く反対するものである。
2013年1月30日
三重弁護士会 会長 村瀬勝彦

法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」事務当局試案の公表を受けて、改めて、冤罪を生み出さない新たな刑事司法の構築を求める会長声明
ttp://mieben.info/archives/topics/434/
平成23年6月、法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」(以下「特別部会」という。)は、郵便不正事件、足利事件、布川事件、氷見事件、志布志事件、東電OL事件を始めとする冤罪・証拠ねつ造事件など、捜査機関の信頼性を大きく揺るがす事案の発生を背景に、法務大臣から、「近年の刑事手続をめぐる諸事情に鑑み、時代に即した新たな刑事司法制度を構築するため、取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しや、被疑者の取調べ状況を録音・録画の方法により記録する制度の導入など、刑事の実体法及び手続法の整備の在り方についてについて、御意見を承りたい。」とする諮問第92号を受けて設置されたものである。
ところが、平成26年4月30日に公表された事務当局試案(以下「試案」という。)は、冤罪・証拠ねつ造事件の根絶という特別部会の
存在意義を忘れたもので、これまでの捜査・公判の在り方を見直すことなく、捜査当局に新たな捜査手法を与える仕組みを取り入れようとするものに他ならない。
すなわち、試案が示す9つの制度の中でも、特に「取調べの録音・録画制度」、「証拠開示制度」、「身柄拘束に関する判断の在り方についての規定」については、冤罪・証拠ねつ造事件の根絶にはほど遠い不十分なものである一方、制定当時より違憲であるとの批判が強い通信傍受法の対象拡大、司法取引制度の導入など、むしろ、捜査機関側の権限強化に重点が置かれている。
具体的には、「取調べの録音・録画制度」では、録音・録画を義務づける対象を全刑事事件の約2パーセントに過ぎない裁判員裁判事件の被疑者に対する取調べとする案と、これに全身柄拘束事件における被疑者に対する検察官取調べを加える案が提示されているが、いずれの案でも、志布志事件で問題とされた警察による取調べや郵政不正事件で問題とされた参考人の取調べは対象とはならない。また、例外事由については、「被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき」という抽象的な要件などに加え、今回、試案で新たに暴力団構成員による犯罪に係るものが付加されたため、さらに広範なものとなり、捜査機関の裁量を実質的に認める結果となってしまう。
「証拠開示制度」についても、全面的証拠開示制度については記載すらなく、検察官が保管する証拠の一覧表を交付する制度が検討されるのみであり、警察が保管する証拠については全く言及されていない。
冤罪の温床である人質司法の問題についても、「身柄拘束に関する判断の在り方についての規定」において、確認的な規定を設けるとしているだけで、実効的な改善案は出されていない。
当会が存する三重県内に限定しても、名張毒ぶどう酒事件では自白の信用性や証拠開示の問題が再審請求の度に問題となっている。また、平成24年9月には、いわゆるPC遠隔操作事件による誤認逮捕が三重県警察のほか、神奈川県警察、大阪府警察及び福岡県警察で発生しており、警察による取調べの問題が指摘されたところである。
さらには、平成26年3月27日には、静岡地方裁判所が、袴田巌氏に対し、再審開始、刑の執行停止及び拘置を取り消す旨の決定をした。この決定の中で、捜査機関によって自白を得るためになされた長期間の取調べの最中に、重大な証拠がねつ造された疑いがあるなどと指摘され、取調べ全過程の可視化や全面的証拠開示の重要性が改めて認識されたところである。
このような状況の下、今回公表された試案は、全事件の取調べ全過程の可視化や全面的証拠開示まで踏み込まず、身柄拘束に関する判断の在り方についても具体的な案を示さず、通信傍受法の対象拡大、司法取引制度の導入などを推進するものであって、捜査機関側の権力肥大に重点が置かれる制度改革案であり、諮問第92号の趣旨を損ね、もはや、特別部会の自己否定にも等しいというべき内容である。
そこで、当会は、特別部会に対し、今後、意見の最終とりまとめにあたっては、冤罪を生み出さない新たな刑事司法の構築という目的意識に立ち返り、全事件全過程を可視化する制度と、捜査機関の手持ち証拠を全面的に開示する制度と、安易な身柄拘束を根絶する制度を速やかに構築する一方、通信傍受法の対象拡大や司法取引など、捜査権力に強大な権限を与える制度を安易に導入することのないよう、強く求めるものである。
2014年5月14日
三重県弁護士会 会長 板垣謙太郎

【転載】余命3年時事日記 2342 どんたく滋賀弁護士会①

2018年02月01日 | 在日韓国・朝鮮人
消費者被害と民法の成年年齢の引下げに関する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20160711.html
選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる「公職選挙法等の一部を改正する法律」が本年6月19日から施行され、政府において、民法の成年年齢を20歳から18歳へ引き下げることが議論されている。
しかし、公職選挙法の選挙権年齢と民法の成年年齢とは同列に論じられるものではなく、民法の成年年齢の引下げは、若年者に対する消費者被害を拡大させるおそれが高いので、当会は、現時点において、民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する。
民法の成年年齢を引き下げた場合における最も大きな問題は、18歳、19歳の若年者が未成年者取消権(民法5条2項)を喪失することである。
民法において、これら若年者を含む未成年者は、単独で行った法律行為を未成年者であることのみを理由として取り消すことができる。このため、未成年者が違法もしくは不当な契約を締結させられた場合、未成年者取消権によってその者を救済できることを多くの弁護士が日常業務において経験しているところである。また、消費生活センター等に寄せられる相談において未成年者取消権を失う20歳になると相談件数が急増していることは、未成年者取消権が未成年者に違法もしくは不当な契約の締結を勧誘する悪質な事業者に対する抑止力として機能していることを示している。
国民生活センター発行の消費生活年報によれば、20歳未満の未成年者に対する携帯電話端末等を経由した消費者被害が多数報告されており、成年年齢の引下げによって18歳、19歳の若年者の未成年者取消権が失われると、被害に遭った同若年者の救済が困難になるほか、悪質な事業者に対する抑止力の範囲が狭まることによって、同若年者に対する消費者被害がさらに拡大するおそれが高い。特に、人口に占める大学生の比率が日本で3番目に高い滋賀県においては、民法の成年年齢の引下げによって、県下の消費者被害が増加する危険性がある。
また、18歳、19歳の若年者に対する消費者被害を防ぐためには、同若年者に対する消費者教育を行き届かせる必要があるところ、「消費者教育の推進に関する法律」が施行されてから数年しか経過しておらず、また、同若年者に対する消費者教育の効果が客観的データをもとに検証されていない現時点においては、同若年者に対する消費者教育が行き届いていると評価することもできない。
さらに、民法の成年年齢の引下げは、他の多くの関連法の改正に影響するため、若年者とその者を取り巻く多くの関係者(親、教育関係者、行政関係者等)の意見を聴いて、その是非が判断されるべきであるところ、現時点において、これら関係者の間で十分な議論がなされているとは言えず、また全国紙新聞社による全国世論調査(2015年10月3日付読売新聞)においても成年年齢の引下げについて「反対」が53%を占めるなど、同引下げについて国民的合意が成立しているとも言えない。
選挙権年齢の引下げは18歳、19歳の若年者に権利を付与するものであるのに対し、民法の成年年齢の引下げは同若年者に私法上の行為能力を付与する反面、未成年者取消権を喪失させるものであって、同列に論じられるものではない(実際、成年被後見人は行為能力が制限されるが、選挙権は認められている)。昨日の参議院議員選挙の投票に見られるように18歳、19歳の若年者に早期の社会参加を促す等の要請があるとしても、同若年者を含む未成年者を取り巻く消費者被害の現状に鑑みれば、民法の成年年齢の引下げは、未成年者取消権の行使範囲を縮小させ、同若年者に対する消費者被害を拡大するおそれが高いものである。
以上のとおり、民法の成年年齢の引下げは、18歳、19歳の若年者に対する消費者被害を拡大するおそれが高いので、当会は、現時点において、民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する。
2016(平成28)年7月11日
滋賀弁護士会 会長 野嶋直

いわゆる共謀罪法案の提出に反対する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20161122.html
1.政府は、過去3度廃案となった共謀罪創設規定を含む法案(以下「旧法案」という。)について、いわゆる「共謀罪」を「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を改めたうえで、これを新設する組織犯罪処罰法改正案(以下「新法案」という。)を国会に提出することを検討していると報じられている。
当会は、共謀罪が外形的行為のない意思を処罰しないとする刑法の基本原則に反するほか、共謀罪の新設により思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由等の憲法上の基本的人権が重大な脅威にさらされることから、過去、共謀罪の新設に反対する会長声明を出している。
2.報道によると、新法案は、処罰対象を旧法案の「共謀」にかえて「(犯罪の)遂行を2人以上で計画した者」へ変更している。しかし、そもそも「計画」という刑法上の概念が不明確であるうえ、「計画」と「共謀」は「犯罪の合意」と同義であって、両者は実質的に何ら変わることはない。
また、新法案は、「犯罪の実行の準備行為」を新たな要件として付加している。しかし、「準備行為」は、いわゆる予備罪・準備罪における予備・準備行為と異なり、当該行為自体の危険性を要さないため、例えばATMにおける預金の引出し行為など日常的な生活活動も広く「準備行為」とされかねず、恣意的な解釈により処罰される行為の範囲が拡大されうるなど、処罰範囲の不明確性という旧法案の危険性は変わっていない。
さらに、新法案は、適用対象を単に「団体」ではなく、「目的が長期4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体(組織的犯罪集団)」としている。しかし、その認定は捜査機関の判断と運用に委ねられることもあり、本来は犯罪の実行を目的としていない団体の一部の構成員が一定の犯罪の共謀を行ったことをもって当該団体が組織的犯罪集団と認定されうるなど、適用対象が拡大する危険性が高く、適用対象の不明確性という旧法案の危険性も解消されていない。
なお、新法案において「組織的犯罪集団」の目的とされる犯罪は、テロとは全く関係ない犯罪を含め、旧法案と同様に600以上にもわたる。今般の刑事訴訟法改正に盛り込まれた通信傍受制度の拡大に新法案が加わったときには、テロ対策の名の下に市民の会話が監視・盗聴され、市民の表現活動等が大幅に萎縮するなど、市民社会のあり方が大きく変わるおそれさえある。
3.以上のとおり、テロ等組織犯罪準備罪は、旧法案における共謀罪と同様の危険がある。よって、当会は、政府がテロ等組織犯罪準備罪を新設する新法案を国会へ提出することに反対する。
2016(平成28)年11月22日
滋賀弁護士会 会長 野嶋直

朝鮮学校に対する適切な補助金の交付を求める会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20161124.html
1.文部科学大臣は、本年3月29日、朝鮮学校を認可している28都道府県の知事に対し、「朝鮮学校にかかる補助金交付に関する留意点について(通知)」を発出した。同通知は、朝鮮学校に関し、「北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしている」という政府の認識を示したうえで、前記の各知事に対し、朝鮮学校への補助金交付について、「補助金の公益性、教育振興上の効果等に関する十分な御検討と補助金の趣旨・目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保」を求めている。
同通知は、具体的な事実関係を指摘することなく前記のような政府の認識だけを根拠に、数多くある各種外国人学校のなかの朝鮮学校のみを対象として、事実上、補助金の交付を停止するよう求めたものといえる。現に、いくつかの地方自治体においては、同通知を踏まえ、補助金の交付を停止する動きがあると報道されており、このような流れが今後も続くことが強く懸念される。
2.朝鮮学校に通学する子どもたちも、他の学校に通う子どもたちと同様、一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利である学習権(憲法26条1項、同13条)が保障されている。にもかかわらず、子どもたちとは何らの関係がない外交問題・政治問題により朝鮮学校への補助金の交付が停止することは、朝鮮学校に通学する子どもたちの学習権を侵害するものである。
また、朝鮮学校に通う子どもたちが、合理的な理由なく他の学校に通う子どもたちと異なる不利益な取扱いを受けることは、平等原則(憲法14条1項、国際人権(自由権)規約26条、国際人権(社会権)規約2条2項)にも反する。
さらに、前記通知による補助金の交付の停止等は、朝鮮学校に通う子どもたちに社会からの疎外感を与えるとともに、その子どもたちへの不当な差別を助長する可能性があり、この点からも容認することができない。
3.よって、当会は、文部科学大臣に対し、上記通知を撤回するよう求めるとともに、滋賀県及び大津市に対し、朝鮮学校に対する補助金について憲法及び人権規約等の趣旨に照らして適切に交付されるよう求める。
2016(平成28)年11月24日
滋賀弁護士会 会長 野嶋直

いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立に関する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20170623.html
2017(平成29)年6月15日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)について、参議院本会議において、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略されるという異例な手続きにより、本会議の採決が行われ、成立した。
当会は、本法案の適用範囲や処罰範囲が不明確で恣意的な解釈により処罰される行為の範囲が拡大する恐れがある、また、市民生活が監視され正当な表現活動まで大幅に萎縮する恐れがあるなどとして、一貫してこれに反対してきた。
政府による本法案の説明が不十分である、あるいは本国会での成立を見合わせるべきとの複数の世論調査の結果が出ているなかで、衆議院法務委員会において採決が強行され、また、参議院においては上記の通りの異例な手続きを経て、本法案が成立に至ったことは極めて遺憾である。
当会は、日本弁護士連合会、各弁護士会連合会、全国の各弁護士会とともに、本法律が恣意的に運用されることがないように注視するとともに、今後、成立した本法律の廃止に向けた取り組みを行う所存である。
2017(平成29)年6月23日
滋賀弁護士会 会長 佐口裕之

死刑執行に対する会長声明
ttp://shigaben.or.jp/chairman_statement/20170810.html
本年7月13日、大阪拘置所において1名、広島拘置所において1名、計2名の死刑が執行された。第2次安倍内閣において11回目(計19名)、金田勝年前法務大臣に就任中においては昨年11月以来2回目の執行であった。
今回執行されたうち、1名については再審請求を行っている中での死刑執行であり、他1名については第一審において死刑判決が下され、弁護人が控訴したが自ら控訴を取り下げ死刑判決が確定したうえでの死刑執行である。
刑事司法が、誤判のおそれと隣り合わせにあること、誤判の中には全くのえん罪のみならず、量刑を左右する重要な事実についての事実誤認も含まれること、死刑の犯罪抑止効果に疑問があること、国連から再三にわたって死刑廃止の勧告を受けていることなどを考え、当会は、昨年9月27日に開催された臨時総会において、死刑制度は廃止されるべきであるとの立場を明らかにしたところである。日本弁護士連合会も、死刑制度の重大な問題性や国際的な死刑廃止への潮流に鑑み、昨年10月7日に開催された人権擁護大会において、死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言を採択したところである。
上記決議や宣言等に反してなされた死刑執行は、当会として到底容認することができない。
また、我が国の刑事訴訟制度は、死刑が問題となる事件についても、裁判官(裁判員)の全員一致性、自動上訴制度、再審請求に対する国選弁護制度といった、特別な手続きが用意されておらず、生命剥奪という究極の刑罰に対する手続保障が不十分である。その点でも、今回の死刑を執行した法務大臣の判断は批判を免れない。
当会は、日本弁護士連合会とともに、政府に対し、国民の議論を深めるため、執行対象者の選定基準、手続き、執行方法など死刑に関する詳細な情報を公開すること、仮釈放の要件を加重した重無期刑の導入など、死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体を改革すること、上記のとおり死刑が問題となる事件における手続保障を充実させること、これらが実現するまでの間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)を制定するなどして死刑の執行を停止することを改めて要望するものである。
2017(平成29)年8月10日
滋賀弁護士会 会長 佐口裕之

死刑の執行に抗議し、死刑制度の廃止を求める会長声明
ttp://www.shigagen.or.jp/chairman_statement/20180119.html
2017(平成29)年12月19日、2名に対して死刑が執行された。第2次安倍内閣発足以降、死刑の執行は12回目、21名が執行されたことになる。今回の2名は、いずれも弁護人が付いて再審を請求している中での執行であった。
当会は、2016(平成28年)年9月の臨時総会において「死刑廃止を求める決議」を採択した。また、日本弁護士連合会も、同年10月の人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択している。
死刑を行うということは、この世に生きる値打ちのない生命があるということを国家が正面から宣言することにほかならない。私たちが目指すべきは、罪を犯した人の更生の道を完全に閉ざすことなく、すべての人が尊厳を持って共生できる社会である。
刑事司法は常に誤判の危険と隣り合わせにある。犯人性を誤って認定するという全くのえん罪事件のみならず、量刑に影響を及ぼす事情についての誤認によって、死刑か無期懲役かの判断を誤るおそれもある。いかなる裁判制度においても、このような誤判のリスクを完全になくすことはできない。まして、現在の日本の刑事裁判制度においては、死刑が問題となる件についても、裁判官(裁判員)の全員一致性、自動上訴制度、再審請求に対する国選弁護制度といった、特別な手続きも用意されていない。誤判によって死刑に処せられる危険性を払拭できない以上、そのことだけでも死刑制度を維持することは正当化できない。
死刑制度に関しては、被害者遺族の感情を根拠にその必要性が語られることが少なくない。もとより、犯罪により身内を無くされた被害者遺族の方が厳罰を望むことはごく自然なことであり、その心情は十分に理解できる。しかし、刑罰制度の根拠は、犯罪被害者や遺族の報復感情に尽きるものではなく、刑種の選択と量刑の決定にあたり、犯罪被害者や遺族の感情を考慮するのは当然としても、それのみを決定的な要素とすることはできない。死刑制度の廃止は、刑罰制度全体を見直し、犯罪被害者や遺族に対する支援と並行して進めていくべきものであり、犯罪被害者や遺族の支援と矛盾するものではない。
今回執行されたうちの1名は犯行当時少年であった。少年による犯罪は、成育環境の影響が非常に強いものであり、少年に全責任を負わせて死刑にすることには大きな問題がある。
このほか、死刑に犯罪抑止効果があるか疑問であること、死刑廃止が世界的な潮流であり、日本もこれまでに再三にわたって国連から死刑廃止を前向きに検討するべきであるとの勧告を受け続けていることなど、死刑制度を維持すべきでない状況がある。
当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、直ちに死刑執行を停止した上で、死刑に関する詳細な情報を公開し、死刑制度の廃止について全社会的議論を深め、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに、死刑制度を廃止することを求めるものである。
2018(平成30)年1月19日
滋賀弁護士会 会長 佐口裕之

【転載】余命3年時事日記 2341 ら特集奈良弁護士会④

2018年02月01日 | 在日韓国・朝鮮人
奈良弁護士会
ttp://www.naben.or.jp/

「少年法等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
2005/07/11
奈良弁護士会  福井 英之
はじめに
本年3月1日に内閣において閣議決定された「少年法等の一部を改正する法律案」(以下、「今回の改正案」と指称する)が国会に上程されている。
今回の改正案は、概要、(1)触法少年及びぐ犯少年にかかる事件について警察官の調査権限を認めること、(2)14歳未満の少年に対しても少年院送致処分を可能とすること、(3)保護観察中の少年に対し遵守事項違反を理由とする施設収容処分を可能とすること、(4)一定の対象事件の審判において弁護士による国選付添人制度を設けることを内容とするものであるが、以下に述べるとおり、これらの内容にはそれぞれ重大な問題点があるため、当会は、今回の改正案における上記(1)ないし(3)の内容には強く反対するとともに、上記(4)に関しても、少年の権利保障をより厚くする方向での再検討・修正を求めるものである。触法少年及びぐ犯少年にかかる事件について警察官の調査権限を認めることについて
今回の改正案は、触法事件について警察官が調査を行ったうえ児童相談所に送致しうること、児童相談所はこのうち一定の重大事件については原則として家庭裁判所に事件送致しなければならないとすること及びぐ犯事件についても警察官の調査権限を認めることを含む。
内閣は、今回の改正案の提出理由について、「少年非行の現状にかんがみ、これに適切に対処するため」とするのみであるが、その背景には、近時、14歳未満の少年による重大事件が社会的注目を集めたことがあると思われる。
しかし、統計上は、14歳未満の少年による重大・凶悪事件が近時特に増加したという事実はなく、仮に社会内においてこのような印象があるとしても、これはマスコミによる事件報道のあり方等が影響しているところが大きい。
触法事件及びぐ犯事件はいずれも犯罪ではなく、したがって、警察官が「捜査」することはできないというのが現行法の建前である。今回の改正案は、これを実質的に修正するものであり、特に触法事件については刑事訴訟法上の強制捜査をも可能とする点で看過できない問題点を含んでいる。しかるに、このような改正をあえてなすことが必要不可欠であるような立法事実は必ずしも存在しない。
また、触法少年の多くは被虐待体験を含む複雑な成育歴を持ち、そのことが非行に至った背景事情となっているところ、このような問題点を発見し、これに対する適切なケアを選択することができるのは、警察官ではなく、子どもに対する福祉・教育の専門機関である児童相談所である。むしろ、警察官が自白の強要等不適切な調査を行った場合には、事件の真相解明が阻害されるおそれさえある(14歳未満の少年ではないものの、当会会員が付添人を務めた少年事件においてこのようなえん罪事件が報告されている)。
さらに、ぐ犯事件についていえば、もともとその限界は曖昧であるうえ、今回の改正案は調査対象を「ぐ犯少年である疑いのある者」としているから、事実上極めて広い範囲の少年が警察官の調査・監視下に置かれることになる。
このように、触法事件及びぐ犯事件において警察官の調査権限を認めることは重大な問題点を含むから、賛成できない。仮に現在の福祉的対応に不十分な点があるとしても、児童相談所及び児童福祉施設等の人的・物的充実を図るなどその改善・充実の方向で問題が考えられるべきである。
14歳未満の少年に対しても少年院送致処分を可能とすることについて
触法少年の多くが被虐待体験を含む複雑な成育歴を持ち、そのことが非行に至った背景事情となっていると考えられることは先に述べたとおりである。このような傾向は、重大な事件を犯した少年ほど強い。
このように複雑な成育歴を持つ少年について再非行を防止するためには、一般社会とは異なる規律を課すことにより少年の規範意識を育てようとする少年院での処遇よりも、むしろ、福祉施設において一般社会にできる限り近いかたちでの育てなおしをし、少年自身が個人として尊重され愛されるという経験を経て、犯した罪の重さに向き合わせることが適切である。未だ14歳未満の未熟な少年を真の意味で更生させるには、このように個々の少年が抱える問題性に対応した福祉的処遇が必要であり、少年院に送致するのみでは必ずしも効果的な処遇とはならない。ここにおいても、むしろ、児童福祉施設における処遇の一層の充実等福祉的対応の強化が図られるのが先決である。
保護観察中の少年に対し遵守事項違反を理由とする施設収容処分を可能とすることについて
今回の改正案は、保護観察中の少年の遵守事項違反を理由とする少年院送致等の施設収容処分の創設を含む。
しかし、遵守事項違反がぐ犯に該当すると考えられる場合は現行法のぐ犯通告制度(犯罪者更生予防法42条)により保護処分を行うことが可能であるから、このような制度をあえて設ける必要性は全くないばかりか、少年と保護司との間の信頼関係を基礎としつつ少年の自律的更生を目指す保護観察に対して、施設収容の威嚇を背景とした緊張関係を持ち込むものであって、有害でさえある。また、そもそも、遵守事項違反のみを理由として施設収容という重大な処分をなすということは、既に保護観察処分とした以前の非行を実質的に再度考慮しているといわざるを得ず、少年を「二重の危険」にさらすおそれがある。
先の2点も同様であるが、今、拙速に従来の福祉的対応を、少年に対する監視及び厳罰の方向に転換するのは正しい方向性ではない。保護司の少年に対する温かい見守り・信頼に基づき運用されてきたわが国の保護観察制度はこれまで概ねよい成果を誇ってきたといえるのであり、その基本的方向を維持しつつ、保護司の増員等のさらなる制度改善こそが今必要とされるものである。
一定の対象事件の審判において弁護士による国選付添人制度を設けることについて少年審判において、付添人の存在は、少年の法的権利の実質的保障の観点からも更生の実現の観点からも極めて重要であるが、これまでは、極めて限定された場合においてのみ国選付添人の必要的関与が定められているにすぎなかった。
したがって、今回の改正案が国選付添人制度の対象を広げ、必ずしも非行事実の存否に大きな争いがないような事案についてもその対象に含めたこと自体については、積極的に評価することができる。しかし、少年鑑別所に収容された少年の全員に国費による付添人選任権を保障すべきであるとの観点からすれば、今回の改正案の内容は未だ不十分であり、かかる国選付添人制度のいっそうの拡充が必要である(なお、日本も批准している「子どもの権利条約」においては、その40条で、「刑法を犯したと申し立てられ又は訴追されたすべての児童は」「事案が権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関により法律に基づく公正な審理において、弁護人その他適当な援助を行う者の立会い及び、特に当該児童の年齢又は境遇を考慮して児童の最善の利益にならないと認められる場合を除くほか、当該児童の父母又は法定保護者の立会いの下に遅滞なく決定されること。」が保障されるべき旨定められている)。
また、少年が終局決定前に釈放されたときには国選付添人選任の効力は失われるとする点は、先に述べたような少年の権利保障及び更生の実現の観点からは不十分といわざるを得ず、この点も改善されるべきである。
まとめ
以上のような理由から、当会は、今回の改正案に対して、上記のような意見を述べるものである。

「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明
2004/07/21
奈良弁護士会  会長 川崎 祥記
裁判員制度は、国民の司法参加の理念の下に民主的裁判の実現を目指して導入されるものである。そのため同制度は、国民的基盤に立脚し裁判員が主体的に参加できるものとする必要がある。よって、当会は、2004年通常国会において同制度にかかる法案が上程され審議されるにあたり、以下の点につき強く要望する。
1.(合議体の構成)
裁判官の人数は1人または2人、裁判員の人数は9人ないし11人とし、国民が主体的、実質的に関与できる制度にすべきである。
2.(評決)
裁判官の人数は1人または2人、裁判員の人数は9人ないし11人とし、国民が主体的、実質的に関与できる制度にすべきである。
3.(取調べの可視化)
裁判官の人数は1人または2人、裁判員の人数は9人ないし11人とし、国民が主体的、実質的に関与できる制度にすべきである。
4.(全面的証拠開示)
検察官が所持する証拠については、検察官の公益性に照らし、できるだけ早期に全面的に開示する制度とすべきである。
5.(裁判員の言論)
健全な批判がないところに健全な発展はない。裁判員が任務を終えた後には、職務上知り得た秘密及び自己以外の発言者の発言内容であると特定できる事項を除いては、その経験を自由に述べることを容認すべきである。これを制限したり、守秘義務違反に刑罰を科したりすべきではない。

「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」案に対する意見書
2002/11/20
奈良弁護士会 会長 本多 久美子
奈良弁護士会は、本年11月20日の常議員会における議決に基づき、標記法案(いわゆる『心神喪失者等「医療」観察法案』、以下「政府案」という)に対し、以下のとおり反対意見を表明する。
1.政府案の概要
政府案は、放火、強制わいせつ、強姦、殺人、自殺関与・同意殺人、傷害、強盗にあたる行為(以下「対象行為」という)を行い、心神喪失または心神耗弱を理由として、不起訴処分にされた者、あるいは無罪または刑を減軽する旨の確定裁判を受けた者について、継続的な医療を行わなくても対象行為の再犯を行うおそれが明らかにないと認められる場合を除き、検察官は、原則として地方裁判所に審判を求めなければならず、そこに設置される裁判官と精神科医である精神保健審判員からなる合議体が、「医療を行わなければ心神喪失又は心神耗弱の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認める場合」には、決定により入院もしくは入院によらない医療(いわゆる通院)により指定医療機関において治療を受けさせる、というものである(政府案2条、6条、9条、11条、33条、41条、42条、43条等)。 上記入院は、入院期間の更新により無期限に及ぶ可能性があり、上記通院は3年ないし5年にわたり得る、という処遇制度である(同43条、44条、49条、51条等)。
2.政府案の主な問題点
(1) 疑似医療の強制隔離策
政府案にいう「審判」は、「継続的な医療を行わなければ心神喪失又は心神耗弱の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがある」か否かを判定するというのであり(同37条1項、42条1項1号等)、これは医療よりも治安のための隔離を優先させた「再犯のおそれ」を指すものでしかなく、精神障害者の治療や社会復帰に力点を置く判断ではない。 また、現在の精神医学では、将来における再犯の危険性の正確な予測は不可能であるともいわれるのに、「指定医療機関」での「医療」(同42条1項1号、43条1項等)は、精神障害者に無期限に及ぶ可能性のある不定期刑類似の身柄拘束処分を課するものといえ、重大な人権侵害を招くおそれがある。
(2) 適正手続条項の潜脱
政府案は、本人に対し、刑罰による場合に実質的に匹敵するような自由の制限をもたらし、重大な人権制限を招くおそれのある手続を設けるものであるにもかかわらず、上記審判において、弁護士である付添人や本人に証拠取調請求権が認められていないなど(同24条、25条2項)、憲法31条以下の規定による適正手続の保障、人身の自由の保障が確保されていない。
(3) 地域医療・福祉の保安化・刑罰化
政府案は、「入院によらない医療」(同42条1項2号)、いわゆる通院の処遇のための中心的な機関を保護観察所としている(同54条、59条等)。しかし、保護観察所は、刑の執行猶予者や仮釈放者に対する保護観察の実施を主たる任務とし、犯罪の予防を目的として活動する機関であり(執行猶予者保護観察法3条、犯罪者予防更正法18条、33条等)、犯罪の予防を目的として活動する刑事政策を担う機関であって、精神医療の専門機関ではない。保護観察所の現状から見て、「対象行為」とされる重大な犯罪にあたる行為を行った精神障害者の処遇ができる専門性と力量を認め難い。このような機関を通院処遇の中心的な機関に位置づけようとする政府案は、観察下の通院措置なるものが結局は刑罰類似のものであることを認めるものである。また地域医療・福祉の主要機関が保護観察所の管理・介入を受けることにより、精神障害者の地域医療・福祉全体が犯罪防止と保安のための機関に組み入れられていく危険をはらんでいる。
(4) 隔離施設としての専門治療施設
そもそも、精神障害者の医療においては、犯罪にあたる行為を起こした者への特別な「医療」などは存在せず、一般の精神医療と変わらず、医療内容も一般の精神障害者と重大な犯罪にあたる行為を行った精神障害者を区別する理由はないとされている。然るに、重い罪にあたる行為を行った精神障害者だけを、「対象行為」を行った「対象者」(政府案2条2項、3項)として、新たに設置される専門の治療施設たる「指定医療機関」(同2条)において「医療」を受けさせることは、「指定医療機関」が事実上刑務所類似の保安専門施設と解され易く、そこに入、通院する者を差別し特別のレッテルを貼る結果となりかねない。
3.精神医療の充実こそ本筋である
わが国において、精神障害者は、今なお根深い偏見と無理解のため深刻な差別と人権侵害を受け続けている。このような現状に対し、日弁連は、この奈良の地で昨年11月に開催された日弁連第44回人権擁護大会において、「障害のある人に対する差別を禁止する法律」の制定を提言した。上記政府案は、障害のある人に対する差別と人権侵害を増大させるおそれが強く、上記提言の趣旨に反すると言わねばならない。 精神障害者により時として起こる不幸な事件を防止するためには、退院患者やいまだ精神医療の援助を受けていない精神障害者に対する偏見や差別をなくし、人権に配慮した精神医療の充実という観点から問題の解決を図るのが本筋である。 日弁連は、かねてから、精神障害者に対しては、精神医療を充実してこそ、時として起こる不幸な事件を防止できるという主張を一貫した基本方針とし、当弁護士会もこれに賛同するものであり、上記治安重視の政府案を是認することはできない。 また、政府・与党は政府案を一部修正する意向を示しているが、上記の問題点は一部の修正によって解決しうるものではない。以上のとおりであるから、当弁護士会は、精神障害者に対する重大な人権侵害のおそれがある政府案を廃案とすることを強く求めるものである。

