環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

あれから1年が経った

2007-02-10 22:51:42 | Weblog


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「安心と安全な国づくりとは何か」という副題をつけた私の本「スウェーデンに学ぶ持続可能な社会」(朝日新聞社 朝日選書792)が、昨年2月10日に書店に並んで、ちょうど1年が経ちました。

いくつか熱心なうれしい書評をいただきました。ほとんどが私の存じ上げない方々からのものでした。その多くはネット上で見ることができます(主なものは私のHPの「著書紹介」からアクセスできます)。そして、講演の依頼を受ける機会が多くなりました。


スウェーデン環境省のニュースレター「Sweden & the Challenge of Climate Change」(スウェーデン&気候変動への挑戦 2007年1月4日発行)の最新号は

スウェーデン政府は気候変動(日本では地球温暖化)が21世紀の主な環境問題の一つであり、主な政治的挑戦であると考えている。
「1990年と2005年の温室効果ガスの排出量を比較すると7%減少し、経済は同期間に36%成長した。スウェーデンは長期目標を達成するために、さらに努力を続ける。すべての部門で化石燃料から再生可能エネルギーへ転換していかなければならない


と伝えています。 

この本はその背景を明らかにすると共に日本の現状を検証したものです。この機会に改めて、この本で私がみなさんにお伝えしたいことを箇条書きにまとめておきます。

●この本は、私の環境論(このブログの市民連続講座「環境問題」を参照)に基づいて、スウェーデンと日本を検証し、21世紀前半の方向性を明らかにしたものである。

●私たち日本人が将来に不安をかかえて暮らしていることは、さまざまな世論調査から明らかである。そして、「将来への不安」こそ、政治の力で解消すべき最大の課題であることは間違いない。しかしどういうわけか、日本の環境問題、エネルギー問題、経済問題に関する議論や資料のなかには、「人間の生活(国民の暮らし)」や「人間の命」の視点がないようにみえる。

●21世紀前半に私たちは否応なしに人類史上初めて直面する2つの大問題を経験するこ
 とになるだろう。一つは「少子高齢化問題」、もう一つは「環境問題」である。

●20世紀の国づくりではまったく想定されていなかった「少子高齢化問題」と「環境問題」が21世紀の国づくりの大前提となる。

●「経済」と「環境」は切り離せないこと、経済活動の拡大(の目的外の結果)が環境問題(の原因)である。

自然科学が地球の有限性を明らかにし、「資源」や「エネルギー」に限界があること、「環境の許容限度」と「人間の身体の許容限度」に限界があることがはっきりしてきた。

様々な限界が明らかになったことで、21世紀前半の社会を考える手段として「バックキャスト」という考え方が有効になり、20世紀に有効であった「フォアキャスト」という発想は不適切となった。

●国連の環境と開発に関する世界委員会(WCED)が提唱し、92年の地球サミットで合意された「持続可能な開発」(Sustainable Development)という概念をスウェーデンは「社会の持続可能な開発」と理解したのに対し、日本は「経済の持続可能な開発、発展、あるいは成長」と解釈した。

●その証として、スウェーデンは21世紀前半のビジョンとして「緑の福祉国家(生態学的に持続可能な社会)の構築」を掲げた。判断基準は「資源とエネルギーの流れ」を重視している。日本は「持続的な経済成長」を掲げている。日本の判断基準は20世紀と同じように「金の流れ」である。

●「私たちがこれから直面するであろう環境問題を私たちが解決できるものだ」と仮定した場合、科学技術が貢献できる割合はせいぜい30%程度だろう。残りの70%は「社会システムの変更」であり、「教育」であろう。

●スウェーデンの人口は2005年4月に901万人。日本の団塊の世代は、スウェーデンの人口の80%弱の約700万人と推定されている。日本の21世紀前半社会を明るく豊かにするか貧しくするかはひとえに、2007年から定年が始まる約700万人の団塊の世代の「環境問題に対する意識と行動」と、その子どもたちの行動にかかっている。
 

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