ルスツのタワーホテルの入り口で、携帯電話を紛失したのはとぉちゃんである。
あてれんが風呂から上がって部屋に戻ったときには、もうとぉちゃんの姿は見当たらなかった。
トイレかな?
なにせ広い部屋(メゾネット)だから、どこかにいるんだろうけど気配を感じない。
しばらく放っておいたが、本当に消えてしまったかと思うくらいいつまでたっても
とぉちゃんは戻ってこなかった。
しばらくして、青ざめた顔でとぉちゃんが部屋に戻ってきた。
『オラの携帯がない
』
『えっえー!?最初から持ってきてないんじゃないの?』
携帯電話にあんまり用事がないとぉちゃんだから、まずはそこを疑ったあてれん。
『いや、たしかにカバンに入れたのは覚えてる。今、車まで行って探したんだけど、なかった』
『えっえーーー?』
『もしかしたら、車から降りて荷物を降ろす時に落ちたかもしれない』
そんじゃぁ、フロントに届いてるんじゃないの?ってことになり、
とぉちゃんがフロントに電話をしてみた。
以下、とぉちゃんの電話の内容です。↓
『あの・・携帯電話なんですけど、落し物届いてなかったでしょうか』
『ええ。赤いやつです。えーっと、ガラケーです。』
『多分、入り口で落としたかもしれないんですけど・・・。』
『えーっと、付いてます。スカイツリーのストラップです。』
『あー、そうですか!ありがとうございます!今、取りに行きます!』
フロントの人がどんな対応してくれたのかなんとなく分かる。
赤いガラケーが届いていた。
しかし、とぉちゃんのものである確実な証拠がない。
んで、なにかストラップは付いてますか?と聞いてきたのだ。
スカイツリーのストラップを付けてる男って・・・・
アンタけだよね・・・。
思えばこれは、とぉちゃんが東京に出張してきたときのお土産だった。
金と銀のスカイツリーのストラップをお揃いで買ってきて
『オメーはどっちがいい?』と、付けることを大前提に聞かれ、
『金』と期待に応えてやったのは2年以上も前のこと。
しばらくはお揃いで付けていたスカイツリーのストラップ。
しかし、あてれんがスマホに替えたあの日から、スカイツリーはとぉちゃんの
ガラケーだけにぶら下がっていたのである。
そのへんてこりんなストラップのおかげで本人確認もスムーズに進み、
数時間後に携帯電話は持ち主の元へと返ってきたのであった。
戻ってきたのはいいんだけど、どうやらとぉちゃんは車で自分の携帯を
轢いてしまったらしく、衝撃に強いタイプの携帯だったが、液晶画面に傷がついていた。
その傷が、2週間ほど経った先日、どんどん広がりを見せ、
ついには画面の大事な部分が見えなくなるじたいになってしまったのである。
すいません・・。
待ち受け画面がモアイ像のティッシュBOXで・・・。
これは大変だってことになり、AUショップへ行って相談をしてきたのだけれど、
今はガラケーの選択肢はほとんどなく、おじいちゃん携帯も含めて3タイプで迷うことになった。
(とぉちゃんは頑なにスマホを拒否するんだよ)
だけど、せかっくお気に入りの今の携帯だもん。
なんとか修理できないかと聞いてみたら、メーカーに送るので3週間待ってくれと。
その期間は代替えの携帯を持たせてくれると。
んで、一縷の望みをかけて、壊れた携帯電話を受け付けのおねえさんに渡したのだよ。
そしたらね・・・
『あ・・。このストラップは外してください。』と・・・。
なんかちょっと含み笑い浮かべて言われたわ。
あぁ・・なんか、唯一の本人確認を切り離されるような気がしてかわいそうだったわ。