~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

側弯そくわんをもう一度基礎から(進行しないタイプの側弯もある)

2017-10-23 00:02:17 | 側弯そくわんをもう一度基礎から
側弯症がなぜ怖いと感じるのか、それはカーブ(コブ角度)が進行して、背中の外観が変わること(心理負担の増大)、そして最悪は肺機能や心臓機能に影響して、寿命自体に影響を与えることがあるという2点に集約できるかと思います。側弯カーブが進行・増悪するリスクについても、ほぼ医学的データが揃い、ドクターより広く患者さんがたへも説明がなされているわけですが、ここに改めて記してみます。数値的な部分は、引用するデータにより多少の前後はあると思いますが、概要は同じコンセプトです。日本語の表は「側弯症治療の最前線(基礎編)」からのコピーです。英語の表は文献Standardization of Criteria for adolescent idiopathic scoliosis Brace Studiesからのコピーになります。



進行リスクと考えられる因子
 ①思春期特発性側弯症は女の子に多く発症しますので、初潮がまだなのか、もう始まっているのか。
  初潮がまだの女の子の場合は、カーブ進行のリスクが高い。ということになります。
 ②骨成熟度 - これを測定するメルクマールには幾つかの方法がありますが、その中では Risser sign(リッサーサイン)をより多く
  耳にされると思います。骨成熟とは、いわば身長の伸びがもうこれで終わりなのか、それともまだこれからどんどんと伸びるのか、
  ということが側弯カーブの進行と関連していることから、検査項目となります。
  まだまだ身長が伸びる時期というのは、カーブ進行のリスクが高い。ということになります。
 ③年齢や骨成熟を踏まえて、発見時のコブ角が大きければ大きいほど、カーブ進行のリスクが高い。ということになります。
  また骨成熟が完了した時点でのコブ角の大きさは、大人になってからのカーブ進行のリスクと関係してきます。



この表2は、上記に記載した ①、②、③の因子をマトリックスにして、さらにこれからのカーブ進行のリスクの可能性をパーセンテージを用いて示しています。たとえば初潮がまだで、発見時10歳以下、コブ角30度前後の場合、ほぼ100% カーブは進んでいくという予測になります。ゆえに、この場合は医師から直ちに装具療法をしましょう、という指導があると思います。そうすることで、リスクは100%ですが、進行を抑え込めるという可能性がでてくるわけです。

側弯には、どういう処置をしても進行が止まらないタイプというものもありますが、もしそうではないタイプであれば、できるだけコブ角の小さいうちに発見できれば、装具療法等で進行を抑え込める可能性は高くなるということです。ゆえに早期発見のために学校検診の意義は大きく、また家庭への啓蒙ということも大切になるわけです。米国では家庭への啓蒙活動として、毎年6月にscoliosisを知らしめる活動が繰り広げられています。また米国の小児学会等は女の子の場合は10歳と12歳のときに、それぞれ年2回のスクリーニングをしたほうが良いと推奨しているようです。ただしスクリーニングは費用がかかる為に実現はできていないようですが。つまりこの背景となっているのは、初潮前後の女の子の場合は側弯が短期間で進行するリスクがあるので、一度のスクリーニングで問題はみつからなかったとしても、次回までに進行しているケースがあるということです。

この表2を見る場合、100%以外の細かい数値を見て一喜一憂することにはあまり意味はないと私は思います。コブ角の測定自体にも若干の誤差はあり得ますし、コブ角の比較的大きい20度~30度では、表では16%のところに該当したとしても、実際には進行していくことはありえます。あくまでも「個体差」「個人差」ですので、定期検査を欠かさずに受けて、進行状況(進行しているのか、していないのか)を確認することが重要でしょう。比較的カーブが小さいマイルドカーブの場合は、自然緩解の可能性が高くなりますが、いずれにしても、定期検査を受けることで、進行するタイプなのか、そうではないのか、ということが鑑別できることになります。

側弯整体に行き、施術なり体操を受けることで、一時的に外観が戻ったとしても、それは永続することを意味してはいません。施術を受けたり、体操をしても、進行するタイプの側弯であれば、その減少効果は一時的なものにすぎません。定期的検査は絶対必須です。



