協議離婚サポートブログ 東京都杉並区の行政書士瓜生和彦 離婚協議書、公正証書の作成サポート

日常生活は平凡なのですが、離婚とか相続とか、日常とは違う相談を受ける行政書士が、離婚の情報と仕事の合間に思うことを発信。

清算的財産分与 その考え方を少し詳しく・・・

2016-10-18 14:59:08 | 日記
離婚の際に、「財産分与」ということが良く言われますが、その中心となるのは清算的財産分与です。

ご夫婦が婚姻中に築いた財産は、原則として、ご夫婦が協力して築いたものであり、実質的にはご夫婦の共有財産です。そして、離婚する場合には、その実質的な共有財産をどのようにするかを決める必要があります。この共有財産の清算が、清算的財産分与ということです。

そして、ご夫婦は協力して財産を築いたのであり、財産形成への寄与・貢献の程度も、原則として平等であるとされています。つまり、ご夫婦が築いた財産については、ご夫婦がそれぞれ2分の1の権利を有するとされます(「2分の1ルール」)。

ご夫婦が婚姻後に築いた財産は、実質的にはご夫婦の共有財産であり、ご夫婦のそれぞれが2分の1の権利を持つ。これが基本的な考え方です。

では、場合を分けて、ご夫婦の財産を見ていきましょう。

(1)特有財産(固有財産)

例えば、奥さんが結婚する前からしていた預金があるかも知れません。このように、ご夫婦のそれぞれが婚姻前からしていた預貯金等の財産、また、婚姻前に相続・贈与によって得た財産、さらに、婚姻後でも、相続や贈与によって取得した財産は、特有財産とか固有財産という言い方をしますが、これらは清算的財産分与の対象とはなりません。ご夫婦が協力して築いた財産ではなく、ご夫婦の実質的な共有財産ではないから、ということです。

(2)名実ともに共有財産と言える場合

例えば、婚姻後に購入したテレビや冷蔵庫、家具等は、名実ともに、ご夫婦の共有財産です。これらは、清算的財産分与の対象となり、原則として、2分の1ルールが適用されます。

(3)実質的な共有財産

例えば、婚姻後に、全額住宅ローンで購入した不動産は、たとえ夫の名義で登記がしてあっても、婚姻中にご夫婦が協力して築いた財産として、清算的財産分与の対象となり、原則として2分の1ルールが適用されます。

清算的財産分与では、(2)と(3)が重要な意味を持ちます。




「養育費の合意 6割どまり・・・」

2016-10-07 14:45:52 | 日記
昨日(平成28年10月6日)の読売新聞は、未成年の子供がいる夫婦が離婚に際して、養育費の分担や子供との面会方法などで合意していたのは約6割にとどまることを法務省がまとめたことを報じていました。

このような合意率は、4年前と比べると7ポイント増加したそうですが、依然として、低く、その背景には、「まずは離婚したい。」という親の事情があると分析されています。

このような状況に対しては、養育費の合意がない「ひとり親家庭」では子供の貧困につながりかねないため、法務省は、これらの合意に向けた手引書を作成し、全国の市町村に配布をはじめたそうです。

未成年のお子さんがいるご夫婦が離婚するときに、養育費をどうするかというのは、やはり簡単な問題ではないですね。
支払う方としては、養育費を支払う期間が長くなればなるほど、約束をしても(法律上は契約です。)、それを守れるか否か自信がない、不安だ、となります(ご自分の仕事を含めた経済事情や再婚などを理由に・・・)。
他方、養育費を受け取る方としては、出来るだけ確実に受け取りたいと思います。協議離婚でも、口約束はあり得ないし、自分たちで作った書面も頼りにならない。いざとなれば強制執行が可能な公正証書を作って欲しいとなる。
ハードルが高くなると、養育費や面会交流などの約束はより難しくなる・・・

離婚を扱っている行政書士は、そのような案件を依頼されるのですが、養育費の分担を決めると言っても、月々の支払いを決めるだけではなく、病気や怪我のための病院などへの出費についても決めておきたい、また、高校進学・大学進学のための学資についても決めておきたい(学資保険等を含めて)となるのであって、合意の成立までは長い時間がかかることもあります。
また、養育費の分担と面会交流は、法律上は別の制度ですが、当事者の方々の気持ちの中では繋がっていて、面会交流、より広く言えば、お子さんと別れて暮らす親との繋がり(電話・メール・写真等)をどうするかも大切な問題です。

