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トレチノイン - 副作用情報

2009年02月15日 | 美容医療


トレチノインは肌の若返りやニキビ(尋常性ざ瘡)の治療薬として広く用いられています。
私自身、美容医療科でトレチノイン0.05%のクリームをシミ(ハイドロキノンと併用で)やニキビ・ニキビ痕の治療や肌の若返り目的でよく処方しています。

トレチノインは胎児に対して催奇形性があるので、妊娠・授乳中の使用は局所塗布のみでも禁忌とされていますが、妊娠・授乳中を除けば全身への副作用は殆ど心配ないと考えられています。

全身への作用の面では、一部の白血病の治療に用いられるし、いくつかの癌に対する抗癌作用が実験で示されていて、むしろ「良い副作用」の方が期待できそうなくらいに思えます。
抗癌作用の点で、皮膚癌の予防にもなると期待されているくらいです。

ところが、トレチノイン0.1%クリームの局所療法で、高齢男性で死亡リスクが1.5倍くらいに上昇することが報告されました。
Topical tretinoin therapy and all-cause mortality.
Arch. Deramatol. 2009 Jan. 145:18-24.


具体的には、平均年齢71歳(95%が男性)の米国人を対象に、トレチノイン0.1%クリームを1日1~2回顔と耳に塗布、これを2~6年間継続するという内容の治験です。

皮膚癌の発生リスクがトレチノインで抑えられるかどうかを見るのが目的だったのですが、全く予想外に、トレチノイン塗布群で死亡率の増加(コントロール群で566人中76人が死亡、トレチノイン塗布群で565人中108人が死亡)が見られたために予定の半年前に治験が打ち切られました(死亡者が多いように感じるかもしれませんが、もともと『高齢』であることに留意して下さい)。

トレチノインの使用量(1日1回か2回か、通算で使用したチューブの本数など)と死亡率に相関関係は見られず、本当にトレチノインが『危険』なのか、今回の治験だけでは断定はできません(統計の『マジック』というのは結構あります)。
しかしながら、コトが生命に関することですし、注意を喚起すべきデータと言えるでしょう。

なお、トレチノインは何十年間も世界中で広く用いられていますが、これまで今回のように「死亡率が増加する」報告はありませんでした。
一つはっきり言えることは、世界中での高齢者へのトレチノインの処方は、殆どの場合は女性に対してされているのに対して、今回の治験では逆に大多数の治験参加者が男性だったこと。
少なくとも、トレチノイン0.1%クリームの高齢男性の長期使用は死亡リスクが増加する可能性があることを、医師と患者の双方がよく認識し(しっかりとインフォームド・コンセントして)、その上で患者がトレチノインを使いたいかどうか自身で判断すべきだといえるでしょう。



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