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葉梨康弘議員の児童ポルノ規制法改正発言まとめについて(上)

2013-06-03 00:02:59 | 事件・犯罪・裁判・司法
 5月31日の記事「児童ポルノ規制法改正反対論に思う――そういう問題か?」にこんなコメントが付いた。

過去に国会審議で児童ポルノ法について議論した記録が残ってるから、確認されるとよい。

【衆院法務委員会】児ポ法改正審議(2009年6月26日) まとめ
http://source-stat.blog.so-net.ne.jp/2009-06-26-1

【 自由民主党 葉梨康弘 議員 発言要旨 】

・メール、郵便、FAX、いかなる手段で児童ポルノを所持していても逮捕する
・電子メールに児童ポルノが添付されているかどうかは、ファイルを開く前に分かるはず
・電子メールがきたら児童ポルノだと思えばいい
・映画、出版物、大女優だろうと関係ない、今までの映画も本も写真も18歳以下のヌードなら全部捨てるように
・宮沢りえのサンタフェでも、法改正後は捨てないと逮捕する
・宮沢りえのサンタフェは見たことがないが、規制する
・過去作品のどれが児童ポルノかどうかは政府が調査して教えてくれるはず
・顔が幼くて制服を着ていれば児童ポルノだと判断される
・ジャニーズでも乳首が写っていたら児童ポルノだ
・児童ポルノかどうかは見た目でわかる。芸術性など考慮しない
・ハードディスクに入っている画像を何回開いたかで故意性を審査する
・写真や雑誌は、使い古されていたり手垢がたくさん付いていれば故意をみなす
・冤罪など起こらない。単純所持規制国での冤罪の事例も知らない
・自白は証拠の王様だ
・捜査官は善良なので、自白を強いて冤罪を生じさせるようなことはない
・冤罪の懸念なら、鞄に拳銃を入れられることだってある
・マンガやアニメやゲームは悪影響の研究をして三年後に規制する予定
・民主案は相続物に児童ポルノがあっても逮捕できないので困る


 この葉梨議員の発言の要旨については、この「まとめ」そのものだったどうかは覚えていないが、以前に見たことがある。
 しかし、普通に考えて、自民党の国会議員が国会でこんな発言をするとは思えないものがほとんどだ。
 これは、何かしらの曲解、あるいは虚偽が多分に含まれているのだろう。

 そう思っていたが、実際に会議録で確認することはなかった。

 せっかくなので、この機会に衆議院のホームページで確認してみた。

 衆議院法務委員会の会議録、第171回国会の第12号(平成21年6月26日)。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm

 この日の法務委員会では、自民・公明両党が提出した児童ポルノ規制法の改正案と、民主党が提出した改正案の双方が審議された(結局、審議未了でともに廃案となった。本年5月29日に自公が提出した改正案はこの時のものとほぼ同一だと聞く)。

 さて、葉梨議員は上記の「まとめ」のような発言をしていただろうか。

・メール、郵便、FAX、いかなる手段で児童ポルノを所持していても逮捕する

 まず、「いかなる手段で児童ポルノを所持していても逮捕する」などと言うはずはない。
 逮捕は逮捕の必要性に基づいて行われるのであって、罪を犯せば必ず逮捕されるというものではない。
 ましてや、葉梨議員は警察でも行政側の人間でもないというのに(警察官僚出身ではある)。

 そして、これが会議録中のどの発言に基づいた「まとめ」なのか、ひととおり見てみたがわからなかった。
 わかるという方がおられたら、是非ご教示願いたい。

・電子メールに児童ポルノが添付されているかどうかは、ファイルを開く前に分かるはず

 超能力者じゃあるまいし。

・電子メールがきたら児童ポルノだと思えばいい

 こんな極端なことも言うはずがない。

 この2点については、会議録を確認したところ、該当するのはこのあたりかと思われるが(太字は引用者による。以下同じ)、

○葉梨議員 捜査の恣意性ということで今るるお話がございました。

〔中略〕

先ほどの例で、もしかしたらこんなメールが送りつけられてくるかもわかりませんよというようなものが来たとして、私はそれで、個別に、全体として、単にパソコンを開いているということだけで未必の故意が成立するとは思えないんです。このメールというのはもしかしたら児童ポルノかもわからない、そういうような認識というのはやはり必要になってくるだろうと思うんです。

