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側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

大人の側わん症 装具治療後 23年間の結果 No.4

2008-06-21 21:32:48 | 大人の側弯症進行
大人の側わん症シリーズ:
前回までは、骨成熟後(装具療法終了後)にカーブが進行していった患者さんの例に
ついて、その進行ファクター(リスク要因)について見てきました。
今回は、それ以外の患者さん。つまり、この研究で調査に参加してくれた患者さん
で、前回では例示していな例について見てみたいと思います。

患者番号 初診  骨成熟  直近  フォロー期間  フォロー時年齢
5     35    43   42     27年      37歳   ゼロ  
7     32    22   28     22       40    0.27
8     19    32   39     11       24    0.63
9     23    38   32     23       34    マイナス
10    38    47   52     22       32    0.22
11    44    45   45     18       30    ゼロ
12    30    30   31     15       28    ゼロ
13    32    37   38     15       26    ゼロ
14    33    -    92     49       62
15    33    -    44     47       57
16    16    -    40     23       37
17    27    -    115     60       70
18    39    37   38     23       34    ゼロ
19    15    32   36     22       35    0.18
20    20    20   20     20       34    ゼロ
21    17    44   50     16       26    0.37
22    21    48   44     17       28    マイナス
23    30    32   40     18       31    0.33
24    19    28   32     16       29    0.25
26    27    24   20     14       25    マイナス
27    15    28   34     24       36    0.25
28    36    40   40     15       26    ゼロ
29    37    40   35     22       32    マイナス
30    38    25   40     20       31    0.75
34lum  23    23   18     18       34    マイナス
35lumb  10    22   20     12       22    マイナス
36lumb  15    -    14     13       27    ゼロ
37    28     -    26     29       39    ゼロ
39    22    14   14     17       29    ゼロ
40    15    15   12     13       26    マイナス   

上記30名のうちデータ不備の4名を除く26名にだけ限ってみてみますと、カーブが
減少した方が 7名/26名 (27%)、変化なしのかたが 10名/26名(38.5%)
この両方のかた、いわばあえて表現するならば、側わん症が治った方が 17名/26名
(65%) ということになります。

もう少し、グループ化して内容を見てみましょう。骨成熟と判断した時点のコブ角
が30度台以下の患者さんだけを並べ替えてみますと、

患者番号 初診  骨成熟  直近  フォロー期間  フォロー時年齢 
7     32    22   28     22       40    0.27
8     19    32   39     11       24    0.63
9     23    38   32     23       34    マイナス
12    30    30   31     15       28    ゼロ
13    32    37   38     15       26    ゼロ
18    39    37   38     23       34    ゼロ
19    15    32   36     22       35    0.18
20    20    20   20     20       34    ゼロ
23    30    32   40     18       31    0.33
24    19    28   32     16       29    0.25
26    27    24   20     14       25    マイナス
27    15    28   34     24       36    0.25
30    38    25   40     20       31    0.75
34lum  23    23   18     18       34    マイナス
35lumb  10    22   20     12       22    マイナス
36lumb  15    -    14     13       27    ゼロ
37    28     -    26     29       39    ゼロ
39    22    14   14     17       29    ゼロ
40    15    15   12     13       26    マイナス   
8番(0.63)と30番(0.75)の患者さんが、年間平均0.5度以上の進行はありますが、
それ以外の方の場合は、かつて側彎症であったことすらも忘れて生活しておられる
のではないでしょうか。

では、例えば8番と30番の方の今後の予測をしてみますと

患者番号 直近  年齢  平均進行   10年後     20年後
8     39    24   0.63   34歳 45度  44歳 51度
30    40    31   0.75   41歳 47度  51歳 54度

あくまでも、平均で進行した場合という単純計算ですが、おそらくこの両名の方が
手術を必要とする年齢は、60歳後半~70歳程度ではないかと思います。でも、手術
をしないで過ごす可能性もあります。
上記で骨成熟時コブ角30度台以下の方をピックアップしましたが、実は、全ての方
も含めてリスクがありそうなのは、この8番と30番の2名だけです。つまり、このデータ
だけをもとにして言えば、骨成熟に至った時点でカーブ進行が40度台の場合もかなり
高い確率で、その後の人生において、腰痛等で悩まされることはあっても、手術を
必要とするまでにはいたらないで過ごせる確率が高そうだ、といえそうです。

