行く雁 2015-05-02 22:01:44 | 童詩 ◇行く雁 雁行きて空の静まり地に及ぶ 消えたと思ったら、また現れて、 鳴き交わしていった雁の群れも、 今ではひっそりしてしまった。 するとあの賑やかな鳴き声は 別れの挨拶だったのか。 そうと分かっていれば、 手を振るなりして、見送ったのに。 犬のジョンと一緒になって 雁の群れが通る度に うるさい、うるさいと、 顔をしかめていたのだ。 ◇
鯉のぼり 2015-05-01 17:56:56 | 童詩 ◇鯉のぼり 鯉のぼり山の緑を並び切る 鯉のぼりが 風をいっぱいに受けて 水平に真っ直ぐ泳ぐと 背景の山の緑を切って進むよ 鯉のぼりが何匹も並んで 風を全身に浴び 緑の山を輪切りにして泳ぐんだ 山に赤い花が咲くのはその後さ そうすると山は赤と緑で 補色の調和を醸し 目もあやな輝きを放つだろう 日本の夜明けだ ◇
雀の水浴び 2015-05-01 16:03:18 | 童詩 ◇雀の水浴び 土浴びて次いで水浴び雀かな 水を浴びてから 土浴びではないよ 必ず土浴びが先さ 順序を間違えると 泥だらけの雀になってしまう 水は土の汚れを洗うためだよ 土には体についていた ダニやシラミが紛れ込んでいる ◇
郭公 2015-05-01 15:10:56 | 童詩 ◇郭公 人里に来た郭公は しきりに 何かを告げようとしているが 村はあいにく農繁期 耳をかしてはいられない そこでさすがの郭公も 唄の途中で飛び去った 揺れているのは電線と 鳥の残した思いのみ ◇
落葉 2015-04-29 00:17:51 | 童詩 ◇落葉 公園の片隅のベンチに 赤い落葉が一枚 櫨落葉 姿のない人が坐りに来る 落葉は気配で察知して 身を躱すと 葉擦れの音もなく 転がって行った 来た人よりも 軽い足取りで ◇
雨 2015-04-28 23:57:36 | 童詩 ◇雨 一粒の雨が傘に弾いて 百匹の蛙になった 百粒弾いて 一万匹の蛙になった 一万匹はすぐさま姿をくらまして それっきり雨は止んでしまったから 微かに地面の濡れたところが 彼らを探る唯一のよすが ◇
リス 2015-04-28 23:52:23 | 童詩 ◇リス このところよく現れて 墓の前で手を合せている老婦人 それを近くの切株の上から 団栗まなこのリスが 団栗の実をまわして食べながら見ている リスの目に入っているのは 老婦人だけではない 圧倒的に広い青空が入っている そこをのんびり漂う雲も入っている ◇