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HTS支部「偽装みなし労働」裁判9.29判決について

2010年10月27日 11時39分49秒 | 添乗員・旅行業界

(9月29日、厚労省での判決についての記者会見)

東部労組HTS支部が「偽装みなし労働」の撤廃を求めて提起していた訴訟のうち、原告6名の「1・2陣併合訴訟」につき、9月29日、東京地裁民事19部村田裁判官は「不払い残業代の支払いを会社に命じながらも『偽装みなし労働』を容認する」という不当判決をくだしました。(概要はhttp://blog.goo.ne.jp/19681226_001/e/7e7392ff0868619fe0b27f15356a4f11

今回はこの判決についての分析を掲載いたします。

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1.判決の概要
■結論:「事業場外みなし労働が適用される」
・その理由
「添乗員は、基本的には、ツアー参加者に常に帯同し・・・ツアー参加者から相談・要望等があった場合には、何らかの対応をすることが求められている」(判決文より。以下同)が、「交通機関を利用した長距離の移動の際、適宜、解散(休憩)を挟むなどしている」「飛行機内において・・・睡眠をとっている時間がある」ことなどから、「全ての時間を労働時間として取り扱うのは相当ではなく、労働義務から解放されていると評価すべき時間も相当程度認められる」とし、この「非労働時間」を「逐一把握することは煩瑣」「添乗業務の内容・性質にそぐわない面も大きい」から、原告添乗員の労働は「『労働時間を算定し難いとき』に該当し・・・みなし制度が適用されるというべきである」
・判決が言う「非労働時間」はどの部分か<以下 1)~3)>
 1)「休憩時間」:①バス等による長距離移動の際にとられるトイレ休憩 ②ホテル到着後、解散して再集合するまでの間(「相当程度の間隔」)→①②の現実の時間算定困難により、「便宜上、1日1時間」を休憩時間とみなす
 2)海外における出発日・帰国日の移動(飛行機)および就寝時間帯が含まれる移動
 「参加者から要望があった場合には適宜対応することが求められてはいるが」①移動時間が相当長時間にわたっていること ②観光地等を訪れる以前の移動であって参加者に対する対応業務の頻度も高いとは解されない ③添乗員が自由に過ごすことができ、実質的には就労義務から解放されている時間も相当程度にわたっている 
から
 3)自由行動時間

■しかし一方で、会社側主張を退けている
・会社の主張
  1)「働いていない期間」=契約外の期間が休日。よって法的に休日は確保されているので休日労働はない
  2)8時~20時-休憩1時間=11時間が所定労働時間。よって3時間分の残業代は日当に含んで支払っていた
 これらの主張すべてにつき、退ける判断
■ではなぜ「不払い残業代」が発生するのか
・「みなし労働時間」が実態と大きく乖離しないよう、ツアー毎にみなし労働時間を裁判所が認定
・その上で、各日ごとの「みなし労働時間」と所定労働時間(8時間)との差(「非労働時間・休憩」は控除)が「不払い残業代」となる
■「みなし協定」について
・裁判所の評価
   1)請求期間後に締結されたものであり、本件には適用されない
  2)ツアーに応じて労働時間が異なる→みなし協定の存在及び内容は本件に影響しない
・ではどのような「みなし協定」が考えられるのか
  1)多数の添乗業務の実態を調査・検討→ツアー商品をいくつかに類型化→類型ごとに「みなし協定」によってみなし労働時間を定める
  2)労働実態を熟知している労働組合等が主体的に使用者と協議して労使協定を定める限り、単一のみなし時間を定めることも可能→このような協定は労使間で尊重されるべき

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このように、特に「非労働時間」の部分など、裁判所の判断は明らかに添乗員の実態とはかけ離れていると言えます。
控訴審で引き続き争っていきます。

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5 コメント

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Unknown (TC)
2010-10-31 02:21:48
エコノミーの座席で多少眠ったからといって、身体が痛くなりこそすれ疲れが取れるはずがないです。
いずれにせよ私は機内ではほとんど眠れません。いつも添乗疲れと飛行機疲れのダブルです。
TCはCクラスに乗って良いなら「機内で寝て休息を取っている」と言われてもかまいませんけど。
Unknown (o.m. フランス現地係員)
2010-10-31 18:55:57
海外で就労行為を行うにも関わらず、日本の労働法だけを基準に判決を下す事に問題があると思います。
フランスの現地係員がフランス国内 EC圏内の添乗をする際の労働協約をご紹介します。

