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あすかパパの色んな話

日々の暮らしの中で思ったことを書き込んでいきます。
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桑田真澄が見たダルビッシュ有の果てなき可能性

2012年05月30日 06時27分03秒 | コラム
いまだ慣れぬ環境、完璧とはいえない状態にあって、
何故この若き天才は、結果を出し続けられるのか。
自身もメジャーのマウンドを知る桑田真澄氏が、
初登板から7戦目までのダルビッシュを解説する。




僕は今まで、メジャーで50年、100年後にも大きく取り扱われる日本人選手はイチロー君だけだと言ってきました。でも、今のダルビッシュ君にもその可能性を感じます。身体能力と技術の両方がピカイチで、精神力も年々強くなってる。持って生まれた長身に加え、身体能力があり、トレーニング方法や食事の勉強、野球のこともよく考えてるし、心配なのは私生活くらい(笑)。

 僕は、彼のことを天才だと思ってるんです。なぜかというと、すごいボールを投げるピッチャーは過去にもたくさんいましたけど、とんでもなく速い豪速球を投げられて、しかも七色の変化球を操れた人は一人もいない。僕が天才だというのはそこなんです。彼は、まっすぐの他に、あらゆる変化球が武器になっている。そんなピッチャーは彼くらいでしょう。だからこそ末恐ろしい存在だし、メジャーの歴史にもその名が残るかもしれないと思うんです。

4月9日のテキサス州アーリントン。ダルビッシュのメジャー初登板は、想像もしない結果となった。イチロー、川宗則を擁するマリナーズを相手に5回3分の2を投げ、被安打8の5失点。フォアボールを4つ与えた以上にコントロールに苦しんだ印象は、4点を奪われた初回に費やした42球もの球数からもたらされたものだった。

マリナーズ戦の初回は、ほとんど狙ったところに投げられなかったんじゃないかな。

 これほどまでにコントロールが定まらない原因は、二つあると思います。一つは、ボールの違い。

 日本のボールと比べてもひと回り大きく感じるし、明らかに滑る。しかも、ファウルとかワンバウンドで、審判から新しいボールが来るたびに不安になります。大きさも不揃いだし、縫い目の幅や高さもバラバラなので、ボール交換がいちいち気になるんです。

 まずはそのボールに、どれだけ早く慣れるかということ。滑るボールを気にしてしまうと、トップの位置にボールを持ってくるまでに滑らないようにしっかり握ろうとするため余計な力が入って、微妙にフォームを崩す原因にもなります。滑らないように意識することで今まで使わなかった部位を無意識に使いますから、肩やヒジへの負担も大きくなる。指にボールを馴染ませるための自分なりの工夫を早く見つけることが大事だと思います。

メジャーのキャッチャーと日本のキャッチャーの違い。

もう一つは、キャッチャーの違いです。

 日本のキャッチャーの技術は世界一です。メジャーのキャッチャーは、良い音を鳴らそうとか、投手が投げやすいように構えるとか、あまり意識していない。低めに投げるとミットが落ちて“パサッ”と捕るし、高めに投げても音が出なくて“ボンッ”と捕る。そうすると、目と耳からの情報で、あれっ、今日はボールが行ってないのかなと錯覚してしまいます。日本のキャッチャーは低くてもミットが落ちないようにしっかりとめてくれるし、高めでも、“パーンッ”といい音を鳴らしてくれますからね。この違いは大きいんです。

 最初、メジャーのキャッチャーは体が大きいし、構えも大きいから、一瞬、キャッチャーまでがすごく近く感じられて、投げやすく感じます。ところが、いざ投げてみると、集中できない。写真を撮るときにファインダーを覗いてもぼやけて、ピントがスパッと合わない感じかな。マイク・ナポリもヨービット・トレアルバも、ミットと顔がものすごく離れてるんですよ。

メジャーのキャッチャーは「ピントを合わせにくい」?

日本のキャッチャーは低く構えられるから、ミットとキャッチャーマスクとヒザの3点で小さい三角形を作ってくれる。そうすると、ピッチャーとしてミットに向かったとき、フォーカスしやすくなります。それがメジャーのキャッチャーの多くは背中を伸ばして大きく構えるから、顔は高い位置にあるし、股関節や足首が硬いから低く構えられない。そのくせミットだけ低い位置に置こうとするから、いびつで巨大な三角形ができちゃうんですよね。目標が分散されてピントを合わせにくいんです。これって、日本のピッチャーにしてみれば、ものすごく投げにくいものなんです。

苦しんだマリナーズ戦では打線の援護で白星を挙げ、その後も結果だけを見れば順調に白星を積み重ねているダルビッシュ。それでも、彼のここまでのピッチングをつぶさに見ていくと、引き出しの多さでバッターを抑えてはいるものの、まだ苦しさが垣間見えると桑田は言う。ボールが抜ける、甘いコースを痛打されるといった、日本ではあり得なかったシーンも少なくない。

ダルビッシュ君の“らしさ”が感じられないのは、キャッチャーが構えるミットの位置にも原因があります。日本のキャッチャーは追い込んだら、ボールゾーンにミットを置いてくれますが、メジャーのキャッチャーはストライクゾーンの甘いところに平気でミットを構えます。ダルビッシュ君ほどのピッチャーになると、ボールがミットに吸い込まれていくような感覚で投げているはずです。キャッチャーが構えたミットに正確に投げてきたから、体がそれを覚えている。そんなところに投げたら打たれちゃうよというところに構えられたら、本当にそこに投げちゃうんです。

イチローとの初対決を分析すると……。

マリナーズ戦では、2回からフォームを変えていましたね。あんまり低めにいかないので、足を上げてから低く出ようというフォームになってました。でも、あれじゃ、キレのあるボールが投げられない。押し出すように投げるとボールが死んじゃうんです。高いところから叩かないとボールにスピンがかからない。イメージ通りにボールを操るためには、本来の投げ方でないと難しい。まだ体の使い方がうまくいってないのかもしれません。

イチローには、いきなり3本のヒットを打たれた。第1打席は技ありの一打でストレートをサードの後ろに落とされ、第2打席ではツーシームをライトオーバーに弾き返される(二塁打)。第3打席はファーストゴロに打ち取ったものの、第4打席では強烈なピッチャーライナーがセンター前に抜けていく。イチローが、貫禄を示した。

イチロー君との初対決で、ダルビッシュ君は外へ逃げるツーシームを上手く使っていました。このとき、彼は日本時代とは逆にプレートの一塁側を踏んでいたんですが、ここを踏むと左バッターのアウトコースに逃げていくツーシーム、いわゆるシュート系のボールが有効になるんです。

 左バッターの視界を考えると、一塁側を踏んで投げられたシュート系のボールは、ピッチャーの手を離れた瞬間からストライクゾーンの中にあります。そこから逃げる軌道になりますから、バッターはどうしてもそのボールを追いかける形になる。実際、この初対決の打席で、イチロー君は4、5球目のアウトコースのツーシームを追いかけて、ボールゾーンにバットを出していました。それでも空振りすることなく、カットするあたりはさすがなんですけどね。結局、この打席ではストレートをサードの後ろに落とされましたけど、第3打席はアウトコース低めのツーシームを引っかけさせたものです。このボールがダルビッシュ君のイメージに一番近いボールだったのかもしれません。(Number Web)


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