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田中聡局長発言をめぐる時事通信の不見識

2011-12-12 00:04:06 | 現代日本政治
 この騒動についてもう一つ思ったこと。

「田中局長」「発言」といったキーワードで検索すると、時事通信社の次の記事がヒットする。

田中沖縄防衛局長の発言要旨

 防衛省の田中聡沖縄防衛局長が28日夜、記者団との非公式懇談で発言した要旨は次の通り。
 -防衛相は環境影響評価書を『年内に提出する』ではなく『年内提出の準備を進めている』とあいまいに言っているのはなぜか。
 (女性を)犯すときに、『これから犯しますよ』と言うか。
 -沖縄は66年前の戦争で軍がいたのに被害を受けた。
 400年前の薩摩藩の侵攻のときは、琉球に軍がいなかったから攻められた。『基地のない、平和な島』はあり得ない。沖縄が弱いからだ。
 政治家は分からないが、(防衛省の)審議官級の間では、来年夏までに米軍普天間飛行場の移設問題で具体的進展がなければ辺野古移設はやめる話になっている。普天間は、何もなかったかのようにそのまま残る。(2011/11/29-13:13)


 この「(女性を)犯すときに、『これから犯しますよ』と言うか。」という箇所については、琉球新報がオフレコ破りで報道し、他社も追随した。
 しかし、そのあとの薩摩藩の侵攻や辺野古移設中止の話は、ネット上で見る限り、琉球新報も他社も報じていない。

 この「犯す」発言問題に絡んで、これらの点についても論評する記事をネット上で見た。

 時事通信社のサイトには次のような「おことわり」が掲載されている。

 
おことわり=沖縄防衛局長発言について

 防衛省の田中聡沖縄防衛局長の28日夜の発言については、時事通信社の記者も懇談会に出席していました。基地問題の背景を説明するのを趣旨としたオフレコ前提の非公式懇談だったため、記事にするのは見合わせましたが、29日朝、一部報道機関が報じたことから、オフレコの意味はなくなったと判断。発言内容を報じることにしました。 (2011/11/29-13:12)


 「29日朝、一部報道機関が報じた」とは琉球新報の報道のことだろう。
 しかし、薩摩藩の侵攻や辺野古移設中止については、この時点ではまだ報道されていなかったのではないか。

 だとすれば、時事通信もまた、これらの点について、「オフレコ破り」をしたことになる。

 琉球新報は、今回の報道について、次のように説明している。

人権感覚欠く発言 報道すべきと判断 本紙編集局長

 田中聡沖縄防衛局長の不適切発言を29日付朝刊で報じた琉球新報の玻名城泰山編集局長は同日夜、「政府幹部による、人権感覚を著しく欠く発言であり、今の政府の沖縄に対する施策の在り方を象徴する内容でもある」とした上で「非公式の懇談会といえども許されていいはずがない。公共性、公益性に照らして県民や読者に知らせるべきだと判断した」と述べ、報道に踏み切った理由を説明した。


 私は別に、今回の田中局長の「犯す」発言が「オフレコ破り」をしてでも報道すべき性質のものだったとは思わない。
 しかし、その琉球新報の主張に照らしても、次の田中局長の発言が「公共性、公益性に照らして県民や読者に知らせるべきだ」ったとは考えがたい。

 政治家は分からないが、(防衛省の)審議官級の間では、来年夏までに米軍普天間飛行場の移設問題で具体的進展がなければ辺野古移設はやめる話になっている。普天間は、何もなかったかのようにそのまま残る。


 田中局長のこのような発言が公になってしまったのは、「犯す」発言よりもむしろ重大なことではないかと私には思える。

 「オフレコ破り」に安易に追随したばかりでなく、不要な部分までをも公開してしまった時事通信の責任は重い。


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