ADONISの手記

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ヴェラード(11eyes -罪と罰と贖いの少女-)

2015年11月16日 00時48分03秒 | 小説

 俺の名はヴェラード。中世ヨーロッパ時代に東欧に存在したドラスベニア王国の王だ。といってもドラスベニア王国は現実世界の歴史には存在しない国で、あくまで『11eyes -罪と罰と贖いの少女-』の世界で存在していた架空の王国にすぎない。

 じゃあ、何故その架空の王国の王様をやる羽目になったかと言えば、俺が『11eyes -罪と罰と贖いの少女-』の世界に転生したトリッパーだからだ。

 俺は元々ギャルゲーにはまっていたオタクだったが、死後に創作物が具現化した世界に特典付きで転生させて貰えるというネット小説ではテンプレな状況になった。そんな俺は「リーゼロッテは俺の嫁!!」とばかりにリーゼロッテを攻略するためにヴェラードに転生する事にした。

 ちなみにヴェラードの持つ劫の眼(アイオンのめ)は未来視の能力があるが、その真価は数多ある未来の可能性の中から望む未来を引き寄せ、どんな小さな可能性であってもその未来を掴むこと。つまり望むように未来を変える事が出来るというトンデモな能力だった。

 実際、ヴェラードは『11eyes -Resona Forma-』で劫の眼を使って無双状態になっていた。しかし、これほど強力な力にリスクが伴わない筈もなく、使用する度に魂を劫の眼に喰われていき、最終的に命を落とす事になる。

 このように常人ならばこのリスクの為に折角の劫の眼も有効利用できないが、トリッパーの場合は話が違う。トリッパーの魂は下位世界のありとあらゆる存在が干渉できないという特性があって、それは劫の眼も例外ではない。つまりどれだけ劫の眼を乱用してもトリッパーならば魂を喰われなくて済むのだ。

 これだけでも強力であるが、更に能力を強化すべく転生特典を考慮した。

①『とある魔術の禁書目録』の傭兵の流儀
 ウィリアム=オルウェルの傭兵時代の戦闘技術。巨大な武器を扱う肉弾戦を基本としている。

②『とある魔術の禁書目録』の二重聖人
 生まれながらにして神の子と聖母、両方の特徴を兼ねた神の力の一端(「天使の力」)を宿した人間。

③『とある魔術の禁書目録』の聖母の慈悲
 あらゆる約束・束縛・魔術的な条件などを緩める能力で、呪詛の無効化や虚像から本物の術式を引き出す事ができる。また、これによって劫の眼だけでなく聖人としての力を100%発揮することができ、さらに神の子と聖母という二重の聖人であることから天使に匹敵する力を持つ。

 これらの特典により、超人的な力を発揮できるようになった。「これからは俺の時代だぜ!」と思っていたが中世欧州であった為に、サブカルチャーをこよなく愛する文化人(笑)である俺にはここの娯楽がつまらなくて仕方がなかった。

 更に中世欧州の食事事情はお世辞にも良いとは言えない。現代日本では品種改良を加えて優良な品種だけを食べるという贅沢が中流家庭でもできたが、この時代ではそんなことは不可能だ。この時代では王侯貴族であっても現代日本人よりも遥かに劣悪な食事しかできないのだ。

 衛生環境はもっと拙い。一般的に現代日本人は衛生環境と言えば上下水道が完備されており、トイレや入浴がきちんとできて清潔な生活ができるが、中世欧州ではトイレがなく街中で人々が窓から糞尿を外に捨てているのだ。当然ながら街中が汚物だらけでとても臭い。あのハイヒールにしてもそんな汚物を踏まないように発明されたというのだから、その酷さは相当なものである。

 また入浴と言う習慣がないものだから人々はとても臭くて汚い。まぁ水道どころかポンプすらなく、ガスもない時代に風呂を沸かすというのは重労働だからそれも無理もないだろう(国中で温泉が湧いていた日本とは違うのだよ)。

 中世ヨーロッパではこうした臭さを誤魔化すために香水が発達したほどなのだ。

 史実の中世ヨーロッパではペストなどでヨーロッパの総人口が激減する事が何度もあったというが、実際に生活してみてそれはそうだろうと痛感させられるほど臭くて汚い最悪の衛生環境だった。

 というか、中世ヨーロッパ人よりも古代ローマ人の方がよっぽど文化的な生活をしていたと思う。多分キリスト教の影響で文化が後退してしまったのだろう。まさに暗黒の中世だぜ。

 つまり、要約すると食事は不味く衛生環境は最悪で嫌気が指したのだ。

 この世界は中世ヨーロッパ風ファンタジー世界ではなく、裏で魔術が存在している事を除けば中世ヨーロッパ世界そのままなので、嫌なことも史実通りなのだ。正直現代人には辛い世界だ。ファンタジーな世界観に憧れて転生する人は事前にこの問題を考慮した方がいいだろう。

 これでも癒しでもあればまだよかったが、この世界は戦国時代の如く混沌とした時代で、他国との戦争や貴族などの政争がやたら多い。そんな流血と陰謀に満ちた殺伐とした世界だけに気が休まることもない。ぶっちゃけると貴族の暗殺を警戒してリアルで毒見役を用意しないといけない生活には軽く鬱になるぞ。

 異教徒の侵略から祖国を守るために戦うというのは日常茶飯事。敵国や国内の不穏分子を始末するなど、血なまぐさい事この上ないが、やらなければこちらがやられるから仕方がない。座して死を待つなど俺の主義じゃないからな。

 最も劫の眼や転生特典で無双出来た為に、俺は常勝不敗の王であったから勢力拡大すらできていたが、国土が広がったからと言って俺の生活が改善するわけもなく、面倒事が増えるだけだったりする。