住民基本台帳ネットワークシステムの稼働の延期等を求める決議
2002/07/17
奈良弁護士会
1999年8月に住民基本台帳法が改正され、本年8月より住民基本台帳ネットワークシステム(以下、「住基ネット」という)が稼働されることとなっている。住基ネットとは、住民基本台帳上、各国民に住民票コード(11桁の番号)を付け、住民票コードと本人確認情報(氏名、性別、生年月日、住所)を各都道府県、市区町村を結んだコンピュータネットワーク上で流通させ、全国何処ででも本人確認を可能とさせるシステムである。
しかし、行政機関が、何らの制約もなく国民に関するデータを蓄積すれば、行政機関間のデータの共有、データの目的外流用等により、当該個人のあずかり知らないところで行政機関が個人データを集積し、国民一人一人を管理監視する事態が生じる高度の危険性がある。現に、住民票コードと同様の共通番号制を導入したスウェーデンの個人情報濫用監視機関であるデータ検査院の院長が1996年に来日した際、「このシステムを日本に導入することは勧めない。多くの国民がこのシステムを導入したことを後悔している。個人認識番号システムは、気付かないうちに我々を腐敗させプライバシーに対する脅威のシンボルとなった。」と証言している。
また、ネットワーク上の情報には、必ず不正流出の危険がつきまとう。ところが、日弁連の調査によれば、過半数の自治体が住基ネットの管理等を担当する専任職員を置いておらず、担当職員も必ずしもコンピュータに精通している訳ではなく、住基ネットのマニュアルを完全に理解していると答えた自治体は3%しかない。このような状態では、住基ネットのセキュリティ保護に多大な不安を抱かざるをえない。
1999年の住民基本台帳法改正時には、かかる危険に鑑み「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに所要の措置を講ずるものとする。」との附則が定められた。当時の小渕首相によれば、この措置とは個人情報保護法制の制定を指す。すなわち、個人情報保護法制の制定が、住基ネット稼働の前提となっているのである。
ところが、現国会において、政府与党は行政機関の保有する個人情報保護法案の成立を既に断念している。そうであるにもかかわらず、政府は、本年8月5日より住基ネットを稼働させる予定を変えていない。個人情報保護法制を整備せずに住基ネットを稼働させることは、稼働の前提を欠き、上記の危険を顕在化させる暴挙であって、絶対に許してはならないことである。
よって、奈良弁護士会は、個人情報保護に万全を期した法制度、人的物的制度が整備されるまで住基ネットの稼働を延期すべきと考える。また住基ネット自体について、その廃止をも含めた再検討を求める。

有事法制3法案に反対する常議員会決議
2002/06/12
奈良弁護士会 常議員会
現在国会で審議中の「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」、「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」及び「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」(以下、併せて「有事法制3法案」という。)については、以下のような重大な問題点が存する。
1.「武力攻撃事態」という概念は広範であいまいに過ぎる。
「武力攻撃のおそれのある事態」や「事態が緊迫し武力攻撃が予想されるに至った事態」までが「武力攻撃事態」とされているが、法案に盛り込まれた強力な権限が政府に与えられる要件として、また大幅な基本的人権制限の要件としてこれらの概念は極めて広範かつあいまいである。これでは、政府の恣意的な判断を防ぐことは著しく困難と言わざるを得ない。
2.憲法の中核をなす基本的人権保障原理を変質させる危険性を有する。
いったん内閣により「武力攻撃事態」の認定が行われると、陣地構築、軍事物資の確保等のための私有財産の収用・使用、軍隊・軍事物資の輸送、戦傷者治療等のための市民に対する役務の強制、交通・通信・経済等の市民生活・経済活動の規制措置を公用令書の交付のみによりとることができるとされている。しかも取扱物資の保管命令違反に対しては6ヶ月以下の懲役、立入検査拒否、妨害等に対しては20万円以下の罰金が科されるなど、刑罰による強制も規定されている。このような措置は、適正手続によることなく市民の基本的人権を大きく制限するものである。
3.憲法の定める平和原則等に抵触するおそれが強い。
憲法は、国際紛争解決の手段としての武力の行使とその威嚇を禁じ、国権の発動としての戦争を放棄し、戦力の不保持を謳っており、武力攻撃の「おそれ」のある事態や武力攻撃が「予測」される事態というあいまいな概念で自衛隊の出動やその待機をすることとするのは、憲法の前文及び9条に抵触するおそれが強い。「武力攻撃事態」が周辺事態法に定められた米軍の軍事活動に対する自衛隊の後方地域支援活動に際して発生した場合、自衛隊の米軍との共同行動は、政府見解でも違憲とされている「集団的自衛権」の行使にさらに大きく踏み込むこととなるおそれが強い。
4.憲法が定める民主的な統治構造を大きく変容させ、民主政治の基盤を侵食する危険性を有する。
武力の行使、情報・経済の統制等を含む幅広い事態対処権限を内閣総理大臣に集中し、その事務を閣内の「対策本部」に所掌させることは、行政権は合議体である内閣に属するとの憲法規定と抵触し、また内閣総理大臣の地方公共団体に対する指示権及び地方公共団体が行なう措置を直接実施する権限は地方自治の本旨に反する。
5.国民主権と民主主義の基盤を崩壊させるおそれがある。
日本放送協会(NHK)などの放送機関を指定公共機関とし、これらに対し、「必要な措置を実施する責務」を負わせ、内閣総理大臣が、対処措置を実施すべきことを指示し、実施されない時は自ら直接対処措置を実施することができるとすることにより、政府が放送メディアを統制下に置き、市民の知る権利、メディアの権力監視機能、報道の自由を侵害し、民主主義の基盤が崩壊するおそれがある。
このように有事法制3法案には、憲法に抵触する重大な疑義が存し、同法案が憲法の基本に関わる重大な問題点を有するにも関わらず、国民の論議が十分に尽くされたとは言い難い。
よって、当会は、有事法制3法案の重大性・危険性を国民に訴えるとともに、有事法制3法案に反対し、同法案を廃案にするよう求める。

ネパール人勾留決定問題に関する会長声明
2000/07/11
奈良弁護士会 会長 相良 博美
被告人ゴビンダ・プラサド・マイナリに対する強盗殺人被告事件において、被告人は一審東京地方裁判所で無罪判決を受けていたが、東京高等検察庁はこれに対し控訴の申立をするとともに職権による勾留状の発布を要請し、東京高等裁判所は、平成12年5月8日、被告人に対する勾留を決定した。これに対し、弁護人は特別抗告をしたが、最高裁判所は6月28日までに特別抗告を棄却する決定をした。
一審判決は、2年余りにわたって合計34回の公判を行い、慎重かつ十分な証拠調べの下に無罪の判決を下したものである。しかしながら、東京高等裁判所は、一審の判決内容について、何らの実質審理をも行うことなく、すなわち、当事者の意見を聞くことも、自ら証拠調べをすることもなく、わずか7日間記録を読んだだけで、被告人に「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があると一審無罪判決を否定する判断をしているのである。また、最高裁判所も「罪を疑うに足りる相当な理由がある場合で、逃亡などの恐れがあれば一審が無罪を言い渡しても記録などの調査により被告人を勾留できる」と述べ、高裁での審理の段階を問わず記録の検討だけでも被告人を勾留できるとの判断を示した。
このような東京高裁及び最高裁の判断は、無罪判決の場合はもちろん、刑の執行猶予等の裁判の告知があった場合においても、勾留状はその効力を失う旨を規定し、無罪判決後の身柄拘束についてより一層慎重な判断を要求する刑事訴訟法第345条の趣旨に真正面から反するものである。また、一審判決の記録を読むだけで勾留を認めるのは、一審判決を軽く扱うもので不当である。
東京高検、東京高裁及び最高裁が被告人の身柄拘束に固執する実質的理由は、本件被告人は釈放されると同時に強制退去させられることから、控訴審終了まで被告人の帰国を阻止しようという点にある。しかし、強制退去の阻止を目的とする勾留という制度は現行法上のどこにも存在せず、これが憲法および刑事訴訟法の身柄拘束手続に正面から違反することは誰の目にも明らかである。そもそも、強制退去の阻止については、出入国管理及び難民認定法の整備の問題であって、その不備を補うために刑事訴訟法の勾留を用いることを許せば、被告人は強制退去阻止の目的を越えて国内における自由すら剥奪されてしまうのである。
本勾留決定は、無罪の判決を得た被告人を正当な目的も法律上の根拠もなくして拘束するものであり、我々は断じてこれを許してはならない。

弁護士費用の敗訴者負担に関する緊急要請
2000/06/12
奈良弁護士会 会長 相良 博美
1.日弁連速報(№20)並びに本年5月31日付朝日新聞朝刊によれば、5月30日に開催された司法制度改革審議会の審議において弁護士費用敗訴者負担制度を導入することで審議会委員の意見の一致を見たとの報道がなされている。
2.しかし、同日の審議内容について聞くところによれば、主婦連の吉岡委員、連合の高木委員、東電の山本委員らの意見は、専ら片面的敗訴者負担制度に賛成する趣旨で敗訴者負担賛成の意見を述べたとも言われており、必ずしも一般的、原則的に敗訴者負担制度の導入に賛成する意見ではなかったようである。そもそも敗訴者負担に関する意見交換は15分程度であったようであり、十分に検討吟味された結論でもなかったように思われる。
しかるに、審議会終了後、竹下会長代理が上記報道にあるような発表をしたために、いかにも民事裁判一般について敗訴者負担を原則とすることが審議会の結論として一致したかのように報道がなされた。
3.このように同日の審議会が果たしてどのような趣旨で敗訴者負担制度について審議を行い、意見の一致を見たのか、その正確な詳細は明らかではないが、仮に一般的、原則的に敗訴者負担制度を導入するというのであれば、それは日弁連民訴費用制度等検討協議会が昨年11月に作成した報告書の趣旨と相容れないものである。同協議会報告では、一般的な敗訴者負担制度を設けることには問題があるとの大前提で一致した上で、行政訴訟、国賠訴訟、消費者訴訟など社会的弱者と社会的強者との間の訴訟において、社会的弱者が勝訴した場合等において敗訴者に弁護士費用を負担させる、いわゆる片面的敗訴者負担制度を導入するべきであると指摘している。
4.上記のとおり日弁連内において設置された協議会が敗訴者負担制度の導入について一定の見解を示しているなか、日弁連執行部としては同報告書の趣旨に添った見解を示すべきであり、一般的に敗訴者負担制度を導入する意見に対しては日弁連の立場を明確にする必要がある。
司法制度改革審議会の日程では、6月13日に日弁連に対するヒヤリングがなされるとのことであるが、敗訴者負担制度の導入については軽々に同調されることのないよう、上記報告書の趣旨に添った見解を示されるよう要請する。

司法改革に向けて奈良弁護士会は約束します
2000/05/20
1.昨年内閣に設置された司法制度改革審議会は、「21世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、国民がより利用しやすい司法制度の実現」のため、今日まで十数回に及ぶ審議を行うとともに、今後重要なテーマについて個別の審議を予定しています。
2.他方、日本弁護士連合会は、1990年以来三度にわたり司法改革宣言を発表するとともに、1998年には「司法改革ビジョン」を、昨年11月には「司法改革実現に向けての基本的提言」を発表しました。その基調は法曹一元制度の導入を基本にして、「市民による司法」「市民のための司法」を我が国の隅々にまで浸透させるという国民主権の理念で貫かれています。それは、とりもなおさず「いつでも」「どこでも」「だれでも」必要なときには司法サービスを受けられる権利を保障できるようにしようというものです。
3.こうした司法改革の大きな流れの中で、奈良弁護士会は牽引車の役割を果たすべく県民のニーズに応えたさまざまな活動を行ってきました。
自治体等と提携した無料法律相談は今では県下27市町村に及び、人口比では実に84パーセントの県民が利用できるようになりました。そのほかにも、公的団体が設置した無料法律相談や臨時相談、さらには時宜に応じて女性の権利確保、商工ローン問題、欠陥住宅問題などの相談にも取り組んできました。
裁判ではどうしても時間や費用がかかるため、交通事故の紛争については会内に示談あっせんセンターを開設し、弁護士が解決に当たる活動も積極的に行ってきました。その結果過去5年間に151件の申込があり、100件の紛争を解決してきました。
犯罪を犯したとして逮捕され、あるいは裁判を受ける人々の権利を確保することは、憲法が保障する重要な基本的人権の一つです。その権利を守るため、奈良弁護士会では会員の殆どが国選弁護人として刑事弁護に携わっています。さらに被疑者段階や犯罪を犯した少年の権利を守るべく1990年には当番弁護士制度を発足させ、要請があれば直ちに面会に赴き、被疑者らの相談にのる体制も完備しました。こうして昨年は405回も出動し、弁護人や付添人になるなどして被疑者らの権利の擁護と更生を援助してきました。
現在の裁判制度が非常に分かりにくいものであることを直接体験していただき、市民が参加する裁判制度に変革していくために裁判を傍聴する活動も年々広がっています。
さらに本年4月には高齢者・障害者支援センターを発足させるなど、新たな活動も開始しました。
こうした活動を継続、拡充するには多額の費用がかかりますが、その殆どは弁護士の自己負担でまかなわれています。
そのほかにも自治体等公的団体の審査委員、協議会委員、懇話会委員などを多くの弁護士が担当し、公的、公益活動にも広く関与しています。
このように県民のさまざまな要請に応えられるよう、そして裁判をはじめとする司法が真に住民の財産となるよう、奈良弁護士会は全国各地で実施される以前から会の総力を挙げて取り組んできました。
4.こうした実績を踏まえ、さらに県民のみなさんに利用しやすい司法サービスを提供できるよう、奈良弁護士会は次の運動に取り組みます。
第1に、自治体等の法律相談を、さらに回数も地域も増やして文字どおり県下くまなく実施し、過疎地においても公設事務所構想を始め電話や巡回による相談など、より身近に利用できるように取り組んでいきます。
第2に、今年10月から新たに施行される民事法律扶助制度に伴い、多くの県民が日常生活に大きな負担をかけず弁護士を依頼し、裁判を受けられるよう取り組んでいきます。
第3に、迅速且つ適切な司法サービスを提供できるよう、弁護士の人員増と能力、質の向上に励んでいきます。また、より正確で実効的な情報を県民のみなさまに提供できるよう弁護士情報の広報に努めます。
第4に、被疑者弁護制度のさらなる拡充とともに、刑を受け終わった人々らへの援助、そして犯罪被害者の法的救済に取り組みます。
第5に、「市民による司法」「市民のための司法」を実現し、司法が真に社会における公正と公平を実現する役割を担えるよう、法曹一元制度の導入をはじめとする司法改革に取り組んでいきます。

【転載】余命3年時事日記 2340 ら特集奈良弁護士会③

2018年02月01日 | 在日韓国・朝鮮人
奈良弁護士会
ttp://www.naben.or.jp/

大阪市のアンケート調査の撤回を求める会長声明
2012/03/14
奈良弁護士会 会長 飯田 誠
大阪市は、本年2月9日、「市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動」について「徹底した調査・実態解明」を行うためと称し、市職員に対する政治活動・組合活動等に関するアンケート実施を各所属長に依頼した。
本依頼と一体となった橋下徹大阪市長の職員への要請文書には、「このアンケート調査は、任意の調査ではありません。市長の業務命令として、全職員に、真実を正確に回答していただくことを求めます。正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます。」と明記されている。しかも、今回の回答方法について「速やかに集計・分析を行う必要があるため、紙での回答は受け付けません」とし、「庁内ポータルサイト」内の「アンケートサイト」利用を求めるとともに、「各職員には総務局人事課から調査依頼を個人アドレス宛てに送付」するとされている。つまり、本アンケート調査は強制力を持ち、誰が回答し、回答していないかが一目瞭然となる仕組みとなっている。
そこで、本アンケートの内容を検討するに、全22の詳細な質問項目からなっており、組合活動や政治活動に参加した経験があるか、それが自己の意思によるのか、職場で選挙のことが話題になったか否か等について実名で回答を求めるとともに、組合活動や政治活動への参加を勧誘した者の氏名について無記名での通報を勧奨している。建前上、本アンケートは外部の「特別チーム」だけが見るとされていても、アンケート内容により処分を行うとされている以上、結局は市当局がアンケート内容を知ることに変わりはない。
このようなアンケートは、労働基本権を侵害するのみならず、表現の自由や思想良心の自由といった憲法上の重要な権利を侵すものである。
すなわち、まず、本アンケートが職員に組合活動の参加歴等につき詳細な回答を求めることは、実質的に労働組合にとどまり、あるいは新たに加入することに心理的圧迫を与えるもので、労働組合活動を妨害する不当労働行為(支配介入)に該当し、憲法で保障された労働者の団結権を危うくするものであることは明らかである。
また、政治活動への参加歴や職場で選挙のことが話題にされることを一律に問題視して回答を求めることは、憲法21条によって保障された政治活動や政治的意見表明を萎縮させ、その自由を不当に侵害するものである。なるほど、地方公務員は公職選挙法により公務員の地位利用による選挙運動が禁止されており、非現業の地方公務員は地方公務員法により政党その他の政治団体の結成関与や役員就任等、勤務区域における選挙運動などが限定的に禁止されている。しかし、本アンケートの質問項目は、その禁止の範囲を明らかに逸脱しており、必要性、相当性を欠く過度な制約である。その意味でも本アンケートは不当なものである。
さらに、本アンケートが、アンケート項目の内容が「違法行為」であるかのごとき前提で、懲戒処分付きの業務命令でなされていることに鑑みれば、同アンケートはいわば職員に対する「踏み絵」であって、憲法19条が保障する思想良心の自由を侵害するものである。
加えて、本アンケートには、他の職員、職場の関係者ないし一般市民の言動についての質問項目が含まれており、これらについては無記名での情報提供を勧奨している。
従って、本アンケートは当該公務員のみならず、一般市民を含むより広汎な関係者の憲法上の権利に重大な侵害を与えるものであると言わざるを得ない。大阪市においてこのようなアンケートが実施されれば、他の地方自治体にも波及し、全国の地方公務員の人権を危うくするおそれが高い。
よって、当会は、大阪市に対し、このような重大な人権侵害を伴うアンケートの違法性を認め、撤回することを求めるものである。

秋田弁護士会所属会員の殺害事件に関する会長声明
2010/12/13
奈良弁護士会 会長 朝守 令彦
本年11月4日の早朝,秋田弁護士会に所属の津谷裕貴弁護士が,ガラス戸を割って自宅に侵入した男に刺されて死亡するという事件が発生した。津谷弁護士は,市民の立場に立ち,消費者問題に長年取り組み,日本弁護士連合会消費者問題対策委員会の委員長に就任するなど,会活動において,中心的役割を担われていた。本年7月に奈良市で開催された日本弁護士連合会消費者問題対策委員会の第21回夏期消費者セミナーにも津谷弁護士は委員長として出席され,開催の挨拶をいただいた。当会は,津谷弁護士のご冥福を祈り,ご遺族に対して心から哀悼の意を表する。
報道によると,男は津谷弁護士が受任していた離婚調停事件の相手方だったとのことであり,刺殺事件は,同弁護士の弁護士業務に関連して発生したものと思われる。本年6月2日にも横浜弁護士会に所属する弁護士が,事件の相手方に法律事務所内で刺されて死亡するという事件が発生している。
弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命としているが,この使命は,弁護士の生命身体の安全が確保され,自由な弁護士活動を行うことができる環境があって初めて実現できるものである。
当会は,弁護士業務に対する暴力行為の排除及び予防に一層取り組み,今後も,これに毅然と対応し,弁護士としての使命をまっとうしていくことを,ここに表明する。

司法修習生に対する給費制の維持を求める会長声明
2010/07/13
奈良弁護士会 会長 朝守 令彦
2004(平成16)年成立の改正裁判所法に基づき、2010(平成22)年11月から司法修習生に対し給与を支給する制度(給費制)が廃止され、これに代えて、希望する者に対して修習期間中の生活費を国が貸与する制度(貸与制)が実施される予定となっている。
ところで司法修習制度は、司法修習生が将来、弁護士、裁判官又は検察官のいずれかになるかを問わず、法の支配を実現するために必要不可欠な我が国の司法制度を担う人材を養成するという極めて重要な役割を担っている。従って、こうした人材を国費で養成することは、国の当然の責務である。
これまでは、司法修習生を修習に専念させるため、兼職の禁止をはじめとする厳しい修習専念義務を課す一方で、その生活を保障するために給費制がとられてきた。給費制により、法曹資格は貧富の差を問わず広く開かれ、多様な人材が弁護士、裁判官又は検察官として輩出されてきた。
しかし、給費制が廃止され貸与制に移行すれば、経済的余裕のある者でなければ法曹になれないという弊害を招くことを避けられない。司法制度改革により、法科大学院制度が導入された結果、法曹を志すものは司法修習生になるまでに多大な経済的負担を負っている。現に日弁連が2009(平成21)年11月に新63期司法修習予定者を対象に実施したアンケート結果によれば、平均318万8000円、最高1200万円の奨学金の貸与を受けていることが判明している。この様な状況下で給費制が廃止されれば、さらに経済的負担の増大は避けられず、21世紀の司法を支えるにふさわしい資質、能力を備えた人材が、経済的事情から法曹への道を断念する事態も想定され、その弊害は甚大である。
給費制を廃止することは、高度の専門的能力と職業倫理を兼ね備えた質の高い法曹の養成を担ってきた司法修習制度の根幹を揺るがしかねない重大な問題である。
よって、当会は、2004(平成16)年の裁判所法改正を見直し、貸与制を実施することなく、給費制を維持することを強く求めるものである。

民法(家族法)改正の早期実現を求める会長声明
2010/06/22
奈良弁護士会 会長 朝守 令彦
選択的夫婦別姓や婚外子の相続分差別撤廃等を内容とする民法(家族法)の改正は、14年前に法制審の答申が出されながら、現在においても実現していない。
夫婦同姓の規定(民法750条)によって、女性の多くが婚姻の際に姓の変更を余儀なくされ、職業上も生活上も様々な不利益を被っている。先進国では婚姻後の夫婦同姓を強制しているのは日本のみである。個人のアイデンティティとして婚姻前の氏を使い続けるというライフスタイルの選択は、憲法13条等に照らし、十分に尊重されなければならない。
2006年の内閣府の調査によると、60歳未満の年齢層では選択的夫婦別姓の導入に賛成する者が反対する者を上回っている。2009年9月以降に複数の新聞社により実施された調査ではいずれも、選択的夫婦別姓の導入に賛成の者の数は反対の者の数を上回っている。政府及び国会はこのような国民の声を真摯に受け止めるべきである。
また、婚外子の相続分差別規定(民法900条4号)は、子自身の意思や努力によっていかんともし難い事実をもって差別をするものであり、憲法13条、14条及び24条2項に反することは明らかである。最高裁判決においても、相続分差別を撤廃すべきであるという意見が述べられている。
さらに、女性に対する再婚禁止期間の規定(民法733条)については、その趣旨は父性の推定の重複を回避し,父子関係を巡る紛争の発生を未然に防ぐことにあるとされているが、科学技術の発達によりその根拠は既に失われている。
加えて,婚姻年齢(民法731条)の統一も、憲法14条及び24条2項から当然に要請されることである。
1993年以来、日本政府は国連の各種委員会から、家族法の改正に関する勧告を繰り返し受けてきた。とりわけ2009年には、女性差別撤廃委員会から、家族法改正を最優先課題として指摘され、2年以内の書面による詳細な報告を求められるなど、早期改正を行うよう厳しい勧告を受けている。
本会は、国会において、選択的夫婦別姓の導入をはじめ、家族法の差別的規定の改正が速やかに実現されることを強く求める。

取調べの可視化の早期実現を求める会長声明
2010/05/17
奈良弁護士会 会長 朝守 令彦
捜査機関は、被疑者を代用刑事施設に留置し、弁護人の立ち会いなく孤立させて、長時間取調べる。被疑者は自分の言い分を聞いてもらえないことに絶望し、やってもいないことを「私がやりました。」と自白する。このような虚偽自白が重要・唯一の証拠であるかのように扱われた結果、えん罪が後をたたない。
2010(平成22)年3月26日、いわゆる足利事件の菅家さんに対し、無罪判決が言い渡された。これを受けた最高検察庁と警察庁は、捜査過程の検証結果と今後の防止策を表明した。その中で、両庁は、自白偏重の捜査手法を自己批判どころか、菅家さんの「強く言われるとなかなか反論できない性格」ゆえに虚偽自白がなされた特殊な事件であったかのように位置づけ、今後は取調べの「相手方の特性に応じた取調べ方法」を用いれば虚偽自白が防げると主張する。
しかし、足利事件のみならず、他のえん罪事件においても共通することは、被疑者は、自分の言い分を聞いてもらえないことに疲れて、やってもいない罪を認め、再び詰問されるのを恐れて、想像で犯行を供述するのである。えん罪は、被疑者の性格に関わる問題ではない。誰でもえん罪の被害者になりうる、取調べシステムの問題である。
捜査機関は、取調べの全過程を録画すると自白が得られにくくなり、真相解明が不可能になるというが、自白がなくとも客観的証拠によれば真相解明ができるし、そうしなければならないのが刑事裁判の大原則である。取調べを録画したら自白が得られないなどと主張すること自体、密室で「見られたら困る」取調べをしていることの証左である。現在既に実施されている被疑者が自白した後の一部録画では、自白に至る過程が適正であったかを検証する術がなく、虚偽自白を塗り固めるばかりで、えん罪を助長することになる。
えん罪は、国家による究極の人権侵害である。裁判員を含む一般国民の多くは、「捜査機関が違法な取調べをするはずがない。被疑者は、自分がやってもいないことをやったと言うはずがない。」と考えがちである。取調べの全過程の可視化こそが、違法な取調べの防止に最良かつ簡潔明瞭な手段なのである。
本会は、内閣及び国会に対し、直ちに取調べの全面可視化に関する諸法令を制定し、完全実施することを求める。

生活保護申請の代理に関する会長声明
2009/06/23
奈良弁護士会 会長 藤井 茂久
1.厚生労働省が本年3月に策定した生活保護問答集(以下、「問答集」という)では、「代理人による保護申請はなじまないものと解することができる」との見解が表明されている。この問答集は、生活保護行政の運用の方針等を示すものとして取り扱われており、今後、全国各地の実施機関において、弁護士による代理申請を受付けない、あるいは弁護士を申請者の代理人として認めないとの対応がなされる可能性がある。
しかし、上記のような見解は不当であり、当会は到底これを容認することはできない。厚生労働省は、直ちに問答集における上記見解を削除すべきである。
また、各実施機関は、今後も、申請者から委任を受けた弁護士を申請者の代理人として認め、そのように取り扱うべきである。
2.上記問答集において厚生労働省は、「生活保護の申請は、本人の意思に基づくものであることを大原則としている」ことを理由に挙げるが、全く失当である。
代理人たる弁護士は、当然、本人の意思を確認した上で申請に及んでいるところである。また、生活保護の申請行為の代理も、権利義務ないし法律関係の存否等に関する紛争を取扱うものである点で「一般の法律事務」として弁護士法3条が規定する弁護士の職務に含まれ、これをあえて除外すべき理論的根拠もない。
3.ところで、生活保護行政におけるいわゆる「水際作戦」等の違法な運用に対し、弁護士が代理人として生活保護申請をする等の活動を行うことによって要保護者の権利が擁護された例は、枚挙に暇がない。奈良県においても同様であり、高齢者や障がい者等を含む生活困窮者の代理人として生活保護申請に関わることで、ようやく受給が開始された例が少なからず存在する。
そもそも、生活保護行政においては、申請者に対し、実施機関による助言・教示が適切に行われておらず、その結果、生活保護受給は国民の正当な権利であるにもかかわらず、要保護者本人だけでは、なかなか行使できないのが実態である。このようなときこそ、弁護士が代理人として保護申請を行う等の支援・援助が必要となる。法テラスが、弁護士による生活保護の申請代理を日弁連委託援助業務の対象として取り扱っているのも、このような実態を前提としている。
4.厚生労働省の上記見解は、生活保護受給へ向けた弁護士による支援・援助をも強く制限するもので、ひいては憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」すら脅かしかねない。

取調べの可視化(取調べの全過程の録画)実現を求める会長声明
2008/06/23
奈良弁護士会 会長 藤本 卓司
違法な取調べを根絶するには可視化しかない。
不当な取調べを根絶するには可視化しかない。
そもそも、自白を強要することは憲法38条に違反する。
ところが、被疑者等の取調べは取調室という密室で行われているために、被疑者等が捜査官によって虚偽の自白をさせられたり、捜査官が被疑者等の供述と違う内容の調書を作成したりすることが少なくない。
免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件のいわゆる死刑・再審無罪4事件だけでなく、最近の宇和島事件、志布志事件、氷見事件、北方事件からも明らかなように、虚偽の自白を誘発する違法・不当な取調べは現在でも行われている。
密室での取調べにおいて何が行われたか、については客観的に証明する手段がない。そのため、捜査段階で虚偽の自白が強制されて供述調書が作成されてしまうと、後に公判廷において、その任意性や信用性を争っても、取調官や被告人等の尋問に膨大な時間が費やされることになり、裁判は長期化し、冤罪を生んでしまう。
密室における自白強要を防止し、取調べの適正を確保する最善の方法は、被疑者等の取調べの全過程を録画することである。
この取調べの可視化は、今や世界の潮流であり、イギリス、オーストラリア、アメリカの各州、イタリア、香港、台湾、韓国、モンゴル等で取調べの録画や録音が実施されている。
わが国では、2009年5月21日から、市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が実施される。取調べの全過程を録画すれば、密室での取調べ状況を客観的に把握でき、自白の任意性や信用性の審理を合理化することができる。裁判員に加重な負担をかけないで裁判員裁判を円滑に実施するためにも、取調べの可視化は早急に実現されなければならない
現在、検察庁は、検察官による取調べの一部を試行的に録画している。警察庁も取調べの一部録画の試行を予定している。しかし、これらの一部録画は、自白調書作成後に取調べ状況を確認するだけのものにすぎず、違法・不当な取調べを抑止することはできない
取調べの適正化を図り、自白の任意性・信用性の審理を合理化し、虚偽自白に基づく冤罪を根絶するためには、検察官による取調べのみならず、警察官による取調べも含めた全ての取調べの可視化を実現するしかない。
奈良弁護士会は、取調べの可視化(取調べの全過程の録画)の実現を強く求める。

少年法「改正」法案に反対する会長声明
2008/05/20
奈良弁護士会 会長 藤本 卓司
1.政府は、本年3月7日、少年法の一部を改正する法律案(以下「同法案」という。)を国会に上程した。
同法案は(1)一定の結果が重大な犯罪について、犯罪被害者等による少年審判の傍聴を認めること、(2)記録の閲覧・謄写につき、その要件を現行法よりもさらに緩和することなどを内容とする。
しかし、当会は、以下の理由から同法案に反対する。
2.少年法は、「少年の健全育成」(1条)を目的とし、少年の保護・教育の優先をうたっている。
これは、少年が成長発達の途上にあり、可塑性に富むことから、可能な限り教育による改善更生を図ることが再犯の防止にも有効であり、少年の成長を支援することが出来るとの考え方に基づくものである。
このような目的を実現するため、少年審判は、非行事実の認定のみならず、非行をおこすに至った背景・要因を正確に把握し対処することが必要とされる。
そのため、少年審判は「懇切を旨として、和やかに行う」(22条1項)とされている。これは、事件をおこした少年が生育環境や資質・性格に大きな問題をかかえていることを踏まえ、まず少年からその悩みや不満、家族やプライバシーに関する事項を萎縮することなく率直に述べてもらうためである。
そして、少年の率直な発言をきっかけに、少年の持つ問題点を浮き彫りにし、その未熟さを自覚させる過程を経て、はじめて少年は自らがもたらした被害に向き合い、内省を深めることができるようになる。
ところが、被害者等が審判の傍聴をした場合、精神的に未熟で社会的経験も乏しい少年は、心理的に萎縮して、率直に自分の生育歴や思いを語ることができなくなるおそれが大きい。特に審判は、事件発生から間もない時期に開かれるため、少年のみならず、被害者等にとっても心理的動揺がまだ大きい状況にあり、そのような状況下で被害者等が審判を傍聴することにより、少年審判は緊張した雰囲気とならざるを得ず、少年法の理念に基づいた審判運営は極めて困難となる。
また、裁判官や調査官、附添人などの関係者は、少年と親族のプライバシーに配慮せざるをえなくなり、少年の生育歴や家族関係の問題といったプライバシーに深く関わる事項を取り上げることが困難となり、非行の原因を十分に掘り下げることができず、かつ適切な処分を選択することが出来なくなる。
3.また、同法案は、閲覧・謄写の要件を現行法よりも緩和し、閲覧・謄写を原則可能とし、対象となる記録の範囲も法律記録の少年の身上経歴等に関する部分にまで拡大している。
しかし、このような法改正は、少年や親族等の関係者のプライバシーを害するおそれが高く、その後の少年の更生を困難にしかねない。現行法の運用上、被害者等による記録の閲覧・謄写は十分に機能しており、これ以上に閲覧・謄写を原則可能とし、対象となる記録の範囲を拡大する必要性はない。
4.被害者等の保護・支援は重要であり、被害者等の事実を知りたいという心情も尊重されるべきである。しかし、以上のとおり同法案は少年法の基本理念を根本から脅かすものであり、あまりに弊害が大きい。
被害者等の支援は、関係各機関が連携し、2000年(平成12年)少年法改正で導入された、被害者等による記録の閲覧・謄写、被害者等の意見聴取、審判の結果通知の各規定の存在をさらに丁寧に知らせるとともに、被害者に対する経済的、精神的支援制度を早期に充実することによるべきである。
5.以上のとおりであり、当会は、(1)被害者等に少年審判の傍聴を認めること、(2)記録の閲覧・謄写の要件を緩和することに関する同法案に強く反対するものである。