 さらには、それがたまたま人に入れられたものかどうか、そういうような抗弁というか話があれば、やはりそれはよく確認をしなければならないし、例えば、十分に信じるに足りるような弁解があったときに、警察において、捜査機関において、それで逮捕というようなことになるかといったら、私はならないというふうに思います。

 また、自己の性的好奇心を満たす目的でというのを、それは自白に頼らざるを得ないというふうに言われますけれども、例えば、殺人の故意というのは、私は殺すつもりはなかったんです、殺すつもりはなかったんですと言ったって、けん銃を持って相手をぼんと撃てば、どんな自白が、否認をしていたって、殺人の故意というのは客観的にやはり認められるわけです。

 ですから、自分の性的好奇心を満たす目的というのは、たとえその自白がなかったにしたって、うちに大量の児童ポルノを持っている、その横に大人のポルノもたくさん持っているというようなうちで、児童ポルノを持っている方が、私は自分の性的好奇心を満たす目的じゃございませんと言ったところで、それは裁判所では多分通らない話になってくるだろう。ですから、自白だけに頼るということじゃなくて、やはり客観的な証拠に基づいて捜査というのはできるんだろうというふうに私は確信をしています。


これを上記のように「まとめ」るのは、曲解以外の何物でもないだろう。

 そもそも、単にパソコンを開いてメールを受信したというだけでは未必の故意は成立しない、メールの添付ファイルが児童ポルノであるかもしれないという認識が必要だと述べているではないか。


・映画、出版物、大女優だろうと関係ない、今までの映画も本も写真も18歳以下のヌードなら全部捨てるように

 葉梨議員は、この国会で野党側の改正案を提出した、民主党の枝野幸男・衆議院議員との問答で、次のように述べている。

○枝野委員 先ほど質問にもお答えしました、例えば宮沢りえさんの「サンタフェ」を初めとして、本法施行のずっと前から、十八歳以上なのか、十八歳未満なのか、調べれば「サンタフェ」はわかるのかもしれません、撮影当時十七歳だったのか、十八歳になっていたのか。あるいは、初期の関根恵子の映画とか、いろいろなものがありますよ。十八歳未満の特に女性が裸になっている、しかも、大手の一般の出版社や大手の一般の映画会社から配給されたDVDなどが出ているというものはあります。

 こういったものを、自分の家の中にあるかどうか探して、全部捨てろということを与党案は言うんですね。

○葉梨議員 〔中略〕 そして、今の御質問ですけれども、大手の出版社が出したからといってオーソライズされるわけじゃないんですよ。大手の新聞社だって時々間違いを書くんです。ですから、その意味でいったら、社会の中で、十八歳未満の児童のポルノ、これについてはしっかり廃棄をしていきましょうというようなことがあれば、それは、この一年間の猶予期間があるわけですから、そういったものをやはりちゃんと廃棄していくということは、私は当然のことじゃないかと。

 要は、児童ポルノというものを持っているという状態、これは先ほどの捜査に対する不信とかいうのは別として、子供に対する保護のために、児童ポルノというのを持っている状態はいけないことだというふうに日本国民が考えるのであれば、それが有名な女優であろうが大手の出版社であろうが、それは関係ない話だというふうに思います。


 たしかに「廃棄していくということは」「当然」と述べている。
 しかしそれは「社会の中で、十八歳未満の児童のポルノ、これについてはしっかり廃棄をしていきましょうというようなことがあれば」「児童ポルノというのを持っている状態はいけないことだというふうに日本国民が考えるのであれば」という前提での話である。この法改正の効力によって即こうなるという話ではない。

 そして「映画、出版物、大女優だろうと関係ない」だの「今までの映画も本も写真も」といった語句は全く出てこない。
 こうした存在しない語句を勝手に「要旨」に忍び込ませるのはフェアではない。作成者の程度がよくわかる。