表3は、骨成熟の状態とコブ角の大きさとの関係から、カーブ進行のリスクをパーセンテージで示したものです。骨がまだ未成熟(Grade 0や1)で、コブ角が大きい場合はこれからさらにカーブが進行していく可能性が高い、ということになります。
装具療法というのは、こどもに大きな負担をかけることになりますから、例えば Grade 4でコブ角20度であれば、ドクターは、しばらく経過観察しましょう、と言うのではないかと思います。定期検査を実施して、進行していないことが確認できれば、こどもにとっては装具療法もすることなくいずれは側弯症の心配からは解放される日がやってくることになるわけです。



上記表は、年齢(いわば骨成熟度の想定)とコブ角との関係からリスクを提示したものになります。年齢が10~12歳でコブ角60度以上の場合、進行のリスクは100%ということです。この時点での患者さんの身長にもよりますが、装具療法で進行を抑え込めるか、あるいはすぐに手術に踏み込んだほうが良いのか、ドクターも悩まれると思います。患者さんも含めてのご両親との相談の上、治療方針の決定ということになると思います。

このように、医学データによりある程度の予測が立ちますので、医師は検査結果の実測とこれらの医学データとを鑑みて、患者さん・ご両親と治療方針を話し合うことができます。

医学とは科学です。科学は、数値(データ....レントゲン写真やCT,MRIのような画像等の場合もある)、つまり客観性を持つものであり、客観性とは再現性、他者による検証性に耐えられるものを言います。そのデータをもとに、医者同士で討議し、議論し、検証し、そして協力して患者さんの治療にあたるものです。大学の医学部で医学を学び、国家試験を受け、医局で学び、学会で鍛えられ、海外で研修し、外国のドクターからの指導を受けたり、そうやってひとりの医者として成長していきます。病院にあっては、スタッフと協働で患者さんの治療にあたり、それぞれの専門分野、たとえば、看護師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士あるいは社会福祉士が患者さんやご家族の相談に乗り、様々な面でのサポートをして患者さんを病気から解放していくことになります。それが医療ということです。
側弯症の裏には別の病気が隠れていることもあります。この内容は別の記事でご紹介したいと思いますが、ドクターは、レントゲン検査、血液検査、生理学的検査、そして必要と考える場合には、MRI検査等も含めて鑑別診断を行うことになります。側弯症という病気は、側弯整体の喧伝するような「外観」を治せばいいという単純なことではないのです。ときには難しい手術を必要とすることがあります。そのようなとき側弯専門医の先生方は、先生方のネットワークを用いて、治療方法のアドバイスを受けたり、あるいは、有名な先生に手術のサポートをお願いしたりします。それが医学というものであり、患者に責任を負う医療現場で働く医師の務めなのです。患者には「正しい医療」が提供されなければなりません。専門医がいて、関連するスタッフがいて、検査体制が整っていて、手術設備がある、そういう医療機関で診るべきものです。

側弯整体に結果的に手を貸してしまったY外科医の時代には、まだ側弯症治療の専門家も多くはなく、Y医師にとってはご自分の娘さんを救いたい一心で、側弯整体に娘さんを預けることになったのだろうと想像します。
でも、20年前と現在とは状況はまったく異なります。
もしY医師がこの2017年という現代にあって、貴方の専門である外科領域に民間療法が手をだすことを「良し」としたでしょうか? おそらくそれに対しては「ノー」と言われると思います。

