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谷垣自民党は増税に協力し「話し合い解散」への道を

2012-01-31 00:32:54 | 現代日本政治
 自民党が、消費税増税をめぐる政府・与党との協議には応じないとして、野田政権への対決姿勢を強めている。
 だが、党内には異論もあるようだ。

 22日の朝日新聞政治面の記事(太字は引用者による。以下同じ)。

「総裁は言い訳多い」
「党利党略ばかりだ」
 地方から突き上げ

 消費増税などの与野党協議を拒む谷垣自民党の執行部に対し、地方組織の若手や幹部を党本部に集めた21日の会合で「政局優先」との批判が噴き出した。
 石原伸晃幹事長が出席した45歳以下の党員でつくる青年局の会合では、山梨県連の代表が「幹事長は天下国家の話をしていない。消費税論議はどうにもならない状況に来ている」と真っ向から批判。「総裁は言い訳が多すぎる」(新潟)、「民主党がやることにすべて反対だと国民は思っている」(岡山)、「総裁は口を開けば『解散、解散』と言うが、今やるべきこともある」(東京)などと不満が相次いだ。
 谷垣禎一総裁は全国幹事長会議に出席し、「政権を解散に追い込み、自民党の手で政治を担うことが唯一の目標だ」と力を込めたが、山口信行・兵庫県連幹事長が「党利党略ばかりで国民のためにどうするかという視点が欠けている。『民主党を追い込む』などという言葉は聞きたくない」と発言すると、会場から拍手がわいた。


 私は自民党の党員ではないし、特に支持者でもないが(もっとも、アンチ自民でもない)、この兵庫県連幹事長の発言には共感する。

 しかし、翌22日の党大会で、谷垣総裁はやはり、民主党のマニフェスト違反を批判し、一刻も早く解散・総選挙に追い込んで政権を奪還すると述べた。
 26日の衆議院での代表質問でも、また同様だった。

 代表質問の後、石破茂・前政調会長はブログで野田首相を批判しつつも、こう述べている。

このまま与野党の対決色だけが強まれば、それこそ「何も決まらず、何も進まず」という状態が続き、国民の不信が高まるだけです。〔中略〕

 自民党はこれにどう対応すべきか、かなり苦慮します。
 国民を欺き、政権を盗った民主党に増税を語る資格は無く、直ちに解散して信を問え、というのは理屈としてはその通りなのですが、国民がこの自民党の訴えに強く共感しないのは「なにも好きで民主党に票を投じたわけではない。自民党の国民を軽視した姿勢に嫌気がさして一度代わってもらいたいと思ったのだ。自民党はどう変わったのか、自民党ならどうするのかをはっきりと示せ」と思っているからなのではないでしょうか。
 衆議院の任期満了まであと一年半しかなく、その間に自民党の変わった姿を示さなければ、たとえ比較第一党となり、政権を担当しても不安定な政権運営が続かざるを得ません。ほとんど同時期に半数の改選を迎える参議院で安定多数が取れる確たる見込みも乏しく、政権復帰後の絵姿がどうにも描けないのです。


 谷垣流の主戦論とは一線を画している。

 小泉進次郎・党青年局長も、谷垣総裁の代表質問について「相変わらず自民党は反対ばっかりという印象は変わらない。多くの国民は『今更そんなことを言ってもしょうがない』との思いに行き着いている」と述べたと報じられている

 私もまさにその思いだ。

 谷垣総裁は、例えば党大会の挨拶(田村重信・党政務調査会調査役のブログに全文が収録)でこんなことを述べている。

民主党にせめてもの政治的良心があるならば、まずはスタート台に戻って、総選挙をやりなおし、こんどはうそをつかずに国民の審判を仰いだらいかがですか。そのうえで正々堂々と共に改革を進めましょう。それが民主主義のあるべき姿です。わたしたちは一刻も早く、「偽りの政権」に終止符を打ち、政権の正統性を回復する総選挙を求めます。

〔中略〕

 今問われるべきことは「自民党はなぜ協力しないのか」ということではありません。「国民との約束を破った民主党は信を問い直せ」ということではありませんか。これを取り違えれば選挙の意味がなくなる、すなわちわが国の民主主義のあり方が問われているのです。来たるべき総選挙は、単に政権奪回の総選挙にとどまりません。国民とともにこの議会制民主主義の危機、国家の危機を認識し、国民とともにそれを立て直すための総選挙なのです。


 また、代表質問(自民党のホームページに全文掲載)にはこんな一節がある。

 私たちは議会制民主主義の歴史が租税とともに歩んできたことを忘れてはなりません。

 すなわち、今日の議会制民主主義の繁栄の淵源は、1215年でイギリスにおいて大憲章「マグナ=カルタ」に盛り込まれた「議会の同意なく税金、戦争協力金などの名目で課税してはならない」という条項にあります。

