姿勢は悪いよりも良いほうがいいのは当たり前のことです。姿勢が悪くても構わない、ということを書きたいわけではありません。ここに書きたいのは、「姿勢が悪いから、思春期特発性側弯症になった」(悪い姿勢=側弯症原因)と喧伝する側弯整体がいかにデタラメであるかを証明する為です。 そもそも思春期特発性側弯症は、日本のこどもだけに発症している? テレビゲームに夢中になってばかりで、外で遊ぶようなことがなくなった「現代っ子」がその姿勢の悪いことで発症する? 寝そべってマンガばかり読んでいるから発症する? もしそうだとしたら、テレビゲームもない、マンガもない時代には思春期特発性側弯症は存在していないはず。たとえば、明治、昭和初期、戦前までの日本のこどもたちは富国強兵の旗のもと、兵隊となって戦う為に姿勢正しく、肉体強化に励んでいました(励まされていました)。現代とは比較にならないほど、姿勢に対する教育・指導は、学校のみならず家庭でも激しく鍛えられていました。そういう時代には側弯症になるはずもありません。 ......本当にそうでしょうか?
グーグルで「身体障害者福祉法における対象規定の源流に関する研究」を検索しますと、藤井先生の論文をPDFでダウンロードすることができます。
この中で、軍事政策を第一としていた日本帝国時代における身体障害者が考察されています。
幾つか文章を引用してみます。
・筋骨薄弱者や結核要注意者であった。これは、兵役法では主に乙種および丙種となる者に該当する者であった。その対象はいわば虚弱児であり、障害が重度な者はその対象から注意深く除外されていた。障害が重度な者には国民優生法が準備され、「断種」の対象へと位置づけられていったのである
・制度的に障害の状況を評価する場合に、視機能や言語・聴覚機能、四肢の状態・運動機能、精神疾患、内臓疾患、手足の指の状態といった部分に着目
・特に、障害は国民の健康を害するものであり、先天性の障害などを「治らないもの」や「遺伝するもの」として、世代を超えて固定したものとして捉えられていた。そのため「断種」による生殖防止の対象として位置づけられていた
・「廃疾又ハ不具等」の中身 1889年3月2日に出された徴兵検査規則では次のように規定
-脊柱彎曲骨盤変形 脊柱側彎又ハ前後彎等著シキ
戦前にも側弯症は存在した、という証拠には不十分でしょうか? もしかすると、脊柱側弯には様々なタイプがありますので、側弯整体はおそらくこう考えるのでしょう。ここで述べられている脊柱側彎は、思春期特発性側弯症ではなく、別のタイプの側弯に違いない、と。彼らは自分らに都合の良いように、なんとでも言いますから。
ではさらに時代をさかのぼった場合を見てみます。
グーグルで「律令における障害者福祉法制と現代法と比較して」を検索してみて下さい。
この宇山先生の論文から、幾つか引用してみます。
・障害者の処遇に関する記録は、日本書紀にまでさかのぼることができる
・「腰背折(こしせなかおれたらん)」(腰背部の骨折ないし脊髄損傷等による麻痺に似た状態等も含まれると推察される)
この「腰背折」は側弯症ではありませんか? これらの時代においては、病気を負った者は「障害者」という名前で括られていたであろうことが容易に想像がつきます。女子に多い思春期特発性側弯症の場合は、家族から捨てられる、売られる、座敷牢に入れておく等により長くは生きてはいられなかったと想像されます。
このような病気に対する考え方をさらにさかのぼりますと、下記のような姿が浮かんできます。日本人に根付いている宗教観であり、病気に対する考え方としていまだに引きずっているのではないでしょうか。
このような文化的背景を持つ日本人ゆえに、側弯整体が手をだすことで、側弯症に対する一般人の認識・イメージは、いまだに医学とは別のところにある、と思えるのは私august03ひとりだけでしょうか。
ここまで書いても、側弯整体は相変わらず屁理屈を並べて、それらはそくわんとは違う。と言い張るかもしれません。あくまでも、姿勢の問題だ、現代病だ、と。
では次のような事実はいかがでしょうか。
グーグルにて「Hisyorical Overview of spinal deformity in ancient Greece」を検索しますと、文献をダウンロードできます。これは側弯症の歴史を紀元前にまで遡って説明しているものです。
側弯症は現代病ではありません。
