先日読んだ『青蛙堂鬼談』以来、岡本綺堂が気になります。
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三浦老人昔話
岡本綺堂読物集一
著者:岡本綺堂
発行:中央公論新社
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中央公論新社から出ている岡本綺堂読物集のその一。
半七捕物帳の親分の友人、三浦老人の語るお話12篇プラス短篇2篇が収められています。
タイトルは次のとおり。
『桐畑の太夫』、『鎧櫃の血』、『人参』、『置いてけ堀』。
『落城の譜』、『権十郎の芝居』、『春色梅ごよみ』、『旗本の師匠』。
『刺青の話』、『雷見舞』、『下屋敷』、『矢がすり』。
『黄八丈の小袖』、『赤膏薬』。
『青蛙堂鬼談』は百物語形式の怪談でしたが、こちらはその味は控えめ。
タイトルのとおり、老人の昔語りの中で、明治から江戸の世を振り返り、そこに生きた人々の物語を伝えてくれます。
その時代の有形無形のしきたりが物語を成り立たせる味。
場所もそうですね。
例えば『刺青の話』は、当時の刺青の位置づけがあってこその物語ですし、単純なところでは、武士、町人といった格付けがあり、そのすみわけ入り混じるところに物語が生まれます。
自分に許されること、許されないことの境をうまく渡れるかどうか。
わずかなところで、悲劇にも喜劇にもなってしまいそうですが、三浦老人の軽妙な語りの雰囲気は、悲劇を必要以上に悲劇に仕立て上げず、こっけいなだけの喜劇にもせず、その加減が読みやすさにつながります。
この本にあるものはすべては今は昔となったもの。
語る老人はもとより、それを聴いた人すらも。
お話そのものもさることながら、それが始まるまでの三浦老人とのやりとりには、短いのにたっぷりの雰囲気がありました。
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