 爾来、国家の課税に対する国民の意思こそが、人々の政治への参画、ひいては議会制民主主義の発展の原動力となったのであり、このことはその後の「権利請願」及び「権利章典」を始めとするイギリス議会の歴史、「代表なくして課税なし」をスローガンとしたアメリカ独立戦争の歴史、主権在民を前提として納税の義務を明記したフランス人権宣言が示しています。

 私たちの議席はこうした長い歴史の積重ねと先人たちの文字通りの血と汗の上に築き上げられたものであり、その証が今日の憲法が定める租税法律主義の規定です。民主主義の下では租税の分担ルールである税制が国民の合意の下によって決定されることが、国民の納税の義務を支える礎であり、であればこそ、税制は主権者である国民に正直に訴え、その訴えが受け入れられるとその意思を反映して、国民の代表で組織される国会で法律により議決されるのです。

 このことからして、主権者を欺いて当選した民主党議員の投票で選ばれた民主党政権は、民主党マニフェストという偽りに満ちた国民との契約によって簒奪された多数の議席を利用して、マニフェスト違反の消費税率引上げを行う権限を主権者から与えられてはいないのです。それは議会制民主主義の歴史への冒涜であり、国権の最高機関の成り立ちを否定するものです。


 スジ論としてはこれらは正しい。

 しかし、自民党にそんなことを言う資格が果たしてあるのだろうか。

 1988年に消費税導入を決めた時、自民党はそれを公約に掲げて総選挙を勝ち抜き、主権者である国民の信託を得たのだろうか。
 とんでもない。少し前の記事でも書いたように、大型間接税を導入しませんと訴えて当選した議員たちによる政権が、大型間接税である消費税を導入したのである。
 あのころ、野党第1党であった社会党の土井たか子委員長はこう言っていた。
 正面から一般消費税導入を公約として選挙を戦った大平正芳首相は偉かった。公約違反の今の自民党に消費税を導入する資格はない。解散して国民に信を問えと。
 しかし、自民党はもちろん解散などすることなく消費税の導入を強行し、それが定着するまで解散を延ばし続けた。

 消費税率を3%から5%に引き上げた時も、それを争点として国民に信を問うてなどいない。

 そして、これほどまでに財政赤字を積み上げてきたのはどの党による政権だったのか。財政健全化は近年の歴代政権が目標としてきたはずだが結局成し得なかったのは何故なのか。
 谷垣個人はたしかに消費税増税を掲げて党総裁選を戦った。しかし橋本内閣以降の歴代自民党政権は、消費税増税を先送りし続けてきたではないか。そのツケが現在回ってきているのだろう。自民党は人ごとのように民主党のマニフェスト違反を責めている場合なのか。

 さらに、では谷垣は、仮に解散総選挙に持ち込めたとして、どう戦うつもりなのか。
 一昨年の参院選と同様、やはり消費税10%を打ち出すのか。しかし、今回は民主党も10%を正面から唱えるのだろう。
 偽りのマニフェストで政権を奪取した民主党に10%を実施する資格はない、わが党にこそその資格があると主張するのだろうか。
 しかし、国民からすれば、どの党によろうが、引き上げられること自体に変わりはない。
 増税賛成派は、民主だろうが自民だろうがとっとと増税すればいいと思っているだろうし(私がそう)、反対派は、どちらにしろ反対だろう。
 そんなことで、本当に自民党は勝てるのだろうか。

 そして、総選挙で勝ったとしても、参議院は自公だけでは半数に満たないのである。民主党をはじめとする野党が反対に回ったらどうするのか。

 そんなことを考えていたら、29日の朝日新聞政治面で、森喜朗元首相がこんなことを述べているのを知った。

「話し合い解散」望ましい
 消費増税めぐり森元首相

 「(消費増税法案を)通した後に、堂々と解散しましょう、ということでいいのではないか」。自民党の森喜朗元首相は28日、テレビ東京の番組でこう語り、消費増税法案に自民党も反対せず「話し合い解散」に持ち込むのが望ましいとの考えを示した。
 また、同党の谷垣禎一総裁が野田政権に早期解散を強く求めていることについては「政権を取り返したいと一途に狙っている感じだ。もっと緩急自在の策があってよい」と苦言を呈した。森氏は「話し合い解散」が望ましいとする理由について、「次に(自民党が)政権をとったらどうするのか。民主党がまた徹底的に抵抗して反対したら、10年経っても同じだ」と語った。


 全くそのとおりだと思う。
 「10年経っても同じ」道を防ぐために、谷垣執行部の英断を求めたい。
 それでこそ、「責任政党」を自称するにふさわしいと言えよう。




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