養育費の分担・面会交流について決めることは、もちろん重要です。さらに、その際に、どのようなことを考え、どこまで配慮して、それを決め、かつ、その合意が長期間実現可能はものであるか、も重要です。

こんなこと考えながら、昨日の新聞を読んでいました。

清算的財産分与の対象となるもの

2016-10-05 10:02:44 | 日記
清算的財産分与の対象となりうるものは、婚姻後に、ご夫婦が協力して築いた財産の全てであり、不動産、預貯金、生命保険、学資保険、株式などなど、多くのものが考えられます。

これらのものについては、名義に拘わらず、ご夫婦が協力して築いたということがポイントです。
例えば、ご主人が会社員で、奥さんが専業主婦であるご夫婦が、婚姻後、全額住宅ローンで不動産を購入し、ご主人名義で登記をしていても、ご主人の給料から住宅ローンの返済をしたのであれば、その不動産は財産分与の対象となります。

逆に、清算的財産分与の対象とならないものとしては、婚姻前から有していた財産や、婚姻後に相続や贈与により取得した財産があります(例外がない訳ではありませんが・・・)。これらは、ご夫婦が協力して築いた財産とは言えないからですね。特有財産ですとか、固有財産という言い方をします。

財産分与について、こぼれ話のようなものを少し・・・

学資保険も、財産分与の対象となると書きました。
では、具体的には、どう処理するのでしょうか?
ある方が、弁護士さんに相談したら、「解約して、解約返戻金を2人で分けなさい。」と言われたそうです。
でも、その方は、お子さんの将来の学費のために毎月保険料を支払って来たのであって、学資保険はそのまま残したいとのお気持ちでした。
そこで、ご主人の名義であった学資保険を、財産分与として奥さんへ譲渡し、名義(保険契約者)を奥さんへ変更することにしました。離婚協議書には、名義変更の手続きも記載しておきます。

日用品を含む家財道具・・・
若いご夫婦でした。お子さんはいらっしゃらず、財産分与の対象となる不動産や預貯金もなく、お2人が分けたのは、日用品を含めた家財道具でした。
エクセルで表を作り、冷蔵庫は妻、テレビは夫・・・と決め(相当数の項目がありましたね)、不用品も記載して、その廃棄費用の負担も記載されていました。
これらを含めた離婚協議書を私が作成したのですが、これも財産分与ということになりますね。


財産分与の扶養的な意味、慰謝料的な意味。

2016-10-02 16:44:09 | 日記
協議離婚に携わっていて、財産分与が問題となることも多いのですが、当事者の方々の意識からしても、通常、財産分与と言うと、婚姻後にご夫婦で協力して築いた財産の清算(清算的財産分与)を意味しています。

ただ、財産分与の意味は、それだけにはとどまらず、扶養的な意味や慰謝料的な意味もあります。

最高裁判所は、その判決のなかで、財産分与には、夫婦が協力して築いた財産の清算のほかに、「離婚後における一方の当事者の生計の維持を図ることを目的とする」と述べていて、これが財産分与の扶養的な意味です。

以前、公証人からお聞きしたお話では、婚姻後にご夫婦で築いた財産はなかったが、離婚後の奥さんの生活を考えて、ご主人の固有の財産から、奥さんへの財産分与がされた例もあったそうです。これは、扶養的な意味を持つ財産分与ですね。

また、相手方に責任のある行為(浮気、暴力等)により離婚に至ったことによる精神的損害、つまり慰謝料も含めて、財産分与を定めることも可能です。これが、慰謝料的な意味を持つ財産分与です。

このように、財産分与に慰謝料的な意味を持たせることは、裁判所における手続きでメリットがあるそうですが、その他にも、例えば、ご主人名義の不動産を奥さんの単独の所有にしたいが、清算的な財産分与だけではそれができない場合(金額的に足りない場合)に、財産分与に慰謝料的な意味を考慮して、不動産を奥さんの所有とすることが考えられます。

ただし、離婚の際に慰謝料が問題となる場合には、財産分与とは別に慰謝料の取り決めをすることが通常です。そして、その場合には、財産分与は慰謝料的な意味を持たないことになりますね。