話しが脱線してしまったようですので、もとに戻します。

医学は科学です。科学はデータ、根拠、証拠の積み重ねによって発展していきます。例えば、ピロリ菌が発見されたことで胃ガンへの対処法(ピロリ菌の除去等)が標準治療として進められています。不治の病であった結核も、その原因の結核菌の発見により薬物治療ができるようになりました。そのような例は皆さんもすぐに思い浮かべることができると思います。
しかし残念なことに、思春期特発性側弯症は原因が特定できていません。「特発性」とは原因不明という意味です。このような病気は他にも多数あります。筋萎縮性側索硬化症 ALS などはその代表的疾患かもしれません。思春期特発性側弯症はそれ自体が ALS のように死に至る病気ではありません。しかし、思春期のみならず、特発性側弯症はこどもの病気としてその影響は甚大なものがあります。ゆえに、整形外科・脊椎外科の先生方は学会を通じて長い年月と努力をもって国に働きかけ、この病気の治療の為の医療施策を勝ち取ることができました。学校検診制度であり、育成医療制度です。これらがあることで、これまでにどれだけ多くの子ども達、そして親御さんが助けられてきたことでしょうか。 とある側弯整体は3500人を治したと喧伝していますが、学校検診制度、育成医療制度の恩恵は過去何十万人にも及んでおり、将来にわたり日本のこどもたちを守る制度となっているのです。 .......そもそも側弯整体で側弯症が治せるのならば、このような学校検診制度も、育成医療制度も不要になります。これらは税金の無駄遣いということになります。彼らは自分らのやっていることが、患者が受けることができる福祉に反しているということに気づいていません。

話しを戻します。

残念ながら思春期特発性側弯症の原因は特定できていません。原因は特定できていませんが、過去の長い長い、診断と治療の歴史、世界中の先生がたのデータの積み重ねにより、この病気がどういう経緯を辿るものであるのか、ということは分かってきました。分かってきました、という表現は実はまだ分かっていないことがたくさんある、という意味でもあります。原因が特定できていない為に、A子さんの症例データが、B子さんに似ているのだけど、でも同じとなるかは分からない。ゆえに「定期的検査を欠かさずに受けて下さい」ということになるのです。定期的検査を受けていれば、状況が明確に見えるので、時期を逸せずに対応できる、ということになるわけです。それがこの病気への対応として皆さんに心がけていただきたい大原則だと思います。

それを踏まえたうえで、どのような経緯を辿るものであるか、ということを参考資料・文献・データを用いて説明したいと思います。重ねて申しますが、ここに提示する資料は、皆さんが考える上での参考を示せるものではありますが、あくまでも参考の範疇を超えるものではありません。定期的検査は欠かさずに受けて下さい。


1.症状の確認を
 貴方の、あるいはあなたのお子さんの持つリスクを上記に提示した表をもとに、書き留めてみましょう。

 ・年齢
 ・初潮の有無 (男子だから進行リスクはない。とは勘違いしないで下さい)
 ・初診時のコブ角度
 ・カーブのタイプ (胸椎カーブのみ・腰椎カーブのみ・S字/ダブルカーブのどのタイプか) 本来はもっと細かい分類がありますが単純化しています
 ・リッサーサイン (あるいはこれに代わる別の指標)骨成熟度はどれくらいか
 ・家族歴 (両親、兄弟姉妹に思春期特発性側弯症と診断を受けた人の有無)
 ・BMI 体重(kg) ÷ {身長(m) X 身長(m)}  例:体重 35kg, 身長145cmの場合 35÷(1.45x1.45)=16.6 (18.5未満は低体重) 

リスクを踏まえた上で、定期観察の目安について文献よりご紹介します。下記は独協医科大整形外科教授・野原裕先生「脊柱側弯症治療の歴史と現況 (2012年Spinal Surgery 26)」より引用させていただきました。

