ザイルと焚火と焼酎と

ザイルを使う登山にちょっぴり憧れ、山中に泊まると焚火を囲み、下山後は焼酎でほのかに酩酊。いい加減なのんびり登山の日記です

無性に焚火をしたくなって、山の中へ入りました―――1日目のデンデエロ

2013年10月20日 | ハイキング/奥秩父

2013/10/13  ブログのタイトルにもあるように、僕は焚火が大好きです。でも、ここのところ長い沢へは行っていませんから、沢中での焚火が実現していません。ですから、今回は強引に普通の山歩きですけれど焚火ができそうなコースを選んでみました。

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▲それは山梨県丹波山村のすぐ北側にある天平(でんでえろ)尾根から登るコースです。奥多摩駅から丹波行バスは9時台からしかありませんから、登山口の親川には10時過ぎに到着します。バス停から少し戻り、ここがその登山口。S子が前方を歩き始めています。10:19ころ。

この写真の左下には多摩川本流が流れています。呼び名は少しだけ訛って丹波(たば)川と変わってはいますけれど。丹波山村ではこの本流を親川と呼び、写真手前に出合を持つ後山川を子川と呼んでいたのだそうです。子川に架かる親川橋やバス停留所の名前にそんな地元の伝統が残っているのですね。

ところで、「でんでえろ」とは奇妙な地名です。昔からその名前ゆえにこの尾根をいつか歩いてみたいと考えていました。
調べてみると、一般的な説としては、その漢字からも想像できるように、尾根が幅広く平らなことからきているという説です。なにしろ、4000mもの尾根が続く間にわずか400mしか標高が上がらないのです。“でんでえろ”の“でん”は“段”の意、“でえろ”は“平ら”の訛った言い方だろうと言うのです。実際にこの尾根を歩いて見ると、なおさらその説が説得力を持って来ます。
もうひとつの説は、“蓮台野(れんだいの)”が訛ったのではないかと言う説。蓮台野とは埋葬の地や霊魂の集まる場所を意味するのだそうです。全国に広がっている地名らしく、ただ、地方に行けば発音が訛る傾向があるのだとか。丹波山集落の裏山に、逝きし人の魂が昇り、穏やかで平らな地に住み続けていると想像すると幸せな気持ちにもなります。

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▲登山口からジグザグの急登を登り、尾根に出たところで休憩。再スタートして間もなく、廃屋が現われます。旧高畑集落です。ここに住んでいた方は如何なる理由で住まいを後にせざるを得なかったのでしょうか? 辛い想いがあったのではないでしょうか? そんな想像をしながら見つめました。11:23ころ。

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▲遠い水場から引いて来ているホースの水は、今でも立派に使えるようです。11:26ころ。

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▲日当りの好い広場もあります。家が建っていたのでしょうか? それとも畑が広がっていたのでしょうか? 向かいの尾根は鴨沢から雲取山への登り尾根でしょう。11:26ころ。

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▲少し離れてもう一軒の家が建っていました。廃屋と呼ぶには気が引ける、まだ手直しすれば十分に住めそうな家です。窓ガラスも割れていませんし、玄関脇のストーブも煙突は新品のようで錆び付いていません。このストーブは家の外に設置されていますから、お風呂を沸かすためのストーブだったんでしょうか? 11:29ころ。

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▲続いて、三軒目の廃屋がありました。この家は完全に崩壊しています。11:35ころ。
この先、徒歩15分ほどの小沢に水場がありました。水はその沢から引いていたのでしょう?

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▲その水場の数分先には別の廃屋がありました。石垣だけで家は見当たりませんから、廃村と呼ぶべきでしょうか。これが旧後山集落なのでしょう? 11:56ころ。

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▲廃村通過後は、登山道が少しずつなだらかに両側も広がって来ました。広葉樹林になり、足元には大量のドングリの実や栗のイガが散見されるようになります。12:53ころ。

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▲突然、野球でも出来そうな広場が出現しました。13:00ころ。
今回、保之瀬天平(ほうのせでんでえろ)のピーク(と言ってもすごく平ららしい)には立ち寄りませんでした。登山道から外れているからです。しかし、この広場の方が特徴的ですから、こちらの方を保之瀬天平と呼んだ方がしっくりくる気もしますね。
鹿たちがここで遊んでいるからでしょうか、地面はぼこぼこになっています。苔が生えたりしていますから、雨が降ると湿地のような泥濘になるのかもしれません。

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▲今度は赤松の林が続くようになりました。あのキノコがないかと鼻をヒクヒクさせますが、応答なし。もしあるようなら、立入禁止になってしまいますよね。13:05ころ。

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▲登山道からはわずかに外れて、丹波天平の山頂がありました。といっても、この周辺でどこが一番高いかなどほとんど分かりません。それほど平らな場所が広がっています。13:41ころ。

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▲先ほどの赤松林に続いて、落葉松林が続くようになりましたから、ハナイグチを探しながら歩いていました。登山道脇で見つけたのがこれです。この先でも見つかりましたから、まあまあの収穫でした。13:54ころ。

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▲枯れた笹の残骸です。ここまでの写真にも森の下草がほとんど写っていません。本来の健康な森には下草や小灌木がたくさん育っているはずなのです。これが鹿害の実態。笹は餌の少ない冬季に鹿の貴重な餌となります。個体数の増加によって、笹もこんなになるまで食べ尽くされてしまったのです。14:40ころ。

