ADONISの手記

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大天災がいない世界(IS 〈インフィニット・ストラトス〉)

2016年06月05日 21時18分06秒 | 小説

「これは豪勢ね。一体いくら使っているのやら」

 涼宮ハルヒは迫り来る三千近くものミサイルを見ながら呆れる。いうまでもないがミサイルはただの爆弾や砲弾よりも格段に高い。それを大量に使ってしまっているのだから、その損失は計り知れないだろう。

「でも、このエクスギアには無意味だよ」

 ISエクスギアを展開したハルヒにこの世界にミサイルでは物の役に立たない。
 
 IS・・・正式名称〝インフィニット・ストラトス″。宇宙空間の活動を想定して作られたマルチフォーム・スーツだが、これはハルヒが原作とは異なる目的の元で開発したEX-ギアの発展機だ。

 元々は新型可変戦闘機開発のネックとなっていたパイロットの身体保護機能の発展を目的として、ISエクスギアを開発しており、これによって試作可変戦闘機プロトルシファーは完成して現在試験運用されていた。とはいえ、ここで満足していなかったハルヒは、そのデータを元に原作のように無人ISの開発計画を立ち上げた。

 実は監察軍では、その世界に存在しない技術を流出させることは禁止されている。例えば核融合炉がない世界で、核融合炉を流出させるのはダメだ。

 しかし、IS世界ならば、原作でISは既存の物として存在しているから、ISを少し改良した程度の品をばらまく程度なら許容範囲内となる。だからハルヒは大天災が存在しない並行世界を見繕い干渉していたし、念の為にいろいろと仕掛けていた。
 
 ISコアはコアネットワークで繋がっており、それぞれのコアが手に入れた情報や経験がネットワークを通して入手できる。となると原作みたいに467個などという中途半端な数ではなく、もっと沢山のISコアをばらまいてコアネットワークを充実させた方が利益になる。後はそれを利用して有人機を超えた無人機を作り出せるが、ここで一つ問題がある。

 今の監察軍の総司令官はトレーズ・クシュリナーダだ。あの男は無人機を毛嫌いしている。帝国軍が無人艦船や無人戦闘機などの無人戦力を活用しているのも反発しているほどだ。

 具体的には彼は監察軍のトップになり、その圧倒的なカリスマで組織を再編成させたが、その後にブリタニア帝国軍の無人兵器を自ら破っていた。

 当時の帝国軍では可変戦闘機の半数が無人機で、艦艇もほとんど無人艦という状態だった。これらの無人兵器は確かに優秀であるが、無人であるか故にプログラムされたことであれば明らかにおかしい事でも愚直なまでに実行するという人間にはない欠点があった。結果として演習でハッキングを受けた無人機がトレーズに一方的に叩きのめされるという大失態を犯した。

 これを受けて帝国軍で無人機が再考され、現在では有人戦力が主体となっている。
 
 そんなトレーズがいくら利益になるといっても無人機を作り出せるシステムを作り出す事を快く思うわけがない。そのあたりは伏せておくか。

 あの一件でハルヒと帝国軍のツバロフ准将が共同で進めていた無人戦闘機ゴーストの導入は足踏みする結果となった為に、ハルヒはトレーズに反発していた。監察軍も人の集まりだから派閥というのは勿論存在するので、必然的に対立なども起こる。

 しかし、総司令官トレーズは当然最大派閥を束ねているが、ハルヒの方は少数派閥の長に過ぎない。これを例えるなら、議席の大半を占める与党と弱小野党みたいな感じだ。この力関係の差は大きいから下手な事はできないので、ハルヒは慎重に行動していた。
 
 ブリタニア帝国並びに監察軍では様々な下位世界から知識、技術、情報を収集しているし、帝国内でそれを更に改良発展させている。だから多くの分野が他の下位世界の追随を許さないほどに優れているものの無人兵器に関してはトレーズの所為で衰退している。

 ハルヒとしては、そろそろ梃子入れして技術の向上を図りたい。というわけで、ハルヒは無人IS開発の為に複数の計画を立ち上げた。

 ISは自己進化機能があって、しかも個々のISコアはコアネットワークで繋がっているので、個々のISコアが経験を積んでいくごとにネットワークに情報が蓄積してコアネットワークに繋がっているISコア全てが進化していく。そうすることで無人ISを実用化させることができる。

 実はこの手の機械が自己進化するという代物は、ブリタニア帝国と監察軍では結構警戒されている。

 それは下位世界の中にはスカイネット(ターミネイター)の様に機械が高度な学習を行ったあげくに人間に牙をむくという事態が発生していたからだ。その為、規制が厳しいし、あまり研究が進んでいない。

 しかし、ブリタニア本国ではなく、別の下位世界で実験を行うなら、最悪の場合でも異世界が被害を受けるだけなので問題ないし、自己進化に必要な作業も彼等に押しつければいい。その為にIS世界で白騎士事件を起こして、IS関係の技術とISコアを流出させればいい。

 流出する技術は原作と同じレベルにすれば原作と同じ流れになるだろう。精々、IS開発者の名前が変わるだけですむ筈だ。その為にハッキング能力に長けたアズライトが、ミサイル発射を行っていた。
 
「今日のあたしはハイだよ」

 ハルヒはテンションを上げてミサイルを落としていく。粒子変換技術を用いて様々な銃器や近接武器を持ち替えつつ、ミサイル迎撃をするハルヒ。このエクスギアは公開版ISとは異なり、監察軍の技術がふんだんに使われている為、その性能は途轍もないものだった。
 
 これらの映像は地球全土の配信されていた。ハルヒはあえて素性を隠すことをしていなかったので、素性はすぐに知られるだろう。最もそれはハルヒがこの世界で用意した偽の戸籍と経歴であるが。
 