◇側弯症の治療指針
 ⑴乳幼児側弯症(発症が0~3歳) この時期に発症する側弯は、重症例に移行するものと自然治癒するものとがある。60度程度までは経過の観察
  ・経過観察のインターバル:短期間で進行する例があるので、通常は4カ月間隔で経過を見る。進行速度の状況で、3か月間隔または6か月間隔
   に変更できる。
  ・治療の開始:80度を超えると進行し続ける可能性が高いので、装具による矯正やギプスによる矯正を行い、進行を抑えるべく努力する。
   60~80度の間は症例により治療開始を考慮する。装具療法は、胸郭を制限し子どもの発育に悪影響を及ぼすので、ゴールを見据えた期間限定
   な使用が望ましい。
  ・手術治療:装具やギプス矯正にもかかわらず、進行悪化し100度近くなる例に行う。成長を考慮し、グローイングロツド法など成長力を温存
   する方法を採用する。理想的には成長終了後に最終的脊椎固定術を行うが、理想道りに運ばずその前に固定せざるえない例もある。
 ⑵若年性側弯症 (発症が4~9歳) この時期の側弯は、思春期側弯症と同様の治療方針であるが、初潮前の年代であるので進行の速度は一般的に
  速い。
  ・経過観察のインターバル:30度未満の側弯は、4カ月間隔で経過を観察する。5度の進行があるならば3か月間隔に縮める。
  ・装具療法:思春期側弯症と同様であるが、装具内においても進行することがあるので、4カ月間隔でチェックする必要がある。
  ・手術治療:手術はその時期(年齢・成長の程度)によって、最終的脊椎固定術または成長を温存するグローイングロッド法などを採用する。
 ⑶思春期側弯症 (発症が10歳以降) 思春期で軽度の側弯は経過観察を行い、重度変形は手術適応となる。その中間のグループでいまだ成長期に
  あるものは装具療法を行い、成長終了した例では経過観察を行う。11歳前後で初潮前の症例はその時期に急激に進行する頻度が高いので
  特に注意を要する。
  ・経過観察:成長期で30度未満のカーブ、または成長期を過ぎて40~45度以下のカーブであれば経過観察する。成長期は20度以上のカーブは
   3~4カ月間隔で観察し、5度以上進行するときは装具療法を開始する。
  ・装具療法:成長期を過ぎてからの適応はない。成長期の進行を防止または軽減する役割と考えるべきである。成長終了後に装具療法は終えるが
   その後は年1回の経過観察は必須。
   成長期にあってカーブが30~40度であれば装具療法を行う。成長期の40~45度のカーブは患者・家族と相談し、装具療法を行うことも手術に
   移行する場合もある。
  ・手術治療:45度以上は手術の適応。40度程度であっても変形が強く、矯正を強く希望するときは手術を行う。
   腰椎カーブでは40度以上は手術適応である。手術は矯正と同時に骨移植による固定術を行う。
  ・後療法:手術後は、全身麻酔の影響が消失次第歩行を開始する。ギプス・コルセットなどの外固定は現在は全く使用していない。
   術後の体幹バランスに早期に慣れるために鏡を使ったバランス訓練を同時に行う。術後早期からの復学や事務職は可能であるが、
   運動(体育)は休止する。手術後6か月で骨癒合完成の確認して、すべての運動を許可する。
 ⑷成人側弯症 小児期の特発性側弯症が遺残し、成人となったとき成人側弯症と診断する。成人側弯の特徴は、椎間の変性を伴いカーブは硬いことである。変形のほかに、痛み(腰痛や背部痛)が主訴で治療の対象になることが多い。20歳代前半までの症状や変形の性質は思春期側弯と大きな違いはない。すでに装具療法の適応はなく、症状の重症度によって手術するかしないかを決める。合併症頻度が高くなるので、手術のリスクと利益のバランスを熟慮して適応を決める。
  
これらはひとつの指針(目安)です。患者さん個々の状態・考え方、ご家族の希望・考え方などを踏まえて、主治医の先生は見通しや治療方針を指導されると思います。
この側弯症という病気は何年も戦っていく相手です。先生、病院とは長いつきあいになると思います。思春期側弯を無事に脱出できた後も定期的な健康診断でレントゲン撮影したときは、そのレントゲン写真を皆さん自身が見て、ご自分の脊柱が以前と比べてどうなっているかに気をつけてみる。そういうタイプの病気であると考えることが、きっと皆さんの人生を守る方法になると思います。