憲法改正手続法の抜本的な修正を求める会長声明
2007/05/29
奈良弁護士会 会長 田中 啓義
「日本国憲法の改正手続に関する法律」は、2007年4月13日の衆議院本会議に引き続き、5月14日の参議院本会議で慎重な審議を求める多数の国民の意見に反して採決がなされ、与党の賛成多数で可決成立となった。
同法は、国民が主権者として、国の最高法規である憲法の改正案を承認するかどうかの意思を表明する憲法改正国民投票の手続を定めるものであり、その内容をどのように定めるかは、国民投票の結果に重大な影響を及ぼすものである。そのため、慎重な審議を求める声が多くの国民から寄せられ、地方公聴会や参考人質疑でも、法案への賛否の立場を越えて慎重な審議を求める声が一致して出されていた。しかるに、衆議院においては、中央公聴会が2回、地方公聴会が大阪と新潟の2箇所で開かれたのみで、参議院においては連日の委員会の開催で拙速に審議を進め、中央公聴会も開かずに審議を打ち切り、委員会及び本会議の採決をしたことは極めて遺憾である。
そして、成立した法律は、衆議院段階で一部修正がなされたものの、(1)最低投票率を定める規定がなく、ごく少数の賛成により憲法改正がなされるおそれがあること、(2)投票日前14日間、テレビ・ラジオの有料意見広告を一律に禁止することは、表現の自由に対する過度の規制である一方で、それまでの期間は何ら規制が加えられておらず、資金力ある政党・団体が有料意見広告を独占的に行うおそれを排除できないこと、(3)公務員・教育者について広汎な運動規制がかかり、自由であるべき憲法改正問題についての論議の萎縮が起こること、(4)一括投票の余地が残されていること、(5)国民投票広報協議会の構成が各議院における各会派の所属議員の比率により選任されるため、反対意見が適切に反映されないおそれがあることなど、多くの問題点が残されたままとされた。
参議院の憲法調査特別委員会では18項目に及ぶ付帯決議が採択されたが、この中には、「低投票率により憲法改正の正当性に疑義が生じないよう、憲法審査会において本法施行までに最低投票率制度の意義・是非について検討を加えること」「公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動の規制については・・・禁止される行為と許容される行為を明確化するなど、その基準と表現を検討すること」「罰則について、構成要件の明確化を図る等の観点から検討を加え、必要な法制上の措置も含めて検討すること」「憲法改正原案の発議にあたり、内容に関する関連性の判断は、その判断基準を明らかにするとともに・・・適切かつ慎重に行うこと」など、本来であれば法案審議の中で明らかにされ、本法の条文に盛り込まれるべき事項が少なからず含まれている。
いうまでもなく、憲法改正は国のあり方を決定する重大問題である。本法についての国民的論議は緒についたばかりといっても過言ではなく、広く国民的議論を尽くすことが必要である。
当会は、憲法改正を最終的に国民に委ねている憲法第96条の趣旨が十二分に生かされるよう、本法施行までの3年間に、上記の問題点等について慎重に再検討を重ねて、抜本的な修正がなされることを強く求めるものである。

「少年法等の一部を改正する法律案」の参議院での慎重審議を求める会長声明
2007/05/09
奈良弁護士会 会長 田中 啓義
現在、少年法のいわゆる第2次改正法案が衆議院を通過した後、参議院において審議されようとしている。
当会は、「奈良県少年補導に関する条例」に反対する活動を通じて、子どもたちが広く無限定に警察官の規制・取り締まりの対象となることに対し警鐘を鳴らしてきた。また、同時に、問題を抱えた子どもたちにとって本当に必要なのは、子どもの人格を尊重しその健やかな成長を支援する福祉的施策であると主張してきた。
したがって、上記の改正法案において、特に、当初の政府提出法案から「ぐ犯少年である疑いのある者」に対する警察官の調査権限を定める点が削除されたことは評価に値する。
しかし、一方で、同改正法案は、少年院送致年齢の下限の引き下げ等を未だ含む点で、立法事実の検証がなされていないにも拘わらず厳罰化の発想を残すものであ り、この点は賛成できない。また、触法少年に対する警察官の調査権限を定めるにも拘わらず、調査への弁護士の立会いを認めるないし調査の全過程をビデオ録画するといった「可視化」については何ら手当てがなされておらず、この点でも問題点を残す。
したがって、当会は、参議院において、これら改正法案の問題点について、より一層慎重な審議が行われ、全ての問題点が解消されることを要望する。

犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することができる制度に反対する会長声明
2007/03/13
奈良弁護士会  三住 忍
1.2007年2月7日、法制審議会は、法務大臣に対して、「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための法整備に関する要綱(骨子)」を提出した。
この答申は、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、強制わいせつ及び強姦の罪,業務上過失致死傷等の罪、逮捕及び監禁の罪並びに略取、誘拐及び人身売買の罪等について、参加を申し出た被害者や遺族(以下「犯罪被害者等」という)に対し、「被害者参加人」という法的地位を付与し、公判への出席、情状に関する事項についての証人に対する尋問、自ら被告人に対して行う質問、証拠調べが終わった後における弁論としての意見陳述を認める被害者参加制度を創設することを求めている。
2.しかし、この被害者参加制度は、犯罪被害者等について、「事件の当事者」から、「被害者参加人」という訴訟当事者又はそれに準ずる地位を容認するものであり、刑事訴訟の構造を根底から変えるものである。
起訴状に被害者として記載された者が真に被害者か否かは、刑事裁判の判決において初めて判断されるものである。
とりわけ、無罪を主張して、被害の有無それ自体を争う場合に、起訴状に記載された被害者を刑事訴訟に参加させて訴訟活動に参加させることは、無罪の推定の原則や予断排除の原則に抵触すると言わざるを得ない
3.近代刑事司法は私的復讐を公的なものに昇華させ、被告人は国家が処罰することにより、被害者は加害者からの再復讐から守られ、被害者と加害者との報復の連鎖を防ぎ、もって社会秩序の維持を図ろうとしている。
ところが、犯罪被害者等が刑事法廷で被告人と直接対峙すると、被告人に対する犯罪被害者等の言動が被告人の反発を招きかねず、また、被告人の中には、犯罪被害者等の訴訟活動によって自分が有罪とされ、あるいは重く処罰されたと考えて、逆恨みや報復感情を抱く可能性がないとは言えない。
このように犯罪被害者等が被告人と刑事法廷で直接対峙することは、近代刑事司法が断ち切ろうとした報復の連鎖を復活させることになりかねない。
4.被告人は、無罪推定の原則により、刑事法廷において、予断と偏見をできる限り排除して、自由に供述することができなければならない。
しかし、犯罪被害者等が、常時、被告人と直接対峙する形で刑事法廷に出廷することになれば、被告人には大きな心理的圧力がかかり、自由に弁解や反論をすることができなくなることが予想される。
5.刑事訴訟は、客観的な証拠により犯罪事実の存否や量刑が決められるが、犯罪被害者等は必ずしも全ての証拠を把握しているわけではなく、検察官とは情報量や立場が異なっており、証拠に基づく訴訟活動を期待すること自体に無理がある。
また、裁判員制度の下においては、犯罪被害者等の主張や陳述、応報感情に基づく弁論としての意見陳述が刑事法廷でなされることにより、初めて刑事法廷に臨む市民である裁判員が戸惑い、冷静な判断をすることができなくなるおそれがある。
6.犯罪被害者等の要望に応えるためには、まず、検察官と十分にコミュニケーションを図り、犯罪被害者等への情報提供や検察官の訴訟活動について意見を述べる機会を確保できる制度を創設すべきである。
また、十分な法的知識を持たず、捜査機関などによる二次被害に苦しめられる危険性に晒されている犯罪被害者等に対して、公費による弁護士支援制度を導入すべきである。
7.第166通常国会には、被害者参加制度の創設を含む刑事訴訟法改正案が上程されることが予定されているが、奈良弁護士会は、被害者参加制度の導入に反対し、国会における慎重な審議を求めるものである。

教育基本法改正に反対する会長声明
2006/11/13
奈良弁護士会  三住 忍
1.政府は、本年4月28日、教育基本法「改正」法案(以下「法案」という)を国会に上程し、衆議院「教育基本法に関する特別委員会」にて継続審議となっている。今秋の臨時国会において、政府は、同法案の成立を最重要課題と位置付けて取り組むことを明らかにしている。
ところで、教育基本法は、その前文で、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」と規定するように、「準憲法」的性格を持つ極めて重要な法律である。したがって、これを改正することについては、特に慎重でなければならない。
しかし、法案は、既に日本弁護士連合会が本年9月15日付意見書で明らかにしているとおり、様々な問題点を有している。当会も、同意見書の内容を踏まえ、以下の意見を表明するものである。
2.当弁護士会は、本年5月20日、総会の場において「憲法の基本理念を堅持する宣言」を採択した。同宣言は、現行憲法の基本理念たる「立憲主義」を堅持すべきことを訴えるとともに、現在の改憲案の多くが、国家権力を規制するという憲法の基本的性格を曖昧にし、国家主義的な傾向を明らかにしていると指摘した。そして、今回の法案は、その基本的発想において、これらの改憲案と共通している。
すなわち、法案は、「教育の目標」として、「公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」や「伝統と文化の尊重」、「我が国と郷土を愛する態度を養うこと」等を規定するとともに(2条)、「学校においては、教育の目標が達成されるように…体系的な教育が組織的に行われなければならない」としている(6条2項)。しかし、そこで「目標」として掲げられた「公共の精神」や「伝統と文化の尊重」、「我が国と郷土を愛する態度」といった事柄は、本来、多様性を持つ多義的な概念であって、一義的に決定できないはずのものである。然るに、法案は、これらの徳目を法定するとともに、現行法が教育の目的ないし方針として掲げる「個性ゆたかな文化の創造」(現行法前文)、「個人の価値をたつと」ぶこと(同1条)及び「自発的精神」(同2条)といった言葉をいずれも削除してしまった。このことは、法案の目ざすものが、国家が定める特定の価値観を身につけた「標準日本人」づくりにあることを意味する。
しかし、一人一人の「個性」が認められることなくして、「個人の尊重」(憲法13条)は実現しえない。法案は、憲法13条の「公共の福祉」を特定の価値観を前提にした「公益及び公の秩序」に改めようとする改憲案と同じく、立憲主義の理念と根本的に相容れない。それは、戦前と同様、教育の場を通じて、子どもたちに為政者の求める「お国のため」の論理に従わせることを可能とするものである。
3.また、現行教育基本法10条は、戦前教育の過度の国家的介入と統制への反省の上にたち、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」と規定するとともに、「教育行政は…必要な諸条件の整備確立を目標として行われ」るものと規定した。しかし、法案は、「国民全体に対し直接に責任を負って行われるべき」との規定を削除するとともに、国と地方公共団体が、役割分担と協力の上で教育を行い、教育に関する施策を策定するものとしている(法案16条)。このような改正は、新たに設定された「教育の目標」を達成するための国家的体制の実現を許容することになりかねない。
4.当会は、上記宣言と同日、「『奈良県少年補導に関する条例』の施行に反対する総会決議」を採択した。本条例は、未成年者の広範囲にわたる行為を「不良行為」と定め、これを発見したときにこれを止めさせる努力義務及び警察職員等に通報する努力義務を県民一般に課すとともに、警察職員の権限を拡大して少年に対する監視・規制・取り締まりを強化するものである。しかし、そもそも「不良」とは、特定の価値観を前提に、それに従わないことを意味する。これを警察職員の権力行使の対象とすることは、上記の法案ならびに改憲案と同一の発想に立つものである。法案は「学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする」と規定するが(13条)、これが全国的な補導法制ならびに上記条例と密接な関連性を持つ可能性が高い。当会としては、このような可能性を持つ本法案を看過することはできない。
5.そもそも、本改正案については、このような改正を是非とも必要とする理由が審議のうえで明らかにされていない。
確かに、現在の教育制度やその運用実態が国民のニーズに応えた理想的なものであるかどうかについては、多様な議論がある。いじめ被害の頻発等、改善に取り組まなければならない課題も多い。しかし、だからといって、今回提案されているような教育基本法そのものの改正が必要であるかどうかは大いに疑問である。この点についての議論は未だ十分になされているとはいえない。
6.法案が以上のような問題を孕むものであることに鑑みるならば、当会としては、これに反対せざるを得ない。また、今後、教育及び教育基本法の在り方が問題にされるとしても、拙速に流れることなく、同法の「準憲法」的性格にふさわしい、慎重な取り扱いがなされることを望む次第である。

「奈良県少年補導に関する条例」についての会長声明
2006/03/24
奈良弁護士会  福井 英之
本日、奈良県議会において、「奈良県少年補導に関する条例」(以下、「本条例」という。)が賛成多数により可決された。
しかし、これまでの当会会長声明、近畿弁護士会連合会決議及び日本弁護士連合会会長声明で既に指摘されているとおり、本条例には種々の重大な問題点がある。しかも、昨年11月に県警により本条例の要綱案が発表されてから今日に至るまでの経緯に鑑みれば、上記のような本条例の問題点について、県民に対する十分な周知及び県民の間での十分な議論を経ないまま、拙速に制定に至った感は否めない
そこで、当会は、本条例の制定に対し遺憾の意を表明するとともに、奈良県議会ないし奈良県知事に対し、本条例の速やかな廃止あるいは施行の凍結を求めるための取り組みを継続する所存である。

ゲートキーパー立法に反対する会長声明
2006/03/09
奈良弁護士会  福井 英之
1.FATF(OECD加盟国を中心とする政府間機関である「金融活動作業部会」の略称)は、マネーロンダリング及びテロ資金対策を目的として、従前から対象としていた金融機関に加え、弁護士等の専門職に対しても、不動産の売買等一定の取引に関し、「疑わしい取引」を金融情報機関に報告する義務を課すことを勧告した。
これを受けて、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は、平成16年12月、「テロの未然防止に関する行動計画」を策定し、その中でFATF勧告の完全実施を決めた。さらに、政府は、平成17年11月17日、FATF勧告実施のための法律の整備の一環として、金融情報機関を金融庁から警察庁に移管することを決定した。
2.しかしながら、弁護士に依頼者の「疑わしい取引」に関する報告義務を課すことは、弁護士の守秘義務を侵すのみならず、弁護士の存立基盤である国家権力からの独立性を危うくし、弁護士に対する国民の信頼を損なうことにつながるから到底容認できない。弁護士の職責は、国家権力から独立し、ときには国家権力と一定の対抗関係に立って国民の人権と法的利益を擁護するところにある。
そのため、弁護士は国家権力から独立した専門家としての地位が保障されるとともに、職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、依頼者に対して高度の守秘 義務を負うものとされている。
「疑わしい取引」を金融情報機関に報告する義務を課すゲートキーパー立法は、かかる弁護士制度の基盤を根底から覆すものである。諸外国の弁護士及び弁護士会においても、FATF勧告は弁護士制度の根幹を揺るがすものとしてその実施に反対し、FATFの重要な加盟国であるアメリカやカナダでは勧告による立法はなされておらず、ベルギーやポーランドでは違憲訴訟が係属しているのが現状である。
3.そもそも、「疑わしい取引」を金融情報機関に報告することを義務づける法制度の下では、依頼者は弁護士に安心して全ての事実を打ち明けることができなくり、弁護士と依頼者の基本的な信頼関係は破壊される。さらに、弁護士は事実関係の全容を把握できなくなる結果、依頼者は弁護士からの適切な助言を受けることができなくなる。加えて、依頼者が弁護士に真実を話さなくなれば、弁護士は依頼者が法律を遵守して行動するように適切な指導をすることができなくなり、依頼者による違法行為という結果を招くリスクも生じる。
従って、依頼者の違法な行為を金融情報機関に通報することによる違法行為の予防、抑止の効果よりも、多くの依頼者が適切な法的アドバイスを受けられなくなるリスクの方が格段に大きい。
4.もちろん、当会は、マネーロンダリングやテロ資金対策を否定するものではなく、弁護士がそれらに関与させられることがないよう継続的に研修を実施し、また、弁護士がそれらに関与すれば懲戒処分をもって臨む。
しかしながら、ゲートキーパー立法は、弁護士制度の基盤を根底から覆し、弁護士に対する国民の信頼を損ない、依頼者が秘密の内に適切な法的アドバイスを受ける権利を侵害するという重大な問題を含んでいる。まして、各弁護士が直接 警察庁に刑罰の威嚇をもって通報を義務づけられる制度を作るとすれば、弁護士が警察機関と対抗して刑事弁護活動等を行う上での制度的独立を危くし、弁護士の警察権力からの独立を損なう可能性がある。
よって、当会はゲートキーパー立法に反対する。

「奈良県少年補導に関する条例(案)」に反対する会長声明
2006/03/09
奈良弁護士会  福井 英之
1.はじめに
現在開会中の奈良県議会において、「奈良県少年補導に関する条例(案)」が上程されている。
この「奈良県少年補導に関する条例(案)」(以下、単に「本条例案」という。)には重大な問題点があるので、当会は、その問題点を指摘したうえ、このような条例の制定に反対するものである。
2.本条例案の問題
本条例案は、「不良行為少年の補導に関し、保護者及び県民の責務を明らかにするとともに、警察職員及び少年補導員の活動に関して必要な事項を定め、もって少年の非行の防止と保護を通じて少年の健全な育成を図ること」をその目的とするという。
少年の健全育成及びそのための少年非行の防止それ自体は重要な社会の利益である。しかし、奈良家庭裁判所管内における少年一般保護事件の年間新受件数は、ここ数年ほぼ減少傾向にある。また、上記新受件数と、奈良県と人口が近似する他の県に対応する家庭裁判所管内における同事件の年間新受件数とを比較しても、奈良県の件数がことさらに多いとはいえない。すなわち、奈良県において特に少年非行の深刻な増加をいうべき根拠となる事情はなく、したがって、以下のように問題点の多い条例を今あえて制定すべき必要性はない。
また、少年非行の防止を実現するための手段として、本条例案は警察権限を拡大し少年の行為に対し広範な規制を及ぼすことを予定しているところ、このようなやり方は、適切な手段とはいえない
第一に、少年非行防止のための成長支援の本来的あり方は警察権限による規制ではなく教育・福祉的政策であることは既に世界的潮流であり、2001年11月に奈良で開催された日本弁護士連合会主催第44回人権擁護大会においても、このような流れをふまえて、「子どもの成長支援に関する決議」を採択し、その中で、「少年犯罪の防止のために大人に求められていることは、子どもの悩みやストレスを早期に正面から受け止め、一人ひとりの子どもの尊厳を確保し、その力を引き出すことであ」り、そのためには、「学校や地域社会、福祉機関、医療機関、保健所などは、子どもに対する人権侵害を見逃さず、関係機関との連携を強めて、これに対処すべきであ」るとの提言を行っているところである。
単に規制・威嚇を強めることでは少年非行問題は解決しない。強制権限を背景に持つ警察官が、条例に規定される「不良行為」に該当するとして少年に対し権力的・画一的指導を行ったとしても、それは、少年が自ら抱える問題点を認識し、これを積極的に改めていこうとする真の更生への契機にはならない。問題行動には、子ども自身の悩みや劣等感が顕れていることが多い。したがって、更生への契機として真に必要なのは、個々の少年が抱える問題に応じてきめ細やかな対話・ケアを行い、少年が自己肯定感を持てるようにすることなのである。
そのために必要な学校教育の充実、児童相談所の人員・予算増加を含む態勢・活動の充実、未就職者に対する就職の機会の提供等、先に取り組まれるべき福祉施策をなおざりにしたまま、ただ規制を強化するのみでは、少年非行の防止及び保護という目的は達成されない。
第二に、本条例案は、県民が不良行為少年を発見したときにこれを止めさせる努力義務及び保護者等に通報する努力義務を定める。
しかし、本条例案のいう「不良行為」とはあくまで非犯罪行為であるから、それにも拘わらず、このような行為を止めさせる努力義務及び保護者等に通報する努力義務を定めるとすると、それを望まない県民の内心の自由が不当に侵害されることとなる。また、県民一般にこのような義務を課せば、問題を抱える少年及びその家族と地域住民を含む県民とを、条例による強制のもと、行動を監視し、制限し、挙げ句は通報する側とされる側として対立するような状況に置くことは必至である。このような息苦しい状況が非行防止及び立ち直り支援に資するとは到底思われない。むしろ、問題を抱える少年及びその家族を、地域社会から疎外してしまうことにもなりかねないし、このような方向性は、地域社会が一体となっての子育て支援を掲げて県が一方で進めている「新結婚ワクワクこどもすくすくPlan(奈良県次世代育成支援行動計画)」とも整合しない。
3.まとめ
以上のように、本条例案については、様々な看過できない問題点が存するので、当会は、これに対して反対の意見を述べるものである。

謀罪新設に反対する会長声明
2005/11/17
奈良弁護士会  福井 英之
当会は、第163国会(特別会)に提出されている「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」第2条(組織的な犯罪の処罰に)「組織的な犯罪の共謀」の新設に反対する。
この共謀罪は、「団体の活動として」「当該行為を実行するための組織」により行 われる犯罪の遂行を共謀した者で、その犯罪が死刑無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪、あるいは長期4年以上10年以下の懲役 又は禁錮が定められている罪にあたる場合にこれを処罰しようとするものである。共謀罪は、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を国内法化するための規定である。
しかし、この法律案には次のような重大な問題点がある。

【転載】余命3年時事日記 2339 ら特集山梨弁護士会④

2018年02月01日 | 在日韓国・朝鮮人
山梨県弁護士会
ttp://www.yama-ben.jp/

憲法記念日~施行61周年~を迎えて
この5月3日(憲法記念日)をもって憲法施行61周年を迎えました。そこで、憲法に関して、私が学んできたことと最近考えていることを述べさせて頂 きます(この「会長談話」は、常議員会の承認を得た「会長声明」と異なり、山梨県弁護士会としての意見ではなく、個人的な見解です。)
1.憲法とは何か~法律と何が違うのか~
法律は、国家権力(現代のわが国では国会)が定め、国民に対し、義務を課したり、権利を制限したりするものです(他の効果を定める法律もありますが)。これに対し、憲法は、国民が定め、国家権力に対し、義務を課したり、権力を制限したりするものです。
それゆえ、まず、憲法99条で「この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と定められているのは、国民ではなく、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」なのです。また、憲法が尊重されず、「その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為」が定められたりしても、「その効力を有しない。」(憲法98条)のです。
すなわち、私たち国民一人一人は、小さな存在で、国家は、法律を定めることで、何でも自由にできそうですが、その国家の権力を縛り、国民の基本的人権を保障しているのが、憲法です。
2.憲法9条1項は国家の何を禁止しているか
憲法9条1項は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と定めています。
この「武力の行使」の禁止に関し、「他国による武力の行使」への参加に至らない協力(輸送、補給、医療等)について、国(政府)の解釈は、その「他国による武力の行使と一体となるようなもの」は、自らも「武力の行使」を行ったとの評価を受けるもので、憲法上許されないが、一体とならないものは、許されるという解釈(いわゆる一体化理論)です。
3.憲法は平和的生存権を保障しているか
また、憲法前文には、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とあります。
そして、「憲法前文が上記のとおり『平和のうちに生存する権利』を明言している上に、憲法9条が国の行為の側から客観的制度として戦争放棄や戦力不保持を規定し、さらに、人格権を規定する憲法13条をはじめ、憲法第3章が個別的な基本的人権を規定していることからすれば、平和的生存権は、憲法上の法的な権利として認められるべき」(下記名古屋高裁判決)であると考えます。
4.イラクにおける航空自衛隊空輸活動についての4月の名古屋高裁判決
イラクにおける航空自衛隊による多国籍軍の武装兵員空輸活動について、いわゆる自衛隊イラク派遣差止訴訟において、名古屋高等裁判所の平成20年4月17日の判決は、次のような画期的判断を示しました。
•「武力行使」禁止に関して
まず、バグダッドはイラク特措法にいう「戦闘地域」に該当するとした上で、「航空自衛隊の空輸活動のうち、少なくとも多国籍軍の武装兵員をバグダッドへ空輸するものについては、…他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動であるということができる。」「よって、現在イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は、政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいる」という判断を示しま した。
•平和的生存権に関して
「平和的生存権は、現代において憲法の保障する基本的人権が平和の基盤なしには存立し得ないことからして、全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利である」として、前記3項のとおり、「憲法上の法的な権利」とした上で、「裁判所に対してその保護・救済を求め法的強制措置の発動を請求し得るという意味における具体的権利性が肯定される場合がある」という判断を示しました(ただし、差し止め請求については、不適法却下とされ、また、損害賠償請求については、本件派遣によって具体的権利としての平和的生存権が侵害されたとまでは認められず、損害賠償請求で認められる程度の被侵害利益がいまだ生じているとはいえず、棄却されました)。
5.憲法と政治問題(日本弁護士連合会の主張など)
折しも、この5月1日で,アメリカのブッシュ大統領がイラクでの主要な戦闘の終結を宣言してから、満5年が経過しました。しかし、イラクでは、戦闘が絶えず、米英軍は,その後もイラクに駐留し続けています。そして、その戦死者は、米軍だけで4000名を超えました。
アメリカの憲法には、わが憲法9条のような規定はありません。したがって、アメリカでは、軍隊をイラクへ派遣することも国家が自由にできることであり、イラクから撤退をするか否かも、純粋な政治問題です。
しかし、わが国には、憲法9条があります。したがって、自衛隊をイラクへ派遣することができるか否かは、純粋な政治問題ではなく、憲法の問題です。
それゆえ、日本弁護士連合会は、自衛隊をイラクへ派遣することを目的とするイラク特措法について、これが国際紛争を解決するための武力行使および他国領土における武力行使を禁じた憲法に違反するおそれが極めて大きいものであることにより反対であると主張してきてきました。そのうえで、自衛隊の派遣先がイラク特措法が禁じる「戦闘地域」であることも指摘し、繰り返しイラクからの撤退を求めてきました。したがってまた、日本弁護士連合会は、上記名古屋高裁判決に ついて、会長声明で、高く評価すると共に、政府に対し、判決の趣旨を十分に考慮して自衛隊のイラクへの派遣を直ちに中止し、全面撤退を行うことを強く求めているのです。
2008年5月3日
山梨県弁護士会会長 石川 善一

「犯罪被害者等による少年審判の傍聴」に反対する会長声明
平成20年2月13日、法制審議会は、原則非公開である少年審判で被害者や遺族の傍聴を認めることを内容とする少年法改正要綱を法務大臣に答申した。
当会は、一定の重大な犯罪類型に限定するとはいえ、犯罪被害者等による少年審判の傍聴を認める規定を創設すべきではないと考え、改正要綱には反対する。その理由は、以下の通りである。
少年は、成長発達の途上にあり、精神的に未成熟である。犯罪被害者等が審判を傍聴することになれば、少年は精神的に萎縮し、審判廷でありのままに心情を語ったり、事実関係の食い違いを指摘することが困難になる。
少年審判は事件発生から短期間で開かれるため、被害者等にとって事件から受けた心理的な衝撃がいまだ大きく、少年も事件を起こした精神的動揺が収まっていない。この点、改正要綱は、傍聴できる場合を一定の重大事件に限定している。しかし、そのような重大事件であればなおさら、被害者等の衝撃は大きく、自ずと加害少年に対する視線は厳しくなる。少年の精神的動揺も尋常ではない。そのため被害者等による傍聴は、少年に多大な緊張や過度の心理的圧迫をもたらし少年を精神的に萎縮させてしまうおそれが大きい。これにより、少年の弁解が封じ込められ、誤った事実認定のおそれすら生じてしまう。
また、被害者等が傍聴している状況においては、少年や保護者、あるいは審判官や家庭裁判所調査官が少年の生育歴や家族関係の問題など、プライバシーに深く関わる事項について、率直に陳述し、これを取り上げることがはばかられることになりかねない。
重大事件であるほど、少年の生育歴や家族関係の問題性は根深いのが通常である。ところが、少年審判でのやりとりが、表面的に現れた事情だけに基づく形式的なものに流れてしまうと、少年の再非行を防止し成長の支援をはかるために必要な問題を十分に取り上げることができなくなるおそれがある。
さらに、被害者等が少年審判を傍聴すれば、家庭裁判所としては被害者等の存在を意識し、少年への責任追及に重きを置かざるを得なくなる。現在のように、家庭裁判所が、少年の言い分にも耳を傾けながら、その内面に働きかけていき、その上で、厳しく少年の問題性を指摘し、事件への反省を深めさせ、更生への意欲 を固めさせていくといった審判の営みは極めて困難となる。他方、少年の側からしても、被害者等が傍聴する審判では、心情の安定が保たれず、家庭裁判所からの教育的働きかけもその内面に届かないということになりかねない。これでは、少年審判のケースワーク機能が、著しく減退することになる。
犯罪被害者の知る権利は、尊重されるべきである。しかし、少年審判を直接傍聴させることは弊害があまりにも大きい。今なすべきことは、関係機関が、記録の 閲覧・謄写等すでにある規定を被害者等が活用する支援体制を整備し、あわせて、犯罪被害者に対する経済的、精神的支援制度を早期に充実させることにあると考える。
2008年2月27日
山梨県弁護士会会長 小澤 義彦

理想と現実(会長挨拶に代えて)
私たちは、多かれ少なかれ、あるべき理想あるいは望ましい理想と現実のはざまの中で生きていかざるをえない。
少年時代、そして青年に達する頃までは、理想を追い求めて生きてきたが、世の中の現実をだんだん知るにしたがって、理想はあとずさりを余儀なくされ、理想は少しずつ失われていく。それはいわば大人になることを意味する。
日本国憲法9条の歩んだ道も私たちの人生に似ているように思う。
9条は、第2次世界大戦で、国民とアジアの多くの人々の命が失われたことへの反省の中で、おそらくは世界の理想の憲法として誕生した。内容はまさに 青年の理想そのものである。憲法前文は日本の安全について「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して我らの安全と平和を維持する」とし、さらに9条で 「陸海空軍、その他一切の戦力はこれを保持しない」と宣言した。
2つ合わせて読めば、日本は、軍隊を持たないことを公約し、自国の安全につき、「世界の人々の心」という、不確かで、常に揺れ動き、安定のない、もっとも頼りにできないかもしれない存在に自分の身を託し、丸裸での平和宣言したとも言える。
それから60年、人生がそうであるように、9条もあるいはそこに内包された理想は、世界の現実の中で変化することを余儀なくされてきた。
日本は、9条成立時、まったく、戦力を持たないことを宣言したはずだが、それからわずか4年の後、朝鮮半島で起きた軍事的衝突を契機に、警察予備 隊、保安隊、自衛隊と名前を変えながら、今は世界でも有数の戦力を持つに至っている。名前をどう変えようが、今の自衛隊が戦争遂行能力を持った、つまり軍 事力を持った部隊、軍隊であることは疑いのないところだと考える。私たちはこのことをどう考えれば良いのか。私が、学生時代憲法を学んだ30年前は、ほとんどの憲法学者が自衛隊は憲法に違反する、と述べていた。それならば自衛隊は廃止すべきなのか。しかし、現在の世界情勢の中で、諸国民の公正と信義だけに頼って自国の安全を確保するのは少し危うい気がする。国際社会の現実の前では、憲法前文は空想的すぎると批判されるのも理解できる。
では、自衛隊を正面から認め、さらに世界各地で平和のために自衛隊による武力行使も認める方向での憲法改正をすべきなのか。自衛隊の存在だけを認めるなら現行憲法の解釈でも可能であるからあえて改正の必要はない。したがって、現在の改正論議は、自衛隊の存在を認めることにとどまらず、海外での武力行 使さえ容認できる方向での論議と考えて良いと思われる。これは、日本の海外での戦争への荷担を認めかねない方向での論議である。
このことがたくさんの命を犠牲にして成り立った憲法の精神に合致するのか。
戦争は平和の最大の敵であり、人権にとって最強の敵である。戦争のあるところに平和も人権もない。
憲法改正という道がどこにつながっていくのか。
私は、最初に理想と現実ということを述べたが、人生とは違い、憲法は理想を追い求め続けてもいいのではないかとも思う。誰かが理想を追わなければ、いつまでたっても世界が平和にならないような気がする。
武力による平和の確保という道は、イラクの現実を見ても成功しないものではないのか。復讐の連鎖だけが残される。
理想は現実の前に時に後退を余儀なくされるが、世界の平和については理想を追い続けてもいいのではないか。
今、それができるのは日本しかない。60年追い求めてきた日本の平和への道。人生なら大人になった年月が過ぎたが、平和への長い長い道を考えれば、まだ憲法は青年期にあると呼んでよいと考える。
理想を失うにはまだ少し早すぎる。
理想を失うとき、人は老い、理想を失った国家は衰退する。
憲法は改正せずに、武力によらない紛争解決への道、平和への道を達成するという理想を、もう少し追い求め続けることが、多くの犠牲者を出し、世界で唯一の原爆の被害者を出した日本だからできる、日本の責任だと思うがどうだろうか。
いずれにしても難しい問題である。いろいろな観点からさらにこの問題を考え続けたいと思う。
(注:この談話は、2007年11月10日のシンポの挨拶文と同じです)
2007年11月10日
山梨県弁護士会会長 小澤 義彦

