ピクサー=Pixarのコンテ作家が語る物語を作るうえでの22の法則

映像制作一般 / 2012年06月14日 09時44分50秒

これはなかなかこういう形でまとまって読むことはできない。Emma Coatsさん（@lawnrocket）というPixarのStoryboard Artist（絵コンテ作家）さんの素晴らしい記事。彼女がずいぶん昔にツイートされていたものだが、最近向こうの映像業界界隈で再発見されてものすごい勢いで拡散されていたのを見て、ご本人が再掲された、物語を作るうえで彼女が考え抜いたという法則。PixarのStorytellingのうまさの一端がこの２２の秘訣で分かる！いやでもこれ読んだからすぐに物語を作るのがうまくなる、とかそういうことではもちろんないのだが、とにかくこうやって現場でぶち当たって考えて来られたことを明かしてくださることに感謝しつつ日本語にしてみた。

Emmaさんが解説として書かれたツイートもあるやつは一緒に訳します。#storybasicsで探すと出てきます。ご本人のブログはこちら。

※追記(2013.4.22)

EmmaさんはすでにPixarは退職されてフリーランスのディレクター/脚本家として活躍されています。

#1: You admire a character for trying more than for their successes.

　成功することより、挑戦するキャラクターに、敬意を見出すこと。

#2: You gotta keep in mind what's interesting to you as an audience, not what's fun to do as a writer. They can be v. different.

　観客としても見たいものを常に念頭に置くべき。それは書き手として書いて楽しいこととは時として反する。

　＜以下ツイートより補足＞

　Refusing to give up is something we don't get to do a lot in real life, so it's cathartic to see a character do it. Stay down, Luke!

　諦めることを拒否することは現実の生活ではあまりできないこと。だからキャラクターにそれをさせるのはカタルシスがある！そうだろルーク！

　What do you guys like to see characters do that you don't get to do in real life?

　自分が現実でできなかったことで、どんなことを自分が創造するキャラにさせたい？

#3: Trying for theme is important, but you won't see what the story is actually about til you're at the end of it. Now rewrite.

　テーマを追いかけるのは重要。だけどそのテーマは、物語を書き終えるまで分からないもの。だからとにかく終わりまで書いて、書き直せ！

　＜以下ツイートより補足＞

　You can build all your pieces so they examine and support your theme, but then just show what happens! Don't beat it to death. Trust it.

　とにかくすべてのピースを積み重ねた上でテーマを検証すること。それまではとにかく何が起こるか見守るべき！テーマがどうとかって考えすぎて物語を殺すな！信じろ！

#4: Once upon a time there was ___. Every day, ___. One day ___. Because of that, ___. Because of that, ___. Until finally ___.

　昔むかし、いつか___. 　毎日___. 　ある日___. 　こういうことがあったから___. 　そしてついに___.

　＜以下ツイートより補足＞

　That there is super story basics. Try it out. It works.

　こういう超ベーシックな語り口。試してみて。有効だから。

#5: Simplify. Focus. Combine characters. Hop over detours. You'll feel like you're losing valuable stuff but it sets you free.

　簡潔に。集中して。いろんなキャラがいたらまとめる。回りくどい話は飛ばす。価値あるものを捨ててる気がしても捨てることはあなたを自由にしているんだから。

#6: What is your character good at, comfortable with? Throw the polar opposite at them. Challenge them. How do they deal?

　あなたのキャラクターは何が得意？どんなことに安らぎを感じている？その反対を彼らに投げかけよう。キャラに挑戦する。あなたのキャラはその壁にどう立ち向かう？

#7: Come up with your ending before you figure out your middle. Seriously. Endings are hard, get yours working up front.

　物語の途中の前にまず終わりを考える。まぢで！エンディングは難しい！！とにかく物語の終わり方に一番努力すべし。

#8: Finish your story, let go even if it's not perfect. In an ideal world you have both, but move on. Do better next time.

　とにかく書き終えること。完璧でなくてもただ終わりまで書く。理想の世界であれば、その物語は完璧にできるかもしれないけど、とにかく次へ。次はもっと良い物語が書ける。

#9: When you're stuck, make a list of what WOULDN'T happen next. Lots of times the material to get you unstuck will show up.