 これに続く両議員の問答は興味深い。長くなるが引用する。

○枝野委員 〔中略〕 大手が出したからいいということを言っているんじゃないんです。かつて合法的に製造、販売をされて所持をしているものが世の中たくさんあるんです、いい悪いは別としても。その中には、例えば芸術性もあったりするというものがあると思うんですね。だけれども、これは、お互いどちらの党の案も、芸術性が高かろうと何だろうと十八歳未満の女の子の裸はだめだと。私はこれは正しいことだというふうに思いますが、過去において、芸術性もあったりとかして社会的に容認もされて、合法的に手元にあるものを、全部皆さん探して捨ててくださいということが、例えば「サンタフェ」を初めとして、可能なのか。

 「サンタフェ」は、十八歳なのか十七歳なのか、私も調べてみましたが、わかりませんよ。わからないですよね、十八歳ぐらいの女の子が実際の年齢が何歳だったのか。特に十年前、二十年前、三十年前に製造、販売されて手元にあるもの、そんなものをみんな調べるんですか。

 しかも、未必の故意でオーケーなんですから。どうも昔はそういうものがあったらしい、うちにももしかするとあったかもしれないな、まあ、それでもしようがないや、探すの面倒くさいから。私自身だってありますよ。平成十一年にこの法律をつくるときに、こんなにひどいものがコンビニなどでも売られているんですよといって、たしか野田聖子さんにだと思いますけれども、見せられて、サンプルとしてもらいましたよ、その児童ポルノの雑誌を。もちろん資料として、もしかすると審議が終わったころに捨てたかもしれない、だけれども、また児童ポルノを改正するときの参考になるかもしれないからとっておいたかもしれないな。自信ありませんよ。

 自信がないということは、未必の故意だったら、私は、あらゆる事務所を全部家捜しして、まさか残っていないか確認しなきゃいけないんですか。そんなことが日本じゅうの人に起こるんですよ。それは現実的じゃないですよ、残念ながら。

○葉梨議員 枝野委員、もしかしたら事務所に持っていらっしゃるかもわかりませんね。でも、あなたの性的好奇心を満たす目的じゃありません。私も、児童ポルノをたしか中央教育審議会か何かで回覧したことがあります。これは正当目的です。みだりにもならないんじゃないかなというふうに思うぐらいですけれども、少なくとも、自己の性的好奇心を満たす目的、これにはならないです。

 それで、大家捜しをしなきゃいけないとかいう話もありましたが、例えば「サンタフェ」であれば、あれだけ有名なものであれば、未必の故意という話もありますが、大体、具体的に、それが一体十七歳なのか十八歳なのか、そこら辺のところはいろいろなところでまた問い合わせをしていただければいいし、それぐらいのサービスは政府の方もやってくれるんじゃないかというふうに思います。そして、児童ポルノであるかどうかということについて、児童ポルノかもわからないなというような意識のあるものについてはやはり廃棄をしていただくということが当たり前だと私は思う。 〔中略〕

○枝野委員 〔中略〕 確かに、私のどこかの事務所の片隅に野田聖子さんからかつてもらったものが残っていても、それは抗弁がきくかもしれませんね。それは、ずっとこの問題に私が取り組んできていることをみんなが知っていますから。でも、そういうことがみんなに起こり得るんですよ、この法律は。

 今の法律では児童ポルノに当たる、児童ポルノに当たるのだって、まさに、それこそ二歳、三歳の女の子に性交をしているような、こういうものから、「サンタフェ」は十七歳だったら児童ポルノに当たるというところまで、いろいろな種類のものがあるわけですよ。それについて、どれか持っていた可能性があるよなと、いや、ちゃんと考えればみんな普通そうだと思いますよ。本法施行前は、現実問題として、十八歳前後の女の子の裸の写真は普通の雑誌にもたくさん載っていましたから。だからいいということじゃないですよ。いわゆる特殊な幼児性愛者向けの雑誌じゃない普通のところにも載っていましたよね、十七歳とかの女の子の裸の写真が。ああ、そういったものがあったはずだよなと、未必の故意はみんなあるじゃないですか。そんな何十年か前の週刊誌をたまたまとってあることはありますね、みんな。そのことが目的じゃないかもしれない。

