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街角の映像制作下請け零細業者のブログ




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もうすっかりテープは使わなくなって2年あまり。テレビの仕事以外でテープを見ることはほとんどなくなった。ファイルベースの制作は便利であり安くもあり、メカのトラブルもなく、良いことずくめである。が、ファイルしか残らないワークフローは超危険であることも認識しなければならない。そして、「そんなことは重々承知だよ!」と思っていても、それでも油断は必ずある。なので自分自身の戒めとしてこのエントリに残しておく。

映像制作において、たとえテープであっても収録素材の取り扱いほど慎重になるものはない。なんせロケ1日に数十万円数百万円かかるわけで、収録素材とは「絶対に代えのきかない財産」だからだ。とにかくバックアップを取ること、しかも2重に取ること、などはどの現場でも行われていることだろう。テープ時代も収録後に素材のコピーを取ることは常識だった。データの場合はなおさらみんな注意をしているだろう。が、どれだけ注意してもヒューマンエラーは起こる。以下に書くことは僕が経験から実践していること。僕は相当注意して取り扱ってきたつもりなのだが、それでもデータのトラブルはどうしても起こる。そしてトラブルが起きたとき、ファイルベースは致命的になりやすい。

1)バックアップを取ろうと何をしようと元データは消すな。
CFカードやSDカードは、いったんHDDにコピーを取ったら消して使いまわしている方がほとんどだろう。が、HDDほど壊れやすいメディアはこの世にはない。せめてそのプロジェクトが終わるまで、元のカードから収録素材を消さない、というのは鉄則中の鉄則として徹底させるべき。たとえ2台以上のHDDにコピーを取っても、、、だ。

それはどういうことかというと、カードをテープのように扱うに等しい。ウチは収録素材はCFカードから1年は消さない。と決めた。。。

オリジナルの元データは消さない、という習慣をつけることによって、コピーのし忘れ、HDDの故障、いざ編集しようと思ったらデータが壊れてた、、、などなどのトラブルが回避できる。そしてなんといっても収録メディアに必ずデータは残っているという安心感は何にも代えがたい。HDDなんて何が起きるか分からんです、ほんと。

なんせベーカムテープなんて30分で3500円もしたことを考えると32GBのCFカードが5~6千円で買えるのだ。プロジェクトが終わるまでおいておくくらい安いもんだ。問題はP2やSxSなどの高価なメディアの場合だけど、それでもプロジェクトが終わるまでは撮ったまま残しておくべきだと僕は強調しておきたい。「何のためのファイルベースだ」と仰る人もいるかもしれないが、それくらいの予算は確保するべきだ。


1年は収録素材を撮ったまま保管することにした。

2)最も事件が起こりやすいのが仕事の引き継ぎ時。現場でカードのフォーマットはするな。
特に現場に来るカメラマンさんや録音部さんに徹底させること。

「絶対に現場でフォーマットするな!」

現場は落ち着かないし混乱しているし、人も多いし、ただでさえ不慮の事故は起こりやすい。

これはデータ復旧屋さんから聞いたのだが、機材を扱う人が変わったときに予期せぬカードのフォーマットをされて、駆け込んでくる人がけっこう多いのだそうな。「あ~、仕事の引継ぎのときの伝達ミスですね~。よくありますよ~。」とは復旧屋さんの言葉。

つまり、例えばロケが何日も続く場合、前日にほんの少ししか収録していないCFカードがあったとする。まだたっぷり容量が余ってるので、制作さんがそのカードの続きで撮ろうとしていたら、2日目は別のカメラマンが来て、連絡が不行き届き、もしくはカメラマンが勘違いして、カードをフォーマットしちゃった。。。とか。

もうこれは言った言わないのケンカになること間違いなし!!

1日の終わりには必ず素材のバックアップを取るのは当り前だけど、大量に回ってたり毎日夜遅くまでロケしたりしているとバックアップも間に合わないことだってある。収録メディアが何枚もあったらうっかりバックアップし忘れだってある。

なので、このような「間違ってフォーマット」事件を起こさないためには「現場ではフォーマットしない」というルールを徹底するしかない。もし仮に現場でメディアが足りなくなった場合はファイルを1つ1つ「これはいらない」と確認しながら消す、という方法で対処すべき。


現場でのフォーマットはトラブルの素。フォーマットしなければデータは消えない!!