　　もし行き詰ったら、「次に絶対起こらない」と思うことのリストを作る。たいていその中から行き詰まったことを解消してくれる材料が出てくるはず。

#10: Pull apart the stories you like. What you like in them is a part of you; you've got to recognize it before you can use it.

　　あなたが好きな物語から離れよう。好きなことはあなたの一部。それを使う前にそのことを認識すべき。

#11: Putting it on paper lets you start fixing it. If it stays in your head, a perfect idea, you'll never share it with anyone.

　　とにかくまず紙に書く。それが考えのスタート。頭にある限りはそれがたとえ完璧なアイデアでも、誰とも共有することはできない。

#12: Discount the 1st thing that comes to mind. And the 2nd, 3rd, 4th, 5th – get the obvious out of the way. Surprise yourself.

　　１つめに思いついたことは忘れる。２つめ、３つめ、４つめ、５つめ、、、、誰もが思いつきそうなことはどこかへうっちゃること。自分自身を驚かせよう！

#13: Give your characters opinions. Passive/malleable might seem likable to you as you write, but it's poison to the audience.

　　キャラクターに主張をさせる。消極的で受動的なキャラのほうが書きやすいかもしれない。でも、その主張こそが見る人に立ち位置を示すことができる。

#14: Why must you tell THIS story? What's the belief burning within you that your story feeds off of? That's the heart of it.

　　なぜこの物語を伝えないといけないのか？どんな燃えるような信念をもってその物語を書いているか？それが根幹だ。

#15: If you were your character, in this situation, how would you feel? Honesty lends credibility to unbelievable situations.

　　もし自分がそのキャラクターの立場にいたらどう感じるか？正直さこそが、非現実的な物語に信憑性をもたらしてくれる。

#16: What are the stakes? Give us reason to root for the character. What happens if they don't succeed? Stack the odds against.

　　主人公にとって何が賭けなのか？もし失敗したら何が起こるのか？その賭けの難しさ、オッズを示すこと。

#17: No work is ever wasted. If it's not working, let go and move on - it'll come back around to be useful later.

　　あらゆる作業は無駄にはならない。もしその作業がどうしてもうまくいかないなら、それは今は止めておいて次に進もう。その作業にかけた努力は必ずあとで返ってくるから。

#18: You have to know yourself: the difference between doing your best & fussing. Story is testing, not refining.

　　自分自身を知ること。ベストの状況と悩んでいるときの違いを知る。物語とは自分自身を試すことであり、自分自身に磨きをかけることではない。

#19: Coincidences to get characters into trouble are great; coincidences to get them out of it are cheating.

　偶然の結果、キャラクターがトラブルに陥るのは素晴らしい。でも偶然の結果、そのトラブルから抜け出せるのは、ごまかしだ。

#20: Exercise: take the building blocks of a movie you dislike. How d'you rearrange them into what you DO like?

物語作りの練習。あなたが嫌いな映画の構成の一部を取り出して、どう変えればあなたがその映画を好きになれるか考えてみる。

#21: You gotta identify with your situation/characters, can't just write ‘cool'. What would make YOU act that way?

　　クールに書こうと思わないで、あなた自身の状況とキャラクターを同一視しなければならない。さああなたならこの状況でどうする？

#22: What's the essence of your story? Most economical telling of it? If you know that, you can build out from there.

　　なにがあなたの物語の要素なのか？どうすれば一番簡潔にその要素を伝えられるか？もしそれが分かっているならそこからはじめよう！

いかがでしょう？とにかく最後まで書け！というのはよく言うことだけど、なかなか途中で悩むと最後までたどり着けないもの。でも、物語のテーマも最後まで書かないと分からないものだし、とにかくエンディングが一番難しいから最後まで書けと。。やっぱり終わり方はそうとう考え抜いてるんだなあ。。

この記事もEmmaさんより翻訳の許可をいただきました。良かった。Thank you for your permission!　翻訳に間違いがあったらぜひご指摘ください。

Emmaさんのこのページには素晴らしいスケッチやコンテ絵がいっぱいあるのでこちらも必見！！！#9についての解説も改めて書いていらっしゃいます。ツイートも示唆に富んでいますのでぜひ！@lawnrocket