「っ…!!」
声にならない悲鳴が漏れた。
下腹部に痛みの波が押し寄せる。
もうだいぶ前から座る余裕もなくなって、少しひんやりしたフローリングの上に横たわっていた。
また、来た。
お腹を腕でかばうように丸くなる。
できるかぎり小さく、小さく。
毎月のことではあるけれど、今日は特にひどい。
ナイフでえぐられているかのような錯覚におちいるほどに。
波が引いた束の間の隙に、千秋の背中を確認する。
一瞬の充電。
次にくる波に備える。
少し手を伸ばせば手が届く距離に、同じ部屋にいるのに。
千秋がのだめの異変に気付く様子はない。
彼は数日前から別の世界へ飛んでしまっていた。
千秋にしか入ることのできない、美しい調べだけが在る世界。
そのせいか、その背中を遠く感じてしまう。
追いかけても、追いかけても追いつけない。
音楽も、恋も。
千秋はいつものだめのずっと先を走っていってしまう。
―寂しい……
と、突然かつてないほど激しい痛みに襲われた。
「あぅっ…!」
思わず声が出てしまった。
千秋の邪魔にならないように、必死で抑えていたのに。
あまりの痛みに目をきつく閉じる。
「っ…し…いち、く…っ……。」
上手く息が継げず、とぎれとぎれながら千秋の名前を呪文のように唱えた。
気付いて欲しいわけではない。
ただそこに彼の存在があるだけで、頑張れる気がしたから。
彼が気付かないのを良いことに、ここにいる。
「ばぁか。」
暗闇に、聞き慣れた声がひびいた。
「一人で我慢なんかすんなよ。」
頭をやさしくなでてくれる。
きつく閉じていた目を開くと、あきれたような千秋の苦笑があった。
「し…ぃちく……なんで…?」
疲れきって強張るのだめの体をほぐすように、大きな手が背中を優しくなでてくれる。
「なんでって、お前に呼ばれたから。」
千秋は、のだめの体を抱き上げると、膝の上に乗せた。
のだめの頭を自身の胸にもたれかけさせる。
片方の手でのだめの背を支え、もう片方の手をお腹にそえた。
体を包み込んでくれるような暖かさに安心して涙が零れた。
痛みが少し緩和されたような気がする。
「ごめんな、すぐに気付いてやれなくて。」
すまなさそうに謝る千秋に、首を振って答えた。
「のだめも…ごめんなサイ……お仕事の邪魔しちゃいまシタ…。」
「ばか…。」
「むきゃ…馬鹿バカ言い過ぎデス…。」
「お前さ、言えよな。俺のこと考えてくれんのは嬉しいけど言わなさすぎだ。少しくらいのわがままなら、聞いてやるから。」
戸惑いながらも、千秋にして欲しいことを並べてみる。
「じゃぁ…ちゃんとひげ剃ってくだサイ。ご飯も食べて。」
「…わかった。」
「仕事ばっかしないで、ちゃんと休んでくだサイ。」
「…はい。」
「タバコはほどほどにしてくだサイ。」
「…うん。」
「RUIとばっかりコンチェルトしないで。」
「…うん。」
「あと…。」
「ん…?」
本当に言ってしまってもいいのだろうか。
自分の本当の願い。
いつも不安に思っていること。
言いよどんだところを千秋に促され、意を決して口を開いた。
でもやっぱり、おこがましい気がして小さな声で告げた。
「……のだめのこと、おいてかないでくだサイ…。のだめ、頑張りマスから。真一君に、追いつけるよに。音楽でも、妻としても。だから……っ?!」
突然、強く抱きすくめられる。
「…おいてなんて行くわけねぇだろ。」
「ほんと…ですか?わがまま言っても、のだめのこと嫌いになりまセンか?」
「ああ。」
「ずっと、一緒デスか?」
「ああ。」
「あへ~、仲良し夫婦宣言デスね。のだめ、どこまででも着いてきマスw天国でも、地獄でも、お仕事でも、お風呂でも、トイレでも、どこまでも~、デス!!」
「来んなー!!ちょっとおとなしくなったと思ったら!元気になったんなら、星に帰れ!!」
膝の上から落とされそうになり、千秋との攻防戦になった。
「離れろ!」
「やデスー!」
首に必死にしがみつきながら、今一番伝えたいことを耳元でつぶやく。
「大好き、デス。」
すると、必死にのだめを引き剥がそうともがいていた千秋の動きがぴたりと止まった。
その隙に、もう一つわがままを囁いてみる。
「…もう少しだけ、ここに居ていいデスか?」
反応がない。
少し不安になってきて、千秋に巻きつけた手を解く。
そっと、くっついていた体を離そうとすると、それを阻むようにきゅっと抱きしめられた。
「…お前、反則…。」
一瞬沈みかけた気持ちがまた浮上した。
今の位置からは見えないけど、少し顔の赤い千秋が予想できた。
それがうれしいから。
もっともっと、愛の言葉を。
「真一君、愛してマスよw」
―――――――――――――――――――――――
ようやく、読みきりサイズをアップできました☆(自己満)
なんか、前半と後半のバランス悪し…ですよねぇ↓↓
終わり方も、無理やり感が……??