食事であろうと 車内 機内 お客様と同じ場所にいる時間帯は全て実質労働時間であり、ガイド資格所持者でない者が添乗する場合はモニュメント内の案内は行わないし、国外添乗の場合は必ず現地係員が付く事になっており、業務を分担します。特別の事情で現地係員が手配できなかった場合のみ添乗員に超過勤務手当支払われる事によって現地係員業務を代行します。
週の連続労働日数は6日が限度、1日の労働時間は12時間が限度、週の労働時間は42時間が限度。
この業種でも日曜日が休日が原則。これらに則ってアイテナリーが作成されます。
添乗員の携帯電話番号は日本の旅行会社によってはツアー参加者に知らせる事を義務付けているところもありそれに従いますが、仏の労働法では会社が義務付ける事は違反です。
日本で作成されたツアーは、ツアー開始時にツアー参加者に添乗員の携帯電話番号を教える。機内座席番号、ホテルの部屋番号を客に控えさせる等、添乗員の所在を常に明確にするよう指示しています。
1) 解散後 自由行動中 トイレ休憩時間中も添乗員の所在が一定していない場合は電話で対応できる様にしている。休憩時間は本来保証しなければならないものでアイテナリー作製時に添乗員の休憩時間を保証してある事が明確にしてある上で言える事だと思います。
2)睡眠をとるのは人間誰しも当然の事で必要時間 安眠できるか否かの問題です。お客様の要望等必要時にはすぐに対応できる体制でいるのは仮眠です。安眠が保証されていて睡眠と言えます。
結論は、ツアー開始から終了まで「自由に解放された時間は全く無い。」フランスでは「みなし労働時間」は認められない。事業主は事業場外で働く従業員に付いても労働時間を管理しなければなりません。
労働時間の管理は「健康管理」でもあるからです。
フランス滞在中に万が一事故が起こったり、業務中に添乗員さん自身が病気になったりすれば、医者も警察も就労許可証提示や業務開始時間、休憩時間等を問われます。義務化されている労災保険適用判断の為です。
そういった不測の事態の可能性を無視して業務命令を出す旅行会社。海外での外国人就労法が全く念頭に無い司法判断。おかしいですよ。
ちょっと怖さを感じる判決です。 (ジャパンユニオン組合員 F)
2010-10-31 20:44:14
先日退職しましたが、旅行会社に約20年勤務し、
添乗業務も何回か経験しました。

この判決で、添乗員の労働における「非労働時間」の例示というか考え方は
残念ながらあまり実態を把握できていないように思います。

確かに添乗業務において「労働時間」を把握する事は煩雑な面はあるかと思います。

しかし、日程表や随時の連絡、事後の報告などで十分把握は可能だと思いますし、
それ以前にそもそも添乗員は旅行会社から結構がんじがらめに
管理されているように見えます。

添乗中に休憩時間なんてそんなに取れないです。

また、『「非労働時間」を「逐一把握する事が煩雑」』であれば、
「みなし労働」の適用ができるということなのでしょうか。

「みなし労働」の適用のハードルはもっと高くしないと、
添乗業務に限らず、雇用主の思うがままに運用され、

たとえば勤務時間中ちょっと気を抜いたりすることは誰にでもあると思うのですが、
こういった仕事に直接関係ない行為も過大に休憩時間にされ、
合法的な賃下げや労働強化の手段にされてしまうような気がします。

…というのは考えすぎでしょうか。

ちょっと怖さを感じる判決です。
Unknown (Unknown)
2010-11-01 16:31:30
私が経営者だっだら・・従業員には朝九時には出勤してもらい、五時まではいて貰うけど、給料は7時間分は支払わない。だって、電話もこれこれしかかかって来ていないし、お客さんもそんなに来なかったし、、とかいろいろ難癖をつける。これじゃやくざみたいだ。この判決も、それと一緒だし、これでいいなら、経営者の思うがまま。とても、裁判官の出した判決とは思えない。
Unknown (Unknown)
2010-11-02 01:56:52
私は、精算業務にだいたい五時間くらい、毎回かけてやっていますが・・これでも、二千円しか貰えないのに非常に不満です。表に見えないそんな業務が多すぎます。対客電話だって、かなりの時間かけてやっています。ときには、お客様から時間指定までされます。おかしいと思います。

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