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外国人への参政権付与が憲法違反だと!?

2009-10-09 23:58:02 | 「保守」系言説への疑問
 ケータイで「The News」という無料ニュースサイトを時々見るのだが、今日こんなタイトルの記事が載っていた。

首相きょう訪韓 「参政権」焦点に 付与は違憲…政治問題に発展も


 「付与は違憲」……外国人への参政権付与が違憲だって?

 帰宅してパソコンでインターネットを見ると、同じ記事が別タイトルで「MSN産経ニュース」に掲載されていたので、コピペしておく(太字は引用者による。以下同)。

鳩山首相、訪韓へ 焦点は外国人への地方参政権付与問題

 鳩山由紀夫首相は9、10両日、韓国、中国を相次いで訪問する。韓国では、青瓦台(大統領府)で李明博大統領との首脳会談に臨むが、焦点となりそうなのが永住外国人への地方参政権付与問題だ。韓国側が要請している上、首相をはじめ、小沢一郎幹事長、岡田克也外相-と民主党幹部には参政権付与に熱心な顔ぶれが並んでいるからだ。首相の判断次第で、今後の大きな政治課題に浮上する可能性がある。(阿比留瑠比)

 「一定の結論を出すべき問題だ。その結論を見据えて首相や幹事長は話をされている。現実的な対応につなげていきたい」

 原口一博総務相は8日、産経新聞などのインタビューでこう語り、参政権付与に意欲を示した。この問題は自公政権でも公明党が推進しようとしたが、自民党内に慎重・反対論が根強く頓挫してきた経緯がある。

 一方、民主党は世論の反発を恐れたのか、衆院選マニフェスト(政権公約)からは削ったが、政策集「INDEX2009」では「結党時の『基本政策』に『定住外国人の地方参政権などを早期に実現する』と掲げており、この方針は今後とも引き続き維持していく」と明記している。

 また、鳩山内閣の閣僚の一人は衆院選前に在日本大韓民国民団の地方本部で講演し、「政権奪取で皆さんの地方参政権を実現する」と“公約”している。

 民団は衆院選で、参政権付与の推進派議員を支援した。鳩山首相は就任前の今年6月、李大統領と会談した際に「多くの民団の方にご支持いただいてありがたく思っている」と語っており、参政権問題で後には退けない事情もある。

 鳩山内閣発足直後の9月19日、李大統領の実兄である李相得・韓日議員連盟会長が小沢氏を訪ね、参政権付与を改めて求めた。小沢氏は即座にこう応じた。

 「賛成だ。通常国会で目鼻をつけよう」

 民主党には400人余の衆参両院議員がおり、永住外国人法的地位向上推進議員連盟の川上義博事務局長は「今の民主党の現職の初当選も含めた議員の中で、(参政権付与に)まったく反対の人は32人しかしない」と打ち明ける。

 だが、外国人への参政権付与はもともと憲法違反(平成7年の最高裁判決)だ。また、今年2月の韓国での法改正で在日韓国人は母国の国政選挙に投票できるようになった。本国の選挙権があるのに日本でも地方参政権を行使するというのは筋が通らない。

 参政権付与を世論が求めているわけではない。国のかじ取りを行う鳩山首相には、慎重な上にも慎重を期した対応が求められる。


 「外国人への参政権付与はもともと憲法違反」!?
 そんなわけないだろ。
 じゃあなにかい、民主党や公明党は違憲を承知で外国人に参政権を付与しようとしているっていうのかい?
 違憲の立法などできるわけないだろ。やるとすれば改憲が必要だろ。

 平成7年の最高裁判決ってのはこれだろ。

地方自治について定める憲法第八章は、九三条二項において、地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙するものと規定しているのであるが、前記の国民主権の原理及びこれに基づく憲法一五条一項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、憲法九三条二項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない。

〔中略〕

このように、憲法九三条二項は、我が国に在留する外国人に対して地方公共団体における選挙の権利を保障したものとはいえないが、憲法第八章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。しかしながら、右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない。


