京都平和市民連合(平和塾)

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【紹介】  2/5 電磁波測定調査の結果 米軍基地建設を憂う宇川有志の会

2017-02-27 08:57:11 | 平和・環境・人権 
宇川およびその周辺での電磁波計測調査の結果

米軍基地建設を憂う宇川有志の会

大野光明
同志社大学グローバル・スタディーズ研究科研究員
立命館大学生存学研究センター客員研究員

1.調査の概要

 米軍経ヶ岬通信所への外部電源の引き入れ計画にともない、京都府京丹後市丹後町宇川地区において33000ボルトの電線の設置が行われている(現時点で送電が開始されているか否かについては分からない。2017年2月6日及び2月16日に京都府総務調整課に問い合わせたが不明とのことであった)。これにともない、同地区での電磁波環境と生活環境に変化が予想される。この変化に不安を感じた同地区住民からの要請を受け、送電線のもたらす極低周波の電磁波調査を行ない、現状を確認することとした。また、あわせて、宇川地区に設置された33000ボルトの電線の経路についても確認した。

2.調査方法

(1)調査日時: 2017年2月5日(日)午前10時〜午後4時
(2)天候: 午前10時から11時頃は小雨、11時以降は曇り。弱風。
(3)計測器: kaise社 Triaxial Elf Magnetic Field Meter SK-8301
(4)調査者: 調査者1名(大野)に加え、立ち会い同行者1名(米軍基地建設憂う宇川有志の会)による計2名
(5)地上1m地点で計測した。

3.調査結果

(1)計測結果詳細は別紙1のとおり。



(2)33000ボルト電線のルートについては別紙2のとおり。


(3)米軍経ヶ岬通信所へと至ろうとしている(現在、尾和の東側まで到達している)33000ボルトの電線は、宇川地区内で2つのルートを通っている。一つは徳光から矢畑(依遅ケ尾山)を越えて、宇川の遠下、中野、井谷から国営農場を経て縦貫林道へ上がっていくルート、もう一つは碇高原から下り、縦貫林道脇の碇配電塔(変電設備。ここで前者のルートと合流する)〜上野〜久僧〜中浜〜尾和の集落のなかを通り、新設された経ヶ岬配電塔(尾和区東)に至るルートである。住民への聞き取り調査結果をふまえれば、米軍基地への外部電源引き入れにともない昨年から新設されている33000ボルトの電線は、後者のルートである(別紙2オレンジ色のルート)。よって、宇川地区内の中野や平においては33000ボルトの電線はなく、従来の6600ボルトの電線のみと考えられる。同じ宇川地区内においても集落によって送電線の種類が異なっており、電磁波環境の違いが今後さらに生まれてくることが予想される。

(4)電磁波の計測の結果、33000ボルトの電線下では、6600ボルト電線のみの場所よりも、いずれも高い値が計測された。たとえば、遠下(11番)で2.6〜2.7mG(ミリガウス)、碇配電塔と上野のあいだ(21番)で5.6〜5.7mG、上野の西の住宅前(31番)で1.8〜1.9mG、上野の宇川診療所前(38番)で1.6〜1.7mG、上野の住宅前(国道沿い)で1.7mG、中浜のカーブ地点(45番)で1.2〜1.3mGなどである。一方、33000ボルトの電線が設置されていない場所では、たとえば、平(29番)の6600ボルト電線下で0.0〜0.1mG、久僧海水浴場駐車場(39番)で0.0〜0.1mG、中浜漁港(46番)で0.0mGなど、いずれも低い値であった。つまり、33000ボルトと6600ボルトの電線2つが重なっている(もしくは、両者が並行して通っている)民家が面する国道沿いにおいて、高い値が測定されたわけである。
 関西電力は33000ボルト電線に送電を開始しているのかを住民に明らかにしていない。そのため、宇川地区内の電磁波計測値の違いが、33000ボルトの送電の有無によるのかは明らかではない。もしも送電が開始されていないのであれば、送電後にはさらに高い数値が計測されることが予想される。逆に、送電が開始されているのであれば、事前の住民説明もなくなされており、責任ある対応とはいえない(前述のとおり米軍基地問題の住民窓口である京都府総務調整課にも連絡がいっていない)。また、米軍基地への電力供給が始まれば、さらに電磁波は強くなることは容易に想像できる。

(5)33000ボルトの電線は宇川では住宅地のなか、すなわち、国道178号線沿いの住宅の軒先数メートル(地上から6〜10メートルの高さ)に設置されている。2階建て以上の住宅や、1階がかさ上げされた住宅では、電線との距離はさらに近くなり、計測したところ高い数値が明確となった。たとえば、上野の宇川小学校正面の木造住宅(32・33番)2階では、窓の外で3.0〜3.1mG、窓を閉めた室内では2.6〜2.7mGであった。同様の環境にある住宅は宇川地区内に多く存在し、なかには、子どもも多く利用する公民館も含まれる(16番)。住民のなかには心臓のペースメーカーを使用している方もおられる。住宅内の送電前の徹底した電磁波調査と生活環境の変化予測を調査する必要がある。

(6)米軍への外部電源引き入れとは背景が異なるが、33000ボルトおよび6600ボルトの電線が子どもも触れられる場所で、ほぼむき出しの形で設置されている場所も確認した。具体的には、間人の三宅橋の西詰め・東詰め(5番、6番)では、簡易な管で覆われた地下におりる33000ボルトの電線が歩道上にむき出しとなり、最大120mGであった。警告版や注意書きはなく、小学生の通学路であり、通行者が簡単に触れることができる状態であった。また、丹後庁舎市民局駐車場南側でも、地下におりる管で覆われた6600ボルト電線がむき出しとなっている(「注意高圧ケーブル」の赤いステッカーははられているが、子どもにはその意味は理解できないと思われる)。測定値は7.3mG〜10mGであった。