 そうすると、それが立証されてしまったら、あとは主観的な目的なんですよ。主観的な目的も、確かにこの人は幼児性愛があって性的好奇心を満たす目的であるということがはっきりしている人を他の客観的な事情で立証すること、これはできます。おっしゃるとおりです。本人の自白がなかったとしても、自白に頼らなくても、なるほど、この人はこれこれこういう趣味で、こういったことを今までやってきている、あるいは周辺の人の証言でということは可能かもしれません。

 でも、逆に、そういう幼児性愛などの性向がなくて、御本人に性的好奇心がなかったとしても、現に持っている人が、いや、おれは幼児性向ではない、私は性的好奇心を満たす目的ではないということをどうやって抗弁できるんですか。結局は、性的好奇心を満たす目的であるという自白がとられてしまったら、それ以外にそれを否定する客観証拠を出して否定することはできないじゃないですか、まさに内心の問題ですから。それも処罰の対象になるんだというこの法律の問題点を我々は指摘しているんですよ。

 いや、それは仕方がないと。そういう人がたまたま一枚持っていた、たまたま一枚。大体、どうやってその単純所持を立件するのかというのはよくわからないんですけれどもね。つまり、単に自分で持っているだけという状況であるならば、そこに捜索が入るということは基本的には考えられない。たまたまかばんに入れて持っていたら、任意で荷物検査をしてその中に入っていましたとか、そういうことかもしれませんね。そこで一枚出てきましたと。そして、捜査官の方が大変熱心な捜査官で、おまえ、こんなものを持っていたんだから性的好奇心を満たす目的だろう、そういうことで、足利事件のようにつじつまの合う証言を得られてしまいました、こういう人は冤罪でも処罰されても仕方がないというんだったら、この与党案は正しい法案だと思います。

 でも、そういったことは絶対に起こしてはいけない。絶対起こしてはいけない中で、なおかつきちっと処罰をしなきゃならない人たちについては処罰をする、それが私たちに求められているので、少なくとも、現状の与党案は、その部分のところで決定的な問題があると思いませんか。

○葉梨議員 冤罪は絶対にあってはなりません。これは絶対なくしていくように、お互いちゃんと努力をしていきましょう。

 しかし、今のお話を聞いてみると、ちょっと本末転倒じゃないかなというようなところもあります。

 一つの児童ポルノを持っている、これについて冤罪があるというのであれば、それはなくす努力をしっかりすべきであります。しかしながら、だからといって、そういうことがあるんだ、もしかしたらみんな陥れられてしまうかもわからないんだというような、私はそんなことはないと思います、ないと思いますけれども、そういう考え方で、たくさんの児童ポルノを蔵書として抱えている、それは許される、そっちに行ってしまうというのは考え方として違うんじゃないか。そういうことをもし言われるんだったら、何で民主党案は大量の児童ポルノを所持している場合を禁止しなかったんだというふうに私は思いますよ。一枚だけだったら大丈夫ですというように書くべきじゃないですか。

 それと、もう一つ申し上げますと、具体的に、自白だけでといったって、さっきの例でいえば、昔、確かに週刊誌の中には児童ポルノというのはあったかもわかりません、それは私もよく知っています。でも、家を見たら、それが本当に何十年前のほかの雑誌と一緒に束になって、それで全然見た形跡もないし、ほこりをかぶっているといって、それでこいつは性的好奇心をとる目的だと自白を強要する捜査官なんて私はいないと信じていますよ。

 そうじゃなくて、やはり、児童ポルノであれば、有体物であればそれを何回見たとかいう態様ですとか、それから、パソコンの情報であれば、それをダウンロードしているとか何回開いたとか、そういったことから、やはりこれは自分が見ているんだな、性的好奇心を満たす目的で見ているんだな、それで所持しているんだなということをおのずと明らかにするようなしっかりした捜査を行われることが私は求められていると思うし、もしも、捜査に対する配慮というのを、我々がしっかりしなきゃいけないということをさらに求めるんだったら、この国会でちゃんと捜査機関に対してしっかり求めていきましょうよ。

