『ソウルボート航海記』 by 遊田玉彦(ゆうでん・たまひこ)

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消された覇王

2009年06月04日 10時37分02秒 | 未知への扉
最近、出雲の隠岐へ行って来た編集者から、アマテラスやスサノオは実在した存在なのかという疑問を投げかけられたので、以前、書いた記事を再録(一部修正)して掲載します――。ご興味のある方はお読みください。


日本神話で知られるスサノオは、アマテラスの弟として登場し、荒ぶる神と恐れられている。弟の傍若無人なおこないに呆れ果てたアマテラスは、天の岩戸に隠れ、この世が暗闇になるという話は余りにも有名だ。しかし、こんな話が果たして歴史の何を伝えているのだろうかと、誰しも思うにちがいない。神話なのだから、何かの喩え話なのだろうと思うのが関の山だ。

ところが、だ。アマテラスは天皇家の祖として祀られ、スサノオを祭神とする神社はあまたある。荒唐無稽の神という存在が、なぜ祀られ、皆がお参りするのだろう。そこには、秘められてしまった歴史的事実というものが隠されているのではないか。

『消された覇王/伝承が語るスサノオとニギハヤヒ』
             小椋一葉著(河出文庫)
という本が、そうした疑問に対して、既存の歴史本で読んだこともないような、新説を提示してくれる。
「かつて二世紀から三世紀の日本に、スサノオに発し、その子ニギハヤヒを柱石とする巨大な王権が存在した。出雲から出で九州を席捲し、内海外洋航路を掌握して大和を治め、日本の基礎を確立したこの王権が、記紀を媒体とし、蘇我氏、藤原氏の陰謀によって神話にすりかえられ抹消された経緯を、豊富な神社伝承と祭神の分布等によって解明する」 (本書解説より)

出雲族の王スサノオが、九州の豪族を治め、次いで大和地方に子息ニギハヤヒを派遣して治めさせ、そのニギハヤヒが大和王朝の祖となったのだという。ニギハヤヒの末娘、ミトシ(御歳)の婿養子として、九州・日向族の王子を迎える。それが神武だとする。いうまでもなく、神武は初代天皇とされている。神武はニギハヤヒが築いた王朝を継承し、天皇家が誕生したのだとするのだ。だが、ご存じの通り、正史はちがう。記紀ではどこにもそんな事は書かれていない。歴史資料がないのに、なぜ、そんなことが書けるのか。著者は、記紀以前の神社伝承と、祭神分布の地理的アプローチからの考察に依っているのだ。各地の古社を訪ね、調べ上げた結果からの論だという。

実は、このアプローチには先駆者がいる。『古代日本正史』(婦人生活社)の著者、原田常治だ。昭和51年に刊行された本書は、学会からは無視されたが、在野の研究者に刺激を与えたようだ。

まえがきで、原田は皇室に向けたメッセージを書いている。
皇室の立場で考えても、いつまでも記紀のウソを野放しにしておくのはいかがなものかといい、「現実に、今でも皇居で、11月22日の夜、神武天皇の舅である歴史から消された天照国照大神饒速日尊(ニギハヤヒ)の鎮魂祭を行っておられる。そういうことも、無理に伏せておかないほうが、皇室の将来のためによいのではないか」と、言い切っている。

著者は、婦人生活社の社主であり、ライフワークとして古代史に踏み込んで晩年をフィールドワークに捧げている。後継者を望むとあとがきにも記している。近年、タブー視されてきた日本史の闇に光を当てた本が多数出版されるようになった。もちろん、学会からではなく、在野の研究家らの著作が大半である。まあ、だから読んでいて面白い。ほんとうは、そうなのではと思わせるものも多い。確証などないが、人間社会を推理する楽しみがある。

私が推理するところのキーワードは封印だ。歴史にはあまた封印が施されてきただろうと思う。一個人史で考えても、封印はある。「あれだけは云ったらマズイ」という事は色々ある。社会で考えたら、とてつもなく巨大な封印があって可笑しくはない。では、封印を開けたらどうなるか。混乱が起こる。風が吹き込む。何かが変更される。新たな価値がうまれる。などなど。少なくとも、封印を解かなければならない封印というものがあるだろう。

封印された歴史のふたを開けることの意味は、浄化だ。だれのためでもない。すべての人々にとって重要なのだ。封印こそは、穢れの手法。今日現在の政界、産業界のさまを見れば実感できること。つい最近も、戦後の日米間で日本国内に核兵器持ち込みを許すという密約が取り交わされていたといった官僚次官OB4人の証言が共同通信のインタビューで明らかにされた。大手新聞社はこの配信を黙殺していると、元レバノン大使の天木直人氏がブログで書いておられた。原水禁ビックリ仰天の、大変な事実である。

日本を洗い清める時期到来だ。まず、歴史を知ることが、その第一歩となる。


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2 コメント

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封印を解く (kakorin)
2009-06-04 14:43:54
真実を話し理解して貰わねばならないことが有りました。
やっと話せて涙が出ました!
浄化…吐き出して上手に受け止めてくれればなお良しですね。

個人レベルでもそうどすから天皇家や国家のこととなると?

悪を無くす!
難しいですね~!
悪と戦う!
勇気入りますね。

でもヤラナケレバ知恵と勇気を持って!
(^_^)v


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そうです! (ゆうでん)
2009-06-04 19:28:42
kakorinさま

いつもコメントありがとうございます。
知恵と勇気をもってと、おっしゃるとおりですね。

歴史の真実といいますが、歴史は個々人にとって
いろいろ変わりますから、結局、自分にとっての
歴史的真実を追究していくのだろうと思います。
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