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▲サヲウラ峠に到着しました。14:42ころ。
昭文社の地図にはサオラ峠とありますが、地元の標識はサヲウラで統一してありました。これも珍しい地名ですが、これはどうやら「竿裏峠」でほぼ決まりのようです。ウラと言うのは、奥多摩でも日向沢ノ峰(うら)と言うように沢を詰め上げた場所のこと。それがサヲウラ峠の場合は竹竿(棹)を立てたその先端を急角度で見上げるような上に見えるということで、丹波山村から見上げる位置にあるサヲウラ峠を呼ぶには最適なネーミングです。

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▲サヲウラ峠にはこんな祠が祀られていました。その由来を説明した札も立っています。神様(大山祇中川大人之命)になってしまわれた中川金治翁とはどんなに偉い人物だったのでしょう。14:45ころ。

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▲説明の立札に「富士山が一望できる景勝の地」とあったので、探してみると、ありました! 見えました! 富士山です! 理屈抜きに嬉しくなるのは何故でしょう? 14:47ころ。

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▲サヲウラ峠からは三條の湯へと山腹をトラバースしている登山道へ入ります。大きな木の多い素晴らしい森です。もちろん、相変わらず下草は繁茂していませんが・・・・ 15:00ころ。

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▲登山道から見上げる位置にあった樹に白いものが見えたので、確認しに這い上がって行ってみました。すると、このヤマブシタケ。両手で抱えるほどのサイズ。美しい! 15:04ころ。
名前も食べられるキノコだということも知っていましたが、ハナイグチもあることですし、採らないでおきました。帰宅後調べてみると、特に美味なキノコではないようですね。

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▲語りかけて来るような巨樹がときおり現われます。15:20ころ。

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▲辿り着いた今宵の宿がここ。沢沿いの平坦地です。16:17ころ。
20分ほど探し回った末に見つけた最高の場所!

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▲こんな風にタープを張ります。ひとつ前の写真と同じ位置から撮っていますが、タープを張るだけで泊まり場らしく一変しますよね。16:40ころ。
今回、テントではなくタープにしたのには理由があります。テントの場合、最低でも90㎝×180㎝のほぼ完全に平坦な地面が必要です。そこには頭だけのぞかせた石や太い木の根や尖った笹や木の切り株があってはいけません。でも、タープなら大丈夫。各自が寝やすい場所を見つけ出せばいいのです。最適な寝場所がお互いに1m離れた場所にあっても一向に構わないのです。

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▲日暮れが近かったので、急いで火を熾しました。17:51ころ。
火熾しの各段階の写真を撮る余裕はありませんでしたが、概ねこんな感じです。
まずは大きな木をそろえて地面に敷きます。次に、新聞紙を2、3枚柔らかく丸めて敷き、その上を出来るだけたくさんの乾いた細い木の枝で覆います。さらに鉛筆くらいの枝も載せておき、新聞紙に火をつけ、その火の熱が内部にこもるような要領で少しずつ上に燃料の枝を継ぎ足していくのです。そのうち、太い枝を載せ、それに火が付いたら、ほぼ安心。
今回は二人ですから小さめのビリーカンを持って来ました。写真下に写っている缶がそれ。焚火の脇に置いているだけで、中の水はすぐに沸点近くまで温度上昇します。

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▲甘いコーヒーを飲んだり、屋久島の芋焼酎「三岳」を飲み始めたりしていました。その後、ぼちぼち夕食(と言うよりも酒の肴)を作り始めます。作るといっても、今回も前回の谷川連峰同様、時短食品。フリーズドライやレトルト食品ですが・・・・
一番手は今日採集したハナイグチ料理。本当はみそ汁の具にするのが一番なのですが、今日はないので、スープパスタに混ぜます。17:58ころ。

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▲出来あがったハナイグチ入りスープパスタ。イグチのぬめりが美味! 18:19ころ。

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▲続いて登場のレトルト二品。近所のイトーヨーカ堂で購入しました。タケノコの方はこのままでも食べられるのですが、寒い山中ですから、少しだけ温めてからいただきました。18:43ころ。
タケノコの値段が118円だと見えていますね。

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▲続いて同じくイトーヨーカ堂の豚の角煮。山で食べるには贅沢品です。19:29ころ。

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▲夜の泊まり場はこんな感じ。僕はS子の左隣りに座っています。19:33ころ。

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▲焚火の火はいろんな姿を見せてくれます。見飽きることはありません。19:41ころ。

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▲山は寒くなりましたから、活動する虫も少なくなりました。火にもヘッドライトの灯りにも寄ってくる虫はあまりいません。そんな中、僕のズボンへとやって来たのはザトウムシ(座頭虫)。クモに似ていますが、クモではありません。19:51ころ。

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▲ちょっとだけ仲の良いところを見せておきましょう。二人の足の間にある蓋付き二重マグカップは優れもので、なかなか冷めません。焼酎のお湯割りが入っています。20:41ころ。

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▲焼酎を舐めながら、じっと熾き火を眺める。20:46ころ。

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▲S子がツエルトも張ってくれと言います。通常の張り方はしにくい場所なので、こんな感じに、ツエルトを被るだけといった風です。まあ、これだけでも狭い空間が密閉されますから暖かくはなるはず。21:33ころ。

夜中の1時台だったでしょうか、目が覚め、腰のあたりが痛いことに気付きました。どうやら、寝る前に触って地面の平ら具合を確認しただけでは分からなかった微妙な膨らみが腰付近にあるようです。それを避けようとすると、S子を押すことになり、S子がツエルトから押し出されかねません。僕もツエルトの中で寝ていますから、そこから出て、もっと寝心地の良い場所へ移動すればいいのでしょうが、今さら移るのが面倒なのと、ツエルトの中の暖かさがやっぱり有り難いのです。これからどんどん気温が下がって来るだろうと予測できるので、なおさらです。

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