波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

噴水

2015-05-03 23:36:35 | 童詩

◇噴水



国定公園に一筋


噴水が昇っている


よじれて流れ下る谷川より


美しくなろうとして


山小屋の屋根より高く


昇っている


  ◇

行く雁

2015-05-02 22:01:44 | 童詩


◇行く雁


雁行きて空の静まり地に及ぶ


消えたと思ったら、また現れて、

鳴き交わしていった雁の群れも、

今ではひっそりしてしまった。

するとあの賑やかな鳴き声は

別れの挨拶だったのか。

そうと分かっていれば、

手を振るなりして、見送ったのに。

犬のジョンと一緒になって

雁の群れが通る度に

うるさい、うるさいと、

顔をしかめていたのだ。



   ◇

鯉のぼり

2015-05-01 17:56:56 | 童詩



◇鯉のぼり



鯉のぼり山の緑を並び切る



鯉のぼりが

風をいっぱいに受けて

水平に真っ直ぐ泳ぐと

背景の山の緑を切って進むよ

鯉のぼりが何匹も並んで

風を全身に浴び

緑の山を輪切りにして泳ぐんだ

山に赤い花が咲くのはその後さ

そうすると山は赤と緑で

補色の調和を醸し

目もあやな輝きを放つだろう

日本の夜明けだ


  ◇

雀の水浴び

2015-05-01 16:03:18 | 童詩



◇雀の水浴び


土浴びて次いで水浴び雀かな


水を浴びてから

土浴びではないよ

必ず土浴びが先さ

順序を間違えると

泥だらけの雀になってしまう

水は土の汚れを洗うためだよ

土には体についていた

ダニやシラミが紛れ込んでいる



   ◇

郭公

2015-05-01 15:10:56 | 童詩



◇郭公


人里に来た郭公は

しきりに

何かを告げようとしているが

村はあいにく農繁期

耳をかしてはいられない

そこでさすがの郭公も

唄の途中で飛び去った

揺れているのは電線と

鳥の残した思いのみ


  ◇

落葉

2015-04-29 00:17:51 | 童詩


◇落葉
   

公園の片隅のベンチに

赤い落葉が一枚

櫨落葉

姿のない人が坐りに来る



落葉は気配で察知して

身を躱すと

葉擦れの音もなく

転がって行った


来た人よりも

軽い足取りで


  ◇


2015-04-28 23:57:36 | 童詩


◇雨



一粒の雨が傘に弾いて

百匹の蛙になった

百粒弾いて

一万匹の蛙になった

一万匹はすぐさま姿をくらまして

それっきり雨は止んでしまったから

微かに地面の濡れたところが

彼らを探る唯一のよすが


  ◇


リス

2015-04-28 23:52:23 | 童詩

◇リス


このところよく現れて

墓の前で手を合せている老婦人

それを近くの切株の上から

団栗まなこのリスが

団栗の実をまわして食べながら見ている



リスの目に入っているのは

老婦人だけではない

圧倒的に広い青空が入っている

そこをのんびり漂う雲も入っている


  ◇