紀元前(400B.C)ヒポクラテスの時代にまでさかのぼって、この病気についての記述を私たちは見ることができます。先に日本書紀にその記述がある、ということと同じです。そのような遥か昔から、いまに至るまで、古今東西でその治療方法が試されてきました。もちろん、その中には運動(体操)療法なども含まれています。どのような運動(体操)療法があるかについては、後日このstep by step側弯症ライブラリーにてご紹介したいと思いますが、施術も含めて運動(体操)も、日本の側弯整体が初めて実施したものではありません。......もっとも、側弯整体に言わせれば、「自分が考えたセオリーは人類史上、初めてだ。だから側弯症を治すことに成功したのだ」と言うでしょうが。.....もしそうであるならば、それはノーベル医学賞に値する、人類史に歴然と輝く功績なのですが。
でも、このような大昔の記録では、それらは思春期特発性側弯症ではないのだ、と主張されそうです。もちろん、これらの記録がすべて思春期特発性側弯症の患者さんだけではないでしょう。他の脊椎疾患や、他の原因での脊柱変形の患者さんも含まれていたと思います。でも、それは同時に、思春期特発性側弯症の患者さんが含まれていなかったという理屈にはならないことは、このブログをお読みの賢明な皆さんにはお分かりになると思います。 側弯症にはいろいろなタイプがありますが、その大半、90%ほどは「思春期特発性側弯症」ですから。
でも、それでも否定しますか? 側彎は姿勢の問題だと。
では、このブログ側弯症ライブラリーでご紹介してきた数々の思春期特発性側弯症に関する文献・データは何を示したものだったのでしょうか。古くは、1950年代から現在にいたるまで、米国、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スエーデン、ギリシア、アイルランド、トルコ、ブラジル、インド、中国、韓国、マレーシア、香港、シンガポール、etc etc 世界中のありとあらゆる国から、思春期特発性側弯症に関する医学文献が発表されてきました。
グーグルに「Clinical effecttiveness of school screening programme for idiopathic scoliosis in Malaysia」を検索していただくと、文献がダウンロードできます。下記のtable IIIはその文献からの引用です。
このデータは、各国での学校検診(スクリーニング)で 10度以上の側弯が発見された、その発見率を示しています。(画面上では、ちょうど発見率のところが切れていると思いますので、文献本体をダウンロードしてご確認願います) 多くの国々で側弯症スクリーニングが実施され、その発見率は、どこの国でもほぼ同じ値を示しています。毎年、毎年、実施され、毎年、毎年、ほぼ同じ発見率を示す。このことは何を意味しているのでしょう。
太古の昔から現代にいたるまで、洋の東西を問わず、毎年毎年、ほぼ一定の比率で、「姿勢の悪いこどもたち」がいる。
と主張するのでしょうか? なんて都合の良い理屈なのでしょう。
ホームページに姿勢が悪いから側弯になるのだ、と書いている側弯整体の皆さん、いつまでもそのような自分のビジネスに都合のいいウソを並べるのはおよしなさい。 側弯整体の看板を降ろして、整体としての本来の役割に戻られたらいかがですか?
再び、この項目の最後に、「皮肉を込めて」書きます。これは「皮肉」ですが、読まれる皆さんには、ぜひとも考えてみていただきたいことです。
・側弯検診はとてもお金のかかるやり方です。どこの地方自治体でも、
予算のやり繰りには頭を痛めているのが現実です。
・思春期特発性側弯症は、側弯整体で「治せます」
・では、何も莫大なお金をかけて側弯検診をする必要はないはず。
・検診制度のなかった昔のように、お母さんか学校の先生が「あなたの背中、
どうも変だよ。医者で診てもらいなさい」と注意して
医者に行き、レントゲンを撮り、コブ角を測定して、15度以上あったら
・側弯整体に行けばいい。
・たとえ、コブ角が30度でも、40度でも安心して下さい。側弯症は側弯整体で
治せますから。
・ゆえに、側弯検診は不要となります。
これで、自治体のその予算を保育所や介護に回せば、税金はさらに
有効活用できます。
お分かりいただけますでしょうか。
側弯整体が存在することで、日本の側弯症治療のあるべき姿から、大きく外れてしまっていることを。
august03
2017年10月23日追記
上写真はドイツの Schroth(シュロス先生)が1930年代に側弯症治療の施設を開設し、実施していたときの写真です。
あらためて皮肉をこめて書きますが、1930年代のテレビゲームもマンガもなかったドイツにも、このように姿勢が悪くて側弯症になるこどもたちがいたのですね。おそらく21世紀の現代にもまだ大勢いると思います。ぜひとも、日本の側弯整体のテクニックで世界中の「姿勢の悪いこどもたち」を治してあげていただければと期待しています。JICA(ジャイカ)の海外ボランティアに参加されてはいかがでしょう。
☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?