○枝野委員 捜査機関が冤罪を防ぐためにしっかりとやるだなんてことは、別に今さら繰り返さなくたって、我々の条文に載っけましたけれども、そんなこと書かれなくたって当たり前なんですよ。当たり前なんだけれども、現に繰り返されているじゃないですか。

 立法は、民主主義社会は、基本的に公権力に対する性悪説で、間違いを犯すかもしれない、でも、間違いを犯しても、その間違いによって基本的人権を害すことのないようにしなきゃいけない、それが民主主義社会における、特に刑罰法規のつくり方じゃないですか。基本ですよ。性善説で、ちゃんとやってくれるでしょうと。ちゃんとやってくれなかったケースがあるから、民主主義国家にして、立憲国家にして、法律をつくって罪刑法定主義にしているんですよ。ちゃんとやってくれない可能性がある、ちゃんとやってくれないことがあったとしても間違いが起こらないようにする立法をするのが我々の責任だと思います。


 要するに、捜査機関に対する信頼の問題だと思うのだが、枝野議員の言うこともわかるが、私は葉梨議員の主張の方にに説得力を覚える。

 なお、上の引用部で太字にした箇所については、「まとめ」の

・過去作品のどれが児童ポルノかどうかは政府が調査して教えてくれるはず
・ハードディスクに入っている画像を何回開いたかで故意性を審査する
・写真や雑誌は、使い古されていたり手垢がたくさん付いていれば故意をみなす
・捜査官は善良なので、自白を強いて冤罪を生じさせるようなことはない


に当たるのだろうが、政府が云々についてはサンタフェのような著名なものについてはという話でしかないし、未必の故意についても「使い古されていたり手垢がたくさん付いていれば」だの「捜査官は善良なので」といった語句はこれまたない。
 ここで葉梨議員が述べているのは、「性的好奇心を満たす目的」を立証するには、自白だけでなく客観的な証拠を必要とすべきだという、至極当然のことではないか。

 社民党の保坂展人議員との問答でもサンタフェについての議論があるが、

・宮沢りえのサンタフェでも、法改正後は捨てないと逮捕する
・宮沢りえのサンタフェは見たことがないが、規制する


これも「逮捕する」とは言っていないし、そもそもサンタフェが児童ポルノに該当するとも述べていない。

○保坂委員 〔中略〕

 私は、以上前置きしながら、今回のとりわけ与党案にお尋ねしていきたいんですけれども、大変重大な危惧を覚えているんですね。というのは、表現の自由あるいは内心の自由にかかわる重要な議論が必要だろうというふうに思っているからです。

 実は、ちょっと資料を取り寄せてみましたら、今二〇〇九年ですが、ちょうど丸十年前にこの法律の最初の審議があった当時、私は法務委員会の一番最初に、「不思議の国のアリス」のルイス・キャロルのことを取り上げて、写真も当時出たての写真で、非常に写真に趣味をさらに高じていって、少女の写真を撮っていった、中には半裸、全裸のものもあった、ロンドンのナショナルポートレートギャラリーに展示されていて、芸術的に高い評価を受けているというようなケースがあるんだけれども、これはどう考えたらいいでしょうかと。当時の大森提案者は、芸術に該当するかどうかということはこの法案では立てていないんです、「当該描写に係る児童の姿態がこの法案の要件を満たすものであるか否かによって判断される」と答えているんです。

 そこで、先ほど枝野委員と葉梨提案者のやりとりを聞いていて、私も、篠山紀信さんが撮影した「サンタフェ」、百万部とか百五十万部とか売れているということで、過去見たことがあって、記憶がたどれなかったので国会図書館から借りて見直してみましたけれども、私は、これが本当に児童ポルノなのかなというふうに、率直に言って思えないんですね。児童ポルノだというふうには思えない。