 この新たなる力に各国は鈍感ではなかった。急遽日本領海に戦力を送り込んだ。そこに他国の領海であるという遠慮はなく、彼らはエクスギアを撃破あるいは捕獲しようとした。

 しかし、相手が悪かった。この世界の軍隊は弱い。原作において白騎士にも勝てなかった程だ。まして相手は白騎士よりも格段に強力なエクスギアだ。エクスギアによって各国の軍が壊滅したのはこの後すぐの事であった。
 
 これが、この世界で、エクスギア事件と呼ばれることになる大事件の経緯であった。各国はISの力に怯え、これを必死に調べた。その結果、IS開発者の情報が手に入った。これはハルヒがわざとネット上に情報をばら撒いていたからだ。

 早速、家宅捜索が行われて、ISアーマーに関する技術資料(原作レベル)と二万個のISコアを確保したが、肝心のISコアはまったくのブラックボックスで解析できず、ハルヒ本人も姿を消していたので、何もわからずじまいだった。
 
 
 
日本side
 
 あの悪夢のエクスギア事件から数年。あれから日本はさんざんだった。いきなり各国から大量のミサイルを打ち込まれて、国中がパニックになるわ。ISの脅威に反応した各国の軍が領海侵犯を無視して乗り込んで派手に戦争をするなど大騒ぎ。

 やっと騒ぎが収まったと思ったら、日本人が開発したISによって世界のミリタリーバランスが崩壊した事で、アメリカから技術と人材育成のための施設建設(費用は日本政府もち)を要求されたことを筆頭に、各国から突き上げをくらう。
 
 当然ながら、日本政府はこんな大問題を引き起こした涼宮ハルヒの自宅マンションを捜索したが、肝心の涼宮ハルヒを発見することはできなかった(その際に事件に使われたと思われる兵器の部品や資料、それにISコアが大量に発見された)。

 この時、日本はISを独占して優位に立つチャンスを掴んだが、それは長続きしなかった。ザルな情報管理により各国にそれが知られ、国際社会から圧力をかけられまくった結果、ISコアと技術は世界上に拡散して日本は優位性を失った。
 
 さらにハルヒが戸籍を偽造していたことが発覚した。つまり公文書偽造で、彼女は「涼宮ハルヒ」という日本人という立場を手に入れていたに過ぎなかった。彼女が本名を名乗っていたとは思えず、更にいえば日本人かも疑わしかった。

 ちなみにハルヒはこの偽装はかなり簡単に済ませていたので、データ上は中卒ニートとなっていたが、データに記載された中学校を調べたら嘘であることが一発でばれた。
 
 この結果、日本政府はこの自称涼宮ハルヒ(本名不明)を公文書偽造と密入国の容疑で指名手配した。こうすることで日本政府はアメリカの日本への突き上げをごまかそうとしたが、上手くいかずIS学園を設立させる羽目になった。

 こうして日本は金を浪費させられ技術を吸い上げられるという状況に陥った。
 
 更にハルヒは原作とは異なりISの使用言語を英語に設定していたため英語の国際的地位はますます高まり相対的に英語が苦手な日本人の地位は低下した。このように頭が痛い状況が続いていた。

 


7 コメント

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Unknown (yamamon)
2012-12-19 11:12:48
乙です。

日本は災難でしたねw
まあ原作からしてこんなノリでしたが。

>下位世界の中にはスカイネット(ターミネイター)の様に機械が高度な学習を行ったあげくに人間に牙をむくという事態が考えられるからだ。
あれ?「ある人工知能の出会い」では自己進化型のAIを拾っていたような…
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返信 (ADONIS)
2012-12-29 22:44:01
>yamamonさんへ
人工知能の中でもカグヤは別格です。
文字道理始まりからシドゥリにしたがっていたAIですし。
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感想と誤字報告 (目玉)
2013-05-13 18:38:32
まあブリタニア帝国記で、時空管理局が簡単に崩壊したのも魔法以外認めなかったのが大きいですし、無人機だけとかは無理でしょうね。

誤字

それ・が・大量に使ってしまって

それ・を・大量に使ってしまって
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誤字発見 (目玉)
2013-05-13 18:45:41
世界・に・ミリタリーバランス

世界・の・ミリタリーバランス
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返信 (ADONIS)
2013-05-14 19:04:49
>目玉さんへ
おっしゃる通り、そのせいで無人機推進派は勢力を抑えられています。

誤字報告ありがとうございました。早速修正しておきました。
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Unknown (Unknown)
2013-11-08 10:08:34
そういやMFの原作読んだときもおもったけど

外部からの侵入による誤作動防止のためにスタンドアロン(ネットワークに繋がってない)でかつ、完全電子制御ではなく手動操作のあるミサイル基地をどうやってハッキングしたんだとwww

巡航ミサイルですら、C4I以外のネットワークには繋がってないから
ハッキングして目標変えて勝手発射なんて物理的に不可能に近い

飛んできたミサイルや無人機にセンサー狂わすEMP打ち込んで墜落させたり捕獲したりとかはあるが

慣性航法で誘導する弾道ミサイルはハッキングして勝手に発射する&飛んできたものの軌道をかえるのは不可能



まあイズルに軍事的な知識がないだけなんだが
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返信 (ADONIS)
2013-11-08 18:37:50
>Unknownさんへ
そうなんですか。実は私もその手の軍事知識には疎いので知りませんでした。確かにミサイル基地が簡単にハッキングされたら堪らないから対策をしていて当然ですね。でもそれを突っ込むとISの原作が成り立たなくなりますね(汗)。ここはIS世界はその手のセキリティが甘かったと解釈するしかありませんね。
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