会務は他人(ひと)の為成らず
1 山梨県弁護士会の歴史と役割
山梨県弁護士会は、明治26年にその前身である甲府地方裁判所所属弁護士会として発足し、昭和30年に山梨県弁護士会と名称を改め、その歴史は本年で114年目、山梨県弁護士会となって52年目を迎えます。
この間、弁護士会と私たちの先輩弁護士が常に目指したことは、人権の擁護と社会正義の実現でした。時に、在野の一角として権力と対峙し、また、社会的弱者の救済に助力してきたのも私たちの先輩弁護士が行ってきたことであり、今も連綿として続いていることです。
正しい者が正しく扱われる社会こそ、私たちが目指す社会だと考えます。正しい者が、弱いが故に、あるいは少数者であるために不当に扱われたり、不平等に扱われ、あるいは虐げられてはならない、これが正義であり、人権擁護であると私は考えます。
弁護士の活動は、時に極悪人の弁護であったり、少数者の擁護であるため、なぜあんな悪い奴を擁護するんだ、とか、世間知らずであるとか、常識を知らない、な どと非難されることもままあります。しかし、これらの者を擁護し、代わりに発言できる者は、弁護士であり、弁護士こそがなすべきことと考えております。弁 護士がこのようなことに発言しなくなったら、社会は暗黒の世界に入っていくと思います。暴力や力の強い者が幅をきかせる社会だけにはしてはならないと考え ます。また、多数意見が常に正しいとも限りません。多数意見が感情に流されて誤った行動をしようとするとき、これを止めるのも弁護士の役割と考えます。
弁護士は、明日の楽しい旅行を皆が考えているときに、事故が起きたらどうしようとか、迷子が出たらどうしようとか、お金が不足したらどうするんだ、と か、暗いこと、悪い事態、問題点ばかり考えているところがあります。しかし、このような人が存在するからこそ、いざと言うときに皆がパニックにならなくて すむし、緊急の事態にも冷静に対応できることになります。弁護士のとかく暗くなりがちな発言は、明るい世の中を作るために必要不可欠と理解していただけれ ば幸いです。
弁護士の仕事は何かを生産することはありませんが、社会が安心して円滑に活動していくために不可欠な仕事です。この弁護士の活動を支えていくのが弁護士会の活動でもあります。
2 無償の会務活動こそが個々の弁護士活動の源泉となる
弁護士会では、1年間に延べ250回前後の委員会が開催されています。ほとんど毎日昼食時間あるいは夕方の時間帯に委員会が開かれ、会員である 弁護士は、複数の委員会の委員を掛け持ち、委員会で決定された個々の会の活動(会務と言います)を行います。人権救済の申立があれば現地の確認や申立人の 面会に行きます。法教育委員会では、未来を担う子供達のために県内の小学校・中学校・高校に出かけて出前授業を行っています。刑事弁護センターは、日々あ るべき刑事事件の弁護活動を研究し、子供の権利委員会は、未成年者の処遇をめぐる問題を取り扱い、民事暴力被害者救済センターは、暴力団に悩まされる人々 の救済活動を行うなど、多くの場面で弁護士が活動しています。私は、いろいろな団体に所属してきましたが、こんなにまじめに議論し行動する団体を他に知り ません。
この活動を私たち弁護士会は、誰の援助も受けず行っています。活動の資金は私たち会員が会費を払って維持しています。
この無償の行動に支えられた会の活動こそが弁護士が社会の信頼を得ている根源の一つだと考えます。弁護士会と弁護士に寄せられた信頼の上に私たちの個々 の弁護士活動も成り立っております。「弁護士さんの言うことだったら聞こうじゃないか」、この言葉を社会から言ってもらうことこそが私たちが守らなければ ならない事柄です。弁護士会はこの社会からの信頼を今後も得ていかなければなりません。個々の会員の皆様は、会務をこなすことは大変でしょうが、どうかそ れは、市民のためになると同時に私たち自身のためになると信じてがんばっていただきたいと思います。
3 司法への信頼を得なければ私たちの発展もない
近年の司法の世界は大改革が行われています。昨年業務を開始した日本司法支援センターへの協力、2009年に開始される裁判員制度の円滑な実 現に向けての活動、国費による被疑者弁護の拡大、法科大学院の設置と大幅な法曹人口の拡大など、弁護士会を取り巻く状況はめまぐるしいものがあり、その対 応に追われていることも事実です。これも弁護士会をあげて取り組んでいかなければならないことです。ことに裁判員制度は、司法に一般の方々が本格的に参加 する初めての制度と言ってもよく、国民主権、司法への国民参加の実現のためにも、法曹界をあげて成功させなければならない制度と考えます。個々の事件で は、時に検察官と戦うことは当然です。それは真実発見のためにどうしても必要なことだからです。しかし、制度としての裁判員裁判は法曹三者が協力して成功 させなければなりません。アメリカの陪審制度も参加したほとんどの人が「参加して良かった」との感想を持っていると聞いております。日本でもきっと参加した人は参加して良かったと述べると思いますし、また、そのような制度に育てなければなりません。これは裁判所・検察庁・弁護士会だけでなく、司法に関わる すべての人に課せられた大きな責任だと考えます。国民の司法への信頼を失ってしまっては、法治国家は成り立ちません。
これから、この1年山梨県弁護士会の歴史に恥じないよう努力する所存です。是非皆様のお力添えをお願い申し上げます。
2007年6月5日
山梨県弁護士会会長 小澤 義彦

「ゲートキーパー立法」に反対する会長声明
山梨県弁護士会は、不動産の売買等一定の取引に関し「疑わしい取引」を警察庁に報告する義務を弁護士に課するゲートキーパー立法に反対する。
1.弁護士に対するゲートキーパー制度は、犯罪収益やテロ資金の移動に利用されうる金融取引に関し、代理人や助言者としてその執行に関与する弁護士を取引の門番(gatekeeper)と位置づけ、犯罪収益の洗浄(マネー・ロンダリング)やテロ資金の移動を見張らせ、そのような疑いのある取引の報告をさせる等の規制をすることにより、これらの犯罪行為を抑制しようとする制度である。
2.2003年6月、FATF(国際的なテロ資金対策に係る取組みである「金融活動作業部会」の略称)は、マネー・ロンダリング及びテロ資金対策を目的として、従前から規制の対象としていた金融機関に加え、弁護士等に対しても不動産の売買等一定の取引に関し「疑わしい取引」を金融情報機関(FIU)に報告する義務を課すことを勧告した。
これを受けて、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は、2004年12月、「テロの未然防止に関する行動計画」を策定し、その中でFATF勧告の完全実施を決定した。
そして、2005年11月17日、政府は、FATF勧告実施のための法律整備の一環として、金融情報機関(FIU)を金融庁から警察庁に移管することを決定した。
3.しかし、弁護士に対するゲートキーパー制度は、市民の弁護士に対する信頼や弁護士自治を侵害するものであり到底容認できない。
弁護士は、国家権力との対抗の中で市民の人権を擁護することを職責としており、職業的秘密の原則は、このような職業の本質に根ざすものである。政府又は政治権力から独立していること (弁護士自治)は、弁護士が人権を擁護し、社会正義を実現するための基盤なのである。守秘義務は、この基盤を支える義務であり、国民の弁護士制度・司法制度への信頼の基礎となっている。このことから、弁護士は、職務上知りえた秘密を保持する権利を有し、依頼者に対しては高度な守秘義務を負っている。これは、市民の側からすると、秘密のうちに弁護士と相談することができる権利を保障されているということにほかならない。しかし、「疑い」だけで弁護士が依頼者の秘密を「密告」しなければならないとしたら、依頼者は安心してすべての事実を弁護士に告げることはできないし、弁護士が依頼者に対して法律を遵守するための適切な助言をすることもできない。ゲートキーパー制度は、国民の弁護士制度・司法制度への信頼の基礎を崩壊させてしまう危険性がある。
4.特に、金融情報機関(FIU)が金融庁から警察庁へ移管され、警察庁に対し報告を義務づける制度は、弁護士・弁護士会の存立基盤である国家権力からの独立性を危うくし、弁護士・弁護士会に対する国民の信頼を損ねるものであり、弁護士制度の根幹をゆるがすものである。
5.ゲートキーパー立法は、弁護士制度ひいては司法制度そのものに対する国民の信頼を根底から覆すものであり、国民にとって余りにも失われるものが大きいと言わざるを得ず、到底容認できない。
ここに、当会は、国民の理解を得ながら、日弁連とともに反対運動を展開して行くことを決意する。
2006年2月24日
山梨県弁護士会会長 田中 正志

代用監獄の廃止を求める決議
1.警察署内に設置されている留置場は、本来被疑者を司法当局に引致するまでの間一時的に留め置く場所であり、被疑者を勾留すべき施設ではない。
被疑者を勾留すべき施設は捜査当局から独立した施設でなければならず、被疑者の勾留を捜査に利用することがあってはならないことは、国際人権規約委員会などの国際機関によっても確認され、かつ国際人権規約にも明記されているとおり、近代刑事司法の大原則である。
2.そうした大原則に逆行し、代用監獄を恒久化させる内容の「拘禁二法」案が1982(昭和57)年4月、国会に提出された。
日弁連は全力でこの法案を廃案とするための運動に取り組み、当会においても他会に先駆けて臨時総会を開催したうえで廃案にするための総会決議を採択し、市民集会を開催し、駅頭宣伝活動、弁護士デモ等の反対運動を続けてきた。こうした国民運動の力によって同法案は1983(昭和58)年11月に廃案となった。
その後も1987(昭和62)年4月、1991(平成3)年4月に提出された第2次、第3次拘禁二法案も同様に廃案とされた。
警察庁、法務省は三度廃案とされた事実を重く受け止め、虚偽自白の温床となってきた代用監獄の存続を断念し、被疑者の勾留場所を拘置所とするための施策を考えるべきであった。
3.しかるに、今般、代用監獄を恒久化するための法案が通常国会に提出されようとしている。しかも今回の法案には代用監獄の存続を是とする有識者会議の意見が付されている。情勢は極めて緊迫していると言わざるを得ないものである。
警察庁舎の建て替え等によって留置場の内容が近代化されたとしても、捜査側の手元に身柄を留めるという代用監獄の本質にはいささかの変化もないのである。
昨年9月に再審開始が決定された布川事件(1967年8月に発生した強盗殺人事件、自白のみを唯一の直接証拠として二名の被告人に無期懲役が言い渡されていた事件)、真犯人が見つかって窃盗罪等が無罪となった宇和島誤認逮捕事件など代用監獄が虚偽自白の温床となり、えん罪を生んでいる例は現在においても枚挙にいとまがないのである。
当会は、代用監獄の存続を是とするあらゆる立法に反対し、代用監獄の廃止を強く求めるものである。
2006年2月24日

共謀罪の新設に反対する会長声明
衆議院解散により一旦廃案となっていた「犯罪の国際化並びに情報処理の高度化に対処するための 刑法等の一部を改正する法律案」は、昨年10月4日付けで第163回国会(特別会)に再度上程された後、 継続審議となっていたので、本日、第164回国会(常会)が召集されたことにより、この国会で審議されることとなった。
この法案の中には「共謀罪」の新設が規定されている。
「共謀罪」は、団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、 5年以下の懲役または禁固もしくは、2年以下の懲役または禁固に処するというものである 。
共謀罪は、「国際的な犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下「条約」という。)の批准のための国内法を整備するために上程されたものであるが、条約は、国際的テロ行為を防止することを目的としたものであり、第3条において「性質上越境的なもの」との限定が加えられているのに対し、国会で審議される共謀罪については、かかる要件が欠けているため、他の600以上の国内犯罪にも適用される虞がある。
また、「犯罪の共謀を行った者の一部が実行に着手した場合にのみ、他の共謀者にも犯罪が成立する。」という共謀共同正犯理論が我が国の確立した判例理論である。
しかし、共謀罪は、実行の着手、予備行為さえも不要とし、犯罪実行の意思の合致のみで処罰が可能となり、共謀共同正犯理論に反するだけでなく、株式会社、NPO、宗教法人等あらゆる団体の活動が処罰対象となり、刑法の自由保障機能を形骸化させ、思想・良心の自由、表現の自由、結社の自由といった基本的人権が侵害される虞もある。
条約第5条第1項には、「国内法上求められるときは、その合意の参加者一人による当該行為の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの」と規定されているが、共謀罪においては、まったくこの点が欠落しており、条約批准に便乗して国家による個人のプライバシーへの干渉を強化しようとするものである。
以上のように、共謀罪は、明確性の原則、自由保障機能といった刑法の大原則に反し、その適用範囲、処罰対象が必要以上に拡大された結果、国民の基本的人権に対して重大な影響を与えるものであって、当会としては、これに断固反対の意思を表明するものである。
2006年1月20日
山梨県弁護士会会長 田中 正志

5月度会長談話
会長に就任して1ヶ月が経過しました。今回は会長の1ヶ月をご紹介します。
各会の会長は、日本弁護士連合会(通称:日弁連といいます)の理事に選任されます。
また、山梨県弁護士会の会長は、関東弁護士会連合会(通称:関弁連といいます)の理事にも選任されます。
従いまして、山梨県弁護士会の会長は、山梨県弁護士会の会務を担当するとともに、関弁連の理事会と日弁連の理事会に出席し、その運営方針等を決定します。
4月は、新執行部が就任したばかりですので、行事が盛りだくさんです。
4月4日
会長・副会長が就任のあいさつ回り
裁判所、検察庁、県、甲府市など関連各団体を回りました。
5日
関弁連理事会
理事長ほか、就任のあいさつ回り
最高裁、東京高裁、東京地裁、最高検、東京高検、東京地検などの関連団体を回りました。
6日
委員会(司法改革センター)
7日
弁護士会への受け入れ文書の確認・検討
委員会(消費者委員会、日本司法支援センター委員会)
9日
常議員会 *弁護士会の運営等の審議・決定機関です。
市民講座・無料法律相談会
12日
委員会(法律扶助運営委員会)
13日
弁護士会への受け入れ文書の確認・検討
弁護士会全員昼食会(会務報告)
14日
委員会(法律相談委員会、総務委員会)
15日
日弁連理事会
16日
日弁連理事会
19日
弁護士会への受け入れ文書の確認・検討
委員会(法教育委員会)
21日
委員会(日本司法支援センター委員会、広報委員会)
25日
委員会(修習委員会)
26日
関弁連理事会
関弁連役員披露宴
27日
弁護士会への受け入れ文書の確認・検討
委員会(子どもの権利委員会)
山梨県弁護士会役員披露宴
28日
委員会(図書コンピューター委員会、刑事弁護センター)
会長談話発表
これらの行事をこなすほか、5月の行事の計画・準備、活動方針に基づいた会務の計画・実行などを日々行っています。
4月5日に関弁連理事として就任のあいさつ回りをしたときは、最高裁長官、最高検検事総長など各団体の長に対応していただき、感激すると同時に自らの立場の重さを実感しました。
4月9日の市民法律講座・無料法律相談会は、本年度第1回目です。
遺言の日(4月15日)を記念して、また、高齢者・障害者支援センターを平成17年3月に設立したことを記念して、遺言、相続に関連した市民法律講座と無料法律相談会を開催しました。
市民法律講座の講師は、花輪仁志弁護士が担当しました。相続、遺言、遺留分などを具体的な事例を交えて説明がなされました。
やさしく、穏やかな語り口調で、参加者からは分かりやすく、勉強になったとの感想が聞かれました。
また、多くの質問がなされ、講師と参加者、参加者間においても一体感があった講座でした。
市民法律講座と無料法律相談を同日に連続して開催するという初の試みで、両方とも参加した方も多く、法律知識が得られ、また具体的な問題の解決もはかれたと好評でした。
当日は晴天で、春爛漫、桜も満開で、信玄公祭りが行われるところであり、絶好の行楽日和であったにもかかわらず、市民法律講座に26名、法律相談会に17件の参加がありました。
4月27日の山梨県弁護士会役員披露宴は、甲府地方裁判所所長、甲府地方検察庁検事正ほか県内の関連各団体の代表や関係者をご招待し、山梨県弁護士会の会長・副会長・監事の役員を披露するものです。ここでは会長が本年度の活動方針などをあいさつをします。弁護士会の活動を理解していただく大切な機会と言えます。毎日、会務に追われ、過ぎてみればアッという間の1ヶ月でした。毎日が分刻みのスケジュールで、睡眠時間を削ってなんとかこなしているという感じです。5月の山梨県弁護士会の市民向け予定5月14日に第2回市民法律講座・無料法律相談会を弁護士会館において開催します。 午後1時30分から永嶋実弁護士による「少年犯罪の現状と少年法」の講座があります。 午後3時からは弁護士10名による無料法律相談を実施します。ぜひ、ご参加ください。
2005年5月13日
山梨県弁護士会会長 田中 正志

除名処分についての会長声明
当会は、会員関一に対し除名を命ずる旨の平成17年1月24日付当会懲戒委員会議決を受け、同年2月10日その旨処分を決定し、同月17日同会員に対して書面をもって告知しました。
当会の規程によりますと、懲戒処分は告知の書面(懲戒書)の到達をもって効力を発しますので、平成17年2月17日をもって同会員は弁護士資格を喪失しました。
同会員の行為は、弁護士法第1条第2項に定める職務に関する誠実義務に違背することはもちろん、何よりも破産管財人の社会的信頼を損ない、かつ同会員が当会会長を務めた者であることから当会はもとより弁護士全体の信用を大きく失墜させたものであって、同会員の責任は極めて重大であると判断し、懲戒処分中最も重い除名を選択したものであります。
今後は、明後日甲府地方裁判所において第1回が開かれます同会員の公判を見守りながら、その動機、具体的な行為、態様等公判で明らかにされる事実を見極め、二度と再びこのようなことが起こらないよう会を挙げて検討してまいる所存です。
2005年2月21日
山梨県弁護士会会長 水上 浩一

司法修習生の給費制堅持を求める声明
当会は、2003年(平成15年)10月4日、「司法修習生の給費制維持を求める会長声明」を発した。
しかるに、司法制度改革推進本部法曹養成検討会は、本年6月15日、給費制に代えて平成18年度から貸与制を導入するとの取りまとめを行った。極めて遺憾なものと言わざるを得ない。
戦後、国民主権の下、新しく発足した司法制度の中で、司法修習制度は、法曹養成の一元化を実現するとともに、給費制を採用し、単なる職業人ではなく、国民の権利擁護、法の支配の実現を実践するプロフェッションたる法曹を養成してきた。司法修習を終えた弁護士は、裁判官や検察官と同様、基本的人権の擁護と社会正義の実現の担い手として高い公共性と公益性を国民から期待され、この期待に応えるべく、職務上のみならず公益活動など多くの分野で絶え間ない努力を重ねている。
給費制を廃止することは、国民に最も身近な法曹である弁護士に対する公共性と公益性の期待を放棄することになりかねない。この点は貸与制によって代替することができないものであり、これによって生じる国家的、社会的損失は極めて大きいものがある。
また、貸与制によって司法修習生の修習専念義務が確保できるかも問題である。貸与金は基本的には返還しなければならないから、司法修習生が将来の返還債務の履行を考えたとき、果たして修習期間中安んじて修習に専念できるか疑問だからである。
法曹養成制度が変わり、法科大学院での修学に多大な経済的負担を要するようになった。これに加えて司法修習中の貸与金を返還しなければならないとすれば、経済的な弱者は法曹への道を閉ざされることにもなりかねない。少なくとも、法曹としての出発が多額の債務を負担してのものとなる場合が多くなると考えられ、修習生がその軽減のために弁護士に課せられた社会的公共的使命よりも、より待遇の良い法律事務所を事務所選択の基準としていくことも予想される。そのような事態は司法の利用者たる市民・国民にとって決して歓迎すべきものではない。さりとて、その対策として一定の範囲で貸与金の返還免除措置を導入することは、導入の条件・方法如何では任官者に対する返還免除に繋がり、法曹における官と民の二分化を招来するものであって到底認めることはできない。
国には司法制度改革を実現するために必要な財政上の措置を講じることが義務づけられているのであって、財政的事情から司法修習生の給費制を廃止することは本末転倒である。
よって、山梨県弁護士会は、あらためて給費制の廃止に強く反対するものである。
2004年8月10日
山梨県弁護士会会長 水上 浩一

自衛隊のイラク派遣の中止を求める会長声明
当会は、自衛隊のイラク派遣に強く反対し、政府に対し、既に派遣された自衛隊の即時撤退と今後の派遣中止を求める。
確かに、イラクの現状を見ると、国際的復興・人道支援が必要とされ、求められていることは十分理解しうるものであるが、同支援は国連を中心とした枠組みのもとで、非軍事的な分野・手段で行われるべきであり、かつ、イラク国民が真に期待し要望するものでなければならない。
今回の自衛隊のイラク派遣は、国連のPKO活動に対する協力としてなされるものではなく、国連の要請もイラクの同意も存しない。イラクでの自衛隊の活動は、米英による侵攻の戦後処理としての占領行政に対する協力にほかならない。しかも、この米英によるイラク侵攻は、国連憲章に反するとの指摘の中で、イラクの保有する大量破壊兵器等の危険性排除を理由として開始されたものであるにもかかわらず、大量破壊兵器等は発見されておらず、米英の主張した正当性も失われ、その国際法上の違法性が明らかになりつつある。
今回の自衛隊イラク派遣の根拠であるイラク特措法の基本原則は、「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇または武力行使にあたるものであってはならない」というものである。しかし、現在イラクでは、全土で連日のように、米兵等の軍事関係者のみならず国際機関職員や外交官さらには一般市民にまで攻撃が加えられ、多数の死傷者が出ている。米軍も認めるとおり、「イラクは戦争状態にあり、その全土が戦闘地域」であり、安全な「非戦闘地域」などが存在しないことは明らかであって、今回の自衛隊のイラク派遣は、イラク特措法にも違反するものである。また、そもそもこのイラク特措法は、イラクにおける自衛隊の武力行使を容認することにつながるものであり、国際紛争を解決するための武力行使および他国領土における武力行使を禁じた憲法に違反するおそれが極めて大きい。
自衛隊のイラク派遣は、上記のとおり米英の占領行政に対する協力としての性格をも担うものといえ、そのため、派遣された自衛隊が、米英軍の協力者として攻撃目標となり、戦闘に巻き込まれて武器を使用する事態が起きることは回避できない状況にある。これは、自衛隊員に死傷者が出るだけでなく場合によってはイラク国民にまで危害を及ぼす事態となることを重く受け止めるべきである。「テロに屈してはならない」「汗を流す必要がある」との掛け声のもとに、若い自衛隊員の尊い生命が犠牲とされること、また自衛隊の武力行使によりイラク国民に犠牲者を出すことは、決して容認できない。今回の自衛隊派遣は、イラク特措法が懸念した事態を引き起こし、憲法が禁止している自衛隊による武力行使という事態を招く危険性を強く有するものである。
よって、当会は、自衛隊のイラク派遣に強く反対し、政府に対し、既に派遣された自衛隊の即時撤退と今後の派遣中止を求めるものである。
2004年2月27日
山梨県弁護士会会長 深澤 一郎

【転載】余命3年時事日記 2338 ら特集山梨弁護士会③

2018年02月01日 | 在日韓国・朝鮮人
山梨県弁護士会
ttp://www.yama-ben.jp/

憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認と国家安全保障基本法案の国会提出に反対する会長声明
1. 2012年12月の衆院選で、自由民主党(以下、「自民党」という。)が大勝し、政権与党となって以来、集団的自衛権の行使を容認する動きが加速している。安倍首相は、2013年1月13日に放送されたテレビ番組で、「集団的自衛権行使の見直しは安倍政権の大きな方針の一つ」と述べた。
また、同年2月8日、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下、「安保法制懇」という。)が、約5年ぶりに再開された。首相官邸のHPによれば、安保法制懇の開催趣旨として、「我が国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増す中、それにふさわしい対応を可能とするよう安全保障の法的基盤を再構築する必要があるとの問題意識の下、集団的自衛権の問題を含めた、憲法との関係の整理につき研究を行うため、内閣総理大臣の下に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を開催するものです。」とある。
安保法制懇は、平成20年6月4日報告書により、政府に対し、「憲法9条は、個別的自衛権はもとより、集団的自衛権の行使や国連の集団安全保障への参加を禁ずるものではないと解釈すべきものと考えられる。」と提言した。今回は安倍首相が前回の検討事項に加え、自民党が衆院選の公約に掲げた国家安全保障基本法(2012年7月6日に自民党総務会でその概要が決定)の制定など、新たな課題についても検討するよう諮問した。今回の安保法制懇では、年内に首相への報告書をまとめる方針とされている。
2. 集団的自衛権とは、政府解釈によれば、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」(1981年5月29日政府答弁書)とされる。
これまで、政府は、個別的自衛権については、自国に対して武力攻撃が加えられた場合に、これを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使することは憲法に違反しないと説明してきたが、集団的自衛権については、その行使は憲法上許されないとの立場を長らく堅持してきた。
日本国憲法が、憲法前文で平和的生存権を確認し、第9条で戦争放棄、戦力不保持及び交戦権否認を定めるなど、徹底した恒久平和主義を採用したことから、当会は、集団的自衛権の行使は憲法違反であると解するが、政府が、安保法制懇の報告書をもとに、集団的自衛権の行使を容認すべく政府見解を変更しようとすることは、さらに憲法尊重擁護義務(憲法第99条)が国務大臣や国会議員に定められていることからも、許されないと解する。
3. また、国家安全保障基本法案(概要)は、集団的自衛権の行使を、憲法改正の手続を経ることなく、法律により容認しようというものであるが、下位にある法律によって憲法の解釈を変更することは、憲法に違反する法律や政府の行為を無効とし(憲法第98条)、政府や国会が憲法に制約されるという立憲主義に反するものであって、到底許されないと解する。
4. 当会は、日本国憲法によって否定されている集団的自衛権の行使を、政府による憲法解釈の変更によって容認すること、及び集団的自衛権の行使を明記した国家安全保障基本法を成立させようとすることに対し、強く反対する。
2013年11月9日
山梨県弁護士会会長 東條 正人

特定秘密保護法案に反対する会長声明
1. はじめに
2013年10月25日、政府は、特定秘密保護法案(以下、法案という)を閣議決定し、国会に提出した。
これまで、当会は、2012年5月22日秘密保全法制に反対する総会決議、2013年9月9日特定秘密の保護に関する法律案に反対する意見書をそれぞれ発出してきた。秘密保全法制や法案に反対する意見書は日弁連や各地の弁護士会からも同様に発出され、マスコミも法案の問題点について連日報道をしている。
また、政府が法案の提出に先立って実施したパブリックコメントにおいては、わずか2週間の間に9万件を超える意見が寄せられ、そのうちの実に4分の3以上となる約77%が法案に反対している結果となった。さらに共同通信社が閣議決定後の2013年10月26、27両日に実施した全国電話世論調査によると法案には過半数が反対し、法案の慎重な審議を求めている意見が8割を超えたとの報道がなされた。このように全国的に法案の成立を危惧する意見が続出する中でなされた法案の閣議決定及び国会提出は、国民的議論がほぼなされない中での拙速の極みであり、暴挙と言わざるを得ない。
2. 法案の問題点
これまで当会が発出した意見書で述べた問題点に加え、このたび閣議決定された法案に対して、いくつかの問題点を指摘する。
(1) 第1に、秘密指定に関して、「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定めるものと」し(18条1項)その「基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、(中略)優れた識見を有する者の意見を聴かなければならない。」(同条2項)とされた。
この点、「優れた識見を有する者」の意見を聴くとされるが、有識者が関与するのは運用基準の策定に限定され、秘密指定には関与できない。さらに、基準の策定についてさえも有識者の意見に拘束されるわけではない。秘密指定に客観的な第三者のチェックは行わせず、さらに指定の運用基準は公開しないという前提であれば、基準の客観性を担保できない。
内閣官房内での実施状況のチェックがなされるとしても、身内をかばうことの危険を否定できず、時の政府による恣意的な秘密指定がなされうることに変わりはない。(2) 第2に、秘密指定の有効期間の延長に関して、「指定の有効期間が通じて30年を超えることとなるときは、(中略)内閣の承認を得なければならない。」(4条3項)とされた。
しかし、指定期間が30年を超える場合には内閣の承認を必要とするとしても、指定権者である行政機関の長の判断を追認する形で内閣の承認がなされることが予想され、指定が恒久化してしまう危険性が高い。指定が恒久化した場合、それが真に秘密に値するものであったのか、単に政府の都合による恣意的な指定であったのかを国民は知りえないことになる。なお、秘密が残されていれば後日の検証が可能となるが、秘密が恣意的に廃棄された場合には、検証の機会がない点でも問題が残る。(3) 第3に、知る権利等に関して、「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。」(21条1項)とされ、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。」(21条2項)こととされた。
しかし、21条1項の報道又は取材の自由に十分配慮するとの規定も、抽象的な訓示規定に過ぎず、これにより報道又は取材の自由が担保される保障は何もない。「専ら公益を図る目的」「著しく不当な方法」という要件の有無は、まず捜査側が判断することであり、起訴され、結果的に裁判所で無罪になったとしても、それ以前の取調べや捜索の対象となりうることだけでも、取材に対する萎縮効果は計り知れない。さらに、「出版又は報道の業務に従事」しない者である一般市民や市民運動家等には適用されず、不合理な差別となっている。さらに、正当業務とされるのは取材のみであり、報道は対象とされていない。取材行為が処罰されなくても報道が処罰対象となれば、報道に十分に配慮するというのが抽象的訓示規定にすぎないこともあわせ、報道の自由に対する萎縮効果が生ずる。(4) 第4に、法案では、国会議員への特定秘密の提供について、行政機関の長は、憲法に規定する秘密会、国会法に規定する両院の委員会秘密会、参議院の調査会秘密会であっても、直ちに特定秘密の提供に応じないとして4つの条件を付けている。すなわち、①当該特定秘密を利用し、又は知る者の範囲を制限すること、②当該業務以外に当該特定秘密が利用されないようにすること、③その他当該特定秘密を知る者がこれを保護するために必要なものとして政令で定める措置を講じ、かつ、④我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めた場合に限り、特定秘密を提供することができるとしている(10条1項1号)。国会議員への秘密提供は、警察庁長官が都道府県警察に提供する場合(7条)や、行政が外国政府等に提供する場合(9条)よりも明らかに要件が厳しく、さらに行政機関の長の判断ひとつで当該特定秘密を国会に提供しないことがあるというもので、国会が行政をコントロールする議院内閣制の仕組みや国会の最高機関性(憲法第41条)が否定されることになりかねず、国会による行政の監督機能が骨抜きになることを意味する。また、違反には当然罰則が科されることになり、秘密の提供を受けた議員は、所属政党に持ち帰ってこれを検討したり、政策秘書や研究者にこれを知らせて相談することすらできなくなる。これも国会の役割の著しい軽視といえる。(5) 人的管理に特化する法案の問題点 法案の立法の動機は、「高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される」こととされているのであり(1条)、情報管理システムの適正化こそが法案の中心になるべきである。しかるに、法案では情報管理システムに関する基本構造や管理ルールなどの規定が全く存在せず、取り扱う者の監視や処罰の強化ばかりを強調する規定内容になっている。
これまでの漏えいの多くは、本来情報を持つ必要のない職員が情報を漏えいしたというものである(ボガチョンコフ事件、尖閣沖映像漏えい事件)。常日頃から、情報は必要な範囲の職員にだけ配布する、関係ない職員からはアクセスすることができないようにするなどの情報管理対策を徹底すれば情報漏えいのリスクを最小限とすることができる。このような適正な情報管理(物的管理)をすれば、現行法の規律の限りで足り、取扱者に対する深刻なプライバシー侵害を伴う適性評価制度や、漏えい等に対する広範かつ重い刑罰によって対処すべきではない。3. よって、当会は、特定秘密保護法が制定されることに強く反対する。
2013年11月9日
山梨県弁護士会会長 東條 正人