 ただ、それは基準があってのことですから、葉梨さんが先ほど、例えば「サンタフェ」が家庭の中にあったら、この一年以内にこれを探して処分をするということをやってもらいましょうよというふうに答弁されたと思うんですが、これはお変わりありませんか。児童ポルノであるという判断なんでしょうか。

○葉梨議員 私自身も余り品行方正な生活をやっていたわけじゃないんですが、「サンタフェ」は見たことがないものですから、具体的に「サンタフェ」が児童ポルノに当たるのかどうかということについては、今ここで結論づけて申し上げることはできません。

 ですから、先ほど申し上げましたのは、「サンタフェ」が当たるか当たらないか、それぐらい有名なものであれば、宮沢りえさんが当時何歳だったかというのも大体わかるでしょうから、政府の方でもそれぐらいのサービスはしてくれるんじゃないんですかというようなことで申し上げたんです。

 「サンタフェ」を探さなきゃいけないということで、「サンタフェ」を持っていたよなというような記憶のある方はやはりそうしていただくということだろうと思いますし、先ほど言いましたけれども、蔵の中に、あるいは押し入れの中にもしかしたらあるかもわからないけれども、「サンタフェ」を持っていたという記憶がないなという方がそれを探さなければならないということはないんだろうと思います。たまたま将来、押し入れをあけて「サンタフェ」が出てきて、もし「サンタフェ」が児童ポルノに当たるんだということになれば、それは廃棄なりしていただければよろしいんじゃないかなというふうに思います。

○保坂委員 見ていないのに、廃棄した方が安全だ、そういうふうに言えるんでしょうか。(葉梨議員「違う、違う」と呼ぶ)ちょっと待ってください。その後議論します。



・顔が幼くて制服を着ていれば児童ポルノだと判断される

 これも保坂議員との次のやりとりか。

○保坂委員 〔中略〕 いいですか、葉梨さん。これは具体的に「サンタフェ」というものを見ている見ていないという問題は出てきますけれども、写真家の中で、いわゆる少女のセミヌードとかソフトヌードと言われるような、「サンタフェ」もその一つだと思いますけれども、そういう写真をかつてお撮りになって、写真集という形で出版をされ、あるいは平凡パンチとかプレイボーイとかそういう青年雑誌にも掲載されていたということが過去にありました。それらのものは児童ポルノに当たるのかどうかというところをどういう尺度で判断されているんですか。

○葉梨議員 先ほどちょっと誤解があったようですが、私は「サンタフェ」というのは見ていないんですけれども、もしも「サンタフェ」が児童ポルノに当たるということであればということを前提でお話をしたので、見てもいないものをどうなんだということではないということでございます。

 それで、過去にいろいろな雑誌で、そういったいわゆる三号ポルノというものですか、出ているということはあろうかとは思いますけれども、基本的に、児童が十八歳未満かどうかというところがまず一つの尺度になりますね。

 十八歳未満かどうかというのは、先ほど未必の故意の議論もありますけれども、明らかに、顔から見てなかなかよくわからなくても、制服を着ているとかそういったことで大体それは推知されるという場合もありましょうし、あとは顔が幼いかどうかということで。それが十八歳未満かどうか、客観的に見て、ほぼ十八歳未満じゃないかなというように推定がされるようなものかどうかということが一つありますね。

 それで、衣服の一部または全部を脱いでいるかどうかという要件、そして、それが性欲を興奮させ刺激するものかどうか。これについては、地裁判例等でかなり明確な基準等が示されておるんですけれども、そういったところで判断をしていくということになるんじゃないかと思います。


 これを「顔が幼くて制服を着ていれば児童ポルノだと判断」と要約するのもまた曲解。

 なお、過去の書籍等を廃棄すべきかについて、民主党案の提出者である枝野議員は、

○枝野議員 〔中略〕 過去にさかのぼって、芸術性のあるものとして社会的にも許容されてつくられた作品について、新たに出版をして、新たに配給をしてということについては、これはおやめをいただいた方がいいんじゃないですかということはできたとしても、それを持っているから廃棄してくださいということまではできないのではないか。

