ごゑんきゃうげん7

2017-03-25 05:02:54 | 李圜より
嵐昇菊という歌舞伎役者は、たしかに五代目まで存在していた。 三代目までは上方、すなわち関西の歌舞伎役者で、四代目、すなわち金澤あかりの祖父の代に、東京へ出てきた。 しかし、上方の芸風が東京の水に合わなかったこともあって人気が出ず、失意のうちに病没してから名門“緒室屋”は低迷し、五代目、すなわち金澤あかりの父の代でついに廃業、名門“緒室屋”の芸脈は断絶する― すべて、彼女の話しの通りだ。 さ . . . 本文を読む
コメント

ごゑんきゃうげん6

2017-03-24 05:10:27 | 李圜より
「あ、そうだ……。近江さん、よろしければ連絡先を交換しませんか?」 仕事ではない場面で、自分からそう申し出た女性は、彼女が初めてだった。 いちおう僕は、仕事用に使っている番号の方で、交換した。 「もっとも、あのショッピングモールへ行けば、またお会いすることがあるかもしれませんね」 僕はそう言いながら、金澤あかりから届いたアドレスを登録していると、 「その警備員なんですが……」 と、彼女 . . . 本文を読む
コメント

ごゑんきゃうげん5

2017-03-23 05:27:35 | 李圜より
「ちなみに金澤さんは、その農村歌舞伎に出られたことは……?」 僕は彼女の瞳(め)をさりげなく注視しつつ、訊ねた。 「十三歳のときに、一度だけ……」 金澤あかりはそう答えて、口許だけで笑ってみせた。 そしてわずかに目線を伏せたきり、あとを続けようとしなかった。 あまり触れたくない― そう言いたいように見えた。 目線を伏せたのは、心の内を読まれたくなかったからかもしれない。 しかし彼女 . . . 本文を読む
コメント

ごゑんきゃうげん4

2017-03-22 05:09:20 | 李圜より
嵐昇菊(あらし しょうぎく)― それが、父までの代々が名乗っていた歌舞伎役者の芸名でした、と金澤あかりは続けた。 「もともとは、“緒室屋(おむろや)”という屋号を持つ、名門だったらしいのですが……」 金澤あかりの祖父の代で家運は傾きだして― 「父が五代目を継いだときにはすっかり零落していて、役も思うように付かなくなっていたそうです。それで父は芝居に対する意欲を失って……」 三十五歳の若さ . . . 本文を読む
コメント

てんかつもどき。

2017-03-21 20:08:33 | 李圜より
国立演芸場の演芸資料展示室で、「魔術の女王 松旭斎天勝」展を見る。 いかに彼女が天才奇術師であっても、天性の“美貌”がなければ、後世に名を残すことはなかったであらう。 また、ニセモノが続出することもなかった……、かもしれなゐ。 つまり、 美貌そのものが、 世間を惑わすマジックなのだ。 . . . 本文を読む
コメント

ごゑんきゃうげん3

2017-03-21 05:15:39 | 李圜より
暴漢は中部地方出身の三十歳、「仕事を馘首(クビ)になりムシャクシャしてやった」と警察に話したと云うことを、僕はニュースで知った。 しかも、体内からは微量の大麻が検出されたとかで、僕は改めてゾッとさせられた。 知らなかったとはいえ、そんな危険すぎる男に、よくも立ち向ったものだ。 そして、あの若い女性警備員も……。 僕は、自分とたいして年齢(とし)の違わない男が、あのような事件を起こしたことに . . . 本文を読む
コメント

すべてをはなしてやるわえ。

2017-03-20 12:50:42 | 李圜より
議会でキーマンが、かたった。 ああ。 また、 騙ったのですね。 . . . 本文を読む
コメント

ごゑんきゃうげん2

2017-03-20 05:17:10 | 李圜より
驚いて振り返った僕は、慄然とした。 ついさっきまで寝そべっていたあの浮浪者風の男が、刃物を振り回して暴れていたのだ。 床には、年配の警備員が、血潮のなかに倒れていた。 悲鳴をあげて逃げ惑う客たち。 昼下がりのエントランスは、いっぺんに地獄風景と化した。 男は相変わらず獣のような咆哮をあげながら、今度は目の前にいる女性警備員に襲いかかろうとしていた。 危ない……! 僕はそう叫ぼう . . . 本文を読む
コメント