 それならそれでオリ主らしく内政チートでもやっていればいいじゃないかと思う人もいるだろうが、この世界は中途半端に文明が存在するだけに既得権益でガチガチになっていて新しい事をしようとすると、保守的な貴族たちの権益を損ねる事や理解を得られない事がやたら多く、やりたくてもできない状態であった。

 これで無理に改革をやったりすると貴族たちに邪魔者扱いされて暗殺させるだろう。劫の眼の予測でもその結果が出ただけに迂闊に動けないのだ。

 はたから見ればドラスベニア王国の王様という勝ち組な筈の俺の内情はこんなものである。

 唯一の救いは監察軍と接触に成功してその支援を受けられるようになった事だろう。まあ、監察軍からもらった品物の中にドラゴンころし(ベルセルク)があったのは驚きであったが。これは転生特典で得た常識外れの戦闘能力に武器がもたないという問題をトリッパー仲間に愚痴った時に彼らが提供してくれたものだった。

 このドラゴンころしはドラゴンすら殺すことが出来る剣というトンデモな発想で作られた、身の丈よりも長大で分厚い鉄塊のような大剣だ。

 元々はただの鉄でできた剣にすぎなかったが、ガッツが使徒や死霊を切りまくった所為で霊的な力を帯びるようになった。型月世界風に言うならば数多の人外の化け物を切る事で概念武装のようなものになったのだろう。

 監察軍はガッツが死亡して使い手がいなくなったこの剣を回収していたらしく、それが俺に回してきたのだ。この剣のすさまじいことに俺の力で振るっても壊れない上に敵兵を剣や鎧ごと叩き斬れるので、実に俺向きの武器と言えた。どうでもいいが、このドラゴンごろしで無双してからというもの俺の事を化け物扱いして金眼の魔王と呼ぶものがやたらと増えたな。

 さて、そんな何もかもがつまらない俺の生活であるが、妻のリーゼロッテとの性活が俺の唯一の癒しだった。話が飛び過ぎだったな。まあ、ようするに俺がヴェラードとして活躍していると、リーゼロッテの方から俺に近づいてきたので、俺がいち早く彼女を口説いてゲットしただけだ。

 前世では恋愛経験がなかった俺であるが、意外な事に彼女は容易に陥落した。そういえば原作でもヴェラードが彼女を落としていたな。

 そんなわけで彼女と結婚した。流石に教会などに目を付けられると困るから、リーゼロッテ・ヴェルグマイスターというやばい名前ではなく、リゼット・ヴェルトールとして結婚する事になったが。

 初夜で情熱的な夜を過ごしてからというもの、俺はリーゼロッテを毎日何回も抱いた。サルのように励んでいるが、正直な話こんな世界では女を抱くぐらいしか楽しみがないからな。といっても俺は妾を揃えてハーレムを作るという事はしない。

 そういう事に憧れる男もいるだろうが、俺はそんなことをしたら女性関係がややこしくなって面倒だと思うからだ。実際、古今東西女性関係で身を滅ぼした男は数知れない。だから毎日抱ける理想の女がいるのに他の女に手を出す気にはなれなかった。

 それに合法ロリというか、成長や老いることがなく俺好みの美少女のままの姿であるリーゼロッテの身体は何度抱いても飽きる事はないからな。

 そんな王様生活であるが、流石に30年も過ごしていると無理が出てくる。監察軍の延命処置で20代の若さを保ち続ける国王と少女の姿のままの王妃。いくらなんでも怪しまれるだろう。そうなると教会が動くことは間違いなく面倒事になるのは目に見えていた。

 そんなわけで親戚の若者に王位を譲り、俺とリーゼロッテは野に下ったふりをして、この世界から引き上げる事にした。最早この世界に用はない。というか、ここでの生活にはもう嫌気が指したので、監察軍で文明的な生活を送ることにしたのだ。

 

解説

■ヴェラード
『11eyes -罪と罰と贖いの少女-』の世界で中世時代に転生したトリッパー。転生特典で無双して無敵の王様として名をはせたものの、当時の文明レベルの低さに嫌気が指して、リーゼロッテと共に監察軍に本格的に参加する事になる。尚ヴェラードとリーゼロッテの甘々でリア充な生活は他のトリッパーをして「口から砂糖が出てくるほどだ」と言わせるほどであった。

◇転生特典
①傭兵の流儀(とある魔術の禁書目録)
②二重聖人(とある魔術の禁書目録)
③聖母の慈悲(とある魔術の禁書目録)

 


3 コメント

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感想 (目玉)
2014-05-07 20:38:30
まあ、中世の衛生環境は洒落にならないぐらい汚いですよね。どこかで見たけど香水は悪臭を誤魔化す為に発展したとか言われているぐらいですし。風呂にもまともに入らないらしいし。現代日本人には耐えられないでしょうね。

更新お疲れ様です。
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Unknown (Unknown)
2014-05-08 02:44:01
欲求に忠実で実に素晴らしいと思う。

どんなチート能力があっても汚物に耐えるのは現代人には厳しい。

中世には生涯一度も風呂に入らなかったとかいう強者も居たらしいからね。こんな連中に囲まれて暮らすのは拷問に等しいよ。
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返信 (ADONIS)
2014-05-08 21:41:37
>目玉さんへ
仰る通り割ときつい世界なのでヴェラードはその世界からあっさりと手を引きました。教会を警戒したという理由もありますが。

>Unknownさんへ
ヴェラードにとってはとても臭いか香水で誤魔化している不潔な者とばかりしかいない世界に嫌気が指しました。
後、欲望に正直ですが彼は暴君というほど酷くなく、むしろ名君として後世の歴史に名を残しています。それにリーゼロッテ一筋なのである意味誠実な男です。
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