生活保護法改正法案の再提出および生活保護費の切り下げに反対する会長声明
第1 生活保護法改正法案の再提出について
1.はじめに
政府は、第183回国会(平成25年常会)において、「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下、「改正案」という。)の成立を目指した。改正案は、平成25年6月4日一部修正のうえ衆議院で可決されたが、最終的に同月26日に参議院で廃案となった。しかし、田村憲久厚生労働大臣は、今月開催の臨時国会に改正案を再提出する意向を示している。
2.改正案の問題点
当会は、すでに平成25年6月8日付けで、「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明を発した。同声明では、憲法25条による生存権保障の趣旨に鑑み、①申請書及び添付書類を要する改正、②扶養義務者への通知・調査に関する改正の2点に看過しがたい問題点があるとして、以下①②のとおり主張した。
①申請書及び添付書類を要する改正案についての問題点
現行生活保護法の生活保護申請に際し、添付書類等を要しないとする取扱いは、生存の危機時における保護が遅れることにより、国民の生命身体に対し取り返しのつかない結果を生じさせかねないという認識に基づく。現に貧困その他の事情により生存を脅かされている状況にある国民に対し、すみやかに最低限度の生活を保障して、生存の危機を回避させることは憲法25条による生存権保障の中核的要素の一つであり、生活保護申請にあたっては、申請の意思表示のみで足り、何らの添付書類も必要とされないという現行生活保護法の取扱いは、この憲法の精神を体現したものである。
ところが改正案では、申請書に必要事項の記載や書類の添付を要する旨が強調されており、記載事項や添付書類の不備に乗じた申請の不受理を招く懸念がある。また、貧困状態にある要保護者に、必要書類の取得や作成といった負担を課すことは、正当な申請を断念させてしまう事態を招きかねない。実際に、生活保護の窓口においては、今でさえ、生活保護申請を事実上受け付けない「水際作戦」と呼ばれる違法な扱いが散見されている。改正案は、かかる「水際作戦」を合法化しようとするものであって、憲法25条による生存権保障の趣旨に反していることは明らかである。
なお、改正案では、「特別の事情があるときは、この限りでない。」とされたが、必要書類の提出が原則であり、「特別な事情」の有無の判断は行政側が行う以上、申請書の不備を理由とした申請拒否の可能性は否定できず、これまで述べた批判が該当する。
②扶養義務者への通知・調査に関する改正案についての問題点
改正案による扶養義務者に対する通知・調査等の制度は、本来生活保護が必要な状況にある国民が、親族間に軋轢が生じることなどを気にして、保護申請を断念してしまうという弊害をもたらす危険性が高い。生活保護制度の受給要件を充たす者のうち、実際に生活保護を利用している者の割合(捕捉率)は、現在2割程度であると言われており、このような制度は、現状においても高いとは言えない捕捉率をさらに低下させる結果となり、一層生活保護の申請を委縮させる危険性がある。
3.生活保護制度の役割
生活保護制度は、生存権保障のための最後のセーフティーネットである。格差と貧困が深刻な社会問題となっているわが国において、餓死・孤立死・自死や貧困を背景とする犯罪や虐待などの悲劇を防ぐために、生活保護など社会保障制度が果たすべき役割はますます拡大している。
改正案は、経済的困窮者を、生活保護の利用からさらに遠ざけるものであり、憲法25条による生存権保障の観点から到底容認できない。
4.よって、当会は、次期国会に改正案を再提出することに対し、強く反対する。
第2 生活保護費の切り下げについて
1. 自民党が選挙公約に掲げた「生活保護給付水準の10%引き下げ」を受けて、厚生労働省は本年8月1日から生活保護費の支給額を切り下げた。今後、2015年4月にかけて3段階に分けて引き下げる予定とされている。その結果、生活に苦しむ全国の生活保護受給者の多くが、行政不服審査法に基づき自治体に審査請求をした。
2. 当会は、すでに平成24年11月9日生活保護の給付基準切り下げに反対する会長声明を発出した。そこでは生存権保障とそれに基づく生活保護の趣旨に基づき、生活保護が最低限の生活を保障するというセーフティーネットであること、わが国の生活保護捕捉率の低さ、それによる餓死者などの存在などから生活保護の切り下げに反対した。
ちなみに、山梨県の被保護世帯数は4079世帯、被保護人員5088人、人口に対する被保護実人員の割合は0.59%にすぎず、47都道府県中41位となっている(厚生労働省,福祉行政報告例(平成23年2月分概数))。
3.ところで、生活保護費の切り下げは、生活保護の問題だけではなく、多くの制度に連動する。「最低賃金」「住民税の非課税」「介護保険料」「公営住宅家賃の減免」「就学支援」などである。収入の少ない世帯は様々な場面で生活保護費切り下げに連動した経済的不利益を甘受せざるを得ない仕組みとなっている。政府は生活保護費切り下げの理由を「物価の下落」としているが、受給者が利用しない比較的高額な家電製品などの物価下落を含むなどの点、また、いわゆるアベノミクスによる輸入原材料の値上がりで、物価はむしろ上昇していると言われる実態と齟齬が生じている。
4.よって、当会は、改めて生活保護費の切り下げに反対するものである。
2013年10月12日
山梨県弁護士会会長 東條正人

憲法第96条の発議要件を緩和する改正に反対する会長声明
声明の趣旨
当会は、憲法第96条を改正して憲法改正手続における国会の発議要件を緩和することに強く反対する。
声明の理由
1.発議要件を緩和しようとする近時の動き
憲法改正の発議要件について、憲法第96条は、「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」によるものと定めている。近時、この条項を改正し、発議要件を「過半数の賛成」へと緩和する旨の提案が、自由民主党をはじめ、複数の政党などからなされている。
2.憲法第96条の意義
いうまでもなく、憲法は、国家権力が濫用される危険性を有するものであることに鑑み、国家権力の恣意的な行使から、個人尊重原理に基づく基本的人権を守るため、国家権力を制約する国の基本法である(立憲主義)。
このことは、憲法第11条や第97条が、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」と定めていること、第98条が、基本的人権を守るため、憲法を「国の最高法規」と位置付けていることからも明らかである。
第96条の憲法改正規定は、かかる憲法の最高法規性とあいまって、憲法保障の重要な役割を担うものであり、その時々の政権によって、十分な議論が尽くされないまま安易な改正が行われ、基本的人権の保障が形骸化することのないよう、法律制定よりも厳格な要件を課したものということができる(硬性憲法性)。
3.憲法改正の限界
このように、憲法の本質は、基本的人権の擁護と国家権力の制約という点にある。これを保障するために憲法を国の最高法規と定め、第96条を定めているのであるから、憲法の本質に関連する憲法改正規定自体を改正することは許されないというべきである(憲法学会上の多数説でもある)。
4.諸外国の憲法改正規定との比較
第96条の改正を主張する立場は、現行の発議要件が厳格に過ぎること、そのため、憲法施行後一度も改正が行われず、時代に合わないものとなっていることなどをその論拠としている。
しかしながら、諸外国においては、日本と同程度、あるいはそれ以上に厳格な改正要件を定めながら、数次にわたって改正を行っている国が数多く存在する。
例えば、議員の3分の2以上の議決と必要的国民投票を要求する韓国においては、日本とほぼ同時期である1948年に憲法が制定されて以降、9回の憲法改正が行われているし、国民投票こそないものの、連邦議会の両院の3分の2の賛成による修正の発議と全州の4分の3以上の州議会の賛成が必要とされるアメリカにおいても、1945年以降、6回の修正が行われている。
このように、日本国憲法における改正発議要件が、諸外国に比して厳格に過ぎるなどということはないし、そのために憲法改正が行い得なかった、という関係にもない。
これまでに日本国憲法が改正されなかったのは、多くの国民が改正の必要を認めなかったからと考えられる。仮に、改正が必要と考えるのであれば、国会において3分の2以上の多数意見を形成するための議論や努力をこそ尽くすべきであって、そのような努力もしないままに、発議要件を緩和しようなどというのは、本末転倒も甚だしい。
5.憲法改正手続法の問題点
ましてや、現行の憲法改正手続法によれば、国会による憲法改正発議後、国民投票までの期間は60日以降180日以内と規定されており、このような短期間では、十分な周知、検討、議論及び活動など期待できない。そうすると、慎重かつ充実した議論が尽くされないままに国民投票が行われるといった事態が、多分に予想される。
また、このほかにも、同法には、最低投票率が定められておらず、国民全体の意見が正確に反映されない結果が生じうること、政治活動や言論の自由に対する不当な制限があり、国民に必要な情報が与えられないままに国民投票が行われる危険があるなど、種々の問題点がある。
そのうえ、国会の発議要件まで緩和し、国会においても十分な議論がされないまま発議されることとなれば、極めて安易に憲法が改正され、基本的人権の保障が形骸化する危険はいっそう高まると言わざるを得ない。
過半数によって憲法改正の発議ができることとなれば、その時々の支配層の恣意により、安易に憲法改正がなされるおそれが強く、そのような事態は絶対に避けなければならない。
6.結論
以上のとおり、当会としては、憲法第96条を改正して憲法改正手続における国会の発議要件を緩和することに強く反対の意を表明するものである。
2013年6月8日
山梨県弁護士会会長 東條 正人

「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明
1. 「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下、「改正案」という。)が、6月4日一部修正のうえ衆議院で可決され、現在、参議院で審議中である。
この改正案には、憲法25条による生存権保障の趣旨に鑑み、次の2点において、特に看過しがたい問題がある。
(1) 保護開始申請にあたって、申請書及び指定の添付書類の提出が、義務付けられるようになったこと(改正案24条1項、2項)
(2) 保護実施機関に対し、あらかじめ扶養義務者への通知を義務付け、同機関が、扶養義務者等に報告を求めたり、銀行や雇用主等に対し、各種調査できる権限を付与し、また、官公署等に報告を義務付けていること(改正案24条8項、同28条2項、同29条1項、2項)
2. 申請書及び添付書類を要する改正案の問題点
現行生活保護法の生活保護申請に際し、添付書類等を要しないとする取扱いは、生存の危機時における保護が遅れることにより、国民の生命身体に対し取り返しのつかない結果を生じさせかねないという認識に基づく。現に貧困その他の事情により生存を脅かされている状況にある国民に対し、すみやかに最低限度の生活を保障して、生存の危機を回避させることは憲法25条による生存権保障の中核的要素の一つであり、生活保護申請にあたっては、申請の意思表示のみで足り、何らの添付書類も必要とされないという現行生活保護法の取扱いは、この憲法の精神を体現したものである。
ところが改正案では、申請書に必要事項の記載や書類の添付を要する旨が強調されており、記載事項や添付書類の不備に乗じた申請の不受理を招く懸念がある。また、貧困状態にある要保護者に、必要書類の取得や作成といった負担を課すことは、正当な申請を断念させてしまう事態を招きかねない。実際に、生活保護の窓口においては、今でさえ、生活保護申請を事実上受け付けない「水際作戦」と呼ばれる違法な扱いが散見されている。改正案は、かかる「水際作戦」を合法化しようとするものであって、憲法25条による生存権保障の趣旨に反していることは明らかである。
なお、このような批判を考慮してか、改正案24条1項、2項について、「特別の事情があるときは、この限りでない。」と一部修正されたうえ、参議院に送付されたが、修正後の文言によっても、やはり、必要書類の提出が原則である点で、これまで述べた批判が該当する。
3.扶養義務者への通知・調査に関する改正案の問題点
改正案による扶養義務者に対する通知・調査等の制度は、本来生活保護が必要な状況にある国民が、親族間に軋轢が生じることなどを気にして、保護申請を断念してしまうという弊害をもたらす危険性が高い。生活保護制度の受給要件を充たす者のうち、実際に生活保護を利用している者の割合(捕捉率)は、現在2割程度であると言われており、このような制度は、現状においても高いとは言えない捕捉率をさらに低下させる結果となり、一層生活保護の申請を委縮させる危険性がある。
4. 生活保護制度の役割
生活保護制度は、生存権保障のための最後のセーフティーネットである。格差と貧困が深刻な社会問題となっているわが国において、餓死・孤立死・自死や貧困を背景とする犯罪や虐待などの悲劇を防ぐために、生活保護など社会保障制度が果たすべき役割はますます拡大している。
改正案は、経済的困窮者を、生活保護の利用からさらに遠ざけるものであり、憲法25条による生存権保障の観点から到底容認できない。
5.よって、当会は、改正案について、即時の廃案を求める。
2013年6月8日
山梨県弁護士会会長 東條 正人

生活保護の給付基準切り下げに反対する会長声明
1. 国政などの各方面において、生活保護の給付基準を切り下げる動きが活発化している。平成24年8月10日、社会保障制度改革推進法が成立し、その附則の中で、生活保護の「給付水準の適正化」が明記され、同年8月17日に閣議決定された「平成25年度の概算要求組替え基準について」では、「生活保護の見直しをはじめとして合理化・効率化に最大限取組み、その結果を平成25年予算に反映させるなど、極力圧縮に努める」とされた。
• これらを受け、財務省は同年10月22日、財政制度等審議会に生活保護基準の切り下げに向けた具体的提言を行い、同審議会において、平成25年度の予算編成に向けた生活保護制度の見直しの議論が始められた。
しかし、生活保護の給付基準の切り下げに向けたこれらの動きは、日本国憲法第13条、同25条及びそれを具体化した生活保護法の趣旨から問題視されるべきであるとともに、生活保護受給者の生活実態に照らしても、極めて重大な問題を孕んでいる。
即ち、現在の生活保護基準にしても、生活に余裕のあるような水準ではなく、むしろ生活保護受給者の多くは、十分とは言えない生活扶助費から、食費・被服費・光熱費などをまかない、最低限の日常生活を送ることを余儀なくされているものである。そのような中で、生活保護の給付基準が切り下げられれば、生活保護受給者の生活は、さらに苦境に追い込まれてしまう。これは、生活保護受給者が健康で文化的な最低限度の生活を失うことを意味するものである。
1. また、わが国の生活保護捕捉率(制度の利用資格のある者のうち現に利用できている者が占める割合)は、平成22年4月9日付の厚生労働省の発表によると、所得ベースで15.3%、保有資産を考慮しても32.1%と推計されている(平成19年国民生活基礎調査に基づく)。
生活保護基準未満の低所得世帯のうち約7割が制度を利用していないという事態は、本年に入ってから、札幌市、さいたま市、立川市、南相馬市などで貧困による餓死や孤立死が相次いで発生している事と無関係とは言えない。
このように、現状でも生活保護の捕捉率の低さが問題であるにもかかわらず、合理化による予算圧縮の名の下に、さらに生活保護基準を切り下げ、保護受給者数を抑制するというのであれば、国民の生存権を守るという基本的な義務すら国家が放棄をするというに等しい。
2. さらに、生活保護の給付基準の切り下げは、それによって最低賃金、課税最低限度額、社会保険の自己負担額などにも負の影響を及ぼす危険性が十分に存在し、生活保護受給者を経済的に追い詰めるだけではなく、国民生活全体が貧困のスパイラルに陥る可能性があるという点で、非常に深刻な問題であると捉えなければならない。
3. 山梨県弁護士会は、貧困と格差が拡大・固定化する現代社会の中で、個人の尊厳と生存権の保障という憲法の基本理念を生かし、より豊かな国民生活の実現を願う立場から、生活保護の給付基準の切り下げに反対するものである。
2012年11月13日
山梨県弁護士会会長 清水 毅

「裁判所法の一部を改正する法律」の成立に伴い司法修習生の給費制の復活を求める会長声明
第1 声明の趣旨
司法修習生に対する給費制を復活するための議論を十分に行うため、平成24年7月27日に成立した「裁判所法の一部を改正する法律」に基づき設置される合議制の組織においては、
① 従来の法曹養成フォーラムとは異なる委員を選任すること
② 貸与制が実施されている第65期司法修習生の現状を十分に調査することを強く求める。
第2 声明の理由
1. 平成24年7月27日に裁判所法の一部を改正する法律が成立した。本改正は、昨年11月から実施となった司法修習生に対する修習資金の貸与制を維持することを前提に、経済的困窮者に対しては返済猶予を認めるというものであり、到底賛同することはできない。
法科大学院入学のための適性試験受験者数が平成24年に約5800名にまで減少している中でこのまま貸与制を維持することは、さらに法曹志望者を減少させ、多様な人材の確保がより困難になることは明らかであり、従前実施されてきた司法修習生に対する給費制を復活させるべきである。
2. 他方で上記法律には、閣議決定に基づく合議制の組織(以下「新たな合議制の組織」という。)において、質の高い法曹を養成するための法曹養成制度全体についての検討を加えた結果を一年以内に取りまとめることとし、その検討にあたっては、経済的な事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないようにすること、司法修習生に対する経済的支援については、司法修習生の修習専念義務の在り方等多様な観点から検討し、必要に応じて適切な措置を講じること等の附帯決議が付けられている。
国会の審議においても、給費制の復活を排除するものではないことが確認されており、かかる点は評価しうるものである。
3. しかしながら、新たな合議制の組織において、昨年設置され、実質的に僅か3回の会議で貸与制を是とした法曹養成フォーラムの委員がそのまま委員に選任されたならば、新たな合議制の組織における議論が充実したものになるとは到底考えられない。そもそも法科大学院や大学の関係者は、法曹養成について重大な利害関係を有しており、これらの者を委員に選任すべきではない。新たな合議制の組織においては、法科大学院や大学等の利害関係者を全面的に排除し、 一般市民を含めた多様な意見が反映されるように委員を選任すべきである。
また新たな合議制の組織においては、貸与制が初めて実施され、貸与制による多大な弊害が生じている第65期司法修習生の生の声を聞き、その現状を十分に調査すべきである。
4. 現在、法曹を志望する者にとって原則として法科大学院の修了が要件になるなど経済的負担が大きな障壁になっていることは明らかであり、貸与制の維持はさらに法曹志望者を減少させることにつながるものである。我々は、新たな合議制の組織において、司法修習生に対する給費制を復活するための議論を十分に行うため、声明の趣旨に記載された措置を強く求める。
2012年8月4日
山梨県弁護士会会長 清水 毅

秘密保全法制に反対する総会決議
第1 決議の趣旨
秘密保全法制は、以下に述べるように、立法事実を欠き、国民主権原理から要請される知る権利を侵害するなど、憲法上の諸原理と正面から衝突するものであるから、当会は、秘密保全法制に反対であり、法案が国会に提出されないよう強く求める。
第2 決議の理由
1 はじめに 政府における情報保全に関する検討委員会(以下「検討委員会」という。委員長は内閣官房長官)からの要請を受けて、秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議(以下「有識者会議」という)は、2011年8月8日、「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」(以下「報告書」という)を発表した。そこでは、「国の利益や国民の安全を確保するとともに、政府の秘密保全体制に対する信頼を確保する観点から、政府が保有する特に秘匿を要する情報の漏えいを防止することを目的として、秘密保全法制を早急に整備すべき」ことが提案されている。そして、政府は、この報告書を受けて、秘密保全法の制定に向けて、準備を進めているところである。
2 手続上の瑕疵 しかし、検討委員会、有識者会議とも、議事録が作成されていないばかりか、録音もされておらず、意図的な情報隠しがあったことが明らかになった。各種情報公開法制(中央省庁等改革基本法30条5号等)の趣旨や公文書等の管理に関する法律4条に反するこのような不公正な手続による法制の検討によっては、公正な内容の法案の提出は望めないと言うべきである。
3 立法事実の不存在 報告書は、立法を必要とする理由として、第一に、外国情報機関等の情報収集活動により情報が漏えいしたこと、第二に、政府の保有する情報がネットワーク上に流出したことを挙げている。
しかし、第一に、報告書が指摘する過去の主要な情報漏えい事件等8件について、このうち5件は不起訴となったものであり、その他起訴されたものも国家公務員法その他の現行法によって、十分対応できるものである。第二に、契機になったとされる尖閣諸島漁船衝突事件に係る映像流出についても、この映像自体、国家秘密といえるようなものではなく、映像を流出させた海上保安官も国家公務員法違反につき起訴猶予となって罰せられていない。
以上の点から、有識者会議の報告書は現行法制の不十分さを立証するものではなく、秘密保全法を新たに制定する立法事実は存在しない。
4 「特別秘密」について
(1)規定が過度に広範かつ不明確であること
報告書では、秘密保全法の対象となる「特別秘密」について、国の安全、外交、公共の安全及び秩序の維持の3分野を対象とするとしつつ、特別秘密に該当し得る事項を別表等であらかじめ具体的に列挙した上で、高度の秘匿の必要性が認められる情報に限定するとしている。
しかし、情報を限定する機能は、ないに等しい。公共の安全及び秩序の維持という概念を含む上記3分野をカバーする領域は、過度に広範である上、別表等で予め具体的に列挙するにしても、漏れがないようにするため、別表には、包括的な事項か、網羅的に膨大な情報を列挙せざるを得ない。また、高度の秘匿の必要性についても、要件自体抽象的である。
しかも、報告書によれば、特別秘密の指定権者は、それを作成・取得する行政機関であるとされ、第三者が行政機関の恣意的運用をチェックできる仕組みが、存在しない。
なお、他国の法制上では対象事項とされていない公共の安全及び秩序の維持を対象事項としたことから、たとえば、原子力発電所の安全性や原発事故の原因、放出された放射線の量、健康への影響や環境汚染の実態などの情報が、国民の不安をあおり、公共の秩序を害することを理由に、秘密指定される可能性がある。実際、福島第一原子力発電所事故では、原発敷地内の汚染地図は作られてから1ヶ月以上も公表されず、SPEEDIの拡散予測が公表されたのは5月に入ってからであり、このようなものが特別秘密とされた場合の国民の被害は計り知れない。
(2)国民主権原理及び知る権利を侵害すること
広範かつ不明確な「特別秘密」の名のもと、情報操作、情報隠しがなされかねないことは、主権者たる国民の知る権利、国民主権原理を侵害するものである。
知る権利に関して、報告書は、知る権利の具体化である情報公開法において特別秘密は不開示情報にあたるとか、国及び国民の利益の確保のためには知る権利の制限に合理性が認められるとする。
しかし、まず、現行情報公開法が真に国民の知る権利を保障するものであるか否かが検討されるべきであり、現行情報公開法で保障されているものが、国民の知る権利のすべてではない。むしろ、情報公開法の改正が急務である。
また、何が国及び国民の利益かに争いがあり、特別秘密の外延が不明確であるとき、民主主義の根幹とされる国民の知る権利の制限に合理性が認められるなどとすることはできない。
(3)罪刑法定主義に反すること
報告書は、特別秘密につき、取扱業務者及び業務知得者による故意の漏えい行為、過失の漏えい行為、一般人による特定取得行為、故意の漏えい行為の未遂、共謀、独立教唆行為及び扇動行為を処罰対象とする。
しかし、これらは、以下のとおり、罪刑法定主義に反する。
1.客体である「特別秘密」の定義が前述のように過度に広範かつ不明確である。
2.一般人を処罰対象とする特定取得行為について、報告書は、犯罪行為や犯罪に至らないまでも社会通念上是認できない行為を手段とするもので、適法行為との区別は明確であるから、処罰対象に加えることができるとする。しかし、社会通念上是認できないというのが何を意味するのか、その外延は不明である。
3.共謀、独立教唆、扇動については、いずれも実行行為が行われていない段階での処罰を可能とするものであり、漏えいや特定取得行為を実行した者を処罰する場合以上に、その外延はさらに不明確である。
(4)取材・報道の自由を侵害すること
さらに、特別秘密の漏えい行為や特定取得行為について、その未遂、共謀、独立教唆、扇動までが処罰の対象となることは、取材・報道の自由に対して与える萎縮効果は計り知れず、その結果、民主主義の基盤となる知る権利の侵害にもつながる。
報告書は、正当な取材活動は処罰対象とならないことが判例上確立しているし(いわゆる外務省機密漏えい事件についての最高裁昭和53年5月31日判決)、特定取得行為も「犯罪に該当するか、社会通念上是認できない行為を手段とするもの」に限って処罰対象とするのだから、正当な取材活動を規制するものではないとする。
しかし、前述のように社会通念などという不明確なもので処罰範囲を確定することはできず、正当な取材活動を規制することにつながる。
5 適性評価制度の問題性 報告書は、秘密保全の一環として、適性評価制度を設け、秘密情報を取り扱わせようとする者(以下「対象者」という)について、人定事項、学歴・職歴、我が国の利益を害する活動への関与、外国への渡航歴、犯罪歴、信用状態など多岐にわたる事項を調査の対象としている。さらに、対象者本人への調査ばかりでなく、その関係者、関係団体までも調査の対象とする制度導入も求めている。このような調査制度は、対象者やその関係者のプライバシーや思想・信条の自由を侵すものである。
この点、報告書は、対象者の同意があることを前提としている。しかし、対象者が同意を行うにあたっては、同意の対象となるプライバシー情報の範囲、情報の収集方法が明確であり、さらに自由な意思に基づいて同意したことを要すると考えられるところ、適性評価における調査事項が広範であり、収集方法も十分検討されておらず明確になっていないこと、適性評価の対象者が行政機関等の職員や民間事業者等の従業員といった地位にあることからすれば、任意の同意を確保し得るのかという問題がある。
また、対象者の関係者についての調査は、報告書による限り当該関係者の同意の要否については言及されておらず、さらに問題がある。
第3 むすび
以上の理由から、当会は、秘密保全法制に反対であり、法案が国会に提出されないよう強く求める。
2012年5月22日
山梨県弁護士会

全面的国選付添人制度の実現を求める決議
1 少年に対する弁護士付添人の援助の必要性
弁護士は、少年審判において、付添人として、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう、少年の立場から手続に関与し、家庭や学校・職場等少年を取りまく環境の調整を行い、少年の立ち直りを支援する活動を行っている。
少年は、成人に比して未熟であり、えん罪の危険性は大きい。また、少年たちの多くは、家庭で虐待を受け、学校で疎外されるなど、居場所がなく、信頼できる大人に出会えないまま、非行に至っており、少年に対して法的援助をするとともに、少年の成長・発達を支援する弁護士付添人の存在は、極めて重要である。
わが国も1994年5月に批准した子どもの権利条約は、「自由を奪われたすべての児童は、弁護人その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有」する(37条(d))、「刑法を犯したと申し立てられ又は訴追されたすべての児童は」、「防御の準備及び申立てにおいて弁護人その他適当な援助を行う者を持つこと」、「法律に基づく公正な審理において、弁護人その他適当な援助を行う者の立会い・・・の下に遅滞なく決定されること」について保障を受ける(40条2項(b)(ⅱ)(ⅲ))と規定している。
さらに、国連子どもの権利委員会は、2010年6月、日本政府の第3回政府報告書審査に基づく最終見解において、少年司法に関し、「すべての児童が手続のあらゆる段階で法的及びその他の支援を受けられることを確保すること」(パラグラフ85(d))と勧告している。このように、少なくとも身体拘束を受けた少年に対して弁護士の法的援助を実質的に確保することは、国際的にも求められている。
しかしながら、多くの少年やその保護者には、弁護士付添人の費用を負担する資力がなく、仮に保護者に資力があったとしても、少年のために費用を支出することには消極的な場合がほとんどであって、少年が弁護士付添人の援助を受ける権利を実質的に保障するためには、国選付添人制度が必要である。
2 現行国選付添人制度拡大の必要性
資力のない少年に弁護士付添人の援助を受ける権利を実質的に保障するためには、国費でこれを付する制度が不可欠であるが、2007年に導入された現行の国選付添人制度は、その対象事件を殺人、強盗等の重大事件に限定しており、しかも、裁判所が必要と認めた場合にのみ裁量で付する制度にとどまっている。このため、家庭裁判所の審判に付され、観護措置決定により少年鑑別所に身体拘束された少年は、11、241人に上るのに対し、国選付添人が選任された少年は、わずか516人(約4.6%)にすぎない(2009年)。
しかしながら、少年鑑別所に収容された少年については、刑事処分を相当とする検察官送致や少年院送致、児童自立支援施設送致等の収容をともなう保護処分といった重大な処分となる可能性が高く、適正な処分の選択や少年の納得という観点からも、弁護士付添人の援助が必要であり、弁護士による援助の必要性は罪名で区別することはできない。
さらに、2009年5月21日以降、被疑者国選弁護制度の対象事件が、いわゆる必要的弁護事件にまで拡大されたが、国選付添人制度の対象事件は限定されたままであるため、多くの事件で被疑者段階で選任された国選弁護人が、家庭裁判所送致後には国選付添人として活動することができないという事態が生じている。
被疑者国選弁護人は、家庭裁判所での少年審判を見据えて少年に働きかけを行ったり、被害者と示談交渉をするなどの弁護活動を行っているのであり、少年が私選で選任しない限り、家庭裁判所送致後に付添人として活動することができないというのは大きな制度的矛盾である。
したがって、国選付添人制度の対象事件を拡大することは喫緊の課題である。
3 当会及び全国の弁護士会の取組み
資力のない少年に弁護士付添人の援助を実質的に保障するためには弁護士費用の援助が不可欠であるが、国選付添人制度は極めて限定的なものであり、当会を含む全国の弁護士会は、このような事態を放置できないことから、身体拘束を受けたすべての少年に対して弁護士付添人の援助を受ける権利を保障するべく、少年が希望すれば無料で弁護士が面会する当番付添人制度を全国で実施している。また、日弁連は、2009年6月以降、すべての会員から特別会費を徴収して少年・刑事財政基金を創設し、同基金を財源として弁護士費用を援助する少年保護事件付添援助制度を拡充しており、同制度による少年保護事件の援助件数は、2009年度で6914件にのぼっている。
4 全面的国選付添人制度の実現を
上記のとおり、全国で身体拘束を受けた少年のすべてを対象とした全面的国選付添人制度への対応態勢は確立されている。
現在、弁護士付添人のほとんどは、少年保護事件付添援助制度を利用したものであるが、援助制度は、あくまでも、全面的国選付添人制度実現までの暫定的な措置であって、上記のような少年にとっての弁護士付添人による援助の重要性に照らせば、本来、国費によって付するべきものである。
よって、当会は、政府及び国会に対して、速やかに、国選付添人制度の対象事件を少年鑑別所送致の観護措置決定により身体拘束された少年の事件全件にまで拡大する少年法改正を行うことを求める。
2011年5月13日
山梨県弁護士会

各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入及び パリ原則に準拠した政府から独立した国内人権機関の設置を求める決議
当弁護士会は、わが国における人権保障を推進し、国際人権基準の実施を確保するため、2008年の国際人権(自由権)規約委員会の総括所見をはじめとする各条約機関からの相次ぐ勧告をふまえ、国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度の導入及び国連の「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」に合致した、真に政府から独立した国内人権機関の設置を政府及び国会に対して強く求める。以上のとおり平成22年度定期総会において決議する。
提案理由
1 個人通報制度について
個人通報制度とは、人権条約の人権保障条項に規定された人権が侵害されているにも拘わらず、国内での法的手続を尽くしてもなお人権救済が実現しない場合、被害者個人等が各人権条約の定める国際機関に通報し、救済を求める制度である。この個人通報制度を実現するためには、各条約の人権保障条項について個人通報制度を定めている選択議定書等を批准するなどの手続が必要である。
残念ながら、日本の裁判所は、人権保障条項の適用について積極的とはいえず、民事訴訟法の定める上告の理由には国際条約違反が含まれず、国際人権基準の国内実施が極めて不十分となっている。そのため、各人権条約における個人通報制度が日本で実現すれば、被害者個人が各人権条約上の委員会に見解・勧告等を直接求めることが可能となり、日本の裁判所も国際的な条約解釈に目を向けざるを得ず、その結果として、日本における人権保障水準が国際基準にまで前進し、また憲法の人権条項の解釈が前進するなどの著しい向上が期待される。
2 国内人権機関の設置について
国連決議及び人権諸条約機関は、国際人権条約及び憲法などで保障される人権が侵害され、その回復が求められる場合には、司法手続よりも簡便で迅速な救済を図ることができる国内人権機関を設置するよう求めており、多数の国が既にこれを設けている。
国内人権機関を設置する場合、1993年12月の国連総会決議「国内人権機関の地位に関する原則」(いわゆる「パリ原則」)に沿ったものである必要がある。具体的には、法律に基づいて設置されること、権限行使の独立性が保障されていること、委員及び職員の人事並びに財政等においても独立性を保障されていること、調査権限及び政策提言機能を持つことが必要とされている。
日本に対しては、国連人権理事会、人権高等弁務官等の国連人権諸機関や人権諸条約機関の各政府報告書審査の際に、早期にパリ原則に合致した国内人権機関を設置すべきとの勧告がなされており、また、国内の人権NGOからも国内人権機関設置の要望が高まっている。
現在、わが国には法務省人権擁護局の人権擁護委員制度があるが、独立性等の点からも極めて不十分な制度である。
このような状況の中で、日本弁護士連合会は、2008年11月18日、パリ原則を基準とした「日弁連の提案する国内人権機関の制度要綱」を発表した。
さらに、2010年6月22日には、法務省政務三役が「新たな人権救済機関の設置に関する中間報告」において、パリ原則に則った国内人権機関の設置に向けた検討を発表するなど、国内人権機関設置に向けた機運は高まってきている。
3 当弁護士会は、わが国における人権保障を推進し、また国際人権基準を日本において完全実施するための人権保障システムを確立するため、国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度を一日も早く採用し、パリ原則に合致した真に政府から独立した国内人権機関をすみやかに設置することを政府及び国会に対して強く求めるものである。
2011年2月25日
山梨県弁護士会

