ADONISの手記

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アルトリア その四

2015年11月15日 22時58分21秒 | 小説

 世界は戦乱の炎に包まれた。ハルケギニア各地で転生者たちは抗争を繰り広げ、その巻き添えでハルケギニアは混乱状態となった。そんな最中に私は東の世界であるロバ・アル・カリイエに隠れ住んでいたが、珍しく来客が来ていた。

「やあ、ビダーシャル。お久しぶりだね」

 彼の名はビダーシャル。原作キャラのエルフでネフテスの老評議会の議員。実はこの世界のビダーシャルは転生者なんです。

 ビダーシャルは転生者であるが、転生特典は手からあらゆるお菓子を出せるという物で、某エロゲー主人公が使う魔法の上位版です。というかこんな能力を選ぶ辺りビダーシャルは前世では相当なお菓子好きだったのかな?

 ちなみに他の転生者は、転生特典に漫画やゲーム等の強力な能力や、僕の考えたすごい能力を求めています。ビダーシャルの能力はそれに比べれば些細な物で、当然ながらこれで他の転生者に対抗できる筈がありません。その為、オットーたちの侵攻の時に彼らが転生者であることに気が付いて逃げに徹したそうです。まぁ実際逃げ隠れするしかないね。

 最も逃げられただけでも彼は幸運かもしれません。何しろ他のエルフは転生者に軒並みやられていますからね。

 その後のビダーシャルは結構大変だったらしいですね。何しろ、故郷であるネフテス国は転生者たちに滅ぼされて、転生者たちのエルフ狩り(オットーたちは後々邪魔になりかねないエルフの掃討戦をしていた)から逃れる為には砂漠から離れるしかなかった。砂漠にいたらエルフだと疑われてしまうから人間の住む地域に紛れ込む事にしたそうです。

 そこでビダーシャルがロバ・アル・カリイエに逃げ込んだのは、ハルケギニアの人間たちはエルフを敵視している上に転生者たちが多数存しているからだろう。最もこのロバ・アル・カリイエもエルフと敵対しているが、転生者がいない場所である事を考えるとまだマシという事なのでしょう。

 しかし、ロバ・アル・カリイエでもビダーシャルはエルフであることをひた隠しにしつつ各地を放浪していたそうで、結構苦労したそうです。それで私がロバ・アル・カリイエに移住した直後に行き倒れしなったビダーシャルを発見したというワケですね。

 そんなビダーシャルを助けてやって色々と話していると、転生者で他の転生者を避ける為に逃げ隠れしているという同じ境遇であるのが分かって私とビダーシャルは仲良くなりました。

 さてと先ほども書きましたが、今の私はロバ・アル・カリイエにいます。従来まではロバ・アル・カリイエに行き来することは出来なかったが、オットーたちの聖地攻略でエルフたちが壊滅状態になったために可能になりました。

 言うまでもなくこれは他の転生者を避ける為です。原作の舞台となったハルケギニアは転生者たちが乱立する場所です。逆に原作では名前しか出ていないロバ・アル・カリイエならば転生者はいませんから。

 

「それで何のようですか?」
「実は先日ハルケギニアまで行って来て色々と調べてきたのだ」
「それはまた大胆ですね」

 ビダーシャルの行動に私は驚く。あの転生者が跳梁跋扈するハルケギニアなど私としては近寄りたくもないのだが、彼はわざわざそこにいって来たというのだ。とはいえ、私としてもハルケギニアの情勢については気になるからビダーシャルから話を聞くことにした。

 結論を言えば、かつてハルケギニアに存在していた国家は軒並み崩壊しているらしい。

 アルビオンは黒の騎士団に敗北して滅亡している。この際に戦死した者が黒の騎士団派や王党派の関係なく復活してすべてゼロに従っていくという事が繰り返されていった為に戦う度に王党派は戦力を失い、逆に黒の騎士団は戦力を強化していった。

 この情報から推測すると、ゼロは絶対遵守のギアスだけでなく、ザ・デッドライズのギアスも持っているようだ。となると、ゼロは転生特典にコートギアスシリーズに登場するすべてのギアスを選んだ可能性が高い。まったくチートな事です。

 こうして、アルビオン王国は滅び、新たにゼロを大統領とした神聖アルビオン共和国が建国される事になった。


 トリステインはその神聖アルビオン共和国の侵攻を受けたらしい。その名目は腐敗した王侯貴族からトリステインの民衆を解放する事で、攻め込んでこれを陥落させている。

 その際にトリステイン国内の転生者たちと黒の騎士団が派手に抗争を繰り広げてトリステインが焦土と化してしまった。この余波でクルデンホルフ大公国も滅びた。転生者同士の抗争となるとそれぐらいの被害は出て当然だろう。


