このところ円安が加速しており、特に日銀が利上げを見送った辺りから安心感を持って円売りがされているように思います。9.11テロ以降、各国とも一斉に政策金利を引き下げましたが、その後、各国とも段階的に利上げを行い、現在、政策金利が殆どゼロに貼り付いているのは日本だけです。
金利は景気のバロメーター。今回、日銀も政府もゼロ金利維持を支持することにより、国を挙げて「現在も日本が非常事態にあること」を再び宣言した訳ですから、円が一段と安くなるのは当然と言えば当然です。
大体、現状の0.25%でも0.5%に引き上げても殆ど金利はゼロであり、仮に金利を引き上げて景気が腰折れしたとしても、それは金利政策が原因でなく日本経済が根本的な問題を抱えているということでしょう。企業にとって金利はコスト(資本コスト)であり、ゼロ金利とは本来払うべきコストが免除されていることになります。だからビジネスの機会が普通に存在すれば、レバレッジが簡単に利くことにより企業業績は拡大し、それが次第に家計にも影響する筈です。
しかし、ゼロ金利はあくまで一時的なショック療法であり、ショック療法を長期間続けると基礎体力が低下する懸念がありますので、金利を早急に正常化しましょうというのが日銀・福井さんの考えであり、多くの人の意見だったと思います。
さて、先日、
山崎元さんのホンネの投資教室「誤解が多い、為替リスクと期待リターンの関係」を読みました。氏曰く、1)為替取引は巨大なゼロサムゲームである、2)そのリスクとリターンをミドルリスク・ミドルリターンと評する人間がいるが、それは誤りであり、株式等と違ってリスクに応じたリターンが得られるとは限らない、3)為替レートがリスクニュートラルで価格構成されている面があり、表面利率の高い通貨は為替レート下落の期待が含まれている、としています。
氏の言うことに異論はありませんが、だから外貨投資はダメということではないと思います(氏も否定はしていません)。私とっては外貨投資はヘッジですね。円資産ばかり保有すると円安により国際的な購買力が落ちるかも知れない。だから資産を複数の通貨に分散することにより円資産の下落分をヘッジします。
つまり、円安になると外貨資産の含み益が膨らみますが、それは保有する円資産の価値が下落したことでもあり、素直に喜ぶべきものではありません。また、円高になれば外貨資産は含み損になりますが、それは保有する円資産の価値が上がったことでもあり、単純に悲しむべきことではありません。
リスク・リターンの話をすれば、私にとっては、米ドル、ユーロ、ポンド、加ドルといった主要国通貨であれば、それらの通貨への投資は(当該通貨の固定利付資産に投資するとすれば)ローリスク・ローリターンと言えると思います。日本の物価も間接的に為替レートの影響を受けている訳ですし、通貨流通量では円は米ドル、ユーロに劣ります。資産をすべて円ベースでリスク・リターン評価するのはむしろ不自然だと思います。
ただし、特定の負債を抱えている場合には話が当然変わる筈です。例えば円定期預金(解約が随時可能)を負債として抱えている銀行が、その負債に割り当てる資産に外貨資産を組み入れることはリスクが高いと言えるでしょう。外貨資産のリスク・リターンは金融機関の専門家でも迷うところがあり、その評価は株式以上に難しいと言えます。