グーグルで「身体障害者福祉法における対象規定の源流に関する研究」を検索しますと、藤井先生の論文をPDFでダウンロードすることができます。
この中で、軍事政策を第一としていた日本帝国時代における身体障害者が考察されています。
幾つか文章を引用してみます。
・筋骨薄弱者や結核要注意者であった。これは、兵役法では主に乙種および丙種となる者に該当する者であった。その対象はいわば虚弱児であり、障害が重度な者はその対象から注意深く除外されていた。障害が重度な者には国民優生法が準備され、「断種」の対象へと位置づけられていったのである
・制度的に障害の状況を評価する場合に、視機能や言語・聴覚機能、四肢の状態・運動機能、精神疾患、内臓疾患、手足の指の状態といった部分に着目
・特に、障害は国民の健康を害するものであり、先天性の障害などを「治らないもの」や「遺伝するもの」として、世代を超えて固定したものとして捉えられていた。そのため「断種」による生殖防止の対象として位置づけられていた
・「廃疾又ハ不具等」の中身 1889年3月2日に出された徴兵検査規則では次のように規定
-脊柱彎曲骨盤変形 脊柱側彎又ハ前後彎等著シキ
戦前にも側弯症は存在した、という証拠には不十分でしょうか? もしかすると、脊柱側弯には様々なタイプがありますので、側弯整体はおそらくこう考えるのでしょう。ここで述べられている脊柱側彎は、思春期特発性側弯症ではなく、別のタイプの側弯に違いない、と。彼らは自分らに都合の良いように、なんとでも言いますから。
ではさらに時代をさかのぼった場合を見てみます。
グーグルで「律令における障害者福祉法制と現代法と比較して」を検索してみて下さい。
この宇山先生の論文から、幾つか引用してみます。
・障害者の処遇に関する記録は、日本書紀にまでさかのぼることができる
・「腰背折(こしせなかおれたらん)」(腰背部の骨折ないし脊髄損傷等による麻痺に似た状態等も含まれると推察される)
この「腰背折」は側弯症ではありませんか? これらの時代においては、病気を負った者は「障害者」という名前で括られていたであろうことが容易に想像がつきます。女子に多い思春期特発性側弯症の場合は、家族から捨てられる、売られる、座敷牢に入れておく等により長くは生きてはいられなかったと想像されます。
このような病気に対する考え方をさらにさかのぼりますと、下記のような姿が浮かんできます。日本人に根付いている宗教観であり、病気に対する考え方としていまだに引きずっているのではないでしょうか。
このような文化的背景を持つ日本人ゆえに、側弯整体が手をだすことで、側弯症に対する一般人の認識・イメージは、いまだに医学とは別のところにある、と思えるのは私august03ひとりだけでしょうか。
ここまで書いても、側弯整体は相変わらず屁理屈を並べて、それらはそくわんとは違う。と言い張るかもしれません。あくまでも、姿勢の問題だ、現代病だ、と。
では次のような事実はいかがでしょうか。
グーグルにて「Hisyorical Overview of spinal deformity in ancient Greece」を検索しますと、文献をダウンロードできます。これは側弯症の歴史を紀元前にまで遡って説明しているものです。
側弯症は現代病ではありません。
紀元前(400B.C)ヒポクラテスの時代にまでさかのぼって、この病気についての記述を私たちは見ることができます。先に日本書紀にその記述がある、ということと同じです。そのような遥か昔から、いまに至るまで、古今東西でその治療方法が試されてきました。もちろん、その中には運動(体操)療法なども含まれています。どのような運動(体操)療法があるかについては、後日このstep by step側弯症ライブラリーにてご紹介したいと思いますが、施術も含めて運動(体操)も、日本の側弯整体が初めて実施したものではありません。......もっとも、側弯整体に言わせれば、「自分が考えたセオリーは人類史上、初めてだ。だから側弯症を治すことに成功したのだ」と言うでしょうが。.....もしそうであるならば、それはノーベル医学賞に値する、人類史に歴然と輝く功績なのですが。
