蒼穹のぺうげおっと

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福井晴敏 『Op.ローズダスト』 ミニ感想

2006-05-06 00:58:02 | 小説 感想
「オペレーション・ローズダスト、状況を終了する」


*意訳:福井晴敏さんの『Op.ローズダスト』を読了しました。


というわけで、連休に入る直前あたりに読み終えた福井晴敏さんの最新作『Op.ローズダスト』を読み終えました。

読み終えた直後の率直な感想は、

もう、おなか一杯

です(笑)。

『川の深さは』から連綿と続く福井作品の集大成的な印象を受けたこの作品、随所で福井節がこれでもか、と炸裂するゆえに、盛りだくさんでおなか一杯になりました。

今回は福井さん得意の中年のおじさま+青年兵士パターンにひねりを加えて、相手方にも中年のおじさま+青年兵士、そしてさらにその中間を行く渋いおじさまを配置するという念の入れよう、というか、きっと相手方の側面からも状況を見せたくて、その板ばさみになった中間の視点も描きたかった、そういう気がしますね。

これをベースに僕がいつも福井作品を読む上でポイントとして3つあげている、

1.組織社会における様々な主義・主張の裏側にある不条理と諦観の念

2.自分の住んでる国ってどうよ?を考えてみる

3.でも結局は人の心なんだよ、大事なのは

この辺はしっかり踏襲されていた、というより強調されていた、そんな気がしました。

福井作品で破壊への過程が克明に描写されたり、崩壊の状況が克明に描写されるのは、この3点を浮き上がらせるためのギミックだと僕は思っているんですよね。

特にこの辺のギミックに今回は物凄く力を入れているな、と感じたのは、きっと今という時勢とこれまで福井さんが作品を通じて積み上げてきた問題提起の波が噛み合ってきた、と感じたからなのかもしれないですね。

しかしながら、今回、僕の率直な感想から行くと、少し複雑にし過ぎたのではないかなぁ、というところ。
意図するところや、問題提起するところはよく分かるんですが、やはり過程を複雑にし過ぎた、冒頭で言ったように登場人物の立ち位置を捻りすぎて、シンプルに落ちてこない、そういう感じがしました。

これは最近では交響詩篇エウレカセブンの第49話や、ちょっと前だとハリーポッターと炎のゴブレット以降のハリーポッターシリーズでも感じた、なんと言うか意図するところは理解できるんだけど、複雑にした結果、ダブついてしまった、ゆえにストレートに伝わりづらく、ああ、もったいない!!という感じになってるんじゃないかなぁ。

ほんと、良い意味でもったいない、そんな感じ。

そういう意味でいくと、ラストでTV番組の中で評論家が議論しているところに司会のアナウンサーがぶちきれるシーン、こういうのはストレートである意味福井さんらしくて素敵だな、と思います。
やっぱり最後は、大事なのは人の心、どう考えていくのか、どう感じていくのか、それを大事にしないとね、みたいな。


内容や、登場人物たちの主義・主張について詳細に感想を書くということはしないつもりですが、やっぱりこれは僕らが何かを考える「きっかけ」としては丁度良いのではないかと思います。

この作品を読んでどう感じるかは個人の判断ですし、色んな意見もあると思うのです。
ミステリー作品として楽しんでも良しだと思います。

ただ、何で今ってこうなのかな?とか、何で今、こう言われているのかな?とか、このままこうなっちゃったらどうなるのかな?と、ちょっと考える「きっかけ」になれば、それが作者の意図しているところなのではないかな、と思います。

個人的にはこの作品を福井晴敏作品の入門としてはある意味お勧めしないんですが(笑)、もし福井作品にご興味がある方がいらっしゃれば、まず『亡国のイージス』を読んで次に『6ステイン』を読んでから読まれると丁度良いかもしれません。
というか、より楽しめるんじゃないかと思います。
#プラスして『終戦のローレライ』も読んでおくと良いかも。
#いや、ほんとは順番通り読むのが良いと思うんですけど(ってついでにがどんどん増えてるよ!!)。

Op.ローズダスト(上)


Op.ローズダスト(下)



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
読み終わりましたね! (和井八凪)
2006-05-06 23:44:56
やー、燕。さんの読了を今か今かとまっていましたわよ。

っていうか燕。さんの考察とか、ちゃんとした理論的な感想があるから♪見たぁな感じであんまり理論的感想うちでは書かんかったんですが(あかんやん)。

ほんとう、Op.RDは今までの福井作品の集大成であり、今までの作品を読んだファンへのある種ボーナストラック的な感じがありますです。

思想的にはどうかというと私は骨の髄から大阪人なもんで全てに賛同は出来ないけど、アナウンサーや古森さんや羽住さんや、青びょうたんや(笑)、そういう人たちの立ち上がっていく姿はぞくぞくしたですよー。

しかし、燕。さんの仰る見づらさ(問題提起やそのキャラクターの立ち位置)なんかは映像化への伏線かと睨んでるんですけどねふふふふふ。
読むの早!! (燕。(管理人))
2006-05-12 01:56:50
>和井八凪さんへ

ようやく読み終わりました~。結構時間がかかってしまいましたよ。

通勤時間だけだとやっぱり時間が足りないっすね~。

#つか、和井さん、読むの速すぎ~!!

うにゃ、うにゃ、うちの感想なんて論理的でも何でもないっすよ~。

そんなこと言ったら方々から怒られちゃいます(笑)。

今回の福井さんについては、捻りすぎてしまったかなぁ、という感じがするんですよね。

ボーナストラック的というのは上手い表現で、ファンには嬉しいけれども、これが第1作として読む人にはかなり辛いかな、とも思いますね。ゆえにボーナストラックなのかも(本編があって始めてボーナストラックも生きる、みたいな)。

思想的な部分で言えば、大阪人だから、というのも多分無くて、賛同できない、こう思う、が出てくればそれがその人にとっての正解、もしくはそこから考え始めるってのが正解なのかなって思いますね。

もちろん、そういう意味で作中人物たちが自分の意志を表明して動き始めるところはぞくぞくなんですよね。

でもこれ、映像化すると余計本筋の意味が伝わらないのでは?と思っちゃうのが最近の福井作品の映画化の評判を聞いて思ったりするところですね。

#お台場崩壊のプロセスは映像化のし甲斐があると思いますけどね(笑)。

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