「都留ひまわり基金法律事務所」開設にあたって
本日、都留市に「都留ひまわり基金法律事務所」が開設されました。
「都留ひまわり基金法律事務所」は、当会、日本弁護士連合会及び関東弁護士会連合会の支援のもとに開設されたものですので、その理由と経過についてご説明させて頂き、「都留ひまわり基金法律事務所」に対するご理解とご協力をお願いしたいと存じます。
山梨県は、国中地方と郡内地方の二つに分かれますが、甲府地方裁判所・甲府家庭裁判所にも、本庁の他に都留支部があり、都留支部の管轄区域が郡内地方となっています。
その人口も、国中地方が約68万人、郡内地方が約19万人(山梨県全体で約87万人)となっています。
ところが、各地方に事務所を置く弁護士の数を見ますと、甲府に76人いるのに対し、都留支部管内には、これまでわずか1人しかいませんでした。
甲府に事務所を構える弁護士が都留までは車で1時間程度で足を運べる環境ではありますが、郡内地域の市民にとっては、自らの権利について、弁護士に 相談するにも、依頼するにも、甲府(または東京都や静岡県)まで行かなければならず、特に自動車を運転しない市民にとっては、とても不便な状況が続いてき ました。
当会では、1997年(平成9年)から、大月市に非常駐の東部富士五湖法律相談センターを開設し、現在では毎週1日、会員が交代で赴いて、法律相談をしています。 しかし、それだけでは、郡内地域の市民にとっては、弁護士が身近にいるとは言えませんでした。
そこで、当会では、昨年度、日弁連に対し、「ひまわり基金」(当会会員を含む全国の日弁連会員が特別会費として月額1400円、年間合計約4億円を 積立てている基金)の援助による「ひまわり基金法律事務所」を都留市に設置することを求めることとなり、その後、日弁連及び関弁連との間で協定を締結し、 「都留ひまわり基金法律事務所」の設置が決まりました。
その決定を受けて、「都留ひまわり基金法律事務所」に赴任する弁護士を全国から公募したところ、第二東京弁護士会所属の倉内信崇弁護士の応募を得て、当会、日弁連及び関弁連の三者からの委員で構成した支援委員会による選定を経て、同弁護士が決定し、同弁護士が決定し、この9月1日、当会に入会する と同時に「都留ひまわり基金法律事務所」が開設されたものです。このように「都留ひまわり基金法律事務所」開設の目的・使命は、郡内地域の住民に対して身近な弁護士による法的サービスを提供することにありますの で、この「都留ひまわり基金法律事務所」の存在が郡内地域の住民の方々に広く知られ、これまで弁護士に会うことが不便なために弁護士に相談することをあき らめていたような多くの住民の方が、この事務所を利用して頂き、この事務所の使命を果たすことができるよう願っております。
また、この「都留ひまわり基金法律事務所」が成功すれば、郡内地域で開業することに不安を抱いて躊躇していたような弁護士が一般の法律事務所を開設する可能性が高くなります。 この「都留ひまわり基金法律事務所」がいわば呼び水となって、富士吉田市、大月市、上野原市など郡内地域の各地に新しい法律事務所が開設され、郡内地域の住民に対する法的サービスが充実することが理想です。 そのためにも、まずは「都留ひまわり基金法律事務所」がその使命を立派に果たすことができるよう、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
2008年9月1日
山梨県弁護士会会長 石川 善一

【転載】余命3年時事日記 2337 ら特集山梨弁護士会②

2018年02月01日 | 在日韓国・朝鮮人
山梨県弁護士会
ttp://www.yama-ben.jp/

安全保障法制改定法案に反対する会長声明
政府は、平成27年5月15日、自衛隊法、重要影響事態安全確保法、事態対処法など10本の法律の一部改正を行う、「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」(平和安全法制整備法)案と、「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」(国際平和支援法)案を、第189回国会に提出した(以下併せて「本法案」という)。
本法案は、4月27日にアメリカと合意した新たな日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)を反映し、我が国及び国際社会の平和及び安全のための切れ目のない体制の整備を行うことを目的とする。
しかしながら、本法案は、憲法第9条に反し、違憲無効なものである。
本法案は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる等の要件を満たす事態を「存立危機事態」と称し、この場合に、世界のどこででも自衛隊が米国及び他国軍隊とともに武力を行使することを可能としている。これは、集団的自衛権の行使を容認するものである。
また、本法案によれば、我が国の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」や、国際社会の平和と安全を脅かす「国際平和共同対処事態」において、地理的限定なく、現に戦闘行為が行われている現場でなければ、自衛隊が戦争を行っている米国及び他国軍隊に、弾薬の提供等まで含む支援活動を行うことを可能としている。これは、従前禁止されてきた他国との武力行使の一体化をもたらすものである。
政府は、日米両政府が軍事的に協力することによって抑止力が高まり、我が国及び国際社会の平和と安全をもたらすことができるとするが、日本国憲法が目指す恒久の平和は日本国民が平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して達成されるものである(憲法前文)。
そもそも、主権者である国民は、権力者による権力濫用から、基本的人権を守るために憲法を制定した(立憲主義)。憲法は権力者を縛るものであり(憲法第99条)、憲法に反する権力行使は許されない(憲法前文、憲法第98条)。戦争は、最大の人権侵害であり、日本国民は、憲法第9条によって、政府による武力の行使を禁止し、戦力の不保持、交戦権を否認したものである。
しかし、本法案は、集団的自衛権を認め、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合に、自衛隊による武力行使を認め、他国との武力行使の一体化をもたらす後方支援を地理的限定なく認める。これらの行為は、我が国に対する攻撃(本法案にいう武力攻撃事態等にほかならない)を招くものである。本法案は、これまで憲法第9条によって守られてきた我が国の平和と人権を破壊し、戦争に導くものにほかならない。
このほかにも本法案には様々な問題があるが、平成26年7月1日の集団的自衛権行使容認を行った閣議決定に基づくものにほかならず、憲法改正手続を踏むことなく憲法の実質的改正をしようとするもので立憲主義の基本理念に真っ向から反する。
よって、当会は、本法案による安全保障法制の改定に強く反対するとともに、基本的人権の擁護を使命とする法律家の団体として、本法案が成立することのないよう、その違憲性を強く訴えるものである。
2015年5月22日
山梨県弁護士会会長 關本喜文

共謀罪の新設に改めて反対する会長声明
1. 共謀罪に関する法案が(以下「法案」という。)過去3度廃案となり本年の臨時国会への提出も見送られたことが報道されているが、共謀罪の新設の検討は否定されていない。当会は2006年1月20日、共謀罪の新設が国民の基本的人権に対して重大な影響を与えることを指摘し、これに反対する会長声明を表明した。
2. 共謀罪は、2人以上の者が団体の活動として犯罪を行うことを話し合って合意することを処罰対象とする犯罪である。共謀罪は犯罪実行行為や犯罪準備行為も不要とする犯罪であり、外形的行為のない意思は処罰しないとする刑事法体系の基本原則に反するだけではなく、表現行為を処罰する点で表現の自由、集会結社の自由、思想信条等の自由等の憲法上保障される基本的人権に対する侵害になりかねない。
法案で、共謀罪は対象犯罪や団体に関して何ら限定をしておらず、目的による限定もされていない。そのため、共謀罪は長期4年以上の犯罪には全て適用されることになるので、窃盗・傷害等600以上もの犯罪に共謀罪が適用されることになり、その範囲は非常に広範にわたることになる。
3. 共謀罪の新設は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」を批准するための国内法の整備のためと説明されている。しかし、現行法上、重大犯罪について予備罪、陰謀罪が存在するうえ、判例上共謀共同正犯理論により、予備罪の共謀共同正犯、他人の予備についても処罰が可能となっている。同条約を締結した諸外国で共謀罪を新設したのはノルウェーとスウェーデンがあげられるのみであり、600以上の共謀罪を新設した国は確認されていない。したがって、条約の批准に共謀罪の新設は不可欠ではなく、我が国において共謀罪を新設する必要性は存在しない。
4. 共謀罪の捜査は具体的な法益侵害行為を対象とするのではなく、会話や電話等の表現行為を対象とするものである。法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会は、2014年7月9日、通信傍受の対象犯罪を拡大する方向で最終とりまとめを行った。
このような状況では、共謀罪摘発のために捜査機関が市民の表現行為を傍受する監視社会をもたらす危険性を孕んでいる。
5. 以上のように、共謀罪は刑事法体系の基本原則に反し、表現の自由や思想信条の自由等重要な基本的人権を侵害するものであるから、当会は共謀罪の新設に強く反対する。
2014年10月11日
山梨県弁護士会会長 小野 正毅

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」 (いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明
第1 趣旨
当会は、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」に強く反対し、本法案の廃案を求める。
第2 理由
1. はじめに
昨年12月、国際観光産業振興議員連盟(以下「IR議連」という。)に所属する国会議員有志よって、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(以下「カジノ解禁推進法案」という。)が国会に提出され、現在開催されている臨時国会で継続審議となっている。
IR議連は、カジノ施設を含む統合型リゾートを観光振興、地域振興に資する成長戦略の一つのツールとしており、このようなリゾートの設置による集客効果、雇用効果、税収効果等により地域経済が活性化することを強調している。
しかし、カジノ解禁推進法案が成立した場合、以下に述べるとおり多数の問題が生じるおそれがある。
2. ギャンブル依存症患者を増加させるおそれがある
現在の日本には、競馬等の公営ギャンブルやパチンコ産業が根付いており、ギャンブル依存症患者が増加する要因が現に存在する。さらに、厚生労働省研究班の本年8月20日発表では、日本人のギャンブル依存症有病率は推計で男性8.7%、女性1.8%であり、諸外国の推計有病率1%前後に比べて異常に高い。その一方で、ギャンブル依存症治療を専門的に行う医療機関は少なく、患者の治療・支援体制が十分に整っているとは言い難い。このような日本の現状では、カジノを解禁する以前に、ギャンブル依存症患者を増加させない対策を講じることこそが重要である。
カジノ解禁推進法案の考え方では、カジノを解禁後、カジノからの納付金を元手にギャンブル依存症対策を行うとされている。しかし、カジノを解禁してギャンブル依存症患者を増加させる明らかなおそれを生じさせつつ、ギャンブル依存症対策を行うというのは、依存症患者の増加防止策としてまったく矛盾しており、このような対策で依存症患者の増加を防止することは非常に困難である。
3. 多重債務者を再び増加させるおそれがある
2006年の貸金業法改正等、官民一体となって取り組んだ多重債務者対策により、多重債務者は激減し、結果として、破産者等の経済的破綻者や経済的理由によって自殺する者も減少した。
しかし、ギャンブル依存症患者の多くは、ギャンブルのために借金を重ねている。そして、カジノを解禁した場合、ギャンブル依存症患者がカジノでギャンブルを行うために借金をすることは当然に想定される。また、ギャンブル依存症患者でなくても、カジノに射幸心を煽られ、カジノで所持金を使い果たしたカジノ客が、負けた分を取り戻すために借金をしてギャンブルを続けることも想定される。そのため、カジノを解禁した場合、結果として多重債務者を再び増加させるおそれがある。
4. 青少年の健全育成に悪影響が生じるおそれがある
カジノ解禁推進法案では、カジノは、「会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設」と一体となって設置することを想定している。そして、青少年がカジノに入場できないとしても、カジノと一体となって設置された観光施設に青少年が出かけることは当然に想定される。そして、青少年が、カジノが身近にある環境に身を置いた場合、カジノに対する抵抗感を喪失するおそれがあり、将来的にカジノに出入りし、カジノに射幸心を煽られ、その結果、ギャンブル依存症の発症に影響を与えるおそれがある。
5. 暴力団の関与を完全に排除することは困難である
カジノ解禁推進法案では、暴力団等のカジノへの関与を排除するための規制に関して必要な措置を講ずることを政府に義務付けている。しかし、いかなる規制を設けたとしても、暴力団構成員が身分を偽り、カジノの従業員として施設に入り込むこと、あるいは暴力団が関係企業や関係者を通じて間接的にカジノへ関与することを完全に防止することは困難であり、カジノを解禁した場合には、これに暴力団が関与するおそれが十分にあると言うべきである。
6. 経済効果に対する疑問
IR議連は、カジノ解禁による地域経済の活性化を強調している。しかし、カジノ解禁により、政府のカジノ規制費用、ギャンブル依存症患者の労働力・生産性の低下、ギャンブル依存症対策費用等の社会的負担の増加が懸念されている。そのため、カジノ解禁により何らかの経済効果があるとしても、これに伴う社会的負担の増加問題を考慮すれば、最終的にどれだけの経済効果が得られるのか甚だ疑問である。
7. カジノにおけるギャンブルは刑法の禁止する「賭博」である
そもそも、カジノにおけるギャンブルは「賭博」(刑法185条、同法186条)である。刑法が「賭博」を禁止しているのは、「賭博」が「勤労その他正当な原因に因るのでなく、単なる偶然の事情に因り財物の獲得を僥倖せんと相争う」性質のものであり、これにより「国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風(憲法第二七条一項参照)を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらある」(最高裁昭和25年11月22日大法廷判決)からである。
そして、IR議連も、カジノが現行の刑法で禁止されている賭博行為を提供する施設であることを認めている。それにも関わらず、犯罪防止策等の各種対策を行うことで、上記判例に挙げられた弊害やその他の弊害を防止できるという趣旨の主張を行っている。
しかし、各種弊害防止の具体策の構築は、カジノ解禁推進法案成立後に政府が行うことになっており、現時点でIR議連の言う対策も、何ら具体性のない抽象論でしかない。そのため、IR議連の言う弊害防止策により、実際にどの程度の弊害防止効果があるかを事前に、かつ慎重に検討する必要がある。そして、国民に対して、カジノを解禁しても各種弊害発生のおそれがないことを合理的に説明する必要がある。このような説明がない現状では、カジノ解禁により各種弊害が発生するおそれを排除することはできないのであり、カジノ解禁が「賭博」を禁止した刑法の趣旨を害するおそれがある。
8. 結語
以上より、カジノ解禁推進法案が成立した場合、ギャンブル依存症患者の増加、多重債務者の増加、青少年の健全な育成への悪影響、社会的負担の増加、暴力団のカジノへの関与といった問題が生じるおそれがあり、「賭博」を禁止した刑法の趣旨を害するおそれがある。
よって、当会は、カジノ解禁推進法案に強く反対し、本法案の廃案を求めるものである。
2014年10月11日
山梨県弁護士会会長 小野 正毅

集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明
2014年(平成26年)7月1日,政府は,従来「自衛権発動の3要件」の第1要件とされていた「わが国に対する武力攻撃が発生した場合」に加え,「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これによりわが国の存立が脅かされ,国民の生命,自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」にも自衛権を行使できるとし,集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。
しかし,憲法は,前文で平和的生存権を確認し,第9条で戦争放棄,戦力不保持及び交戦権否認を定め,恒久平和主義を採用している。それゆえ,これまでの政府は,集団的自衛権の行使につき,憲法第9条のもとにおいて許容される,わが国を防衛するために必要最小限度の範囲に止まる自衛権の行使を超えるものであって,憲法上許されない旨,繰り返し確認してきた。
憲法によって国家権力の行使を厳格に制約するという立憲主義のもとでは,内閣及び国会は,憲法規範の枠内で行動しなければならない(憲法尊重擁護義務,第99条)。集団的自衛権を認めることは,専守防衛に徹し,戦争,武力行使に加担してこなかったわが国のあり方を根本的に変えようとするものである。したがって,憲法改正手続を経ずに,集団的自衛権の行使を認めることは許されない。
憲法改正手続によらず,一内閣が閣議決定により,集団的自衛権の行使を容認することは,立憲主義と恒久平和主義に反し,憲法違反である。また,かかる閣議決定に基づいた自衛隊法等の法改正も許されるものではない。
当会は,基本的人権の擁護を使命とする弁護士の団体として,立憲主義堅持の立場から,集団的自衛権の行使を容認する本閣議決定に強く抗議するとともに,その撤回を求める。
2014年7月5日
山梨県弁護士会会長 小野 正毅

行政書士法改正に反対する会長声明
日本行政書士会連合会は、行政書士法を改正して、「行政書士が作成した官公署に提出した書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立てについて代理すること」を行政書士の業務範囲とすることを求め、そのための運動を推進してきた。そして、これを受け、今国会において、議員立法により、上記内容の同法改正法案が提出される可能性がある。
同連合会は、代理権の範囲を絞り込むことにより同法改正への理解を求めているが、代理権の範囲に関わらず、行政書士に行政不服申立代理権を付与することは、国民の権利利益の擁護を危うくするおそれがあり、容認できない。すでに、日本弁護士連合会が2012年(平成24年)8月10日に同法改正に反対する会長声明を発表し、その後、各地の弁護士会が会長声明にて反対の立場を表明しているように、当会も、以下の理由から、これに反対する意見を表明する。
第1に、行政書士の主たる職務は、行政に関する手続の円滑な実施に寄与することを主目的とした、行政庁に対する各種許認可関係の書類作成・提出であるところ、その職務の性質上、行政庁の違法・不当な行政処分の是正を求める行政不服申立制度とは、本質的に相容れない。
第2に、行政不服申立ての代理人を務めるにあたっては、行政訴訟の提起やその見通しをも視野に入れる必要があるなど、高度な専門性と慎重かつ適切な判断が不可欠であるところ、これらの点において、行政書士の能力担保は十分とはいえない。
第3に、行政書士について定められている倫理綱領は、その内容において、当事者の利害や利益が鋭く対立する紛争事件の取扱いを前提とする弁護士倫理と異なっており、行政書士において紛争事件を取り扱うだけの職業倫理が確立しているとはいえない。
第4に、仮に行政書士が行政不服申立ての代理権を獲得したとしても、その活動分野は限定されることが予想され、影響は小さいとの指摘があるが、国民の権利利益に影響する問題を活動分野の大小で計ること自体が大いに問題であるし、いったん国民の権利利益の擁護が全うされない事態が招来されれば、それは取り返しのつかないことである。
第5に、弁護士は、出入国管理及び難民認定法、生活保護法、精神保健及び精神障害者福祉法に基づく行政手続等について、行政による違法・不当な処分から社会的弱者を救済する実績を上げており、ことさら行政書士に代理権を付与しなければならないという社会的必要性も存在しない。
以上のとおり、当会は、行政書士法を改正して行政書士に行政不服申立代理権を付与することに強く反対するものである。
2014年6月9日
山梨県弁護士会会長 小野 正毅

集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲に反対する総会決議
1. 政府は、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」の報告書が提出されたことを受け、日本国憲法第9条に関するこれまでの政府見解・憲法解釈を閣議決定により変更し、集団的自衛権の行使を容認しようとしている。また、これを前提に、関連する自衛隊法等の法改正を先行して行うとしている。
2. しかし、憲法第9条のもとでは、集団的自衛権の行使は否定される。これは、幾多の政府答弁で繰り返され、法(PKO協力法、周辺事態法)制定にあたって参照されてきた確立した憲法解釈である。
集団的自衛権行使の否定こそが、憲法第9条解釈の核心であり、憲法第9条による制約として、その規範的意義は強固に承認されてきた。いわゆる砂川事件最高裁判決が肯定した「我が国が主権国として持つ固有の自衛権」は、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な」限りでの個別的自衛権のみであり、この判決によって集団的自衛権の行使を正当化する余地はあり得ない。
3. 憲法によって国家権力が制限されなければならないとする立憲主義のもとでは、内閣及び国会は、憲法規範の枠内で行動しなければならない。この法理は、我が国のような民主制国家でも例外ではなく、国民から選ばれた民主的基盤を有する者に対しても当然、その拘束力が及ぶ。そして、確立した憲法解釈は、現にある憲法規範として、時の内閣及び国会を拘束する。
ある政策を実現しようとするとき、それが憲法で禁じられているのであれば、その政策を断念するか、憲法を改正するかのいずれかしかない。特に、集団的自衛権の行使容認に道を開くのであれば、それは、国のあり方の基本を転換する重大事なのであるから、国民的議論を経た上で、正式に憲法改正の手続きを踏む必要がある。正面から、各議院の総議員の3分の2以上の賛成を得るべく、理を尽くし、世論の支持を得る努力をするべきである。
集団的自衛権の行使を容認するとなれば、同盟国のために自衛隊員を犠牲にして他国とともに戦うことになるし、相手国兵力の殺傷や破壊も現実のものとなる。現行憲法施行以来、堅持してきた恒久平和主義の転換であり、この点について覚悟を持たねばならないのは、国民自身である。その国民に向けた説明と説得も十分に行わず、国民的議論を尽くす機会も与えず、与党内の議論だけで、現行憲法上許されないものを許されると解釈変更することは、解釈による憲法改正であって、立憲主義に明らかに反する。
4. 当会は、2013年11月9日憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認と国家安全保障基本法案の国会提出に反対する会長声明を発出した。
今般の情勢を踏まえ、当会は、更に、政府が憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認しようとすることに対し、立憲主義に反するものとして、強く反対し、ここに決議する。
2014年5月26日
山梨県弁護士会

司法試験合格者数の大幅な減少を求める総会決議
第1 決議の趣旨
当会は、政府に対し、年間司法試験合格者数の大幅な減少を平成26年度から実施することを求める。
第2 決議の理由
1. 政府は、平成25年7月16日付け法曹養成制度関係閣僚会議決定「法曹養成制度改革の推進について」において、今後の法曹人口の在り方について、「閣僚会議の下で、法曹人口についての必要な調査を行い、その結果を2年以内に公表する。また、その後も継続的に調査を実施する」ことを明らかにした。そして、平成25年度の司法試験合格者数は、昨年度と変わりがなく、2000人を超えた。
しかし、以下の状況に鑑みれば、法曹人口の在り方に関する結論を2年間も先送りすることは、司法制度そのものの崩壊を招来することになりかねない。
2. 法曹人口は、司法制度改革審議会意見書(平成13年6月12日)において提言されていた裁判官、検察官の大幅な増員が、もっぱら予算上の理由で抑制されている中、弁護士人口のみが急増している。すなわち、弁護士全登録者数は、平成14年度の1万9508人から平成24年度には3万3624人へと1万4000人以上増加し、山梨県弁護士会の会員数も、平成14年度の58人から平成24年度には107人へとほぼ倍増している(各年度3月31日現在)。
他方で、弁護士需要の主たる指針となる裁判所の事件数は、弁護士数の急増にもかかわらず減少の一途である。すなわち、最高裁判所の司法統計によれば、平成14年度の民事・行政事件の全裁判所新受件数と平成24年度のそれを比較すると、実に51.7%に減少し(329万8354件から170万7568件)、甲府地方裁判所および同管区内の簡易裁判所の民事・行政事件の新受件数も、49.6%にまで減少している(1万6154件から8015件)。
司法制度改革審議会が予想した弁護士に対する需要拡大が現実化していない状況が長期間続く中で、現状の2000人強の合格者数では弁護士がますます供給過多となり、次項に述べるように就職難が発生し、OJT不足による質の低下が懸念される。
3. すなわち、いわゆる二回試験合格発表後の一括登録時における未登録者数は、年々増加し、平成25年度(新66期・平成25年12月19日一括登録日現在)は、570人(ただし平成26年1月14日現在の未登録者数は351人)に達し、新規登録弁護士の就職難が社会問題化していることは、周知の事実である。既存の法律事務所における研鑽の機会すらない新人弁護士が急増すると、国民の基本的人権を擁護し、社会正義の実現を使命とする弁護士の職責を充分に果たすことができない者が生ずることを否定できないところ、その不利益を被るのは弁護士ではなく、当該弁護士を依頼した市民自体である。
4. さらに、法科大学院入学志望者数は、創設時の2割以下にまで激減している。これは、法科大学院を法曹養成制度の中核とする制度の趣旨からすれば、一刻の猶予も許されない極めて深刻な事態である。法科大学院入学志望者激減の理由は、法曹資格取得後の就職や開業に十分な見通しを立てることができない実情が明らかになったためであるが、このような状況が今後も続く限り、将来法曹を担うべき有為な人材が集まらなくなり、司法が機能しなくなる可能性も否定できない。
5. よって、当会は、政府に対し、年間司法試験合格者数の大幅な減少を平成26年度から実施することを求める。
2014年2月28日
山梨県弁護士会

特定秘密保護法案の参議院での慎重審議及び全面的白紙撤回を求める会長声明
1. 2013年(平成25年)11月26日、特定秘密保護法案(以下「本法案」という。)が衆議院で強行採決され、現在、本法案は参議院で審議されている。
2. いうまでもなく国会は、国権の最高機関であり、唯一の立法機関であるが(憲法41条)、その正当性の源泉は、主権者である国民によって直接選挙された代表者により、国民の意思が適切に反映される場であることに求められる。したがって、国会議員の選挙において、各選挙区の議員定数の配分に不均衡があり、そのため選挙人の投票価値に不平等が存在することは、憲法第14条第1項の平等原則に違反するばかりか、国会の唯一の立法機関性の正当化根拠に疑念を生じさせる事態となる。
今般、最高裁判所は、昨年12月の衆議院議員総選挙時における選挙区割りは、投票価値の平等に反する状況にあったとの判断を示した(本年11月20日大法廷判決)。今回の判決は、2011年(平成23年)の大法廷判決に引き続き、衆議院議員総選挙について「違憲状態」と判断したものである。この判決により、現在の衆議院は、憲法違反状態の公職選挙法により選出された議員から構成されたものとなり、「正当に選挙された国会における代表者」(憲法前文)とは言い難く、立憲主義の観点からも極めて異常な事態である。
他方、本法案は、国民主権、国民の知る権利、取材・報道の自由、適性評価制度導入に伴う関係者のプライバシー・思想信条の自由、三権分立等を侵害する危険性を有しており、当会をはじめとする各弁護士会、日本弁護士連合会等は、強く反対意見を表明してきたところである。
以上の状況を踏まえたとき、正当性に極めて疑問のある衆議院において憲法上疑義のある本法案を強行採決したことの問題性は根深い。
3. また、本法案は、上述の憲法上の問題点に加え、国際原則に照らしても、問題が多い。すなわち、「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(以下「ツワネ原則」という。)は、自由権規約第19条等をふまえ、国家安全保障分野において立法を行う者に対して、国家安全保障のための情報管理と知る権利の保障との調整のために、実務的ガイドラインとして作成されたものであり、国会での本法案の審議においても、同原則に照らして、本法案が自由権規約第19条に適合するといえるか否かが、徹底して審議されなければならない。
ツワネ原則の策定には、アムネスティインターナショナルやアーティクル19のような著名な国際人権団体だけでなく、国際法律家連盟のような法曹団体、安全保障に関する国際団体など22の団体や学術機関が名前を連ねている。この原則には、ヨーロッパ人権裁判所やアメリカ合衆国など、最も真剣な論争が行われている地域における努力が反映されている。起草後、欧州評議会の議員会議において、国家安全保障と情報アクセスに関するレポートにも引用されるなど、国際的にも重要なガイドラインといえる。
しかるに、本法案には、ツワネ原則に反する多数の問題点があり、自由権規約第19条の知る権利を侵害するものというほかないから、廃案にするほかない。
以下、ツワネ原則に則して、本法案の問題点を指摘する。 (1) ツワネ原則1、4は、国家秘密の存在を前提にしているものの、誰もが公的機関の情報にアクセスする権利を有しており、その権利を制限する正当性を証明するのは政府の責務であるとしている。
しかし、本法案には、この原則が明示されていない。(2) ツワネ原則10は、政府の人権法・人道法違反の事実や大量破壊兵器の保有、環境破壊など、政府が秘密にしてはならない情報が列挙されている。国民の知る権利を保障する観点からこのような規定は必要不可欠である。
しかし、本法案には、このような規定がない。(3) ツワネ原則16は、情報は、必要な期間にのみ限定して秘密指定されるべきであり、政府が秘密指定を許される最長期間を法律で定めるべきであるとしている。
しかし、本法案には、最長期間について60年という規定があるも、例外にあたる場合には、最長期間の定めはなく、30年経過時のチェックにしても、行政機関である内閣が判断する手続になっており、第三者によるチェックになっていない。(4) ツワネ原則17は、市民が秘密解除を請求するための手続が明確に定められるべきであるとしている。これは恣意的な秘密指定を無効にする上で、有意義である。
しかし、本法案には、このような手続規定がない。(5) ツワネ原則6、31、32、33は、安全保障部門には独立した監視機関が設けられるべきであり、この機関は、実効的な監視を行うために必要な全ての情報に対してアクセスできるようにすべきであるとしている。(6) ツワネ原則43、46は、内部告発者は、明らかにされた情報による公益が、秘密保持による公益を上回る場合には、報復を受けるべきでなく、情報漏えい者に対する訴追は、情報を明らかにしたことの公益と比べ、現実的で確認可能な重大な損害を引き起こす場合に限って許されるとしている。
しかし、本法案では、この点に関する利益衡量規定がなく、公益通報者が漏えい罪によって処罰される危険が極めて高い。(7) ツワネ原則47、48は、公務員でない者は、秘密情報の受取、保持若しくは公衆への公開により、又は秘密情報の探索、アクセスに関する共謀その他の罪により訴追されるべきではないとし、また、情報流出の調査において、秘密の情報源やその他の非公開情報を明らかすることを強制されるべきではないとしている。
しかし、本法案には、このような規定がないどころか、第23条ないし第27条の規定によって広く処罰できるようにしている。
4. 自由民主党の石破茂幹事長は、11月29日の自身のブログに、「今も議員会館の外では「特定機(ママ)密保護法絶対阻止!」を叫ぶ大音量が鳴り響いています」、「主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべきなのであって、単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます。」との意見を掲載している。
しかし、このように政治的主張を訴える市民の行動は憲法21条の表現の自由により保護される典型的場面である。それをもって「テロ行為とその本質においてあまり変わらない」と評価するのは、表現の自由に対する無理解に基づくものと言わなくてはならない。
本法案においては、別表4号において、「テロリズムの防止に関する事項」が掲げられている。本法案の第12条2項における「テロリズム」の定義によれば、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」することとある。本法案を推進する自由民主党の幹事長であり、元防衛大臣である石破茂氏が特定秘密保護法阻止の宣伝行動をもテロと同視したことは、本法案成立後において、市民が政府を批判する活動が広く「テロリズム」に含まれ得る危険性を示している。
5. さらに、本法案は、違法な「特定秘密」を保護の対象から除外していない。この点、平成25年11月19日に開催された衆院国家安全保障に関する特別委員会では、森雅子担当大臣が、違法行為の秘密指定はない、違法行為の秘密指定は無効である旨述べている。しかし、条文上、違法行為を秘密指定から除外する旨の規定は存在せず、時の内閣の考えによって解釈は変わりうる。さらに違法か否かの限界もあいまいな部分もあり、違法行為であっても、一旦秘密指定されてしまえば検証のしようがない。したがって、仮に、多数の国民に対して盗聴行為が行われても、これらの盗聴行為が行政機関の長により「テロリズムによる被害の防止」のための措置に該当するとして、特定秘密として指定できうることになる。すなわち、盗聴行為を特定秘密として指定することにより、国民に秘密にされたまま、同様な監視活動が行われることになる。
この点、法制審議会新時代の刑事司法制度特別分科会では、本年1月29日には、「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」を取りまとめ、上記基本構想及び同分科会での最近の検討状況によれば、通信傍受の対象犯罪を、通常の殺人、逮捕・監禁等、窃盗・強盗等、さらには「その他、重大な犯罪であって、通信傍受が捜査手法として必要かつ有用であると認められるもの」にまで広げることが検討されている。このような通信傍受法が成立すれば、裁判官による令状審査が行われるにしても、特定秘密保護法違反を「重大な犯罪」とし、テロリズムの防止と称して、通信傍受を行うことが横行する可能性もなしとしない。
6. 衆議院強行採決の前日である11月25日に福島県で開かれた公聴会では、与党推薦者を含め、出席者全員が本法案の内容に反対ないし懸念を示した。しかし、翌日の衆議院では十分な審議が行われず、公聴会での意見が一顧だにされないまま、採決が強行されたのであり、この公聴会もアリバイ作りに過ぎなかったことが白日の下に晒されたのである。原発の被害に現在でも苛まれている福島の窮状をまったく理解しようとしないこの採決は、極めて遺憾であり、法案のもたらしかねない重大な影響に鑑みると、到底是認できない。
本法案は、そもそも憲法の諸原理にことごとく抵触する法案であるにもかかわらず、本年9月3日に概要のみしか公表されない段階で、9月17日までという極めて短期間を設定して、国民に意見照会を求めた。そして、現在までに福島県1箇所で公聴会を行ったのみで、また4党修正案の審議は2時間しか行わないという状況下で強行採決が行われた。まさしく拙速の極みといわなければならない。
こうした本法案の国会審議の状況について、報道によれば、米国の核戦略の専門家で国防総省や国家安全保障会議(NSC)の高官を務めたモートン・ハルペリン氏(75)も、「スピードを懸念する。南アフリカで同種の動きがあるが、既に数年かけている。南ア政府は最初2カ月で法案を通そうとしたが、反対運動が起き、3、4度修正された。ツワネ原則に完全合致はしないが、時間をかけ大いに改善された」としているところである。
7. 参議院の存在意義は、衆議院の軽率な行為・過誤の回避、民意の忠実な反映という点に求められる。
当会は、本法案の拙速な採決に強く抗議し、良識の府である参議院において十分な審議を尽くすよう要請するとともに、本法案の全面的白紙撤回を求めるものである。
2013年12月3日
山梨県弁護士会会長 東條 正人