 その当時は、特に先ほど来名前の出ているような、例えば「サンタフェ」。私自身も中身まで詳しく見ておりませんから、私どもの案の「殊更に」に該当するかどうかは判断いたしかねますけれども、仮に、特に十一年の本法施行前、製造等が規制をされる前の段階では、芸術性が高いものについては子供が被写体であったとしてもという、社会的に許容されていた時代につくられたもので、それを、広く流通しているものを、さあ全部捨てなさいということまで迫れるのかということになれば、それはまさに刑罰の遡及ということになるだろうと思いますので、それは無理ではないかというふうに思っています。


と述べているが、これは法律家としては無責任(枝野は弁護士)な大衆迎合的発言ではないかと思う。
 製造罪や頒布罪ならともかく、所持罪は所持の時点で成立するものであり、刑罰の遡及になるはずがないからだ。

(続く)


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7 コメント

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Unknown (匿名)
2013-06-03 21:17:02
自分は逮捕されるはずがないと思ってる人がこの法律で逮捕されて初めて法律の怖さを知るんだと思いますよ。
返信する
Unknown (大喰い)
2013-06-05 11:47:12
人の人生に関わる事を、他人がこうもアッサリと規制しようとするのが今の日本かね。
ま、もちろん規制されたら、さっさと自殺するけどね。
なんて世界だ・・・。
返信する
Unknown (名無し)
2013-06-09 00:24:37
持ってた写真集を捨てろというのは、遡及法になるんじゃないですか?
そんな事認めていいものなの?

これ認めちゃうと、ジリジリと法的な定義を緩めてってその上でイチャモンつけたら都合の悪い書籍を焚書出来るじゃないですか・・・?
返信する
匿名さんへ (深沢明人)
2013-06-25 20:46:28
>自分は逮捕されるはずがないと思ってる人

私はそんなふうに思ってはいませんし、法律の怖さも重々承知しているつもりです。
返信する
大喰いさんへ (深沢明人)
2013-06-25 22:43:58
 検挙されたり、没収されたりではなく、規制が開始されだけで自殺するんですか。
 軽い命ですね。
返信する
名無しさんへ (深沢明人)
2013-06-25 22:50:52
写真集を入手したということではなく、改正法の施行された後のいついつに所持していたということで検挙されるわけですから、遡及罰ではありません。

そう考えないと、覚せい剤や拳銃の所持が合法だった時代から所持し続けていれば、現在でも罪に問われないというおかしなことになりますね。

>これ認めちゃうと、ジリジリと法的な定義を緩めてってその上でイチャモンつけたら都合の悪い書籍を焚書出来るじゃないですか・・・?

そのとおりです。
だから、恣意的な焚書ができないように国民が不断にチェックする必要はあるのです。
返信する
児童ポルノ法論議の件 (岡田)
2014-01-10 21:25:00
私は、某SNS上に児童自身により投稿された裸身や性器の写ったアカウントを1500件以上を2014年初に
警視庁に通報した者です。児童ポルノ法改正で過去の画像が云々議論する前に、たとえば、昨日投稿されて
しまった画像・児童をどう保護し対処するか?といった緊急性のある事案にたいする法律を優先して議論決議
していただきたい。現状では、当該記事、画像(動画)が
児童ポルノに該当するかなどと悠長なことを言っているうちに、インターネットを通じ世界中に広がりアーカイブ
されてしまいます。
 人命の優先と同じに児童の人権も他の諸権利に優先して、先ず隔離保護の処置を行い。
十分な調査判定の後、該当者の処罰、非該当の再公開という手法を確立していただきたい。
また、個人情報の保護を建前に捜査難航、未着手という当該事案が児童ポルノであった場合、捜査着手まで当該画像が公開され続ける事の重大性に関し最優先で検討、立法願いたい。
 過去のものが、云々で立法が遅れるのであれば、その件は、後回しにしてもらわないと、昨日ネットにアップされた画像が、今日には数十のアダルトサイトに記事として出回る現状に全くそぐわない法律談義としか思えません。(判定困難なものは非公開で...)
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