 違憲じゃねえじゃねえか。
 法律をもって地方参政権を付与することは憲法上禁止されてはいないと述べているじゃねえか。
 付与するか否かは立法政策の問題であって、付与していない現在の地方自治法や公職選挙法の規定は違憲ではないと述べているだけじゃねえか。
 阿比留のウソツキ。

 私は、定住外国人への地方参政権付与には反対だ。
 それは、この政策が事実上、在日韓国・朝鮮人の権利拡張の延長上にあるからだ。
 かつて、さまざまな点で日本国民と在日との間には行政上の取扱いの差が設けられていた。しかし、「差別」だとの非難を受け、そうした差は徐々に解消されていった。象徴的だった指紋押捺でさえ、廃止されるに至った。
 そして、残されている大きな問題の1つが、この参政権だ。
 しかし、在日にとって、参政権は本当に必要なものなのか?
 完全に日本国民と同じ権利を要求するのなら、むしろ帰化の簡易化を要求すべきではないのか?
 そして、民団が地方参政権に積極的である一方、総聯はこれに反対している。
 例えば↓。
http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/sinboj1997/sinboj1997/sinboj97-8/sinboj970822/sinboj97082271.htm
(ただし、この朝鮮新報のサイト内で検索したところ、最近は参政権付与を批判する記事は掲載されていないようである。かといって、賛成に転じたわけでもないようだ)
 こうした状況では、安易な地方参政権付与は、民族を分断させるものといった無用な批判を受けることにならないか。

 だが、反対論を唱えるにせよ、嘘はイカンだろ。
 最高裁は、現行法での外国人参政権の否定は合憲だとしているだけで、新規立法で外国人に参政権を付与することが憲法に反しないとも述べているのだから。
 こんなんだから、産経は全国紙の中で一段低く見られるんじゃないのか。

 産経は、保守系紙だろう。
 私の政治的立場も、基本的には保守系であり、産経の論調と重なる部分も多い。
 そんなメディアの政治記事がこれでは、正直情けない。
 こんな記事を通してしまう上司も上司だが。

 あとなあ、

本国の選挙権があるのに日本でも地方参政権を行使するというのは筋が通らない。


と言うけど、そんなことないだろ。
 本国に国政の選挙権があり、なおかつわが国での国政の選挙権をも求めるというなら、そりゃ筋が通らない。
 本国に地方参政権があり、なおかつわが国の地方参政権も求めるというなら、それも筋が通らない。
 だが、本国に国政の選挙権があるが地方参政権はなく、わが国でも国政までは要求しないが地方参政権は要求するというなら、それなりに筋が通っていると言えるだろう。

 なんでも言やあいいってもんじゃないぞ、阿比留。


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8 コメント

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Unknown (弁護士)
2009-11-21 00:34:54
平成7年最高裁判例は許容説というやつです。

でも、ネットウヨとかいう、ネット上でだけ強い人たち(笑)は、判例読解なんて無理なんでしょうかね(遠い目)

日本語がわからない人が増えたってことですね。
立法事項なのだから、あとは国民が判断するべきことで、ネットウヨが結論出すことじゃないんですよね。
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Unknown (kaetzchenの母)
2009-12-01 12:56:51
うちの馬鹿息子が最近こちらのブログにお邪魔して変な日本語コメントを残してしまったようで、申し訳ありません。。。。
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「弁護士」さんへ (深沢明人)
2009-12-06 23:04:05
ネットウヨではなく、全国紙の政治記者の話をしているのですが……。
その後、阿比留記者に限らず、産経新聞は解説記事でも社説でも同様の主張をしているのを目にしました。違憲説は社論となっているのでしょう。
平成7年の最高裁判決が新法による地方参政権付与を容認している点については、傍論部分であり結論に直接影響しないとしています。
しかし、そんなことを言うなら、この判決は、憲法九三条二項にいう「住民」は日本国民を指し外国人は含まないとしているだけで、外国人への地方参政権付与が違憲だなどとはどこにも述べていないんですよね。
全く、ふざけた新聞ですよ。
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「kaetzchenの母」さんへ (深沢明人)
2009-12-06 23:17:24
よくわかりませんが、上の「弁護士」さんのコメントが、kaetzchenという人によるものだということでしょうか?
ちょっとそうは思いがたいのですが、何か根拠はあるんですか?
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Unknown (ねこ)
2013-12-20 17:59:04
傍論て言葉知っている?  傍論(ぼうろん、羅:Obiter dictum、オビタ・ディクタム)とは、英米法の概念で、判決文の中の判決理由において示された裁判所(裁判官)の意見の内、判決の主文の直接の理由であって判例法としての法的拘束力が認められる判決理由の核心部分(羅:ratio decidendi、レイシオ・デシデンダイ)に、含まれない部分   1995年2月28日の最高裁判決における「傍論」[編集]