ごゑんきゃうげん1

2017-03-19 08:33:48 | 李圜より
いまの僕の楽しみは、自宅の最寄り駅のそばにオープンした大型ショッピングモールまで、散歩することだ。 だからといって、僕を暇人などと思われては困る。 僕の名前は近江章彦―大和絵を家業としていた公家、近江中納言家の末裔で、かつての家業をそのまま自分の職業にしている、“大和絵師”だ。 中学生のときに自分の“血筋”を強く意識するようになり、先祖の仕事は僕が受け継いで発展させる―! と心に誓って、は . . . 本文を読む
コメント

くさもきもわがおほきみのくになればいずくかおにのすみかなるべき。

2017-03-18 23:11:05 | 李圜より
東京芸術劇場の「東京都民俗芸能大会」にて、奥多摩町の「神庭神楽(かにわかぐら)」と、若山胤雄社中の「江戸里神楽」を楽しむ。 奥多摩の自然風景を彷彿とさせる素朴な神庭神楽も、能仕立ての衣裳で格調高く舞はれる江戸里神楽も、環境による様式の違ひはあれど、“人間臭さ”を描ゐた根底部分は、全く共通してゐる。 気取らず、格式ばらず、ありのままの庶民を見せる― わたしが狂言の太郎冠者に共感を覚へな . . . 本文を読む
コメント

あそびであそぶ。

2017-03-14 15:33:50 | 李圜より
房州佐倉の国立歴史民俗博物館で、「見世物大博覧会」展を見る。 江戸時代、浅草や両国では“見世物”といふ大衆娯楽が全盛だった。 魚の干物を使って見立てた「三尊仏」や、鮑貝で拵へた伊勢の「二見ヶ浦」、そしてそれを眺める椎茸と昆布で見立てられた旅人― 当時の記録をもとに復元されたそれら“細工見世物”は、現代の目で見ると見世物の域をはるかに超えた、高水準にしてわかりやすゐ芸術作品(アート)そ . . . 本文を読む
コメント

みへざるものをみみでみる。

2017-03-12 20:19:16 | 李圜より
水道橋の能楽堂で、宝生流の「朝長」を観る。 平治の乱で敗走し、美濃国青墓宿で自害した、源頼朝の兄。 一族郎党は頼み難く、一夜の宿を頼んだ遊女宿の女主人だけが、その菩提を弔ってゐる。 人の運命と、本音と、縁(えにし)の皮肉さ。 真実は、 世の中が常ならざるとき、 姿を露わす。 もう一曲は「藤」。 北陸の湖のほとりで、 静かに咲き誇るその藤を、 これぞ“謡ひ宝生”の面 . . . 本文を読む
コメント

すぐなるまよひみち。

2017-03-11 19:25:49 | 李圜より
わたしがその町を訪ねたのは、 まったくの偶然だった。 しかし、坂道の下にその人の姿を見て、 わたしは自分を偽ってゐたことを、 思ひ知らされる。 あれは大地震の前のことだ。 あのときの大地震で、 それまでのわたしは、 すべてが過去になった。 ……はずだった。 しかし、 坂道を上って来るあなたを見て、 すれ違って行くあなたを見て、 わたしは思ひ知らされる。 . . . 本文を読む
コメント

しゅこうのつめあはせ。

2017-03-05 21:15:52 | 李圜より
川崎市教育文化会館ホールにて、「かわさき市民芸術祭」の邦楽・日舞部門を観る。 参加した市内各区の文化協会が、それぞれに趣向を凝らして唄や踊りを披露し、バラエティーに富む楽しゐ舞台となった。 婚礼の場の余興に列席者たちが、「さんさ時雨」「門出酒」「因幡大黒舞」と、代わる代わる出てきて披露する演出を行った宮前区文化協会はアイデア賞もの、また高津区文化協会の津軽三味線合奏では、その音色にふと . . . 本文を読む
コメント

わかるひとにはわかる。

2017-03-03 14:18:02 | 李圜より
このほど、フィリピンの海岸に、謎の物体(生物?)が打ち上げられたといふ。 それがいったい何なのか、わからない。 たぶん、「てれすこ」でせうな。 . . . 本文を読む
コメント