万が一フォーマットしてしまったときのアドバイスは、とにかくフォーマットしてもデータは確実に残っているので、フォーマットした上に何も撮らずに復旧屋さんに持って行けばたいていは復旧してもらえる。ただし「上書きしない」ことが前提だが。。

僕は音でこの失敗をした。。音は数GBのSDカードで何十時間も録音できるので、プロジェクトをまたいで使うし、基本フォーマットしないんですよ。。。あ~今思い出しても悔やまれる。。。僕の現場に来たカメラマンや録音部さん、、、僕のカードは許可なくフォーマットしないでください(泣

3)回しただけでは撮れてない。「止めたら撮れてる」を肝に銘じろ!
テープと違って恐ろしいのは、ファイルベースは収録の途中でバッテリが落ちるとそのデータは記録されない。収録機材によってはバッテリが落ちる直前にメディアに書き込んでから落ちてくれるものもあるかもしれないが、少なくとも5Dはバッテリが落ちたら、回っていても撮れてない。

これ、結構盲点だ。テープは回せば撮れてる。一方、ファイルベース収録はファイルを確定させるまで記録されたことにならないことを体に染み込ませよう。5Dは幸か不幸か連続12分しか撮れないので12分ごとにファイルを確定していくが、僕はそれでも怖いので5分ごとくらいにファイルを確定していくことにしている。やり直せる現場であればバッテリが落ちてしまったらやり直せばいいのだが、1回こっきりの結婚式やライヴの撮影とかだと、バッテリが途中で落ちたら終了~。。この失敗はたまらん。特に中華バッテリや、古いバッテリは表示より早く落ちる傾向にあるので要注意だ。

とにかく早め早めにファイルを確定させる。「回したら撮れてる」んじゃなくて「止めたら撮れてる」だからね!!!勘違いしないように。そして、こまごまと止めることになるので、回し忘れにも気を付けよう!

4)納品が終わっても収録素材だけは必ずバックアップ
映画やCMなら完パケがあればいいのかもしれないが、VPだとなかなかそうもいかない。何年も経ってから「あのときの素材を使って」と言われることが多々ある。そんなとき対応できるかできないかが、制作会社としてのサービスの分かれ目だったりする。

この点テープは楽だった。いや管理はメンドクサイんだけど、テープそのものを紛失しないかぎり絶対に残るから。データは「消える」。この事実は実際に消えてしまってから痛感する。「納品が終わったからまいっか」となりがちなのだが、ほんと「あっ!」って瞬間に収録素材からすべてなくなることの恐ろしさは、半端ない。ファイルベースは消えたら何も残らないのですよ。これ、かなり絶望的な気分になる。収録素材が残っていればどうにかして復旧できるが、ないとどうしようもない。一巻の終わり。

なので、とにかく収録素材はHDD以外のメディアに保存しておくこと。これが結構めんどくさいことなので、特に納品が終わってるとなかなかやらないんだけど、やっておくべしベシベシベシ!!!BDは安くていい選択だと思う。面倒がらずにコピーを保存しておくことを強くお勧めする。

5)データ管理は金かかる!データ管理費という見積もり項目を作る
これはどういうことかというと、データ管理費をいただくことによって「責任感」が芽生えるという心理的効果に他ならない。そしてデータ管理にはお金がかかると認識してもらえる効果もある。逆に「データ管理費って何?こんなのいらないから安くして!」と先様から言われたら、納品後は堂々とデータを消せばいい。なにか言われたら「データ管理費をいただきませんでしたので」と丁寧に返事すればそれでOK。

データ管理費の内訳はHDD×2台分、収録用のメディア代、BD焼き代など数万円でいいと思う。SxSやP2はたいていみんなレンタルしてると思うけど、その場合は収録後のコピー作業費などの名目で大目に予算確保すべき。またロケ日数分だけしか借りないってことをせずに必ず+α何日か長めに借りておくとバックアップに焦らないのでいい。



以上。とにかく。。。テープからファイルベースへとワークフローが移行して、映像制作会社としてデータ管理に一層の注意を払う必要が出てきており、皆さんそうされていると思う。が、ほんとファイルベース収録のときにエラーが起きることの恐ろしさは、こればっかりは経験しないと本気で分からないので、注意しすぎるくらい注意してください。。頭では理解していても、、、、、

ちなみにデータ復旧費だけど、僕の経験上、2TBのHDDの復旧に40万円~100万円。15分程度の音素材の復旧に5万円。何百MBのドキュメントファイルに8000円。。。ミスしたらほんと金かかりまっせ。。(泣  この点を甘く見て安請け合いすると痛い目に合う。。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
僕も肝に銘じます! (TAKEYAMA)
2011-12-24 16:08:23
はじめまして、名古屋で映像制作してる者です。
かれこれ数年間、楽しく読ませてもらってます!
ファイルベースになって、この点は僕も毎回気を使っていますが、まだまだ足りないんだなーと実感しました。参考になります!
 
 
 
ぜひぜひ (3RD EYE(管理人))
2012-01-04 07:39:26
TAKEYAMAさん

テープより絶対いいんですけど、ミスやトラブルが起こった時に致命的になりやすい、そして「決して安くないんだ」ということを、ぜひ広めましょう。特に「安くできるよ~」って売ってる人には、、、危険です。。
 
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