最高裁は判決において「全ての外国人に国政レベル・地方レベルを問わず、参政権は憲法上保障されない」とする"禁止説"に立ったが、判決理由において(いわゆる傍論部分)園部逸夫は「地方レベルの参政権については法律による付与は憲法上許容される」と記し、"部分的許容説"に立つともとれる傍論を示した。傍論は判例と異なり拘束力を持たないものであるが、この傍論部分については、度々引用され議論のもととなっている。後にこの傍論作成に関与した園部自身は、判決判断を行ううえでの理由を説明したものにすぎず、「傍論」でさえもないと発言している。いずれにしても、参政権は憲法上保証されなければならないとする"要請説"は否定された
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 (深沢明人)
2013-12-22 21:10:32
 引用には引用符を付けて出典を示してください。

>傍論て言葉知っている?

 知っていますが、それがどうかしましたか?

>いずれにしても、参政権は憲法上保証されなければならないとする"要請説"は否定された 

 そうだと思いますが、それが何だというのですか?
 私が"要請説"に立って何か主張しましたか?

 私がこの記事で言っているのは、この最高裁判決を根拠に、阿比留記者のように「外国人への参政権付与はもともと憲法違反」と言うのは嘘であるということですよ。
 外国人の「参政権は憲法上保障されない」ことと、外国人参政権を憲法が禁止しているということは違いますから。傍論だから拘束力がないといった次元の話ではないのです。
 つまらない茶々を入れないでください。

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Unknown (wani)
2014-01-03 18:37:49
でも、これまで賛成派だった憲法学者の長尾一紘(要請説を提唱していた。)しも憲法違反だと言ってますけど。
出典http://www.yomiuri.co.jp/adv/chuo/opinion/20100215.htm
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Re:Unknown (深沢明人)
2014-01-11 12:12:13
>長尾一紘(要請説を提唱していた

 リンク先の記事を見ますと、長尾氏は「許容説」から「禁止説」に変えたと述べていますが。
 要請説と許容説とは違うんじゃないですか。

 それはさておき、長尾氏が禁止説、つまり外国人参政権は憲法違反だと主張するのは氏の自由です。
 リンク先の記事で長尾氏は自説を変えた理由をいくつか述べていますが、そんなことは外国人参政権の問題が生じた当初から言われていたことです。もし本当にこれらが理由なら、学者にしてはえらく思慮の浅い方だったのだなと思うほかありませんが、そういう方も中にはおられるのでしょう。

 私も記事中で述べているように、外国人への地方参政権付与には反対です。しかし憲法違反だとまでは考えません。何故なら憲法には、地方参政権は日本国民に限定されるとは書かれていないからです。

 で、私はこの記事で、外国人参政権は違憲かどうかを問題にしているのではありません。
 違憲、合憲、いろんな見方があるのは当然です。
 私が問題にしているのは、違憲説の根拠に平成7年の最高裁判例を持ち出す阿比留記者、ないし産経新聞の姿勢です。
 長尾氏だって、そんな愚かなことは言っていないでしょう?

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