引用文献を発表年の古い順に提示:( かっこ内のコメントはaugust03 )
メモ:❝データ❞というものは取扱が非常に難しいものです。特に医学データの場合は、人間がその対象である為に、個体差・個人差があり、また例えば「装具療法」と言ってもそこには装具のタイプ、装具の製作者の技術、家庭での装具の装着状態などに「差」があります。「体操療法」と言っても、その内容(方法・実施時間・ひとりでやるのか、指導の監視のもとでやるのか等)の「差」があります。対象となる患者さんにおいては、性別、年齢、初潮の有無、骨成熟度、初診時コブ角、回旋の強弱、側弯のタイプ、遺伝的リスクの有無、BMI等、それらのデータが全て網羅されているのか、何があり、何がないのか、というように、どこかに必ず十分とは言えない要素があるものです。しかし、それを突っ込みすぎては前進できなくなります。従いまして、いまここに入手できている❝データ❞を単純化した形で、コメントを書かせていただいておりますこと、ご了承下さい。データとは100%ではありません。しかしゼロでもなく、そこから「見えてくるものはある」という姿勢で書いております。



◇1993年 A Statistical Comparison Between Natural History of Idiopathic Scoliosis and Brace Treatment in Skeletally Immature Adolescent Girls (USA)
 ・文献を用いて近似背景を持つ思春期側弯症患者での、装具療法グループと無治療グループとの比較
 ・装具療法グループ 32名     
  装具開始時平均年齢  13歳 平均コブ角 22(15~31)°     
  装具終了時平均年齢  15歳  平均コブ角 24(10~50)° カーブ進行10°以上6名 (10°が2名,11°が1名,13°が1名,15°が1名,30°が1名) 
  最終的に手術 3名 (50°1名、42°1名、38°1名)

・無治療グループ  32名
  初診時平均年齢    13歳 平均コブ角 21(15~35)°
  最終時平均年齢    16歳 平均コブ角 26(8~47)° カーブ進行10°以上9名 (13°が1名、14°が2名,23°が3名,20°が1名,28°が1名,16°が1名)
                             カーブ減少    4名 (-5°が1名、-7°が1名、-9°が1名、-11°が1名) 
  最終的に手術 5名 (38°1名、40°2名、45°1名、47°1名)

(約2年の装具療法で32名のうち手術を含む6名が装具効果なしとすれば、残り26名(80%)が装具効果ありと言えます。ただし、2年後以降の経過が不明なので80%の効果が継続したかは不明ということになるでしょう。ここでの要点は、装具開始時のコブ角になると思います。一方、無治療グルーブでは32名のうち9名が本来実施すべき治療をしなかったことによる医学の進歩のための臨床試験に参加してくれた貴重なる患者さんということになります。でもこの患者さん達の献身により、無治療でも32名のうち23名(72%)は、骨成熟終了を迎えることができた、ということを示してくれました。もちろん、それ以降の経過が不明ですので、この72%が維持できるかどうかはわかりません。しかし、初診時のコブ角が小さい場合の可能性は私たちに示してくれた、ということになります)

 ☞繰り返しになりますが、治療は不要ということを述べているわけではありません。早期に発見して、定期的観察をすることで、患者さんに大きな負担を
   かけることなく、適切な治療にすぐ移れる、ということを理解ください。

◇1995年 当センターにおける思春期特発性側弯症に対する装具治療成績
 ・1986~1993年(8年間) 2次検診受診者(9~18歳) 639例のうち
 ・レントゲン検査等により 5°以上の側弯と診断した患者 295例
  (学校検診で「疑いあり」とされた数値は639+〇〇〇でしょう。この〇〇〇は不明ですが、二次検診にはいかなかった人ということになります。この二次検診にいかなかった〇〇〇人の中にも、側弯症のこどもはいたかもしれない、ということが示唆されます)
 ・装具治療施行したのは295例のうち51例
  (単純に計算しますと、295-51=244人(83%)は、装具療法を不要とする側弯であった、と仮定できます)
  (マイルドカーブの場合、経過観察中に約8割は、自然緩解した。と仮定できます)
 ・この51例中、1年以上の装具療法終了までフォローできたのは42例 (女子40例、男子2例)
 ・初診時平均年齢 13歳
 ・平均追跡期間 33カ月 (2年7カ月)
 ・初診時コブ角35°以上で発見された症例では装具療法を1年以上経過後、カーブ進行により手術 4症例
  (装具療法が効果を持たない「進行するタイプ」が存在するということ。単純計算すると4/42=9.5%)
 ・装具治療開始前のコブ角と矯正効果との関係からは、初診時コブ角35°以上で発見された症例では矯正率が低い
 ・骨成熟度がすすんだリッサー4,5では装具による大きな矯正は得られないが、進行もしない傾向が見られた
 ・装具療法の適応は次のように考えた。
  1.初診時コブ角30°未満は経過観察 (訓練療法)
  2.初診時コブ角30°以上でリッサー4に至ってないものは装具療法開始


