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街角の映像制作下請け零細業者のブログ




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最近テレビやお店でフリー音源をよく聴くようになった。ほんとうに頻繁に聴く。知らない人が聴いてもなんてことないだろうけど、僕らのような映像業者はフリー音源と毎日接しているので、「あ、またこれ使ってる」「これ、オレのビデオで使った曲だ」ってことが良くあるのだ。それが、最近ではナショナルブランドの全国放送のCMでも使われてたりするから驚きだ。この頻度がどんどん増しているというのは不況のせいじゃないか、とつい思ってしまう。著作権が発生する音楽がどんどん売れなくなっている一因かもしれない。


フリー音源とは?


フリー音源といってもタダの音源という意味ではなく、著作権フリーの音源という意味で、ググってもらうと分かるが、今の世の中腐るほどの業者がこの著作権フリー音楽を作っていてネットに転がっている。DAWの進化のたまものと言える。チョイ前より格段にレベルは上がってきていて、3~4年前はMIDI丸出しのショボイ音楽しか見つけられなかったのだが、最近は生演奏に近いレベルの音も多い。ひょっとすると初音ミクのブレイクも影響しているのかもしれない。

このフリー音源というのは有名曲をMIDI化したものともまた違う。スーパーでよく安っぽいアレンジの有名曲がかかってたりするが、あれは著作権は発生するはず。

僕が作った曲のAcidのタイムライン。VPにオリジナル楽曲を作ると喜ばれる。


僕がテレビ制作をやっていた頃

テレビの場合は著作料はテレビ局が払う。だから制作会社は自由に音楽を使ってよかった。テレビ制作をやっていたころ、僕はAPだったので自分が担当していた番組で使用された楽曲を毎週リストにして局に提出する必要があった。曲名・アーティスト名・作曲者・作詞者などだ。面倒だったので曲名とアーティスト名しか書かなかった。そのうちそれすら面倒になって半年間溜め込んで、それが局Pにバレて殺されそうになった。

僕の頃は複写紙に手書きで書いたが今はもちろんパソコンでネットワーク化されているに違いない。それでも面倒なことには変わりないから、AP諸氏が命を削って毎週とか毎日とか作って提出しているのだろう。そのリストは最終的にはJASRACに渡って、著作権者に使用料が分配されるしくみになっているはず。詳しくは知らん。


CMの場合

CMの場合はテレビ局ではなくクライアントが払う。しくみは、1曲だけだからもっと単純だろうけど、使用料は1回コッキリのTV番組と違い莫大なものになるはず。新曲であれば宣伝効果が大きいためタイアップというやりかたもあり、むしろレコード会社側が頑張って営業をしたりするものだが、昔の曲だったりすると、著作者の了解を得るだけでも大変だ。以前、オリジナルを使わず完コピをしてCMに使うというやり方は卑怯だ、というエントリを書いたことがある。


フリー音源使用の理由は当然制作費がないから

さてさて、最近フリー音源を本当によく聴く。ナショナルブランドの全国放送15秒CMで聴いたときはビックリした。そんなに制作費ないのかよ!と。僕が作るCMはとーぜんそういう音ばっかりだけどまさかビッグバジェットのはずのCMで聴くとは。僕のビデオでも何度も音効さんに付けてもらったことがあるROLANDのアトリエビジョンの曲が、キー局の夕方のニュース番組でも使われているし、実はさっきコンビニでもアトリエビジョンの曲が流れていて「あ~時代はこんなところまで来たか」と思った。

要するに店舗で有線やCDをかけたりするのは費用に見合わないぞと。ニュース番組は無個性でなくてはならないので比較的フリー音源が使われる率が高いとはいえ、それでもテーマ曲くらいなんとかなんないの?と思うが、そんな不必要なところにお金使うくらいならフリー音源で済ませようということなのだろう。だけどナショナルブランドの一流CMでアトリエビジョンの曲が使われるとはねえ。。(リーブ21はよく使ってる)


著作権を主張すると誰も聴いてくれない時代

制作費が下がってきてお金がない、音楽の著作権料に払う予算がつかない。オリジナル楽曲も作れない。この不況だ。削るべきところは最初に削られる。 こうなると、著作者たちはあまり権利を主張しすぎるともう今後は聴いてもらう機会がなくなるんじゃないか?コンビニですら著作権フリー音源が流れている現状を、音楽作っている人たちはどう思うのだろう?

