INSIGHT

ある化学工学系大学教員の大学とあまり関係ないブログ.twitterやFacebookに載りきらない長文の置き場.

人を人として扱え

2008年12月11日 | 社会・ニュース
もう夜遅いのだけれど少々腹が立つニュースだったので少しだけ書いておく。



いくら1ヶ月前の通告を守ったとはいえ、本人の過失でもないのに一方的に契約を打ち切るとはひどい話だ。派遣だからといっていつ首を切られてもすぐ次の仕事が見つかるというわけでもあるまい。完全に生活プランを崩されてしまったことだろう。

個人的にもっと許せないと感じるのは、寮からの立ち退きを要求していることだ。当初の契約にどこまで明記されていたのか知らないが、会社都合で一方的に解雇しておきながら住居まで奪うとは一体どういう感覚をしているのか。もし雇用保険さえも出なければ文字通り無収入となり家探しもますます難しくなる。文字通り生存権が脅かされるのだ。こういうことを言い出せる人間は、人の痛みがわかるのかと本気で疑ってしまう。

解雇にしろ寮の退去にしろ、次の契約更新まで猶予するくらいの余裕すらなかったとは考えにくい。会社経営のためにここまで人を粗末に扱うことが許されていいのか。

格差を無くせとまでは言わない。せめて同じ人としての扱いをするべきだ。


【追記12/16】
国もこの件では動いている様子。



【追記12/30】
日産ディーゼルも雇用打ち切りの方針を変えたようだ。
契約期間満了で雇い止めになることには変わりはないようだしすでに解雇された分が撤回されるわけでもないようだが、企業の姿勢がわずかでも変わったことには意義があると言えるだろう。


関数電卓の使い方

2008年12月07日 | 講義(実験)
学生実験(研究室での実験ではなく、授業の一環としての実験)の指導をしていて、「関数電卓の使い方を教えてください」という学生さんに出くわすことが時々ある。実験データを直線近似する際に最小二乗法で傾きと切片を求める時の、キー入力手順がわからないというのだ。マニュアルを見ればというと、なくしたという。

関数電卓を単なる四則演算の道具としてしか考えていないから、買って間もないのに易々となくしてしまうのではないだろうか。種々の複雑な計算をする道具なのだから、もしマニュアルをなくしたら友人のものをコピーしてでも手元に備えておくべきことは当然だ。こういう学生さんは、自力で計算できるようになる気がなくて、忘れたらその都度訊けばいいという意識が垣間見える。そういう心構え自体が問題なのだ。

そんなわけで学生さんには気の毒だけど、そういうリクエストには基本的に応えないことにしている。

計算する気があるなら、マニュアルなしでも方法はある。Excelには線形近似線を追加する機能や傾きや切片を求めるslope,intercept関数が用意されている。実験テキストには最小二乗法を手計算で実行する手順が解説してある。面倒がらずにトライしてみることが、実力の向上として結局は自分のためになるのだ。もしこれらに取り組む意志がある上での質問や相談であるならば、積極的に受け付けるつもりでいることも付言しておこう。

雑魚にすらなれない

2008年12月05日 | 研究活動
夏に投稿した論文がmajor rivision(査読者から大幅修正を求められること)となり、いろいろ考えた末、追加実験をすることにして一旦取り下げた。まだ論文化していない実験データがほかにもあったので、それをまとめて先日投稿した。分量はあまり多くなかったのでレター(速報的な位置づけのもので、普通の論文よりも短めのもの)にしてみた。

ところが半日も経たないうちにreject(掲載拒否)の返事。There are no scientific novelties(科学的に目新しいことが何もない)のでreviewer(査読者)に回すまでもなくediter(編集者)の段階で却下するとのこと。これ以上ない痛烈で的確な批判だ。反論するだけの力もない。かつてここでエラそうなことを書いたけど、「雑魚論文」すら書けない。これが今の自分の実力だ。10年経って、ほとんどゼロだ。

10年間、特にこの1,2年は、研究費を稼ぐことだけではく、むしろそれ以上に論文を雑誌に投稿し博士論文を仕上げることに集中するよう努めてきた。でもそうすればするほど書くこと自体が自己目的化してきて、研究という知的活動からますます遠ざかったように感じられる。形式的な忙しさとは裏腹に、何も産み出していない空虚感だけが増していく。

この仕事が向いていないのだと言われればそうかもしれない。もっと優れた人にポストを譲るべきだと言われれば反論する術もない。博士号が取れたからと言ってこの情況がそんなに好転するとは思えないけれど、とりあえず今はただ、自分が飯を食わんがため、自己保身のために仕事にしがみつかざるを得ないのである。