徒然草紙

読書が大好きな行政書士の思索の日々

イェイツ詩集

2017-08-03 15:14:25 | 読書
 アイルランドの詩人であり劇作家でもあるイェイツの詩集を読みました。ケルト神話の世界から、現実社会に対する批判まで詩の主題は様々ですが、取り立てて興味を引くものはありませんでした。私の読み方が浅いだけなのかも知れません。ただ、イェイツの作品を読むにあたっては、アイルランドが辿ってきた歴史を知らないと、きちんとした理解をすることは難しいのではないかと思いました。
その中で、比較的わかりやすかったのは「再臨」と題された作品です。一部を抜粋してご紹介いたします。
 
<再臨>
 
 
すべてが解体し、中心は自らを保つことができず、
まったくの無秩序が解き放たれて世界を襲う。
血に混濁した潮が解き放たれ、いたるところで
無垢の典礼が水に呑まれる。
最良の者たちがあらゆる信念を見失い、最悪の者らは
強烈な情熱に満ち満ちている。
 
たしかに何かの啓示が迫っている。
たしかに<再臨>が近づいている。
 
 
ふたたび暗黒がすべてを閉す。だが、今、私は知った、
二千年つづいた石の眠りが
揺り籠にゆすられて眠りを乱され、悪夢にうなされたのを。
やっとおのれの生まれるべき時が来て、ベツレヘムへ向い
のっそりと歩みはじめたのはどんな野獣だ?
 
岩波文庫『イェイツ詩集』高松雄一編 より
 
 
 イェイツは、二千年ごとに新しい文明が生まれるという歴史循環説を信じていたそうです。新たな文明の主役となるのはキリストではなく、スフィンクスに似た野獣とのこと。
 
 この野獣というのは何だろう?考えてみますと少し不気味な感じがします。現代の社会を覆っている闇が目に見える形を取って現れたもの、ともいえるのではないかと思います。様々な問題を抱えながらも何とかここまできた社会が根底から覆ってしまうような不安を感じさせる詩です。