このひとつの研究データだけで全てを語り尽くせるわけではありません。今後も
同様の大人の側彎症データを探してきて内容を検証してみなければなりません。

しかし、ここからもある傾向は見ることができます。

1. 基本は、早期発見/早期に治療開始できるように専門医の定期検診を欠かさない
2. 装具開始となったならば、装着のコンプライアンス(基本は23時間/日)を維持して
 終了と言われるまでに、なんとか30度台前半になれるようにがんばること。
 そのためには、運動も欠かさず継続することが必要です。
3. 仮に30度台後半、40度台で装具が終了したとしたら、定期的に専門医の診察を
 受けて、進行していないかどうか、進行しているとしたら、どの程度で進んで
 いるかを冷静に、客観的に受け止めること。
4. 仮に50度台で終了したとしたら、手術も視野におさめて、これからの10年間を
 想定して、もしどうしても手術をする必要があるならば、どのタイミングにする
 か、というようなことを冷静に検討してみること。

そして、このデータからいえる、もうひとつのことは、装具療法をしっかりと完了
できた患者さんの大半のかたは、かつては側彎症で苦しい装具時代もあっけど、
そんなことは忘れて生活している、ということです。

前回、以下のことを記載しました。
皆さんは、このデータを見ながら、もう一度、この説明を見つめてみて下さい。

「......重要なことは、皆さんは、整体の宣伝により、整体にいけば
  側彎が改善するという幻想を抱かされてしまっていますが、現実には、
  その逆に悪化させることがあることを知らされずにいます。

 外からいくら力を加えても側彎症のカーブは永続的矯正を得ることは絶対に
 ありません。手技を加えられることで、一日か二日ほど“見た目”が変わること
 はあるかもしれませんが、それはあくまでも一日か二日ほどのものであり、
 またもとに戻ってしまいます。ときには、強制的な力を加えられたことで、
 カーブが悪化することさえあります。(下記海外サイト情報)

 he authors has shown that over-manipulating or adjusting the spine seems
to create a certain amount of instability, possibly leading to further
buckling of the scoliotic curvature.
 カイロプラクティックによる過度のマニュピレーションやアジャストメントは
 脊柱の不安定を増大させ、さらなるカーブの増大を示していた。....」

こどもが側わん症と診断されて、整体で背中をごちゃごちゃといじくり回されて
一日二日は見た目が平らになったように見えても、最終的には反動で、カーブが
悪化してしまったり、装具療法を否定されて、進行が食い止められなかったり、
そういう実例があとをたちません。

整体にいって、お子さんの背中をいじくり回させることは、百害あって一利もありません。

専門医師の指導のもとで、しっかりと装具療法にはげみ、しっかりと運動にも汗を
ながすこと。そういうことをしっかりとすることで、このデータが示すように大半
の患者さんは、たとえ、少しづつ進行があったとしても、側彎症のことは忘れて
生活することができるのです。

かつて側彎症として治療していて、いま腰痛等で悩まされている「大人の側彎症」
の皆さんも、整体でカーブ進行が止まることはありません。逆に反動で進行が
早まるリスクさえあるでしょう。
皆さんがすべきことは、専門医師のもとで、正確なコブ角を測定してもらうことです。
そのうえで、今後のリスクファクターを予想して下さい。女性は、骨粗鬆症気味と
なると、ますます骨の支持性が失われますので、その対策も必要です。

病気とたちむかうには、正しい知識と正しい情報が必要です。正しい知識とは、
自らが学ぼうとしなければ入ってくるものではありません。何が正しく、何がウソ
であるかを見極められる力を見につけて欲しいと願っております。

by august03

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ブログ内の関連記事
「大人の側わん症 装具治療後 23年間の結果 No.3」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/f9f57628c23656a9363a57cd48840951

「大人の側わん症 装具治療後 23年間の結果 No.2」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/871451f1aaca8aac574ba0f251c75505

「大人の側わん症 装具治療後 23年間の結果」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/ce032df5b9d344eb068e161d07681412


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