【転載】余命3年時事日記 2336 ら特集山梨弁護士会①

2018年02月01日 | 在日韓国・朝鮮人
山梨県弁護士会
ttp://www.yama-ben.jp/

声明・総会決議
ttp://www.yama-ben.jp/statement/
平成29年度分(会長:堀内 寿人)
会長声明 さらなる生活保護基準の引下げに強く反対する会長声明 2018年1月26日
会長声明 平成29年度司法試験最終合格発表に関する会長声明 2017年12月9日
会長声明 地方消費者行政に対する国の財政支援を求める会長声明 2017年10月14日
会長声明 いわゆる共謀罪法案の成立に強く抗議し廃止を求める会長声明 2017年6月22日
会長声明 修習給付金の創設に関する改正裁判所法の成立にあたっての会長声明 2017年5月13日

平成28年度分(会長:松本 成輔)
会長声明 いわゆる「共謀罪」法案の廃案を求める会長声明 2017年3月11日
意見書 民法の成年年齢の引下げに反対する意見書 2017年2月24日
会長声明 「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の廃止を求める会長声明 2017年2月11日
会長声明 南スーダンにPKOとして派遣される自衛隊部隊に「駆け付け警護」等の新任務を付与することに抗議し、改めて安保法制の廃止を求める会長声明 2017年1月14日
会長声明 総合法律支援法の一部を改正する法律の成立に当たって、さらなる民事法律扶助制度の拡充等を求める会長声明 2016年10月1日
会長声明 テロ等組織犯罪準備罪の新設に反対する会長声明 2016年10月1日
会長声明 刑事訴訟法等の一部を改正する法律の成立に当たっての会長声明 2016年8月6日
会長声明 成年後見制度の利用の促進に関する法律の成立に際し、市町村長による後見開始等の審判請求及び成年後見人等に対する報酬の支払助成等の措置の促進を求める会長声明 2016年7月9日
会長声明 消費生活センターの設置を求める会長声明 2016年5月19日
会長談話 69回目の憲法記念日に寄せる談話 2016年5月3日
会長声明 安保関連法の施行に抗議し、その適用・運用に反対し、あらためてその廃止を求める会長声明 2016年4月9日
平成27年度分(会長:關本 喜文)
意見書 民法(債権関係)の改正に関し慎重な国会審議を求める意見書 2016年3月24日
会長声明 消費者庁・国民生活センター・消費者委員会の地方移転に反対する会長声明 2016年3月12日
会長声明 司法修習生に対する給費の実現・修習手当の創設を求める会長声明 2016年1月20日
意見書 特定商取引法に事前拒否者への勧誘を禁止する制度の導入を求める意見書 2015年11月14日
会長声明 立憲主義違反の安保法案成立に抗議し、即時廃止を求める会長声明 2015年9月19日
会長声明 災害対策を理由とする「国家緊急権」の創設に反対する会長声明 2015年7月29日
会長声明 安全保障関連法案に反対し,衆議院本会議における強行採決に抗議する声明 2015年7月16日
会長談話 安保法案強行採決に抗議する会長談話 2015年7月15日
意見書 市町村における消費生活相談窓口の充実を求める意見書 2015年7月13日
会長声明 少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明 2015年7月11日
会長声明 商品先物取引法施行規則改正による不招請勧誘禁止の緩和に抗議する会長声明2015年5月22日
会長声明 安全保障法制改定法案に反対する会長声明 2015年5月22日
会長声明 労働時間規制を緩和する労働基準法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明 2015年5月11日
平成26年度分(会長:小野 正毅)
意見書 民法(債権関係) 改正の「要綱仮案」についてパブリックコメントを実施するよう求める意見書 2014年12月6日
会長声明 商品先物取引法施行規則改正による不招請勧誘禁止の大幅緩和に反対する会長声明 2014年11月1日
会長声明 共謀罪の新設に改めて反対する会長声明 2014年10月11日
会長声明 「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」 (いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明 2014年10月11日
会長声明 貸金業法の規制緩和に反対する会長声明 2014年8月2日
会長声明 集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明 2014年7月5日
会長声明 行政書士法改正に反対する会長声明 2014年6月9日
総会決議 集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲に反対する総会決議 2014年5月26日
会長声明 「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明 2014年4月12日

平成25年度分(会長:東條 正人)
総会決議 司法試験合格者数の大幅な減少を求める総会決議 2014年2月28日
会長声明 商品先物取引についての不招請勧誘禁止撤廃に反対し、改正金融商品取引法施行令に同取引に関する市場デリバティブを加えることを求める会長声明 2014年2月8日
意見書 高齢者の消費者被害の予防と救済のためのネットワークづくりに関する意見書 2014年2月8日
会長声明 特定秘密保護法の成立に抗議する会長声明 2013年12月7日
会長声明 特定秘密保護法案の参議院での慎重審議及び全面的白紙撤回を求める会長声明2013年12月3日
会長声明 憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認と国家安全保障基本法案の国会提出に反対する会長声明 2013年11月9日
会長声明 婚外子の法定相続分についての最高裁判所違憲決定を受けて、家族法における差別的規定の改正を求める会長声明 2013年11月9日
会長声明 民法(債権法)改正に関するパブリックコメントを再度募集することを求める会長声明 2013年11月9日
会長声明 特定秘密保護法案に反対する会長声明 2013年11月9日
会長声明 東京電力福島第一原子力発電所事故による損害賠償請求権の消滅時効につき特別の立法措置を求める会長声明 2013年10月12日
会長声明 生活保護法改正法案の再提出および生活保護費の切り下げに反対する会長声明2013年10月12日
会長声明 改めて司法修習生の給費制復活を求める会長声明 2013年10月12日 パブリックコメント 特定秘密の保護に関する法律案に反対する意見書 2013年9月9日
会長声明 憲法第96条の発議要件を緩和する改正に反対する会長声明 2013年6月8日
会長声明 「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明 2013年6月8日
パブリックコメント 法制審議会「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」に対する意見 2013年5月23日
パブリックコメント 法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめに対する意見 2013年5月13日

平成24年度分(会長:清水 毅)
会長声明 司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明 2013年1月17日
会長声明 生活保護の給付基準切り下げに反対する会長声明 2012年11月13日
会長声明 発達障害のある被告人による実姉刺殺事件判決に関する会長声明 2012年9月8日
会長声明 地方消費者行政に対する国の実効的支援を求める会長声明 2012年9月8日
会長声明 上限金利の引き上げ及び総量規制の撤廃に反対する会長声明 2012年8月4日
会長声明 「裁判所法の一部を改正する法律」の成立に伴い司法修習生の給費制の復活を求める会長声明 2012年8月4日
会長声明 任意整理における統一基準に関する会長声明 2012年6月2日
総会決議 秘密保全法制に反対する総会決議 2012年5月22日

平成23年度分(会長:柴山 聡)
会長声明 県内全市町村に対し暴力団排除条例の早期制定を求める会長声明 2011年11月12日
会長声明 労働者派遣法抜本改正に関する会長声明 2011年6月11日
会長声明 「布川事件」の再審無罪判決に関する会長声明 2011年5月24日
総会決議 民法(債権法)改正に関する総会決議 2011年5月13日
総会決議 全面的国選付添人制度の実現を求める決議 2011年5月13日

平成22年度分(会長:信田 恵三)
総会決議 各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入及び パリ原則に準拠した政府から独立した国内人権機関の設置を求める決議 2011年2月25日
会長声明 司法修習費用給費制の在り方等について検討する組織の早期設置を求める会長声明 2011年1月12日
会長声明 秋田弁護士会所属弁護士殺害事件に関する会長声明 2010年11月8日
会長声明 非嫡出子の相続分差別撤廃を求める会長声明 2010年7月13日
会長声明 全面的な国選付添人制度の実現を求める会長声明 2010年7月7日
会長声明 横浜弁護士会所属会員殺害事件に関する会長声明 2010年6月8日
平成21年度分(会長:平嶋 育造)
会長声明 改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明 2009年12月12日
会長声明 司法修習生の給費制の継続を求める会長声明 2009年8月27日
会長声明 労働者派遣法の抜本改正を求める会長声明 2009年7月9日

平成20年度分(会長:石川 善一)
会長談話 裁判員裁判が始まる年を迎えて 2009年1月1日
会長談話 「都留ひまわり基金法律事務所」開設にあたって 2008年9月1日
会長談話 ヤミ金融被害者の救済のために 2008年7月30日
会長声明 強い消費者庁の実現を求める会長声明 2008年6月7日
会長談話 憲法記念日~施行61周年~を迎えて 2008年5月3日

平成19年度分(会長:小澤 義彦)
会長声明 捜査官による取調べの全過程の可視化(録音・録画)を求める会長声明 2008年3月24日
会長声明 「犯罪被害者等による少年審判の傍聴」に反対する会長声明 2008年2月27日
会長談話 理想と現実(会長挨拶に代えて) 2007年11月10日
会長談話 8月と平和と戦争 2007年8月10日
会長談話 会務は他人(ひと)の為成らず 2007年6月5日

平成18年度分(会長:田邊 護)
会長声明 グレー金利絶対反対・緊急会長声明 2006年9月12日
会長声明 高金利の引き下げ等を求める会長声明 2006年4月10日

平成17年度分(会長:田中 正志)
会長声明 「ゲートキーパー立法」に反対する会長声明 2006年2月24日
総会決議 代用監獄の廃止を求める決議 2006年2月24日
会長声明 共謀罪の新設に反対する会長声明 2006年1月20日
会長声明 少年法等の改正に関する会長声明 2005年10月8日
会長談話 9月度会長談話 2005年9月13日
会長談話 7月度会長談話 2005年7月23日
会長談話 6月度会長談話 2005年6月20日
会長談話 5月度会長談話 2005年5月13日

平成16年度分(会長:水上 浩一)
会長声明 除名処分についての会長声明 2005年2月21日
会長声明 声明 2004年11月22日
会長声明 声明 2004年10月12日
会長声明 司法修習生の給費制堅持を求める声明 2004年8月10日
会長声明 会長声明 2004年4月20日

平成15年度分(会長:深澤 一郎)
会長声明 自衛隊のイラク派遣の中止を求める会長声明 2004年2月27日
会長声明 司法修習生の給費制維持を求める声明 2003年10月16日
―――――◦―――――◦―――――
さらなる生活保護基準の引下げに強く反対する会長声明
厚生労働省は、2017(平成29)年12月14日、社会保障審議会生活保護基準部会がとりまとめた「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」を公表した。
その後、政府は、生活保護受給額のうち食費や光熱費など生活費相当分について、支給水準を2018(平成30)年10月から3年かけて段階的に引き下げて、政府の支出額を年160億円(約1.8%)削減する方針を決めた。政府方針によれば、子育て世帯への児童養育加算は40億円の増額としたものの、生活費本体については180億円、母子加算については20億円の削減となる。
上記の支給水準引下げの根拠として、生活扶助基準額と年収下位10%の層を比較して、生活扶助基準額のほうが高いことが挙げられている。
しかし、そもそも生活保護制度の捕捉率(制度を利用できる資格がある人の中で生活保護制度を利用している人の割合)は15.3%から32.1%にすぎず(2010(平成22)年4月9日付厚生労働省発表の「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」)、年収下位10%の層の多くは、生活保護制度を利用できておらず、生活保護基準以下の生活を強いられているものと考えられる。したがって、上記引下げの根拠は、単に捕捉率の低さを浮き彫りにしたものに過ぎない。
むしろ、このような年収下位層と生活保護基準の比較によって、支給金額を検討する方法では、捕捉率の低下、つまり生活保護を受けていない低所得者層が増えるほどに、生活保護を受けている層の支給水準も引き下げられ、貧困問題がより深刻化していくことにもなりかねず、いわば負のスパイラルを招きかねない。
上記「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」においても、「絶対的な水準を割ってしまう懸念がある」など、前記手法の問題点が多数指摘されている。
「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する憲法や、子どもの健やかな成長発達を保障する子どもの権利条約に照らせば、どのような生活保護制度であるべきかの検討は、単に特定の算定方式による比較を機械的にあてはめるべきではなく、生活保護利用者を含む低所得者層の生活の実態を十分把握したうえで行うべきである。にもかかわらず、2013(平成25)年以降の生活保護基準引下げについて、このような観点から適切な検討がなされたとは言い難い。
しかも現在の政府は、量的金融緩和によるインフレ誘導政策を基本としているのであるから、当該方針は必然的に物価上昇による必要生活費の上昇を内包するものである。生活保護水準は、健康で文化的な最低限度の生活を保障する趣旨で定められているのであるから、インフレを誘導するのであれば、生活保護水準もそれに合わせて上昇させなければ最低限度の生活の維持も困難となることは明らかである。こうした点を十分に考慮しないまま、生活保護基準を引き下げることはあってはならない。
2013(平成25)年以降の生活保護基準引下げについての十分な検討を欠き、しかも金融政策といった他の政策との整合性もないままに、本来生活保護制度によって保護されるべき低所得者層との比較を根拠として、再び生活保護基準を引き下げることは到底容認できない。
当会は、今後予定されている生活保護基準の引下げに強く反対するものである。
2018年1月26日
山梨県弁護士会会長 堀内寿人

いわゆる共謀罪法案の成立に強く抗議し廃止を求める会長声明
1. 2017年6月15日、いわゆる「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法の改正案(以下「共謀罪法案」という。)が、参議院法務委員会の採決を省略した参議院本会議における採決により成立した。
当会は、共謀罪法案に反対する会長声明を過去数度にわたり発し、「共謀罪」が、刑法の基本原則に反し、内心の自由や表現の自由を侵害する危険が極めて高いことを指摘してきた。
2. しかしながら、本国会の審議において、政府は、一方では「共謀罪」がなければテロ対策を講じることができないかのような印象を市民に抱かせようしながら、「共謀罪」の立法目的、277の対象犯罪の妥当性、構成要件の明確性といった「共謀罪」の根本的な問題点については、市民が納得できるような答弁を行わなかった。
また、「共謀罪」の適用にあたっては、メールや会話等を捜査対象とする必要性から、通信傍受のさらなる拡大や会話傍受等を通じて捜査機関による日常的な監視が拡大し、市民のプライバシーの侵害や表現行為の萎縮につながるおそれがある。実際、国連人権理事会の特別報告者からも、「共謀罪」がプライバシー権を侵害する懸念が示されているところである。
3. さらに、国会の会期を延長するなどして法務委員会で共謀罪法案の審議をさらに継続することが可能であったにもかかわらず、参議院は、法務委員会の採決を経ないままその審議を打ち切り、本会議でこれを成立させた。こうした参議院における法案審議の経過は、民主主義の否定といっても過言ではない。
4. よって、当会は、共謀罪法案が基本的人権を大きく制限する可能性の高い法案であるにもかかわらず、審議を途中で打ち切るという極めて異例な手続を経て成立に至ったことに強く抗議するとともに、成立した法律の廃止を求め、廃止が実現するまでの間は、この法律が濫用されることがないように厳しく注視していく所存である。
2017年6月22日
山梨県弁護士会会長 堀内 寿人

いわゆる「共謀罪」法案の廃案を求める会長声明
1. 2017年3月21日に、過去3度廃案となった「共謀罪」について、テロ対策を名目としてこれを新設する組織犯罪処罰法改正案(以下「「共謀罪」法案」という。)が閣議決定され、国会に提出された。当会は、「共謀罪」は重要な基本的人権を侵害するものであるなどとして、過去3度(2006年1月20日、2014年10月11日、2016年10月1日)「共謀罪」創設に反対する会長声明を出した。「共謀罪」は、具体的な犯罪について2人以上の者が話し合って合意するだけで処罰できる犯罪のことであるが、その合意のみで処罰するのは、内心の自由や表現の自由を侵害する危険が極めて高いことは従前の指摘のとおりである。
2. 「共謀罪」法案では、犯罪主体を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」としている。しかし、「テロリズム集団」について何も定めてない。「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」には「常習性」や「反復継続性」等の要件も付加されておらず、犯罪主体が限定されていると評価することはできない。また、適法な目的を有する団体でも、犯罪の共謀を行った時点で「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」となったと解釈できることから、どのような団体でも「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と認定される危険性が高く、一般市民も処罰の対象となる可能性があることを否定できない。
3. また、「共謀罪」法案では、「準備行為」を要件とし、「準備行為」について、「資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為」としている。しかし、その「準備行為」も法益侵害の危険性が全くない行為も含むものであって、この要件自体が犯罪を限定する機能をしておらず、本質的には「共謀罪」そのものであることには変わりがない。
4. さらに「共謀罪」法案は、対象犯罪を600以上の犯罪から277に限定している。しかし、いくら対象犯罪を限定しても、共謀罪が内包している本質的な危険性は変わらない。277に限定した犯罪の中でも、未遂犯・予備犯を処罰せず既遂犯のみを処罰対象としている犯罪を多数含んでおり、既遂犯の処罰を基本とする現行刑法の基本原則を否定するものである。特に、対象犯罪には、偽証罪も含まれているので、刑事裁判における弁護人と証人との打合せ等が偽証罪の共謀として検挙されるおそれがあり、正当な弁護活動が妨害される重大な懸念を含んでいる
5. したがって、組織犯罪処罰法の改正案は、「共謀罪」の問題点を解消することなく、その本質はいわゆる「共謀罪」と何ら変わらず、重要な基本的人権を侵害するものである。
6. よって、当会は、いわゆる「共謀罪」法案の廃案を強く求める。
2017年3月11日
山梨県弁護士会会長 松本成輔

民法の成年年齢の引下げに反対する意見書
第1 意見の趣旨
民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることについては,反対である。
第2 意見の理由
1. はじめに
平成19年5月に成立した日本国憲法改正手続に関する法律(国民投票法。平成19年5月18日法律第51号)は,満18歳以上が国民投票の投票権を有するとし,同法附則第3条第1項(現在では附則(平成26年6月20日法律75号)3項)では「満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう,選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法,成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする。」と定められた。
この附則を受けて,法制審議会は,第160回会議(平成21年10月28日)で民法の成年年齢を18歳に引き下げるのが適当であるとする「民法の成年年齢引下げについての最終報告書」(以下「最終報告書」という。)を採択し,法務大臣に答申した。そして,平成27年6月17日,公職選挙法(昭和25年4月15日法律第100号)が改正され,選挙年齢を18歳に引き下げることとなった。
そこで,あらためて同附則第3条第1項が選挙年齢とともに検討課題とした民法の成年年齢の引き下げの問題がクローズアップされることになった。
その後,平成28年9月には民法の成年年齢の引下げの施行方法に関する意見聴取手続(以下「パブリックコメント」という。)がなされ,この結果を踏まえ,現在,成年年齢引下げに関する民法改正法案提出の動きが加速している。
しかしながら,以下に述べるように民法の成年年齢を早急に引き下げる積極的意義はないばかりか,民法の成年年齢の引下げには多くの問題点があり,それに対する十分な対応策も採られていない現在,民法改正による成年年齢引下げには反対である。
2. 民法の成年年齢引下げにおける積極的意義の欠如
最終報告書は,「憲法は成年者に対して選挙権を保障しているだけであって,それ以外の者に選挙権を与えることを禁じてはおらず,民法の成年年齢より低く選挙年齢を定めることが可能であることは,学説上も異論がない」ところであり,理論的には「選挙年齢と民法の成年年齢とは必ずしも一致する必要がない」とした上で,選挙年齢と民法の成年年齢とは一致していることが望ましいと結論づけている。
その根拠としては,「選挙年齢の引き下げにより新たに選挙権を取得する18歳,19歳の者にとって,政治への参加意欲を高めることにつながり,また,より責任を伴った選挙権の行使を期待することができること」,「社会的・経済的にフルメンバーシップを取得する年齢は一致している方が,法制度としてシンプルであり,また,若年者に,社会的・経済的に「大人」となることの意味を理解してもらいやすいこと」,「大多数の国において私法上の成年年齢と選挙年齢を一致させていること」,「国民投票法の法案審議の際の提出者の答弁等において,民法上の判断能力と参政権の判断能力とは一致すべきであるとの説明が行われていること」等を挙げる。
しかし,18歳,19歳の者の政治への参加意欲を高めることや責任を伴った選挙権の行使は,若年者への政治教育の充実や,若年者の政治へのアクセスを容易にする等の直接的な施策によって行うべきであり,民法の成年年齢を引き下げることで直ちにこれらを達成できるとは考えがたい。
また,法律における年齢区分はそれぞれの法律の立法目的や保護法益ごとに,個別具体的に検討されるべきものであり,一致している方がシンプルであるといった単純な理由で安易に決められてはならない。民法の成年年齢については,あくまでも私法上の行為能力を付与するに相応しい判断能力があるか否かが正面から論じられるべきであり,選挙権の判断能力と一致すべき必然性はない。
また,少なくともわが国においては,後述するように各問題点を解決する施策の整備が現段階では不十分であることからすれば,海外諸国とは事情が異なるのであって,諸外国と同様に考える必要はない。
パブリックコメントにおいても,193件の回答のうち,消費者被害など施行に伴う支障があるとの意見が多数寄せられており,また施行までの周知期間として,3年以上の期間が必要とする意見が多い。さらに,193件の回答のほかにも,単に引下げの可否などを回答したものが158件あり,その大半が引下げに慎重や反対であったとの新聞報道がなされている。
したがって,民法の成年年齢を引き下げなければならない積極的意義はないと言わざるを得ない。
3. 若年者に対する消費者被害の拡大のおそれ
現行民法においては,未成年が親権者の同意を得ずに単独で行った法律行為については,未成年者であることを理由として,取り消すことができる(民法第5条2項)。この未成年者取消権は,未成年者が違法若しくは不当な契約を締結するリスクを回避するにあたって絶大な効果を有しており,かつ,悪徳業者に対して未成年者を契約の対象にしないという大きな抑止力となっている。
しかし,民法の成年年齢を18歳に引き下げた場合,18歳,19歳の若年者がかかる取消権を失うことになる。
現行民法の下では,未成年者取消権のない20歳以上の者が消費者被害のターゲットとなっているとみられ,とくに成人したばかりの若年者はターゲットにされやすい傾向にある。独立行政法人国民生活センターの発表(平成28年10月27日付「成人になると巻き込まれやすくなる消費者トラブル-きっぱり断ることも勇気!-」)によれば,2015年度の18歳~19歳の相談件数(平均値)は5,747件であるところ,20歳~22歳の相談件数(平均値)は8,935件に及び,成人後に3,000件以上も相談が増えている。この傾向は,2016年度も同様であり,2016年9月30日までの登録分で18歳~19歳の相談件数(平均値)は2,353件,20歳~22歳の相談件数(平均値)は3,544件となっている。契約内容も,未成年者のトラブルではあまり見られなかった「サイドビジネス」や「マルチ取引」,「エステ」が上位になり,契約金額も高額になっていることが指摘されている。特に「マルチ取引」は,総件数に対する20歳~22歳男性の占める割合が18歳~19歳男性の約7倍に増加している。
民法の成年年齢が引き下げられ,18歳,19歳の若年者が未成年者取消権を喪失すれば,そのターゲットとなる層が18歳,19歳にまで拡大することは必至である。ところが,世論調査においては,18?19歳の85%が民法の成年年齢の引下げの議論を知らず,50%が「関心がない」又は「あまり関心がない」と回答しており(2013年内閣府「民法の成年年齢に関する世論調査」),自らが消費者被害の標的となりうることについて認識が低く,あまりに無防備である。
しかも,上記未成年者取消権を喪失した際には,それに代わる施策として,事業者に課すべき若年者の特性や取引類型に応じた説明義務の強化策,未成年者取消権にかわる保護制度の創設,若年者に対する消費者教育の充実など若年者に対する消費者保護施策が不可欠であるところ,いずれも現段階においては整っているとは,到底言い難い状況にある。パブリックコメントにおいても,施行に伴う支障として消費者被害について指摘する意見が多数寄せられており,現段階では施策の整備が十分でないことを示している。
したがって,民法の成年年齢の安易な引下げは,若年者の消費者被害を蔓延させることになりかねず極めて危険である。
4. 親権に服する年齢を引き下げた場合の問題点
(1)若年者の困窮の増大のおそれ
最終報告書は,「現代の若年者の中には,いわゆるニート,フリーター,ひきこもり,不登校などの言葉に代表されるような,経済的に自立していない者や社会や他人に無関心な者,さらには親から虐待を受けたことにより健康な精神的成長を遂げられず,自傷他害の傾向がある」者等が増加しているとし,このような状況の下で民法の成年年齢を引き下げ,親権の対象となる年齢が引き下げられると,自立に困難を抱える若年者が親の保護を受けられなくなり,ますます困窮するおそれがある点を指摘する。パブリックコメントにおいても,授業料や学校徴収金等の高校生活に必要な費用も保護者に依存している状況の中で,現在は未納者については保護者に督促を行っており,民法の成年年齢の引下げにより,この部分に課題が生ずる可能性があると全国高等学校長協会より指摘されている。現実には,18歳,19歳の若年者の大部分は学生であり,むしろ経済的に自立している者は少数であるのが現状である。
就労支援,教育訓練制度,シティズンシップ教育などの支援が不可欠であるが,いずれも十分に実行されているとは言い難い状況にある。
(2)高校教育における生徒指導の困難化のおそれ
また,最終報告書は,「民法の成年年齢を18歳に引き下げると,高校3年生で成年(18歳)に達した生徒については,親権者を介しての指導が困難となり,教師が直接生徒と対峙せざるを得なくなり,生徒指導が困難になるおそれがある。」という点を指摘している。高等学校内に成年者と未成年者の生徒が入り交じることとなり,法律関係,指導関係の取り扱いに違いが生じてくることは必然である。どのような問題点が学校内で生じてくるのかなど,議論が十分に尽くされているとは言い難い状況にある。少なくとも,学校外での生活の指導等について,従来の学則をそのままあてはめることができるのかという問題点は明らかであり,この点に対する有効な施策がなされているとは言い難い。
したがって,自立に困難を抱える若年者の困窮の増大や高校教育における生徒指導の困難化のおそれからしても,民法の成年年齢の引下げには反対である。
5. 養育費支払終期の事実上の繰上げのおそれ
養育費は,子の福祉の観点からも非常に重要である。
理論的には,養育費の支払終期については,経済的に自立していない子,すなわち「未成熟子」概念を基準とすべきであり,そもそも成年年齢を基準とすべきものではない。
しかし,裁判所等作成の申立書の定型書式では対象者を「未成年者」と表示していたり,審判書や調停調書のひな型にある当事者目録や主文・条項の記載例でも「子」等ではなく,「未成年者」と表示されていることがある。
そのため,養育費に関する合意や裁判の際,「子が成年に達する日の属する月まで」等と定められる例もある。
このような合意が,民法の成年年齢の引下げにより,養育費支払終期の繰り上げに直結してしまうおそれを否定できない。
養育費の支払終期については「未成熟子」概念を基準とすべきであるとの考え方を裁判実務の中で実現するだけでなく,国民全体にも広く周知を図る必要がある。
そして,民法の成年年齢の引下げにより,養育費支払終期の繰り上げに直結してしまうことのないようにするための施策が必要であるが,現段階で整っているとは言い難い。
したがって,養育費の観点からしても,民法の成年年齢の引下げには反対である。
6. 労働基準法第58条による労働契約解除権の喪失のおそれ
民法の成年年齢を引き下げた場合,18歳,19歳の若年者は,民法の未成年者取消権による保護だけでなく,労働基準法第58条第2項の未成年者にとって不利な労働契約(親権者等の同意に基づいて成立した契約も含む)の解除権による保護も受けられなくなる可能性が高い。労働契約の解除権による抑止力が働かなくなる結果,労働条件の劣悪ないわゆるブラック企業等による労働者被害が18歳,19歳の若年者の間で一気に拡大する可能性がある。
労働環境におけるトラブルは後を絶たず,若年者は経験の不足から労働契約締結時に十分に労働環境を検討することができず,精神的に追い込まれていく事件が後を絶たない。
劣悪な労働環境を回避する制度や,他の保護制度の創設が不可欠であるが,現段階で整っているとは言い難い。
したがって,労働契約解除権喪失の観点からしても,民法の成年年齢の引下げには反対である。
7. 児童福祉法・児童扶養手当法など,児童福祉における若年者支援の後退のおそれ平成28年6月に成立した改正児童福祉法には,児童自立支援生活援助事業の対象期間を22歳の年度末までとする内容が盛り込まれた。
これは,困難を抱え自立に課題のある若者に対しては18歳を超えても社会的な支援が必要であることが社会的合意になっていることを示しており,民法の成年年齢を引き下げることは,この流れに逆行するものであり,若年者支援施策の整備を後退させるおそれがある。
したがって,民法の成年年齢の引下げは,改正児童福祉法の精神にも悖るものであり,反対である。
8. 未成年者後見の終了に伴う支援断ち切りのおそれ
18歳,19歳の若年者のうち,両親がいないために未成年後見が開始されている未成年者で,中でも専門職後見人のみが選任されている場合については,民法の成年年齢の引下げによって,第三者の支援自体が断ち切られる事になる。
例えば,被後見人である若年者が高校在学中に18歳に達し,後見が終了すると,進学を希望したとしても,その後の進学に関わる事務作業の継続的支援が断ち切られることになる。
このような場合に関する議論が十分になされたとは言い難い。
したがって,未成年被後見人に対する支援継続の観点からも,民法の成年年齢の引下げに反対である。
9. 結語
以上のとおり,民法の成年年齢の引下げについては,積極的意義がないばかりか,既に述べたような様々な問題点があることからすれば,民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることについては,反対である。
2017年2月24日
山梨県弁護士会会長 松本成輔
「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の廃止を求める会長声明
平成28年12月15日,「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下,「カジノ解禁推進法」という。)が,衆議院本会議で可決,成立した。
当会は,平成26年10月11日付会長声明において,カジノ解禁推進法案が,ギャンブル依存症患者・多重債務者増加のおそれ,青少年の健全育成への悪影響,暴力団関与のおそれ,経済効果に対する疑問,といった諸問題を含み,さらには,カジノにおけるギャンブルが刑法の禁止する「賭博」にあたることを指摘して,カジノ解禁推進法案に反対する旨の意見を表明した。
これらの諸問題は,国民生活に重大な影響を及ぼすものばかりであり,カジノ解禁推進法案の審議にあたっては,広く国民各層から意見を吸い上げたうえで,法案の是非を慎重に判断すべきであった。
しかし,衆議院内閣委員会では,わずか6時間という極めて短い審議時間で採決が強行された。参議院内閣委員会でも,十分な審議が行われず,修正案についても,修正動議の後,わずか数十分の審議で可決された。
加えて,当会が指摘した諸問題の解決策については,何ら具体的な提案がなされておらず,施行期間までに作成されるとしても諸問題の解決が短期間で実現できる見込みは低く,国民生活に重大な影響が及ぶおそれは払拭されていない。
よって,当会は,「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」の成立に強く抗議し,本法律の廃止を求める。
2017年2月11日
山梨県弁護士会会長 松本成輔

南スーダンにPKOとして派遣される自衛隊部隊に「駆け付け警護」等の新任務を付与することに抗議し、改めて安保法制の廃止を求める会長声明
1. 政府は、平成28年11月15日、南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に国際連合平和維持活動(PKO)として派遣される自衛隊に対して、「駆け付け警護」の新任務を付与する閣議決定を行うとともに、「宿営地の共同防護」が可能となることを確認した。
「駆け付け警護」とは、離れた場所にいる国連やNGOの職員が武装勢力等に襲撃された場合、その救出等を行うものであり、「宿営地の共同防護」とは、自衛隊が宿営する宿営地が襲撃を受けた場合に、他国軍部隊とともに反撃を行うというものである。上記閣議決定に基づき、同年12月12日以降、南スーダンに派遣された自衛隊部隊が「駆け付け警護」等の新任務遂行のために武器使用を行うことが可能となった。
2. 「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」の任務遂行のために武器使用を認めることは、従来自衛隊のPKO活動の合憲性の根拠とされた自己保存型のみへの武器使用の制限を超え、憲法9条が禁止する海外での武力の行使に至る危険を有するものである。そのため、当会はPKO法改正も含む安保法制に対して一貫して反対してきた。
この度、安保法制の初めての発動として、南スーダンに派遣した自衛隊部隊に「駆け付け警護」等の新任務を付与したことは、日本国憲法の立憲主義・平和主義に反するものと言わざるを得ない。
3. 南スーダンの現状は、自衛隊が派遣された首都ジュバにおいて平成28年7月に大規模な武力衝突が発生し、同年10月には反政府軍のトップが和平合意は崩壊したと発言している。さらに、国連の報告等でも、和平合意は崩壊したとされ、民族対立を背景に今後さらに戦闘が激化することへの懸念が表明されている。また、政府軍・反政府軍による国連施設等への攻撃が行われていることも報告されている。
政府は、新任務付与の合憲性の根拠として、「紛争当事者間での停戦合意」を掲げているが、現在の南スーダンでは、「停戦合意」がすでに破たんしていることは明らかである。
このような極めて危険な現状において、自衛隊が新任務を遂行すれば、戦後初めて自衛隊員が戦闘により殺傷され、また、他国の市民を殺傷することになりかねない。
4. 以上より、当会は南スーダンにPKOとして派遣される自衛隊部隊に「駆け付け警護」等の新任務を付与することに強く抗議し、閣議決定の撤回を求めるとともに、改めて立憲主義違反の安保法制の廃止を求めるものである。
2017年1月14日
山梨県弁護士会会長 松本成輔