出直します…。
声にならない悲鳴が漏れた。
下腹部に痛みの波が押し寄せる。
もうだいぶ前から座る余裕もなくなって、少しひんやりしたフローリングの上に横たわっていた。
また、来た。
お腹を腕でかばうように丸くなる。
できるかぎり小さく、小さく。
毎月のことではあるけれど、今日は特にひどい。
ナイフでえぐられているかのような錯覚におちいるほどに。
波が引いた束の間の隙に、千秋の背中を確認する。
一瞬の充電。
次にくる波に備える。
少し手を伸ばせば手が届く距離に、同じ部屋にいるのに。
千秋がのだめの異変に気付く様子はない。
彼は数日前から別の世界へ飛んでしまっていた。
千秋にしか入ることのできない、美しい調べだけが在る世界。
そのせいか、その背中を遠く感じてしまう。
追いかけても、追いかけても追いつけない。
音楽も、恋も。
千秋はいつものだめのずっと先を走っていってしまう。
―寂しい……
と、突然かつてないほど激しい痛みに襲われた。
「あぅっ…!」
思わず声が出てしまった。
千秋の邪魔にならないように、必死で抑えていたのに。
あまりの痛みに目をきつく閉じる。
「っ…し…いち、く…っ……。」
上手く息が継げず、とぎれとぎれながら千秋の名前を呪文のように唱えた。
気付いて欲しいわけではない。
ただそこに彼の存在があるだけで、頑張れる気がしたから。
彼が気付かないのを良いことに、ここにいる。
「ばぁか。」
暗闇に、聞き慣れた声がひびいた。
「一人で我慢なんかすんなよ。」
頭をやさしくなでてくれる。
きつく閉じていた目を開くと、あきれたような千秋の苦笑があった。
「し…ぃちく……なんで…?」
疲れきって強張るのだめの体をほぐすように、大きな手が背中を優しくなでてくれる。
「なんでって、お前に呼ばれたから。」
千秋は、のだめの体を抱き上げると、膝の上に乗せた。
のだめの頭を自身の胸にもたれかけさせる。
片方の手でのだめの背を支え、もう片方の手をお腹にそえた。
体を包み込んでくれるような暖かさに安心して涙が零れた。
痛みが少し緩和されたような気がする。
「ごめんな、すぐに気付いてやれなくて。」
すまなさそうに謝る千秋に、首を振って答えた。
「のだめも…ごめんなサイ……お仕事の邪魔しちゃいまシタ…。」
「ばか…。」
「むきゃ…馬鹿バカ言い過ぎデス…。」
「お前さ、言えよな。俺のこと考えてくれんのは嬉しいけど言わなさすぎだ。少しくらいのわがままなら、聞いてやるから。」
戸惑いながらも、千秋にして欲しいことを並べてみる。
「じゃぁ…ちゃんとひげ剃ってくだサイ。ご飯も食べて。」
「…わかった。」
「仕事ばっかしないで、ちゃんと休んでくだサイ。」
「…はい。」
「タバコはほどほどにしてくだサイ。」
「…うん。」
「RUIとばっかりコンチェルトしないで。」
「…うん。」
「あと…。」
「ん…?」
本当に言ってしまってもいいのだろうか。
自分の本当の願い。
いつも不安に思っていること。
言いよどんだところを千秋に促され、意を決して口を開いた。
でもやっぱり、おこがましい気がして小さな声で告げた。
「……のだめのこと、おいてかないでくだサイ…。のだめ、頑張りマスから。真一君に、追いつけるよに。音楽でも、妻としても。だから……っ?!」
突然、強く抱きすくめられる。
「…おいてなんて行くわけねぇだろ。」
「ほんと…ですか?わがまま言っても、のだめのこと嫌いになりまセンか?」
「ああ。」
「ずっと、一緒デスか?」
「ああ。」
「あへ~、仲良し夫婦宣言デスね。のだめ、どこまででも着いてきマスw天国でも、地獄でも、お仕事でも、お風呂でも、トイレでも、どこまでも~、デス!!」
「来んなー!!ちょっとおとなしくなったと思ったら!元気になったんなら、星に帰れ!!」
膝の上から落とされそうになり、千秋との攻防戦になった。
「離れろ!」
「やデスー!」
首に必死にしがみつきながら、今一番伝えたいことを耳元でつぶやく。
「大好き、デス。」
すると、必死にのだめを引き剥がそうともがいていた千秋の動きがぴたりと止まった。
その隙に、もう一つわがままを囁いてみる。
「…もう少しだけ、ここに居ていいデスか?」
反応がない。
少し不安になってきて、千秋に巻きつけた手を解く。
そっと、くっついていた体を離そうとすると、それを阻むようにきゅっと抱きしめられた。
「…お前、反則…。」
一瞬沈みかけた気持ちがまた浮上した。
今の位置からは見えないけど、少し顔の赤い千秋が予想できた。
それがうれしいから。
もっともっと、愛の言葉を。
「真一君、愛してマスよw」
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ようやく、読みきりサイズをアップできました☆(自己満)
なんか、前半と後半のバランス悪し…ですよねぇ↓↓
終わり方も、無理やり感が……??
出直します…。