最近著作者側の動きが大きく報道されることがあり、先月には東芝が「私的録音録画補償金」を課金もせず払いもしなかった、というニュースがあった。著作者の権利を守る、というのは僕はいいことだと思うし、作った苦労は報われるべきだと思うけど、あまりワーワー言い過ぎるとみんな「じゃ、いいや。うるさい事言わない音楽を聴こう」ってなるんじゃないかな? (東芝の話は映像だけど)

実際、著作権フリー音源を作ってる業者の多いこと多いこと。今は昔では考えられないくらい安く機材やソフトを揃えられるし、ビジネスチャンスなのかもしれない。そして初音ミクを筆頭に有志が作っている音楽のクオリティの高いこと。著作権フリー音源は1曲3000円から5000円と、普通の楽曲の10倍くらいするけど、自由に使えることを考えると安いもんだ。そのうち値段もどんどん下がるだろう。

ついでにAP諸氏も使用楽曲のリストを作らなくて済むようになる。


フリー音源もまた音楽である

フリー音源だって、「いいなあコレ。かっこいい」という曲はいくらでもある。Royalty Free MusiciStockAudioにも、いい曲いっぱいあるんだよな。音楽作っている人たちは、お金を稼ぐことも大事だけど聴いてもらうことはもっと大事なんじゃないかな。僕の映像は常に買取だから著作権なんて主張したことない。むしろたくさんの人に作ったものを見て欲しいと思う。それでいいんじゃないの?という気はするけど。

ま、日本が不況を脱すれば、またフリー音源を使うのは僕だけになるのかもしれない。



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コメント
 
 
 
国内事情 (uchi)
2009-11-07 13:08:18
いつも拝見しております。
今回音楽について取り上げられたのでちょっとコメントさせて頂きます。
私も著作権フリー音楽を商売にしている身ですが国内における最大のネックはJASR●Cなのは言うまでもありません。
まともな作家が映像音楽等で活動しにくい状況ですよね。
詳しくは私のブログに書いてあるのでよければ見てください。
http://clrboss.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-6ad8.html

映像制作の立場から音楽についての見解を伺える機会が少ないので非常に勉強になります。
 
 
 
ネックかどうかは、、、 (3RD EYE(管理人))
2009-11-13 01:48:05
コメントありがとうございます。

著作権はきちんと守られるべきで、違法コピーはどんどん取り締まるべきだと僕は考えています。違法コピーが減ればソフトの値段は下がりますし、製作者が潤い文化が育つという良循環は明らかだと思います。だからJASRACにもきちんと仕事をしてもらわないといけないというのが僕の基本的なスタンスです。

が、一方でフェアユースまで縛るのか、という怒りもあります。デジタル放送になってからというもの不便極まりない経験をしていて、著作権ってウザイなあと心から思います。

その両面を考えた上、今回のエントリは今後有名アーティストたちの選択肢として「著作権を主張せずタダで配り、商用利用も含めてなんでもOKにしたほうが儲かるというビジネスモデルが近い将来できるのではないか」という予感を書いたのでした。

映像にもそれは当てはまるかもしれない、とひそかに考えています。
 
 
 
確かに・・ (uchi)
2009-11-13 11:46:57
そうですね。
実際にクエリエイティブコモンズなどのシステムは魅力だと思いますが、実際ビジネス的に効果があるのかはまだ未知数です。
JASR●Cについて書いたのは徴収に対して分配方法が不透明な事、個人の著作人格権までも介入してくる事が問題だと感じているためです。
自分の音楽を映像やメディアに使って欲しいと思っているアーティストは非常に多いと思いますが契約の縛りが発生しているのです。

CDをパソコンに取り込める技術が出来てしまった以上違法コピーも増え続けるでしょう。
日本の音楽業界の仕組み(レコード会社のシステムなど)が大きく変化しない限り音楽業界は崩壊が進む一方だと感じています。
 
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