歌わない時間

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ハイペリオン『イギリス歌曲選』

2005年12月04日 | CD 古典派以後
A Treasury of English Song
Agnew・Ainsley・Allen・Bostridge・Dawson・George・Hill・Rolfe Johnson・Lott・MacDougall・Maltman・McGreevy・Milne・Partridge・Roberts・Varcoe・White・Wilson-Johnson
HYP30

76分26秒。Hyperion。ハイペリオンの、数多くのイギリス歌曲の録音から選んだサンプラーCD。32曲、いい演奏をたっぷり聴かせてくれて、千円ぽっきり。しかしちゃんと歌詞は全曲載っている。このあたりは良心的なハイペリオンだ。

ボストリッジが一人で歌った『The English Songbook』と重なるのは、"I will go with my father a-ploughing"・"Come away, death"・"Now sleeps the crimson petal"・"To Gratiana, dancing and singing"の四曲で、このCDではそれぞれ、アグニュー、ロルフジョンソン、エインズリー、ヒルが歌っている。聞き比べが楽しい。

『The English Songbook』では聞き流してしまっていた曲のよさを再発見できたりする。ボストリッジがへただったわけではなく、一人で歌い通されるとどうしても単調に感じて、聴いているほうの感度が鈍ってしまうのだ。その点、このCDでは一曲ごとに歌手が入れ替わるので、曲が変わると、がらっと雰囲気が変わって、よい。ただ、歌手が十八人も取っ替え引っ替え出てくると、目まぐるしいことも否めない。原典のCD番号もちゃんと書いてあるので、落ちついて聴きたい人はそっちを買ってください、ということだろう。なおボストリッジ自身も、ブリテンの"Fish in the unruffled lakes"という曲でこちらのCDにも参加している。

やはり巧いなあと思うのはロルフジョンソン(五曲)やエインズリー(四曲)だ。特にロルフジョンソンはこの手のイギリス歌曲を歌わせるとほんとにいい。70年代のEMIへの録音もよかったが、ここではさすがベテランの味を出している。エインズリーは、もう少し年を取って力が抜けるとさらによくなるだろう。

ここに名前を連ねている歌手のほとんどはバロックの声楽曲のソリストとしても活躍する人たちであり、このCDに聴かれるような近現代の歌曲も、バロックも、それぞれの曲に相応しく違和感なく歌えるところに、イギリスの歌手たちの特質がよく現れている。

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