 ゲルマニアでは稀代の英雄となったオットーを皇帝アルブレヒト3世が異様なまでに恐れるようになった。それも分からなくもない。

 元々ゲルマニアは貴族の利害関係の都合で作られた国であるから貴族たちの皇帝に対する忠誠心は低いし、始祖の血を引いていない事から皇帝の権威も低いのだ。おまけに彼自身かなり強引な手で皇帝に即位したという経緯から周囲に対して疑心暗鬼になっていた。

 そんなアルブレヒト3世にから見ればオットーは邪魔だったのだろう。彼を毒殺してしまったのだった(オットーの異常な強さから最初から実力行使で殺せるとは思っておらず毒という手段を用いた)。

 しかし、これが拙かった。これまで曲がりなりにもゲルマニア有数の転生者ギルドを取りまとめていたオットーがいなくなったことから、ゲルマニアの他の転生者たちが好き勝手に暴走して彼らが下剋上をしたためにゲルマニアは崩壊してしまった。 


 ガリアはテニスコートの誓いによって崩壊している。

 テニスコートの誓いは元々ガリアに対してそこまで攻撃的ではなかったが、その目的がガリア貴族にとって認められる物ではなかった為に、テニスコートの誓いに激しい攻撃を仕掛けて手痛い反撃を受けたのだ。それでも貴族たちが色々とちょっかいをかけてきた為にテニスコートの誓いに所属する転生者たちの敵意を買ってしまって潰されてしまった。

 ぶっちゃけると、エルフにも勝てない雑魚貴族が転生者に勝てるわけがないので、無条件降伏するのが賢い選択だったが、貴族たちはそれを選べなかったのだ。現在のガリアはテニスコートの誓いによってガリア共和国にとって変わられている。


 ロマリアに至ってはとっくに転生者によって潰されているので論外だ。


 こうした情勢下において転生者たちの人数は激減している。というもの各地の転生者ギルドが戦力確保の為に仲間集めに躍起になっており、これを拒否する転生者を粛清しているし、転生者ギルド同士の苛烈な抗争で死傷者が多数出ているからだ。

 更に転生者によるお気に入りのキャラクターの奪い合いが殺し合いに発展している事例も多々あるらしい。

 具体的な例としてヴァリエール公爵家三女のルイズを上げると、転生者Aがルイズに笑顔(ニコポ)を見せると、ルイズがポッとなり、その転生者Aと恋人になりイチャイチャするが、別の転生者Bが転生者Aを殺してニコポでまたルイズを落としている。このように、転生者たちは人気キャラたちを寝取ったり寝取られたりしているらしい。

 これらの結果、転生者の数は最低でも半数を切っているようだ。つまり半分以上の転生者たちが同士討ちで死亡しているという目も当てられない状況だった。

 

「本当にカオスだね」

 その話を聞いた私としては呆れるばかりだが、千人以上の転生者たちが自重せずにいればこうもなろう。この世界が崩壊していないだけまだマシかもしれない。

「そういえばジョセフはどうしている?」
「ああ、ジョセフさんなら先日やりあったわ。まったく会うたびに私に突っかかって来るから困るよ」

 転生者によって国を追われたガリア王ジョセフは使い魔のシェフィールドを頼って、彼女の故郷であるロバ・アル・カリイエに逃げて来たらしい。彼曰く「転生者が蔓延るハルケギニアなんぞに未練はない」との事らしい。

 私が以前ロバ・アル・カリイエでジョセフとあった時には私が最初の転生者だと知って露骨に敵視して攻撃を仕掛けてきた。転生者の所為で国が滅びてしまったからその恨みだろうと思っていたが、それは違って、どうも私たち転生者によってこの世界が作られた事が気に食わないらしい。

 ジョセフは『ゼロの使い魔』の物語で弟のシャルルを殺している。それは私たちとってはただの小説にすぎない。要するに紙に書かれている事にすぎない。

 しかし、ジョセフにとっては違う。彼は心底苦しんでいたのだ。それがこの世界は小説の世界にすぎないとか、ジョセフがシャルルを殺したのは作者が決めた事と思い知らされたらどうなるだろうか? 上位世界人を憎み、転生者を憎むのではないだろうか?

