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天声人語が捏造

2007-04-05 00:13:45 | マスコミ
 『朝日新聞』のコラム「天声人語」は4月から執筆者が変わったそうだが、早速妙なことを書いている。
 4月4日の朝刊分(魚拓)。

>「日本語は主語を隠し、責任をうやむやにするにはとても便利な言葉だから」。

>戦争を遂行し、支えた多くの人が、戦後、責任をすり抜けて遁走(とんそう)した。

こうした記述にも疑問はあるが、それはさておき。

>06年度の教科書検定の結果が先ごろ公表された。太平洋戦争末期の沖縄戦で起きた住民の集団死(自決)について、日本軍が強いたものもあった、とする表現に文部科学省が意見をつけた。来春の高校教科書から「日本軍」という“主語”が消えることになった。

 日本軍が強いたものもあった、とする表現?
 違うだろう。
 3月31日付け朝日の1面記事「集団自決 「軍が強制」削除」に付されている表によると、修正前の記述は次のようなものだ。

《日本軍によって壕(ごう)を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった》(山川出版社 日本史A)

《そのなかには、日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民や、集団で「自決」を強いられたものもあった》(東京書籍 日本史A)

《日本軍に「集団自決」を強いられたり》(三省堂 日本史A)

《なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた》(清水書院 日本史B)

 いずれも、集団自決は日本軍により強制されたとしている。「強いたものもあった」ではない。日本軍による強制以外の集団自決があったとは、これらの記述から読み取ることはできない。

 朝日は同日の社説でも、

《そもそも教科書の執筆者らは「集団自決はすべて軍に強いられた」と言っているわけではない。そうした事例もある、と書いているにすぎない。》

と述べていたから、天声人語もこれを踏襲したのだろう。しかし、朝日紙面の記事で読む限り、これらの教科書が「そうした事例もある」としているのは、集団自決という事例もあるということであり、集団自決の中に日本軍に強制されたものがあるという趣旨ではない。

 これは、昨今話題の捏造のたぐいではないだろうか。

 天声人語はこうしめくくっている。

《様々な出来事の責任をうやむやにすれば、行き着く先はお決まりの「戦争のせい」「時代が悪かった」という、あきらめの強要だろう。だが戦争を起こすのも時代をつくるのも、それぞれの立場でかかわる人間にほかならない。》

 全くそのとおりだ。
 「それぞれの立場でかかわる人間」に、それ相応の責任が生じるのだ。
 「日本軍」さえ悪者にしていれば済むという話ではない。
 新聞にもまた重大な責任があるのではないか。
 朝日がそれを全く検証してこなかったとは言うまい。だが、十分に責任を引き受けてきたとも思えない。

 それにしても、何という陳腐な文章だろうか。朝日の社説やコラムは、年々レベルが低下している気がしてならない。


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