わたしの父親の病室が、最近、廊下を隔てた
反対側の病室に移動になった。
せっかく慣れた部屋を移動になって、気落ち
したのだが、いつのまにか慣れてしまった。
反対側の部屋になって、窓の外の風景が変わ
った。
前の部屋の外には、崖があって、その崖の斜
面を見て、過ごしていた。
今回の部屋は、湾がみえる。勿論、海が見える。
湾の反対側は、左手から右手に向かって山が
連なって、遠のいていく。
その中ほどに、K町の町並みが見えている。
その町が最初は、嫌いだったが、最近、好ま
しく思えてきている。
見るたびに、かの地に何かいいことがあり
そうな気分になるのは、不思議な気がする。
最近は、帰宅する夕方になると、いくらか
霞んでいるが、その遠のいく山並みに、夕日
が射し、金色がかって、ことのほか安堵感を
感じて心地よい。
若い頃は、このような時間帯は、寂寥感に苛
まれることが多かったが、どういうわけか、この
ような時間帯が好きになった。
至福の一時に思えたりして、なんか得した気
分になる。