 そんなジョセフが「俺はお前たちの娯楽のためにシャルルを殺して苦しんだのか!?」と激怒したのは無理もない話だろう。

 転生者の一人である私としては別に落ち度があるワケでもない事で恨まれても困るが、それでも八つ当たりだと完全に突っぱねる事も出来ない、というのが痛いところだ。

 そう考えると、下位世界の連中に原作知識やトリッパーの事を知られるのは好ましくない。不幸な事や理不尽な事はどの世界でも当たり前にある。そのすべてが私たちの所為だと一々恨まれていたらたまったものではない。

 ビダーシャルと色々と話をして彼と別れた私は今更ながらそう考えてため息を出した。

 

解説

■ビダーシャル
 エルフの原作キャラに転生したトリッパー。前世はかなりの甘党で、いつでも好きな時に好きなだけお菓子が食べたいという願望から手からお菓子を出せる能力を選んでいた。オットーの化け物染みた強さから彼らが転生者であることを悟り、とことん逃げ隠れに徹してロバ・アル・カリイエにまで落ち延びてきたが、そこでもエルフである彼はまともに暮らせず行き倒れになっていたところをアルトリアに助けられた。それ以来アルトリアとはかなり親しくしている。

◇転生特典
 あらゆるお菓子を手から出せる

 


7 コメント

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駄文 (ADONIS)
2013-08-25 13:20:40
アルトリアは原作知識やトリッパーの事を下位世界人に知らせる危険性に気付きます。これは後に設立される三千世界監察軍にも重大な影響を与えて、それらをトリッパーたちだけの秘密にする暗黙のルールができます。
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Unknown (yamamon)
2013-08-25 16:03:53
乙です。

(監察軍のような)まとめ役が不在のためにトリッパーは同士討ち。チート能力を持った大量のトリッパーが各々好き勝手にやったせいでカオスなことに。原作知識の流出のせいで下位世界の住人からは恨まれる。etc
まあはっきりいえば「失敗例」ですね。
とはいえ、それが以後の教訓になったことを考えれば、価値ある失敗とも言えるかな?

オットーは毒殺されましたか。
チート能力をもっていても意外と穴はあるものですね。

ビダーシャルはこの修羅の世界で戦闘系チート無しという罰ゲーム状態ですか。哀れですが、同時にだからこそ他のトリッパーのように増長せずに生き残れた、とも言えるかな?
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感想と誤字 (目玉)
2013-08-25 16:34:32
あーやっぱりこうなるよな、まとめる人がいないし転生者はバカばかりですし、でもハルケギニアも六千年の停滞から進めるかも。
こうやって失敗して後の観察軍に繋がるんですね。

誤字
オートたちの進攻の時に
オットーたちの進攻の時に

この際に戦死して者が黒の
この際に戦死し・た・者が黒の

更新お疲れ様です。
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使い魔は? (ステーキやさん)
2013-08-25 18:22:51
トリステインが陥落したのは、原作前?後?サイトもチート転生者だったりして・・・・

サイトがチート転生者でアンチ貴族思考だと召還されてハルケギニアにて貴族滅亡の事実しったときにどのような行動をとるのか?
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サイト (軍師のりたか)
2013-08-25 21:30:08
サイトも中身はチート転生者で、ハルケギニアでアンチするつもりがとっくに貴族制度崩壊してしまったときに召還されてしまったらどんなアクションとるのか?・・・・

貴族制度崩壊したトリステインに魔法学院がつぶれて召還の儀式がないかもしれないと思うね。



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アンチじゃん (山形巣クリーム)
2013-08-25 23:15:30
まさにこれはアンチハルケギニア・アンチ貴族・アンチブリミル教。

原作崩壊によるルイズなどのハルケギニア組の動向は?
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返信 (ADONIS)
2013-08-27 00:58:33
>yamamonさんへ
この失敗は後の監察軍でも活かされています。
実はチートなオットーを毒殺できるのかとおもいましたが、不可能ではないだろうと思い毒殺という形にしました。

>目玉さんへ
まぁバラバラに暴走していましたからトリッパー達の利害調整何て不可能でしょう(汗)。
誤字報告ありがとうございます。修正しておきました。

>ステーキやさんへ
トリステイン陥落は原作三巻のレコンキスタの侵攻と同じ時期です。
サイトは原作と同じでただの日本人ですね。

>軍師のりたかさんへ
この世界ではサイトはトリッパーではありません。だから訳も分からず使い魔生活していたらルイズの祖国な滅亡しちゃったという状況です。

>山形巣クリームさんへ
原作の女性キャラは軒並み転生者のハーレム入りで、男性キャラの多くは転生者の抗争に巻き込まれたり、転生者に邪魔と判断されて始末されています。
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