◇2003年 Cobb角45°以上で治療終了した特発性側弯症非手術の検討
 ・コブ角45°以上で手術をすることなく治療を終了した20例(全て女性)の検討
 ・初診時  平均年齢12歳 (10~14歳)
・治療終了時平均年齢16歳 (14~17歳)
 ・最終調査時年齢は記載なし
 ・20例のうち17例には、装具療法を実施
 ・20例のうち3例は進行可能性低いと判断し、経過観察
 ・治療終了時(平均16歳)と最終調査時(不明)でのコブ角の変化
  - 変化なし(45~58° 平均48°) 12例 (12/20=60%)
 - 進行例 (50~75° 平均58°)  8例  (8/20=40%)
 ・進行例の背景 胸椎カーブ、初診時14歳 45° リッサー4 進行はないと判断し装具療法はせず
                  15歳時45°のまま リッサー5
           今回調査時(年齢不明) 54°に進行していた
 ・結語 特発性側弯症の中で、シングルカーブ、回旋変形が強い症例では、骨成長終了後も慎重な観察が必要である。

(初診時のコブ角のデータが記載されていない為、装具療法の効果の見極めは難しいのですが、2~3年間程の装具療法の実施でコブ角を45°程に抑え込んで、その角度が何年か後まで維持される可能性が 60%に見られた。と読むことができます。最終調査時の年齢が未記載である為、何年間効果があったかということは不明です。治療終了後のカーブ進行から見ますと、この調査時からさらに年月が経過すれば、カーブがさらに進行していくであろうことが予想されます。つまり、このデータから導き出されるのは、上記野原先生の指針で述べられている「45°以上は手術を検討したほうが良いでしょう」という患者さんの持つリスクをどう考えるか、ということです。)


◇2013年 Effects of Bracing in Adolescents with Idiopathic Scoliosis (USA)
・米国における多施設臨床試験 (複数の病院と共同し同一試験方法での治験)




・患者背景は上記表を参照 全員女子 年齢12歳 コブ角30°前後 リッサーサインは大半が0,1,2の骨未成熟の患者



 ・このように近似背景を持つ特発性側弯症患者を装具療法グループ147名と無治療グループ90名に分けて経過を調査した。
 ・装具療法グループは24カ月フォロー、無治療グループは21カ月フォロー
 ・試験の成否判定は、初診時のコブ角から50°以上のカーブ進行があった場合を不成功とした。
 ・試験結果 装具療法グループの70%強が成功、無治療グループの40%強が成功



 ・上記表は装具装着時間の長さと試験成績との関係を示している。一日13~17時間以上装着していた場合の成功判定は90%~93%
一方、一日ゼロ~6時間装着の場合は、成功判定は40%

(この試験の場合、384名個々のコブ角の変化や、最終的に手術したのか、していないのか等のデータが提示されていない為に、感覚的な結論になってしまうのですが、少なくとも装具療法をすることの効果は示していると思います。さらに興味深いのは、無治療であっても約半分の患者は骨成長終了時に成功判定を得ているということから、上記1993年の無治療データを補完してくれていることです。つまりコブ角30°前後では、無治療でもカーブ進行のしないタイプの患者さんもいる、ということです。先に記載しましたように、特発性側弯症はその原因が不明である為に、ではどういう場合、無治療でも進行しないのか? というご質問に対する答えはわかりません。しかし、これらのデータから言えることは、装具療法は辛いけれどその効果は期待が持てる。ということです。コブ角の小さいうちに早期に発見できたら、定期的観察を行い、進行リスクが高いと判断されたら、装具療法に入る。という上記野原教授の治療指針の背景がこういう資料・データからもご理解していただけたかと思います)

august03

☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?


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