テロ等組織犯罪準備罪の新設に反対する会長声明
1. 政府は、過去3度廃案となった共謀罪創設規定を含む法案について、「共謀罪」を「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を改めたうえで、これを新設する組織犯罪処罰法改正案(以下「新法案」という。)を来年の通常国会に提出する方針であるとの報道がなされている。
2. 当会は、共謀罪は外形的行為のない「意思」を処罰しないとする刑事法体系の基本原則に反するばかりか、表現行為を処罰する点で表現の自由や思想信条の自由等基本的人権を侵害するものであることなどから、過去2度(2006年1月20日、2014年10月11日)共謀罪創設に反対する会長声明を出している。
3. 現在報道されている新法案では、犯罪の「遂行2人以上で計画した者」を処罰することとしている。しかし、「計画」とは「犯罪の合意」と同義であり、その法的性質は「共謀」と何ら変わることはない。また、新法案では、「犯罪の実行の準備行為」を新たな要件として付加している。しかし、資金の準備等といった予備罪・準備罪における予備行為・準備行為より前段階の危険性の乏しい行為を広範に含む可能性があり、極めて抽象的で恣意的な解釈が可能であって、処罰範囲を限定するような機能を有しておらず共謀罪の危険性は変わることはない。
また、新法案では、適用対象を単に「団体」ではなく「組織的犯罪集団」とし、その定義を「目的が4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」としている。しかし、そのような「組織的犯罪集団」を明確に定義することは困難であり、その解釈によっては適用対象が拡大する危険性が高い。犯罪を計画すれば犯罪の実行がその団体の目的であると解釈することも可能であり、適用対象の限定はないことになる。
さらに、新法案は、これまでの共謀罪法案と同様にその対象となる「犯罪」を長期4年以上の懲役・禁錮刑が定められている罪について一律に定め、現時点では対象となる「犯罪」は600以上にもわたる。その範囲は非常に広範にわたることになり、表現の自由等を侵害する危険性は何ら変わることはない。
4. そのうえ、新法案によっても、その「準備行為」の捜査のためには、さらなる通信傍受の拡大や、捜査機関による会話傍受が導入される事態が予想される。その結果、捜査機関が個人の会話や電話、メールなどの日常的なやりとりを常時監視することとなり、市民の表現活動を萎縮させてしまう懸念が消え去ることはない。
5. 政府は、新法案の新設は国連越境組織犯罪防止条約(以下「条約」という。)を締結するための国内法の整備としている。しかし、現行法上でも、重大犯罪について予備罪、共謀罪が存在しているし、判例上も共謀共同正犯理論が確立していて、その是非は格別としても、予備の共謀共同正犯、他人のための予備についても処罰が可能であり、条約を締結するために新法案の制定は不可欠なものではない。
また、テロ対策の必要性は認めるものの、そもそも条約は経済的な組織犯罪を対象とするものであり、テロ対策とは無関係である。新法案の対象行為である600以上の犯罪にはテロとは全く関係ない犯罪も含まれている。
6. したがって、テロ等組織犯罪準備罪は、共謀罪の問題点が解消されておらず、その本質は共謀罪と何ら変わらないことから、基本的人権を侵害する危険性が高く、その新設には強く反対する。
2016年10月1日
山梨県弁護士会会長 松本成輔

消費生活センターの設置を求める会長声明
第1 声明の趣旨
当会は,県内全市町村が,消費生活センターを設置することを求める。
第2 声明の理由
1. はじめに
当会は,日ごろの消費者問題への取組状況から,消費者被害の予防と救済のためには,消費者に身近な市町村において,消費生活相談体制を充実することが不可欠であるとの認識に至り,平成27年7月13日,消費生活相談窓口の充実を求めるための意見書を発表した。
また,国は,消費者問題に関する相談・救済体制の整備のため,①人口5万人以上の全市町及び人口5万人未満の市町村の50%以上に消費生活センターを設置,②市町村の50%以上に消費生活相談員を配置,③相談員の資格保有率を75%以上にする,という数値目標を定めている。しかし,山梨県は,この3つの数値目標すべてで目標未達成であり,かつ,全国平均を下回っている。山梨県は,全国の都道府県の中でも,消費者問題の相談・救済体制の整備が遅れている県の1つと言わざるを得ない。
2. 山梨県消費者基本計画の策定
山梨県は,平成28年3月29日,上記数値目標未達成の現状を踏まえ,県内の消費者施策を総合的に推進するために「山梨県消費者基本計画」(以下「県計画」という。)を策定した。
県計画では,重点施策の1番目に「市町村における消費生活センターの設置または消費生活相談員の配置による相談体制の充実」が掲げられており,山梨県として「どこに住んでいても質の高い相談・救済を受けられ,安全・安心が確保される体制整備を促進」(県計画19頁)するとしている。
そして,市町村が実施する相談体制の充実等に関し,山梨県が支援を行い,県計画の実施期間である平成28年度から平成32年度の5年間で,上記3つの数値目標を達成するとしている。
3. 当会の意見
しかし,当会は,「どこに住んでいても質の高い相談・救済を受けられ,安全・安心が確保」されるためには,上記3つの数値目標に関わらず,県内の全市町村に消費生活センターを設置すること(複数の市町村による広域連携を含む。)が必要と考える。
なぜなら,消費生活センターは,消費生活相談員を配置し,消費者問題に専門特化した相談・あっせん業務を行う専門機関であり(消費者安全法第10条第2項),この相談・あっせん業務は連続的かつ速やかに行うことが想定されている。そして,このような相談・あっせん業務を行う機関を,県内全市町村が設置することで,初めて,消費者が,どこに住んでいても,質の高い相談・救済を迅速に受けられるようになるからである。
また,既に消費生活センターを設置し,週5日の終日相談を実施する甲府市,および富士吉田市ほか5町村(山中湖村,忍野村,西桂町,富士河口湖町,鳴沢村)の消費生活相談件数は,センター設置以降,急激に増加しており,市町村の相談体制充実により住民の相談利用が促進される結果となっている。
さらに,当会は,住民から消費者問題に関する法律相談を受付けているほか,平成28年4月から,消費生活相談員を対象とした無料法律相談である「消費生活相談員ほっと相談」の運用を開始した。この制度は,消費生活相談員が対応に悩む事例について,経済的負担なく当会の弁護士に相談することができる制度である。当会は,県内全市町村が消費生活センターを設置し,消費生活相談体制を整備するための取組みの一環として,上記ほっと相談を実施するものである。これにより,県内市町村の消費生活センターと当会が連携して消費者問題に対処することが期待される。
よって,当会は,声明の趣旨のとおり,県内全市町村が消費生活センターを設置することを求める。
2016年5月19日
山梨県弁護士会会長 松本成輔

69回目の憲法記念日に寄せる談話
関東弁護士会連合会及び当連合会管内の13弁護士会の会長は、憲法記念日に寄せて、以下のとおり談話を発表する。
1947年(昭和22年)5月3日に施行された日本国憲法は、今年、69回目の憲法記念日を迎えた。日本国憲法は、わが国が平和的に繁栄し、国際社会から高い信頼を得るのに重要な役割を果たしてきた。しかし、今、日本国憲法は、大きな試練にさらされている。
昨年9月19日、平和安全法制整備法及び国際平和支援法(いわゆる「安全保障関連法」)が成立し、本年3月29日から施行された。安全保障関連法は、歴代内閣が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認している。そもそも、安全保障関連法の審議に先立ち、閣議決定により憲法第9条の解釈を変更し、国会においても、十分な審議を尽くすことのないまま、多くの国民が反対する中で、極めて拙速にこの法律を成立させたことは、立憲主義に反するものである。
立憲主義は、人類が多くの過ちを繰り返し、苦難の歴史を経た結果、権力を制限し、国民の権利・自由を擁護することを目的として確立した近代憲法の基本理念である。憲法は、国家権力のあり方を規定するものであり、そのあり方を決めるのは、主権者である私たち国民である。私たちは、歴史を知り、わが国を取り巻く情勢を正確な情報に基づき冷静に分析し、そして、どのような国を目指すのかを深く考えなければならない。憲法に何を託すのか、問われているのは、私たち自身である。本日の憲法記念日を、憲法の意義について改めて認識するとともに、これからの国のあり方を考える機会としたい。
先の大戦により、わが国は、国民が存亡の危機に陥った。国土は焦土と化し、310万人を超える国民が犠牲になった。世界的に見ても甚大な犠牲が伴った。このような戦争の生々しい傷跡が残る中で制定された日本国憲法は、「日本国民は、・・われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と宣言した(憲法前文)。戦後、70余年を経て、戦争を経験した世代は、少なくなり、またわが国を取り巻く国際情勢も変化しているが、私たち国民は、憲法に込められたこの崇高な理想を心に刻む必要がある。
また、憲法が施行された翌々年(1949年(昭和24年))に制定された弁護士法は、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と規定し(第1条第1項)、「弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」と規定している(同条第2項)。私たち弁護士は、この使命を改めて自覚し、その職責を果たすため、誠実に努力するとともに、戦争が、国民の尊い命を危険にさらし、その生存を脅かすものであり、最大の人権侵害であることを常に意識して、人権擁護活動をしなければならない。
以上の次第であるので、関東弁護士会連合会及び当連合会管内の13弁護士会の会長は、安全保障関連法の運用・適用に反対し、その廃止を強く求めるとともに、弁護士の使命を果たすため、これからも日本国憲法の基本理念を堅持し、戦争のない平和な社会を守るための取組に全力を尽くす所存である。
2016年5月3日
関東弁護士会連合会理事長 江藤 洋一
小林 元治(東京弁護士会会長)
小田 修司(第一東京弁護士会会長)
早稲田祐美子(第二東京弁護士会会長)
三浦  修(神奈川県弁護士会会長)
福地 輝久(埼玉弁護士会会長)
山村 清治(千葉県弁護士会会長)
山形  学(茨城県弁護士会会長)
室井 淳男(栃木県弁護士会会長)
小此木 清(群馬弁護士会会長)
洞江  秀(静岡県弁護士会会長)
松本 成輔(山梨県弁護士会会長)
柳澤 修嗣(長野県弁護士会会長)
菊池 弘之(新潟県弁護士会会長)

安保関連法の施行に抗議し、その適用・運用に反対し、あらためてその廃止を求める会長声明
本年3月29日、安保関連法(平和安全法制整備法及び国際平和支援法)が施行された。
同法は、歴代の内閣が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を、「存立危機事態」なる不明確かつ抽象的な要件の下、容認するものであって、明らかに憲法9条に反し、無効である。
また、従前、非戦闘地域でのみ可能であった後方支援において、武器及び弾薬提供、並びに戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備(以下「戦闘行為への給油等」という。)は禁止されていた。それにもかかわらず、同法は、現に戦闘が行われていない地域であれば後方支援を可能とし、加えて、弾薬提供及び戦闘行為への給油等をも許すものであり、このことは、自衛隊が海外において、外国軍隊の武力行使と一体化する危険性を孕むものであって、武力の行使を禁止する憲法9条に明白に反する。
さらに、同法は、一内閣の閣議決定による憲法解釈の変更に基づき法案が作成されたうえ、大多数の国民の反対意見を無視し、国会における十分な審議が尽されることなく、強行採決され成立したものである。これは本来必要な憲法改正手続を経ることなく、立法によって憲法を実質的に変えようとするものであるから、立憲主義、国民主権の基本原則に明らかに反する。
当会は、2014年5月の「集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲に反対する総会決議」以降、2015年5月の安保関連法案の提出、並びに同年7月及び9月の衆参両議院での強行採決に当たり、その都度、一内閣による極めて横暴な一連の行動に対し、抗議してきた。こうした当会の抗議は、昨年6月と9月に行った当会主催の安保関連法反対の憲法市民集会・パレードに参加頂いた延べ2000人もの市民の方々の賛同により支持されている。
したがって、当会は、安保関連法が施行されたことに抗議し、その適用・運用に反対し、あらためてその廃止を求めるものである。
2016年4月9日
山梨県弁護士会会長 松本成輔

立憲主義違反の安保法案成立に抗議し、即時廃止を求める会長声明
安保法案(平和安全法制整備法及び国際平和支援法)が9月17日に参議院平和安全法制特別委員会において採決され、本日、参議院本会議において可決され、成立した。
当会は、平成26年5月の「集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲に反対する総会決議」以降、同年7月に集団的自衛権行使容認の閣議決定に対する抗議及び撤回を求める会長声明、平成27年5月に安保法案に反対する会長声明を発出した。さらに、同年6月と9月に安保法案反対の憲法市民集会・パレードを開催し、延べ2000名の市民の方々の賛同を得た。
これらの決議、声明及び集会・パレードにおいて繰り返し述べてきたとおり、安保法案は、憲法改正手続によって実現すべき日本の安全保障について、十分な審議を尽くさず、多数決の名のもとに、多くの国民の反対や慎重審議を求める声を無視して成立したものであり、国民主権、民主主義に反する。そして、戦争が究極の人権侵害であり、二度と政府による戦争の惨禍を行わせないとした日本国憲法(前文及び第9条)を踏みにじる安保法案の成立経過は、主権者国民が権力者の濫用から基本的人権を守るために憲法を制定し、権力者に守らせるという立憲主義にも反するものである。憲法によって国政を行うという法の支配を意味する世界の共通のルールである立憲主義をないがしろにする行為は決して許されないものである。
したがって、当会は、基本的人権の擁護と社会正義を実現する使命に基づき、法律制度の改善に努める義務を負う弁護士の団体として、国民主権、民主主義、そして立憲主義に反する安保法案の成立に対して抗議し、即時廃止を求めるものである。
2015年9月19日
山梨県弁護士会会長 關本喜文

【転載】余命3年時事日記 2335 どんたく三重弁護士会②

2018年02月01日 | 在日韓国・朝鮮人
司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
ttp://mieben.info/archives/topics/444/
司法制度は、社会に法の支配を行き渡らせ、国民の権利を実現するための極めて重要な社会インフラである。かかる司法制度の担い手である法曹(弁護士、裁判官、検察官)の要請は、個人的資格の取得という意味にとどまらず、高い公共的価値を有する。従って、国家は本来的に、公費をもって質の高い法曹を養成すべき責務がある。
このような理念のもと、我が国では、昭和22年の司法修習制度開始以来、法曹となる司法修習生に対し、裁判所法により司法修習期間中の修習専念義務を課す一方で、医療保険などの身分保障を与え、生活費等の必要な資金を国費から支給する制度(給費制)がとられてきた。その結果、司法修習生は、経済的側面から司法修習への専念が現実的に可能になるとともに、法曹として養成された後は、自らが国費によって養成されたことの意義を理解し、公共的価値の実現をその使命として意識することができた。
平成23年11月以降、改正裁判所法の施行により、給費制が廃止され、修習期間中に費用が必要な修習生に対しては、修習資金を貸し付ける制度(貸与制)へと変更されたが、時を同じくして、法曹志望者は年々減少の一途を辿っている。司法修習生には、修習資金の負債のほか、大学や法科大学院における奨学金の債務を負っている者も多く、こうした重い経済的負担が、法曹を志す者の意欲を減退させ、法曹志望者激減の大きな要因となっていることは明らかである。
充実した司法を維持形成するために、担い手たる法曹には、多様かつ有為な人材の確保が強く要請されるところであるが、優秀な人材が経済的不安を理由に法曹への道を断念する事態は、国民ひいては社会全体にとって大きな損失である。司法修習生が安心して修習に専念できる環境を整え、質の高い法曹を養成するために、司法修習生に対する給付型の経済的支援(修習手当の創設)が早急に実施される必要がある。
ところで、司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)については、この間、日本弁護士連合会・各弁護士会に対して、多くの国会議員から賛同のメッセージが寄せられているが、先日、その賛同メッセージの総数が、衆参両院の合計議員数716名の過半数である359名に達した。メッセージを寄せられた国会議員は、与野党を問わず広がりを見せており、司法修習生への経済的支援の必要性についての一般的理解が得られつつあるものといえる。
また、平成27年6月30日、政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において、「法務省は、最高裁判所等との連携・協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」との一節が盛り込まれた。これは、司法修習生に対する経済的支援の実現に向けた大きな前進と評価できる。法務省、最高裁判所等の関係各機関は、有為の人材が安心して法曹を目指せるような希望の持てる制度とするという観点から、このような司法修習生に対する経済的支援の実現について、直ちに前向きかつ具体的な検討を開始すべきである。
ところで、給費制が有する公共的意義にもかかわらず、改正裁判所法により給費制が廃止された実質的理由のひとつに、司法試験合格者が将来年間3000人に増大することに伴う財政的負担の増大ということがあった。しかし、合格者数については、その後平成25年までは2000人程度、平成26年及び27年は1800人程度で推移しており、更に、「法曹養成制度改革の更なる推進について」において今後1500人程度への縮小方針も示されている現状を踏まえれば、かかる理由の前提は既に失われていると言わざるを得ない。
以上より、当会は、司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)について、国会議員の過半数が賛同のメッセージを寄せていること、及び、政府においても上記のような決定がなされたことを踏まえ、国会に対して、給付型の経済的支援(修習手当の創設)を内容とする裁判所法の早急な改正を強く求める。
2016年1月20日
三重県弁護士会 会長 川端康成

憲法違反の安全保障法制改定法案に反対し、廃案を求める会長声明
http://mieben.info/archives/topics/441/http://mieben.info/archives/topics/441/
2015年(平成27年)5月14日、政府は、いわゆる安全保障法制改定法案、すなわち、自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、
国連平和維持活動協力法等の関連10法案を一括して一部改正する「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」(平和安全法制整備法案)及び新規立法である「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」(国際平和支援法案)(以下併せて「本法案」という。)を閣議決定し、5月15日、第189回通常国会に
本法案を提出した。7月15日、本法案は、衆議院平和安全法制特別委員会にて国民の十分な理解を得られないまま強行的に可決された。
本法案は、従前の政府の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認した2014年(平成26年)7月1日の閣議決定を具体化した内容を含むとともに、2015年(平成27年)4月27日に国内法制に先行して見直しが合意された「日米防衛協力のための指針」を法制化した内容となっている。
しかし、当会が2014年(平成26年)5月14日付「集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明」でも指摘しているとおり、憲法9条下では集団的自衛権の行使は許されないというのが確立された政府解釈であったにもかかわらず、集団的自衛権の行使を容認する昨年7月の閣議決定及び本法案は、憲法前文及び憲法第9条を憲法改正手続によることなく改変するものであり、立憲主義に明らかに反するものである。
加えて、本法案は、憲法9条下では認められない集団的自衛権の行使を容認することはもとより、以下の問題点からも、憲法に違反するものといわざるをえない。
本法案は、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」を「存立危機事態」と称し、この場合に、地理的な限定なくして他国軍隊とともに武力を行使することを可能としている。しかし、「存立危機事態」とは抽象的で不明確であり、時の政府によって濫用されるおそれが否定できず、国会の事前承認についても特定秘密保護法施行下、緊急時の例外も認められており、歯止めとして機能するか否かは甚だ疑問であり、武力行使を容認する場面が際限なく広がっていくおそれは極めて大きいといわざるをえない。
次に、我が国の平和と安全に重大な影響を与える「重要影響事態」や、国際社会の平和と安全を脅かす「国際平和共同対処事態」において、現に戦闘行為が行われている現場でなければ、地理的限定なくどこでも、自衛隊が戦争を行っている他国軍隊に対し、弾薬の提供や兵員の輸送、戦闘機等への給油・整備等の支援活動を行う事を可能としている。兵站は戦争に不可欠なのであるから、これでは他国との武力行使の一体化は避けられず、憲法9条1項により日本国民が「永久にこれを放棄した」はずの「武力の行使」に道を開くものである。
さらに、これまでの国連平和維持活動(PKO)のほかに、国連が統括しない有志連合等の「国際連携平和安全活動」にまで業務範囲を拡大し、従来PKOにおいてその危険性故に禁止されてきた安全確保業務や「駆け付け警護」を行うこと、及びそれに伴う任務遂行のための武器使用を認めている。しかし、この武器使用は、自己保存のための限度を超えて、相手の妨害を排除するためのものであり、自衛隊員を自ら殺傷し、殺傷される現実の危険にさらし、さらには偶発的な衝突などの戦闘行為から武力の行使に発展する道を開くものである。これらに加え、本法案は、武力攻撃に至らない侵害への対処として、新たに他国軍隊の武器等の防護を自衛官の権限として認めている。これは、現場の判断により戦闘行為に発展しかねない危険性を飛躍的に高めるものである。
以上のとおり、本法案は、憲法第9条に反し違憲である。上述のとおり、当会は、2014年(平成26年)5月14日付「集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明」において、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認に対し、反対の意思を表明した。衆議院憲法審査会において与党推薦を含む憲法学者でもある参考人全員が集団的自衛権の行使を容認する本法案は違憲であるとの意見を表明し、2015年(平成27年)6月16日には都道府県で初めて三重県議会において「安全保障法制の慎重な審議を求める意見書」が可決され、県内市町議会でも法案廃止や国民に対する丁寧な説明、慎重審議を求める意見書等が可決されている。それにもかかわらず、政府・与党は、戦後最長となる95日間にも及ぶ会期延長をし、あくまで今会期での成立を目指している。
当会は、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命とする法律家の団体として、憲法の諸原理を尊重する立場から、憲法違反の本法案に強く反対するとともに廃案とするよう求める。
2015年7月15日
三重県弁護士会 会長 川端康成

夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判所大法廷判決を受けて民法における差別的規定の改正を求める会長声明
ttp://mieben.info/archives/topics/445/
2015年12月16日、最高裁判所大法廷は、夫婦同氏の強制を定める民法第750条は憲法第13条、同第14条、同第24条のいずれにも違反するものではないと判断した。その理由として、婚姻の際の「氏の変更を強制されない自由」は憲法上保障されていないこと、夫婦同氏の強制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではないこと、個人の尊厳と両性の本質的平等という憲法第24条の要請に照らして夫婦同氏の強制が合理性を欠くとは認められないことなどが挙げられている。
しかしながら、民法第750条は、憲法第13条及び同第24条が保障する個人の尊厳、同第24条及び同第13条が保障する婚姻の自由、同第14条及び同第24条が保障する平等権を侵害し、女性差別撤廃条約第16条第1項(b)が保障する「自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」及び同行(g)が保障する「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)」にも反するものである。
今回の最高裁大法廷判決においても、5名の裁判官(3名の女性裁判官全員を含む。)が、民法第750条は憲法第24条に違反するとの意見を述べた。そのうち岡部喜代子裁判官の意見(櫻井龍子裁判官、鬼丸かおる裁判官及び山浦善樹裁判官が同調)は、夫婦同氏の強制によって個人識別機能に対する支障や自己喪失感等の負担がほぼ妻に生じていることを指摘し、その原因として、女性の社会的経済的な立場の弱さや家庭生活における立場の弱さと、事実上の圧力など様々なものがあることに触れており、夫婦同氏の強制が個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とはいえないと説示している。さらに、木内道祥裁判官の意見は、夫婦同氏の強制は、憲法第24条にいう個人の尊厳と両性の本質的平等に違反すると説示し、「家族の中での一員であることの実感、夫婦親子であることの実感は、同氏であることによって生まれているのだろうか」と疑問を投げかけている。
法制審議会は、1996年に「民法の一部を改正する法律案要綱」を総会で決定し、男女とも婚姻適齢を満18歳とすること、女性の再婚禁止期間の短縮及び選択的夫婦別姓制度の導入を答申した。また、国連の自由権規約委員会は婚姻年齢に男女の差を設ける民法第731条及び女性のみに再婚禁止期間を定める民法第733条について、女性差別撤廃委員会はこれらの規定に加えて夫婦同氏を強制する民法第750条について、日本政府に対し重ねて改正するよう勧告を行ってきた。法制審議会の答申から19年、女性差別撤廃条約の批准から30年が経つにもかかわらず、国会は、上記各規定を放置してきたものである。今回の最高裁大法廷判決における山浦善樹裁判官の反対意見も、1996年の法制審議会の答申意向相当期間を経過した時点において、民法第750条が憲法の諸規定に違反することが国会にとっても明白になっていたと指摘している。
一方、上記同日、女性のみに6か月の再婚禁止期間を定める民法第733条について、最高裁判所大法廷は、100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は合理性を欠いた過剰な制約を課すものとして、憲法第14条第1項及び同第24条第2項に違反するとの判断を下した。
民法第733条を違憲であるとした点については、当会の主張と合致するものである。しかし、女性のみに再婚禁止期間を設けることは、その期間を100日間に短縮したとしても必要最小限にしてやむを得ないものとはいえない。
今回の最高裁大法廷判決における鬼丸かおる裁判官の意見も、女性について6か月の再婚禁止期間を定めていることは、憲法第14条第1項及び同第24条第2項に違反し、その全部が無効であると説示している。また、山浦善樹裁判官の反対意見は、多数意見が指摘する父性推定重複の問題に関して、「近年の医療や科学水準を前提にすれば、生物学上の父子関係の判定は容易にできる」とし、法的手続において「最高の科学技術を活用して真実の父を定めることこそが本当の子の利益になる」として、民法第733条はその全部が違憲と説示している。
当会は、日本国憲法が定める個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した家族法を実現するため、国に対し、民法第750条及び同第733条並びにこれらの規定とともに法制審議会にて改正が答申され、国連の自由権規約委員会及び女性差別撤廃委員会から勧告がなされている同第731条(婚姻適齢)を速やかに改正することを強く求める。
2016年1月27日
三重県弁護士会 会長 川端康成

少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
ttp://mieben.info/archives/topics/442/
選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が今国会で成立した。同法の附則は、少年法の適用年齢引下げの検討を求めている。自由民主党は、「成年年齢に関する特命委員会」を設置し、少年法の適用年齢の引下げについても検討を始めた。
選挙権年齢の引下げは、将来を担う若者が社会保障制度など国のあり方に関心を持ち、その議論に参加することを促すという面で意義がある。しかしながら、法律の趣旨目的はそれぞれ異なるものであり、選挙権年齢の引下げに合わせて少年法の適用年齢も引き下げるといった性急な議論は避けなければならない。慎重な検討が求められる。
少年法の適用年齢引下げに賛成の立場からは、「選挙権年齢引下げにより権利を得るのであるから、相応の義務や責任を負うべきである」という議論や、「少年事件の凶悪化に対処すべきである」との意見が聞かれる。
しかしながら、現行少年法において、少年が相応の義務や責任を負っていないという議論は理由がないものである。少年法のもとにおいては、少年事件は全件家庭裁判所へ送致され、少年鑑別所での資質鑑別や家庭裁判所調査官の社会調査に基づいて、少年の要保護性に応じた保護処分が下される。保護処分の中には、少年院送致による矯正教育も含まれる。成人であれば不起訴処分で終わるような軽微な事案であっても、少年の場合には少年院送致となる可能性があり、必ずしも保護処分が軽い処分であるわけではない。また、家庭裁判所が刑事処分相当と判断した事件は、検察官へ送致され(逆送)、少年であっても成人と同様の刑事処分を受けることとなる。特に、犯行時16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させるといった重大事件については原則として逆送され、公開の法廷で裁判員裁判を受けるのであり、犯行時18歳以上の少年には死刑判決を下すこともできる。少年が特に保護され軽い処分を受けているという事実は存在しないのである。
少年事件の凶悪化の議論については、少年非行の件数は、検挙人数、少年の人口比率ともに減少しており、少年による殺人、強盗、放火、強姦といったいわゆる凶悪犯罪についても、ピーク時からは激減し、現在は横ばい又は減少のまま推移している。したがって、少年事件が凶悪化しているという事実は存在しない。
他方、少年法の適用年齢の引下げは、18歳、19歳の少年から一律に少年法における保護処分を受ける機会を奪うことを意味する。少年法は、少年に対して、教育的、保護的、福祉的措置を講ずることによって、少年の更生を促し、再非行の防止につなげている。既述のとおり、凶悪事件も含め、少年非行の件数が減少していることは、まさに少年法が上手く機能していることの現れである。18歳、19歳の少年を少年
法の対象から外せば、少年事件の中で大きな割合を占める万引き等、比較的軽微な犯罪を行った少年の多くは、成人と同じ刑事手続の中で不起訴処分により何らの処分を受けないか、罰金等の軽い処分を受けるにとどまり、教育的、保護的、福祉的措置を受けられないまま終わることとなる。不起訴処分や罰金等の軽い処分で終わってしまった少年は、少年鑑別所での指導や家庭裁判所調査官の働きかけを受けることができず、更生する機会を失うことになる。18歳、19歳の少年の再犯率の増加等が懸念される。
旧少年法においては適用年齢が18歳未満であったのを、現行少年法において20歳未満に引き上げたのは、未熟な年齢の少年には刑罰によって対処するのではなく、教育的措置により立ち直りの機会を与えるためであったはずである。選挙権を得る少年は相応の義務や責任を負うべきであるとの理由や、少年事件の凶悪化へ対処しなければならないとの理由から、少年法の適用年齢の引下げを行うべきであるという意見は、根拠を欠いているだけでなく、少年法の本来の目的を忘れ、時代に逆行するものであるといえる。
以上のとおり、少年法の適用年齢の引下げには強く反対する。
2015年7月15日
三重県弁護士会 会長 川端康成

通信傍受法の対象犯罪拡大や司法取引の導入などを含む、刑事訴訟法などの改正案の閣議決定を受けて、国会での慎重審議を求める会長声明
ttp://mieben.info/archives/topics/439/
政府は、平成27年3月13日、法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」(以下「特別部会」という。)の答申案(以下「答申案」という。)を法案化した刑事訴訟法などの改正案(以下「改正案」という。)を閣議決定し、国会に提出した。
 改正案は答申案を踏襲しており、答申案と同じ問題を含むことから、当会は、特別部会で個別論点毎に審議され、指摘された問題点について、改めて国会においても慎重な審議を尽くすことを求めたい。
 すなわち、取り調べの可視化は、その対象事件を裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件に限定している。また、例外事由には、「被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき」という抽象的なものがあり、例外に該当するか否かの判断を捜査官に委ねる内容になっている。
 証拠開示制度については、検察官が保管する証拠の一覧表の交付、公判前整理手続及び期日間整理手続の請求権の付与、類型証拠開示の対象拡大に止まるものである。証拠の一覧表については、警察官の保管する証拠が対象とされていない。また、検察官が「犯罪の証明又は犯罪の捜査に支障が生ずるおそれ」などがあると認めるものは、一覧表に記載しないことができるとして検察官による裁量を認めている。
 他方、通信傍受法については、制定時、日弁連は「対象犯罪が組織犯罪に限定されておらず、別件の傍受・逆探知を容認している。また、将来発生する犯罪へ捜査を広げ、令状に記載される通信される通信内容の特定が不十分である。さらに、事後救済措置にも問題があるなど憲法31条、35条の要件を満たしているとはいえない。」などと繰り返し反対した。それにも拘わらず、組織的な重大犯罪のみを対象に、また、通信事業者の立ち合いなどを要件として法制化されたという経緯がある。
 ところが、改正案は、「数人の共謀によるもの」と疑うに足りる状況があり、かつ、「あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われたもの」という要件はあるものの、傷害、詐欺、恐喝、窃盗などの犯罪にまで対象を拡大した。さらに、改正案は、特定装置(傍受した通信や傍受の経過を自動的に記録し、これを即時に暗号化する機能等を有する装置)を用いることを条件に、通信事業者の立ち合いを不要としている。これは、憲法違反の疑いのある通信傍受法の対象を拡大し、手続を簡略化することに他ならない。
 また、捜査公判協力型協議・合意制度も、引き込みの危険(逮捕勾留された者が、自らの刑事訴追を逃れたい、少しでも軽くしたいと考え、捜査機関から「恩典」をちらつかせられることにより虚偽の供述をし冤罪を生み出す危険性が高いこと)などが指摘されている。現に、去る3月5日、名古屋地方裁判所は、美濃加茂市長の収賄事件において、贈賄側の証言は信用性を否定し、市長に無罪を言い渡した。この判決は、現金授受の存否に関する判断において、現金を受領したと認めるにはなお合理的な疑いが残ると判断した後、重ねて虚偽供述の動機の可能性について検討し、贈賄側の証人について「自身の刑事事件の情状を良くするために、捜査機関、特に検察官に迎合し、少なくともその意向に沿う行動に出ようと考えることは十分にあり得るところである。」などと指摘している。
 当会は、国に対し、今後、改正案を国会で審議するにあたり、改めて、特別部会で個別論点毎に審議され、指摘された問題点に十分配慮し、慎重審議を尽くすよう強く要望する。
2015年5月13日  
三重県弁護士会 会長 板垣謙太郎