ADONISの手記

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トリッパーの制服

2016年06月05日 21時16分42秒 | 小説

シドゥリ暦628年

 三千世界監察軍立ち上げ間近のこの時期、シドゥリ、シリウス、アルトリアの三人は近々設立される監察軍の拠点となるスペースコロニー内で様々な議論を交わしていた。ここでスペースコロニーといえばガンダムとかでよく登場する宇宙居住区であるが、これにはいくつかのタイプがある。

 まず、1974年にジェラルド・オニールにより提案されたシリンダー型、1975年にスタンフォード大学にて設計されたトーラス型(ドーナツ型)、1996年の大林組の季刊誌に掲載されたアポロチョコを底面で二つ結合したような双円錐状の形をしているスペース・ナッツII型、1929年にJ・D・ベルナールが提案したベルナール球、構造物を一から建造するのではなく小惑星や小型衛星などの天然天体の内部をくり貫き内側を居住区域とする小惑星型などがある。

 ちなみにシリンダー型は言うまでもなく『機動戦士ガンダム』で登場するタイプで、トーラス型は『新機動戦記ガンダムW』で登場しているタイプ、スペース・ナッツII型は『機動戦士ガンダムSEED』で登場しているタイプである。

 これらのスペースコロニーの中で監察軍が採用したのはシリンダー型であった。その理由はやはり使用できるスペースが広かったからだ。スペース・ナッツII型は底辺の面積しか使用できず、スペースコロニーの規模に対してあまりにも効率が悪く、トーラス型もスペース・ナッツII型よりはマシであるが、それでもシリンダー型に比べると使用できるスペースが狭かった。

 別にスペースが広ければいいというわけではないが、狭いというのは困る。特に水の確保などの問題もあって、コロニー内に湖を用意しなければならない関係上、余計にスペースが広いほうが望ましかったのだ。

 こうした事情からシリンダー型スペースコロニーが採用された。将来的にはプラント(機動戦士ガンダムSEED)のようにコロニー1基を1区、10区で1市とカウントして、12の市を構成する為に120基以上のコロニーが立ち並ぶ予定であるが、現時点ではスペースコロニーは僅か10基だけであった。

 まあ、監察軍は設立してからおいおい規模を拡大する予定なので現時点ではこれで十分。というかこれでも余りまくっている状態であった。

 

「それで監察軍の制服だけどどうするの?」
「そうね。基本的には色で大体の役職が分かるようにしておくべきだね」

 監察軍はその名の通り軍事組織の側面を持っている為に当初は軍の階級を採用することを検討していたが、トリッパーの多くが硬すぎる軍組織の体制や、トリッパー間の上下関係が露骨になるのを嫌っていたので問題になっていた。

 そこで、プラントの義勇軍であるザフト(機動戦士ガンダムSEED)のやり方を導入することにしたのだ。ザフトには「下士官、士官(尉官、佐官、将官)」といった階級制は存在しない。肩書きは配属された兵科、職種及びその戦術単位の責任者名、管理職名で呼ばれる。

 元々、トリッパー支援組織でトリッパー達の義勇軍的な存在であるために、これは親和性が高くこれなら上手くいくだろうと思われた。

 しかし、階級がないとなると当然ながら階級章がないため相手の立場が分かりずらいという欠点があり、そこはザフトと同じように兵科によって制服の色を決めることにしたが、ここでついでにトリッパーの色も決めておこうとアルトリアが主張した。

 監察軍はトリッパーが主導する組織とはいえ、やはりトリッパーだけでは運営できない。特に経費削減の為に人間そっくりのアンドロイドまで導入するからトリッパーと非トリッパーの見極めができない。これではトリッパーではない者に教えるべきでない事(上位世界や下位世界の秘密など)を秘匿しずらいという問題があるが、制服の色が違えば一目で分かる為に何かとやりやすかった。

山吹…人間と見分けが付きづらいアンドロイド。
緑…一般的な非トリッパー。
赤…トリッパー。
黒…副長。
白…隊長。
青…部長、副部長。
紫…総司令官、副司令官。

 そんなわけで、こんな風に大雑把に決められることになった。ここでアンドロイドまで色分けするのは、人間に似せすぎているので人間と見分けが付きずらいという問題があったからだ。

 更に監察軍の制服は、男性は色に合わせた上着とズボンとなっているが、女性の場合は上着とロングスカートorミニスカートといった感じで、スカートの種類に関しては色さえ合っていれば自由に選ぶことができ、ミニスカートにしても女子高生風スカートやOL風スカートもあり、パンティストッキングやニーソックス、靴下などの選択は自由となっている。

 

「でもさ。階級がないって色々と不味くない」

 一応妥協できたもののシドゥリは階級制がないことに不安を感じていた。帝政国家の皇帝というある意味階級制度の頂点に君臨しているだけあって、階級がない軍組織に不安を感じずにはいられなかった。

「まあ、監察軍はあくまで諜報活動と技術開発を行うのが主な仕事で国家間の戦争の様な大規模な戦いはまずしないだろうから問題ないと思うよ。厄介なことになりそうなら撤退すればいいだけだしね」

 シリウスの言う通り、監察軍は異世界で活動する組織である為、現地の勢力と衝突する可能性はあるだろうが、そういう面倒なことになったら引き上げれば済む。なにも一々真正面から相手をしてやる必要などどこにもない。それなら組織体制に多少の不備があってもどうにかなる筈だ。

「仕方ないですね。それでいいでしょう」

 こうして、階級がないという問題をはらみつつも監察軍は設立されることになったが、やはり階級がない事はその後いろいろと問題となった為に、第一次ベヅァー大戦後に監察軍を再建したトレーズ・クシュリナーダが監察軍に階級制を導入することになるのであった。

 その結果、階級章で上下関係を形作ることができるようになり、兵科によって制服の色分けをしなくてよくなった為に、黒、白、青、紫の色が廃止された。とはいえ、それでもトリッパー、非トリッパー、アンドロイドの区別を付けられないのは不便であった為にそれらの色は残り、階級制導入後も監察軍では山吹、緑、赤の制服が入り混じることになるのであった。

 

あとがき

 時期的には監察軍創設前の準備期間の出来事です。監察軍のコロニー群の編成や制服などにSEEDネタを織り込んでいます。とはいえ階級がないのは問題だらけなので、後にトレーズが改革しているわけですが、それでもトリッパー達の義勇軍的な空気があるので普通の正規軍よりは上下関係が緩いですね。

 


2 コメント

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Unknown (ドノヴァ星人)
2015-08-24 18:22:11
>別に・スペース・広ければいいというわけではないが

>別に・スペースが・広ければいいというわけではないが
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返信 (ADONIS)
2015-08-24 19:50:57
>ドノヴァ星人さんへ
誤字報告ありがとうごさいます。修正しました。
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