園芸ケアの模索~based on Horticultural Therapy~2nd season

ひとと緑のコラボレーション 園芸療法。ひととコミュニケートするツールとしての園芸のかたちを模索中です。

介護福祉士と心理的支援~そこに介在するもの

2009-02-28 17:58:50 | 触発される出来事や出会い
介護福祉士を対象とした「心理的支援の実践力養成プログラム」という、文科省の委託事業(社会人学び直しニーズ対応教育推進プログラム)が開講されていたのをご存知の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。

 今日、その修了式に合わせて、筑波大大学院教授の大川一郎先生による講演があり、一般参加で聴きました。
 タイトルは「ケアを必要とする高齢者に対する心理的援助」。
 内容は 1.立命館大学で行われた、地域高齢者を対象とした、"音読・計算"の効果を調査したプロジェクトについて
     2.日本老年行動科学会における、事例検討会活動として、認知症高齢者の視点に立った行動の理解と対応の、具体的な方法論の紹介
でした。

 1.はいわゆる学習療法を介護予防的に用いる活動を通して、予想していなかった効果ー参加者の生活リズムや健康維持、社会性やコミュニケーションの増加等などー様々な良い影響が総合的に心理的な効果を生み、認知機能への有効性も実証された、というお話で、その活動を支えた学習サポーター(一般市民、学生)と参加者、運営者のつながり=場の活用が今後の課題であるということでした。

 2.は実践研究の方法として参考になりました。また、介護現場に携わる者としては、事例を医療的側面と心理的側面に整理して分析し、具体性のある対応に結びつけていく、さらにその仮説を検証すること、の大切さを伝えようとされたところに、認知症者への理解と介護者への専門性というメッセージが感じられました。

  
≪ "音読・計算"はひとつのツール。
 それを介することで話のきっかけや関係作りがし易くなる。≫

"園芸療法"も同じです。
対象者の語りをもっと深めるために、回想やナラティブといった技法も知っておくと良いのだろうと、頭の隅で寝かせてある課題がふと浮かびました。
 

環境未来館にて

2009-02-26 19:43:59 | 触発される出来事や出会い
柴さとみさんのガーデニング講座に参加しました。

 動機は、“苔玉”の作り方を知りたかったからです。
 ミニ観葉仕立てで出来上がったのが、写真の「プテリス」。
 ‘土を練る’作業に、無心になれそうな、回想が生まれそうな感覚を持ちました。

今日の収穫その1は・・・「ケト土」という土のこと。水辺の植物が枯れて、‘泥老化’したものだそうです。
 
   収穫その2-柴さんとそのお仲間の方々が、障がいのある方や病院での園芸活動に少なからず関係を持っている、ということがわかったこと。

 月が変わったら計画を始動させたいと、気持ちを高めていたところに、嬉しい出会いでした。
 我が指導教官は、地元のTVレポーターには関心の薄いようでしたが、さすがに話術に長けた柴さん、実践的なお話し振りに、好感が持てましたよ。

 出会いと、そして、院で共に頑張ってきた同級生との別れの春が近づいています。

 

蒔かぬ種は生えぬ

2009-02-18 22:12:01 | 活動のひとこま
 2月もあと十日となりました。月暦に書かれているタイトルの一言が、目について仕方がない今日この頃です。

 半日の勤務時間の後、一時間半ほど残って菜の花の種まきをしました。
 参加したのは、認知力・機動性の面で力が残っている、三名の方です。とは言っても、インドアでの活動。
 用土をポリポットに分けてもらい、ケシ粒ほどの種を3~4粒づつ蒔きます。作業にそれぞれの工夫が見られて、感心させられることがあります。性格もよく表れて、クスッとさせられることがあります。
 写真のように、「芽が出ますように!」と願かけをして、園芸の時間は終わりました。

 本格的な春の訪れの前に、プランづくりを急がねば~と、気ばかり焦る私です。

『園芸療法のすすめ』

2009-02-04 10:59:42 | 図書室
吉永元孝,塩谷哲夫,近藤龍良 編(1998)創森社

第1章 なぜ、いま園芸療法なのか~背景・理念・可能性~
第2章 欧米日にみる園芸療法の歩みと取組み
第3章 園芸療法施設のデザイン・設計のポイント
第4章 園芸療法のプログラムと実践マニュアル
第5章 日本における園芸療法のケーススタディ
第6章 持続可能な日本型の園芸療法をめざして

1-“園芸療法へのアクセスと可能性”を、保健・医療・福祉からと、農業・農村から探る

2-欧米での取り組みを参考にする中で注目されるのは、ボランティアの育成・活用のシステムがある点。
主に…アメリカのマスターガーデナー
   イギリスのランドユーズ・ボランティア

3-療法用庭園の設計概念を説明し、景観(ランドスケープ)まで含めた、モデルとなるデザインを紹介。
そのキーワードは…アクセシビリティ(利用のしやすさ)accessibility
         サスティナビリティ(持続可能性)sustainability
         ノーマライゼーション(障害者との共生)normalization
         バリアフリー(障壁のない)barrierfree
         ユニバーサル(誰にでも楽しめる)universal

4-作業療法の視点が強いものの、“チューリップの植え込み17過程”を例に、様々な障害を想定した、療法としての園芸の魅力を説く。

5-日本の園芸療法の草分け的な15の実践事例。そのうち九州は3ヶ所。
・精神科:国立療養所菊池病院(熊本)
・高齢者入所施設:社会福祉法人慶明会(宮崎)
・知的障害者授産施設:白鳩会(鹿児島)

6-(結びの一文より)
「園芸療法の広範な領域、それに伴うさまざまな人たちや・・・行政機関の調整や協力を得る作業には、いろいろな障壁があるかもしれませんが、これを取り除く活動も、バリアフリーの社会をつくるための意義ある活動です。」


*入門書としてはタイトル通り、おすすめの一冊です。