4.住環境への影響を緩和させるための必要な対応の提言

 これまでみてきた33000ボルトの電線の設置は、米軍、防衛省、関西電力が決め、京丹後市と京都府が追認する形で進められたものである。住民は米軍基地からの騒音問題の解決を求めてきた。しかし、誰も電磁波による生活や健康への被害を望んでいない。電線設置に伴う住環境への悪影響をなくす措置を、米軍、防衛省、関西電力、そして関連自治体は責任をもって取るべきである。
 疫学研究の成果をふまえれば、現時点の宇川の電磁波環境のもとで、住民が電磁波を長期にわたり曝されることは、健康被害につながると考えられる。
 極低周波の2〜4mG以上の電磁波を日常的に受けると、小児白血病のリスクが2〜3倍にあがるとの疫学調査論文が多く発表されている。WHOの関連機関である国際がん研究機関(IARC)の『静的電磁界と超低周波電磁界』(モノグラフVol.80、2001年)によれば超低周波の電界と磁界は「人間にとって発がん性があるかもしれない」と評価されている。また、WHO(世界保健機関)による『電磁界と公衆衛生』(ファクトシートNo.322、2007年6月)によれば、居住環境で3mG〜4mGをこえる電磁波の暴露に関連し小児白血病が倍増することが確認されている。さらに、文部科学省全国疫学調査「生活環境中電磁界による小児の健康リスク評価に関する研究」では、1mG未満を1とした場合、4mG以上でのオッズ比(相対危険度)は小児白血病で2.63倍、急性リンパ性白血病で4.72倍、脳腫瘍で10.6倍との結果が出ている。
 電磁波被爆は、皮膚のかゆみや痛み、目の乾きと炎症、集中力の欠如、めまい、鼻やのどや副鼻腔などの腫れ、頭痛、吐き気、疲労感、歯や顎の痛み、筋肉痛や関節痛、腹部への圧迫感や痛み、不整脈などの症状の要因にもなるとの研究もある。電磁波過敏症への配慮も必要である。
 宇川では各地に設置された携帯電話基地局、自衛隊経ヶ岬分屯基地及び岳山に設置されている軍事レーダー、そして米軍基地のXバンドレーダーや通信施設によって、さまざまな周波数の電磁波に曝されている。これらに加えて、33000ボルトの送電線の稼働が始まることは大きな影響を及ぼすと想定できる。
 そのため、宇川での新たな電線の設置に関して、米軍、防衛省、京都府、京丹後市、関西電力に対し、次のような対応を強く求める。

(1)設置された電線での送電の中止。住宅地を外した形での電線の設置しなおし: 住宅地を縫うようにしての電線設置は、新たな健康被害リスクをもたらす。住民にとっては住環境の悪化以外のなにものでもない。住宅密集地や国道沿いなどを避け、新たな場所に電線を設置しなおすべきである。それが実現されるまで、設置済みの電線による送電は中止すべきである。住民の「安心・安全」を確保することを「条件」に米軍基地設置に「協力」を表明した経緯のある京都府、京丹後市においては、その方針に基づき、既に設置済みの33000ボルト電線による送電を認めてはならない。

(2)現在の宇川の電磁波環境がいかなるものであるのか、どのような健康被害が出ているのか、また、将来にわたって想定されるのかについて、科学的な研究と調査を行い、住民に説明すること: これまで関西電力や京丹後市は「京丹後市内の別の場所にも33000ボルトの送電線は通っており、宇川でも悪影響はない」といった説明を、宇川の区長らに対し行なってきた。「悪影響はない」とする説明には客観的・科学的根拠がない。既に33000ボルトが通っているのであれば、どこに、どのような形で通っており、運用されているのかを示し、科学的な疫学調査に基づき電線周辺の住民の健康状態を調べなければ、「安全」も「安心」も保障できない。よって、宇川以外の地域の既設電線に関する科学的調査を行なうとともに、宇川の現在の電磁波環境を客観的に明らかにする作業を求める。その上で、33000ボルト電線を使った電力供給がどのような住環境等の変化をもたらすのかの予測を科学的に行ない、住民に対し説明すべきである。

(3)すでに健康被害リスクが認められるため、電磁波シールド材の無償提供などの住民保護制度を早急に整備すること: Xバンドレーダー運用以降、耳鳴りや頭痛、不眠、母乳が出なくなるなどの体調不良を訴える住民が既に出ている。電磁波に伴う健康被害を緩和するため、電磁波シールド材の無償提供などの住民保護措置が早急に整備されるべきである。防衛省、京都府、京丹後市は保護制度のための十分な予算と簡易な申請制度を早急に整備するべきである。

(4)電磁波計測器の購入と住民への貸与制度を早急に整備すること: 市民にとって電磁波は目に見えないがゆえに、実態がわからず、そのことが精神的ストレスや不安をもたらす。米軍基地からの騒音が問題化した際、騒音測定器を区長らに貸与することが行われたように、電磁波計測器を市民に貸与する制度を早急に設けることを求めたい。低周波計測器だけでなく、軍事レーダーや携帯電話基地局などからの電磁波状況を調べられるよう、高周波計測器やXバンド帯を測定できる計測器も整備し、市民がいつでも無料で使えるようにするべきである。

以上

本件問い合わせ先 永井友昭(米軍基地建設を憂う宇川有志の会) 090−3272−3712

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