Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

Nile Rodgers-Le Freak part.3

2012-04-17 21:28:15 | NILE RODGERS & the CHIC organization
明日からナイル・ロジャース&CHICのライヴがブルーノート東京で始まる。
明日はナイルのパートナー、バーナードが1996年に武道館のライヴを終えた後、
未明にホテルの部屋で亡くなった命日。
多くの本物のナイルファンがこの日をめがけてやってくる。
大切なパートナーを亡くしたナイルが
その後も彼の命日に掛けて来日してくれる感謝の気持ちを表したいから。

そして最終日のセカンドではYouTubeで応募して選考に通った有志達が、
ナイルのギターという賞品を賭けて演奏を競い合うギターコンテストがある。

メンバーが昨年度とほぼ同じというのも感慨深い。
あの余震が続き、次々とアーティストの来日がキャンセルになる中、来てくれた人達。
ナイル達は既に東京へ到着し、明日のライヴへと準備が始まっているだろうか。

ナイルの来日までに彼の著書"Le Freak"を読み終えて、
サインを貰う予定で本の内容や感想もこのブログで紹介してきた。
ライヴの前に駆け足で最後の3章を紹介したい。

チャプター13を開くとそこには死神のような黒いマントを着た男の写真がある。
1982年からナイルは周囲の人の死に度々直面することになる。
ドラッグが原因の人もいれば、病気で亡くなる人、不慮の事故に合う人。

CHICのトランぺッターに始まり、一緒に仕事をしてきた多くのアーティストが
亡くなっていく。
死神が自分に近づいてきていると最初は考えもしなかったが、
衝撃的だったのは、1990年のStevie Ray Vaghanだった。
コンサートの後、急いで帰らなければならなかったスティーヴィーに
エリック・クラプトンは自分がチャーターしたヘリの座席を譲った。
ヘリコプターは墜落し、全員が帰らぬ人となった。

その半年後、ナイルは夜明かしのパーティーからアパートメントに戻る。
新しく買ったポルシェをパーキングに停め、ドアマンに挨拶をし、
エレベーターへと向かった。
28階に住んでいたナイルはどういうわけか14階のボタンを押す。
エレベーターの中でナイルは心臓発作を起こす。
14階のドアが開いた時にナイルはロビーへと倒れ込んだ。
そこにはたまたま掃除夫がいて、彼の通報で救急隊が到着。
ナイルは病院のERへと運ばれた。
一度、心停止状態に至ったが奇跡的に心臓の鼓動は甦る。
後に担当医からいかにナイルが危ない状態だったかを聞かされる。
28階で倒れても誰も見つけてくれなかったはず。
なぜ14階を押したのか自分でも分からないとナイルは綴る。

しかし恥ずかしいことにこれでも自分は懲りてなかった、
と告白している。
その後もドラッグ、飲酒が止められずにホノルルからLAのフライトでも、
意識を失い、着陸後病院へと搬送された。
その都度、後悔しながらも薬と酒を断つには至らなかったのだ。

94年の夏にナイルは久しぶりにマドンナと偶然クラブで出会い、
その週末に開かれる彼女のバースデイパーティーへと誘われた。

マイアミに滞在していたナイルは知り合いのアーティストのショウを観に行き、
誘われてステージへと上がる。
翌日、その時の録音を聞かされたナイルが愕然とする。
完璧に自分は正気を失っている、そういう状態でプレイをしていた、
ということを初めて自覚した。

それだけではなかった。
ドラッグはナイルを経済的にも脅かしていることを管財人から告げられる。

マドンナの大切なパーティーの前に腹ごしらえに入った日本料理屋で
ナイルは完璧に出来上がってしまった。
その後行ったマドンナのパーティーで、
数々の失態を演じたらしいが自分では記憶がないそうだ。
マドンナは寛大にも許してくれたが、
ナイルは未だにその日の自分を許せそうにもないと書いている。

とうとうナイルが観念したのは次に続く出来事だった。
マフィアに追われていて脅迫するメッセージが、
留守電に入っていると思い込み、コネというコネを使った結果、
日本刀とピストルをホテルに届けさせた。
そのメッセージが幻聴だと気付き、目の前にある武器を見たナイルは戦慄した。
幻聴があるなら、幻覚でホテルのメイドやスタッフをこの武器を使って傷つけてしまう、
そんなことも起こったかもしれないと。

意を決したナイルはリハビリ施設の門を叩く。
そして退院後もそこで学んだ通りにドラッグや飲酒する環境から
自分を守る生活を8ヶ月続けた。

ドラッグも飲酒も一時的に止めることはできてもそれを継続するのは難しい。
それを成し遂げることができたのは、あの日に聴いた録音の自分の演奏のひどさ、
音楽ができなくなるのは自分にとって仕事も人生も失うに等しいと思ったからだ。

14章は1996年の4月18日へと向かっていく。

この年にナイルはマイケル・ジャクソンに請われて一度会って、
仕事の話をしたらしい。
様々な事情で傷ついていたマイケルとまだドラッグや飲酒に対して警戒心があったナイル。
二人は会見の中で気持ちの通じる瞬間もあったそうだ。
ところがナイルの言葉を誤解してしまったマイケルの表情は急に硬くなり、
最後はハグではなく、握手で別れた。
マイケルの手、繊細なはずの彼の手の感触が意外にごつかったとナイルは締め括っている。