でも、このような大昔の記録では、それらは思春期特発性側弯症ではないのだ、と主張されそうです。もちろん、これらの記録がすべて思春期特発性側弯症の患者さんだけではないでしょう。他の脊椎疾患や、他の原因での脊柱変形の患者さんも含まれていたと思います。でも、それは同時に、思春期特発性側弯症の患者さんが含まれていなかったという理屈にはならないことは、このブログをお読みの賢明な皆さんにはお分かりになると思います。 側弯症にはいろいろなタイプがありますが、その大半、90%ほどは「思春期特発性側弯症」ですから。
でも、それでも否定しますか? 側彎は姿勢の問題だと。
では、このブログ側弯症ライブラリーでご紹介してきた数々の思春期特発性側弯症に関する文献・データは何を示したものだったのでしょうか。古くは、1950年代から現在にいたるまで、米国、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スエーデン、ギリシア、アイルランド、トルコ、ブラジル、インド、中国、韓国、マレーシア、香港、シンガポール、etc etc 世界中のありとあらゆる国から、思春期特発性側弯症に関する医学文献が発表されてきました。
グーグルに「Clinical effecttiveness of school screening programme for idiopathic scoliosis in Malaysia」を検索していただくと、文献がダウンロードできます。下記のtable IIIはその文献からの引用です。
このデータは、各国での学校検診(スクリーニング)で 10度以上の側弯が発見された、その発見率を示しています。(画面上では、ちょうど発見率のところが切れていると思いますので、文献本体をダウンロードしてご確認願います) 多くの国々で側弯症スクリーニングが実施され、その発見率は、どこの国でもほぼ同じ値を示しています。毎年、毎年、実施され、毎年、毎年、ほぼ同じ発見率を示す。このことは何を意味しているのでしょう。
太古の昔から現代にいたるまで、洋の東西を問わず、毎年毎年、ほぼ一定の比率で、「姿勢の悪いこどもたち」がいる。
と主張するのでしょうか? なんて都合の良い理屈なのでしょう。
ホームページに姿勢が悪いから側弯になるのだ、と書いている側弯整体の皆さん、いつまでもそのような自分のビジネスに都合のいいウソを並べるのはおよしなさい。 側弯整体の看板を降ろして、整体としての本来の役割に戻られたらいかがですか?
再び、この項目の最後に、「皮肉を込めて」書きます。これは「皮肉」ですが、読まれる皆さんには、ぜひとも考えてみていただきたいことです。
・側弯検診はとてもお金のかかるやり方です。どこの地方自治体でも、
予算のやり繰りには頭を痛めているのが現実です。
・思春期特発性側弯症は、側弯整体で「治せます」
・では、何も莫大なお金をかけて側弯検診をする必要はないはず。
・検診制度のなかった昔のように、お母さんか学校の先生が「あなたの背中、
どうも変だよ。医者で診てもらいなさい」と注意して
医者に行き、レントゲンを撮り、コブ角を測定して、15度以上あったら
・側弯整体に行けばいい。
・たとえ、コブ角が30度でも、40度でも安心して下さい。側弯症は側弯整体で
治せますから。
・ゆえに、側弯検診は不要となります。
これで、自治体のその予算を保育所や介護に回せば、税金はさらに
有効活用できます。
お分かりいただけますでしょうか。
側弯整体が存在することで、日本の側弯症治療のあるべき姿から、大きく外れてしまっていることを。
august03
2017年10月23日追記
上写真はドイツの Schroth(シュロス先生)が1930年代に側弯症治療の施設を開設し、実施していたときの写真です。
あらためて皮肉をこめて書きますが、1930年代のテレビゲームもマンガもなかったドイツにも、このように姿勢が悪くて側弯症になるこどもたちがいたのですね。おそらく21世紀の現代にもまだ大勢いると思います。ぜひとも、日本の側弯整体のテクニックで世界中の「姿勢の悪いこどもたち」を治してあげていただければと期待しています。JICA(ジャイカ)の海外ボランティアに参加されてはいかがでしょう。
☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?