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第9回テキスタイル作品展

2019-10-10 10:10:51 | テキスタイル作品展


1990年6月20日発行のTEXTILE FORUM 13号に掲載した記事を改めて下記します。

第9回テキスタイル作品展

 昨年と同様に3月の奨励作家展に引続き、第9回テキスタイル作品展が当研究所ギャラーに於いてクラス別に開催されました。
 奨励作家展の熱気が、そのまま各クラス展に引き継がれ、2ケ月がまたたく間に過ぎました。
 延64名の力作を個々に紹介できないのが残念ですが担当講師の寸評と会場風景写真をもって、展覧会報告とします。
尚、今年度も奨励作家は担当講師の推薦により決定させていただきましたので、お知らせ致します。今年は草木染クラスのように甲乙つけがたく全員とするクラスかおるように、各クラス共残念ながら次回に期待する方々が数人おられました。制作を続けて下さい。


◆第9回テキスタイル作品展奨励作家
※バスケタリー・クラス
 ★手塚のぶ子 ★谷川鶴子
※フェルティング・クラス
 ★隈元いづみ
※織物応用-かすり-クラス
 ★羽生恵子
※草木染クラス
 ★全員


◆織物基礎クラス展
☆4月2日(月)~8日(日)






◆手紡ぎクラス展
☆4月9日(月)~15日(日)





◆編むクラス展 -糸からの動き-
 ☆4月16日(月)~22日(日)

自分に、ひっかかってきた何かに気づきはじめ、もっと接近しようとする手探りの動きが感じられるように思えます。
人の目に、さらけ出すというはじめての経験は、それぞれの自分に、次への新しい変化を生んだでしょうか。
それは、次への動き、行為がはしまった自分自身が実感している事と思います。
榛葉莟子






◆フェルティグ・クラス展
 ☆4月23日(月)~29日(日)

 色彩、形体、素材というファイバー造形の基本を中心に独自の視点から、その可能性を一年間研究したものです。その体験の中から特に興味を持ったテーマを各自作品にしました。テーマを掘り下げる点では、もう少しという段階ですが、各自のフレッシュな視点が表現出来、グループ展を通して自己を客観的に見る機会と次へのステップを各自確認出来た場であったと思います。柔軟な感性で自然をみつめ自己をみつめ生きる事へのチヤレンジと努力の中から作品の大きさとか、可能性がより表現出来て行くのではないでしょうか。
田中 美沙子






◆T・F・C会員展
 ☆4月30日(月)~5月6日(日)



◆バスケタリー・クラス展
 ☆5月7日(月)~13日(日)

 アイリーン・エマリーは。THE PRIMARY STRUCTURES OF FABRICSでコイリングという言葉がまぎらわしい使い方をされていて、正確に組織構造を呼び分けるためにはルーピングとすべきだと言っている。彼女の視点からすれば、この説は充分筋が通っているのだが、かごを作る立場からは、別の解釈を欺えて設定した方がおもしろい。というのは、ルーピングは糸輪が四方で絡み合う必要かあるが、かごのコイリングは段と段のループは必ずしも絡む必要はなく、芯の一部をすくえば、段と段が結合する。ループの構造がなくてもコイリングは成り立つ。等々と考えていくと概念的な切り口が見えはじめる。高宮紀子が藤の芯と皮を使って、このテーマを作品にしたのは1986年で、それ以後、手塚のぶ子がコイリングの可能性を拓き続けた。今年のクラス展はそのインパクトを広げるために、コイリングをテーマにした。
 この手法では、ファーン・ジェイコブスやジェイン・サワーが独特の仕事を展開しているが、容器のかたちの神秘を宗教的な雰囲気の物体に表わすもので、構造の方からコンセプチュアルにアプローチした例はアメリカにもない。
 期待通り、クラス展は多彩な展開があった。「コイリングとは何か」あいまいになると危虞する声もあったが、作品の傾向を次のように整理して把握すれば問題はなく、むしろ、定型化した一つの技法から何を考えることが出来るかがわかると思う。第一群は手塚等のように芯と巻材による基本構造に新解釈を加えようとしたもの。第二群は巻くことが、部分の組織構造と無関係に全体の形の成形手段になっているもの……谷川鶴子の柳とステンレスの作品等。第三群はいわゆるコイリングを既成手法のまま使って、他のテーマを表現するもの。第四群は、渦状の運動そのものをイメージとして抽出しようとするもの……高橋静子の桑皮に穴をあけ金属線を巻き通した作品や矢島雲居の和紙とピアノ線の作品等。よく整理して見れば、各自がしている内容の位置付けが出来る。手塚がいうように「これが私のコイリングだ」という主張を証明すること、それが技法の再定義という方法なのだ。各人各様の再定義と証明がこれからもいろいろ見られそうで楽しかった。
関島 寿子







◆織物応用―かすり―・クラス展
 ☆五月十四日(月)~二十日(日)

 今年の「かすり」クラス作品展の感想を述べさせていただきます。
 まだ仕事に不慣れさが見られますが、それだけに初心のよさがあり、作品づくりにチャレンジしている様子がよく表われており、今後も新しい実験を重ねて、可能性や広がりに期待しています。制作者それぞれがチャレンジする課題を自分でつくり、作品につなげていることが大きな収穫だと感じました。
 自分を見つめる作業が多い中で、それぞれが自分なりに「かすり」をときほぐし、自分の中で煮つめた内容をどれだけ表現することができたか、充分とはいえなくても、作品展に出品することで自分の作品を客観的に見られ、その上で確実に自分への次なる課題や研究テーマを掘り下げ、つかみとっている手ごたえを感じます。
今後の展開が楽しみです。
中山 恵美子




◆草木糸染クラス展
 ☆五月二十一日(月)~二十七日(日)

 天然染料は人間と同じように、一つ一つが個性と生命力を持っています。そこから色を取り出して染め付けるには、ひたすら失敗をくり返して会得して行く外に手はありません。
 草木染クラスはまず明確な色を染めることを目標にしてきました。染め付けた色に、さらにもうひと仕事の工夫を重ねて作品に仕上げるまでの努力は各自の手腕にかかっています。
 皆さんの仕事ぶりに敬意を表すると共に、これからの気の遠くなるような長い長い勉強に堪えてゆけることを願って、出品者全員を奨励作家としました。            
高橋 新子