ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

「何をしないか」

2008年06月09日 | 中学受験 行雲流水録
『限られた人生で、大事なことは「何をするか」ではなく、「何をしないか」である。』という一文があります。

私達現代人はあまりにも忙しすぎて、「何をしないか」と考える以前に「何をするか」ということの方を考えてしまいがちです。「何をするか」というより、「何をしないといけないか」と言った方がいいかもしれません。今日は何をしなければならないか、何を優先して片付けなければいけないか、朝起きてから夜寝るまでずっとそのことばかり考えているような気がします。「何をしないか」などと言われても、そんなことできない! と思ってしまうかもしれません。

「季節を愛でる、あるいは感じる」という言葉がありますが、私達は本当に、純粋な気持ちで季節を感じているのでしょうか。毎日勉強に、仕事に忙しく、分刻みで行動する中で、本当に「ああ、秋だなあ」「ああ、春だなあ」と感じることがあるのだろうかと思ってしまいます。上の一文は、現代人の生活そのものを皮肉っているように思えてなりませんが、忙しいその手を、その頭を一時でも休めて空を見上げてみる。夏の雲から秋の雲に変わっている空、いつもよりなんとなく高く遠く感じる空。心地よい風の中には、ひんやりとした空気を感じ、キンモクセイのほのかな香りが漂う。そんなことすら感じられなくなってしまっている今の私達の生活は、決して健康的とは言えないのかもしれません。

先日、新聞に中学一年生の一割が鬱にかかっているという記事がありました。大人ではなく、中学一年生です! この現実が何を物語っているのか、これはただごとではない事態であると私は感じました。忙しすぎる生活や人間関係がストレスを生じさせ、人間本来の正常なリズムを奪ってしまっているのかもしれません。この子達が大人になったら、どうなってしまうのでしょうか。恐ろしい結末が待っているかもしれません。それは決して大袈裟ではなく、ある意味で警告を発しているのかもしれません。

人生ですべきことはたくさんあります。将来を見据えて、今のうちにしておいた方がよいということもあります。もちろん寿命は決まっているのですから、その間に出来る限り、しかも悔いの残らないように楽しい充実した人生を送りたい、誰もが心のどこかでそう思っていると思いますが、あまりにも余裕のない人生もつまらないものです。今していることを思い切ってやめてみる。一日でもいい、一時間でもいい、三十分でもいい。頭の中から全てを追い払って、何も考えずに自然と向き合ってみる。なにも山や海に行かなくても、身近にある空や風や景色でいいのです。そうやって頭を空っぽにすることで、本来の自分を取り戻すことができるかもしれませんし、何かを発見することができるかもしれません。

大人も子供も、現実から逃避することは不可能です。「今日はこれをやめよう」と思うこともできないかもしれませんから、せめて窓を開けて、四季の移り変わりを肌で感じたいものです。


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