園芸ケアの模索~based on Horticultural Therapy~2nd season

ひとと緑のコラボレーション 園芸療法。ひととコミュニケートするツールとしての園芸のかたちを模索中です。

スクーリングは〈権利擁護〉でした

2009-12-13 22:10:41 | 社会福祉士通信制の学び
熊本で独立型社会福祉士として活動されている、田形氏による講義を受けました。

P先輩の影響で関心を持ったものの、自ら本を読んだりする余裕もなく(言い訳ですが)、対面で聴講出来る機会は貴重です。

偶然、昨日はホームとしては初めての成年後見制度利用となる方の、第三者後見人とお会いしたところだったので、良いタイミングでした。

「権利」の意識、あるいは「権利侵害」の意識が薄い、または無い、判断能力の低い方々にその状況を理解してもらう役割と、彼らの権利が護られるように支援する役割が、社会福祉士に期待されていることを改めて学びました。

虐待に当たる場合があることを考えると、施設の生活場面を振り返りながら、普段からそうした権利擁護の視点を持つための研修を徹底する必要性を感じました。


[初冬は球根を育てる楽しみがあります。これは水栽培にしたサフランです。]

出会いは学び~相談援助実習から~

2009-11-24 13:44:01 | 社会福祉士通信制の学び
「転」が飛んで「結」の章です。

知的障害者施設での実習を終えてみて、本当に、貴重な時間を過ごしたと思えます。

数多くの実習やボランティアを受け入れている施設ですから、入所者の皆さんはまた来る別れを割り切って考えることにしてるようにもみえました。
でも、私にとってこの出会いは忘れられないものだろうと。

“ひとつの個性として障害者が受け入れられるべき”という施設の生活支援員である職員の考え方が、
少し実感として解る気がしています。

だから、福祉に携わるか携わらないかにかかわらず、ひとは交流して理解し合うことの大切さを感じました。

そのもう一つの理由は、つい先日のスクーリングでホームレスの当事者と意見を交換する機会があったことにもよります。

NPO法人熊本ホームレス自立支援の会 事務局長の吉松裕蔵氏が講師のこの日、4コマの1つがそれでした。

‘この方の相談に乗ってください’ということで、まず受講生の中からひとりが支援者役で話をし、
あとは講師の解説も含めてフリートークでした。

当事者のAさんが中程で、
「皆さんに聞きたいことがあるんです。自分たちのことをどう思っていますか?ひとりづつ教えてください。」
と言われ、全員がそれぞれに子ども時代の印象や大人になってから抱いていた偏見、感想など発言するきっかけをつくりました。

これもかなり、ある価値観を転換する出来事でした。

この数週間、多くの出会いと思考の連続のなかにあります。


[写真は、施設で交流した70歳近くの方が描いたスケッチ]

障害者と野菜作り~相談援助実習から その②~

2009-11-08 13:58:36 | 社会福祉士通信制の学び
 「起承転結」の「承」の1週間も無事終了。
 日誌を仕上げるのに毎晩苦闘し、睡眠不足気味
 でも折り返し地点まできました。

 この週も園芸部門での支援が1日ありました。
 週末のバザーに出す野菜の準備に追われ、職員さんも「利用者さんそっちのけだった~。」とこぼしながらの作業。
 みかん、キャベツ、ほうれん草、サラダホウレン草、小松菜、深ネギ、椎茸、菜っぱ、水菜、たけのこ芋、などなどです。

 葉っぱ物は、外側の小さい葉、大きすぎる葉、虫食いの葉、傷んだ葉をはずし、水洗いして土を落とし、余分な茎を切り落とします。
 仕上げたら、重さを計って袋に入れます。
 水気をきって、新聞紙を敷いたダンボール箱に詰め、数を確認して新聞紙で蓋をします。

 こうした一連の、出荷のための工程において、利用者が参加できるのは、
〈運ぶ〉〈葉を取り除く〉〈袋を一枚づつ手渡す〉〈水きり用に袋の角を切る〉〈取り除いた野菜くずを畜産部へ持っていく〉
〈新聞紙を敷く〉〈必要な道具を用意する〉といったことです。

 切ったり、洗ったり、計ったりの、直接商品価値を左右するところには携わりません。
 
 私も、深ネギの葉を切って箱に入れてもらっていたところ、束を数えながらやっているか?を指摘されました。
(生産部分のブレーンらしい職員さんです
 また数えて入れ替えればそれだけ野菜を傷める、ということ。
 そして、出荷までは野菜を立てて保存するなど…
 それだけ、商品として気を遣って栽培・収穫をしなければならないのだと知りました。

 障害者の施設で作るものだから、少々の見栄えは大目に見てもらえる、ということはないのでしょう。
 店頭や市場に出る農家の野菜と肩を並べて、売れるものにするのは、細かな労力が要ります。
 それに利用者が携わるには、ある程度の能力が必要です。

 施設園芸(ビニールハウスなどでの計画栽培)を障害者施設で行うのは、色々とジレンマがありそうです。

 でも、安心しておいしく食べられるのがいいところ。
 昼食に出されるみかんは自然な甘酸っぱさです。
 ひとつ100円で買って帰ったら、小松菜も柔らかく、サラダホウレン草はあくがなくておいしかった!
 作業しながら、利用者さんにそう話しました。

 後半も何か発見があるのではないかと、期待しているところです。


[写真はまだ青いもみじとクロガネモチの小枝に、
ジーン・ロサート著園芸療法研修会監訳
『障害者 高齢者のための バリアフリーガーデニング』“The Enabling Garden”(2002)エンパワメント研究所]


 

園芸がもたらせるものは?~相談援助実習から~

2009-10-31 12:37:33 | 社会福祉士通信制の学び
実習の「起承転結」の「起」が瞬く間に終わりました。

 今回、社会福祉士受験に向けた知的障害者施設での相談援助実習は、160名あまりの利用者と数十人の職員のなかで、日々の活動と生活の支援に参加することを通して学ぶものです。

 この施設は、偶然にも3年ほど前に私が園芸部門でボランティアをさせていただいた所でもあります。
 当時は園芸療法への突破口が見つからず、何か始めなければという焦りがあり、園芸技術の向上と施設での園芸活動に触れることを目的にボランティアを願い出ました。
 事情があってそのときは4,5ヶ月で行けなくなっていました。

 実習5日目、園芸部門での活動支援に配置され、午前は外部での野菜販売の委託先に納品の同行、午後はタマネギの植え付けに参加することになりました。

 畑まで手をつないで行った利用者さんと一緒に、穴のあいたマルチを張ってある畝に入ろうとして「じゃあ植えましょうか。」と声をかけたところ、午前にその作業をしていたパートの職員さんが、利用者にはさせないように言われていると教えてくれました。
「それなら、ひとつづつ渡してもらおうかな。」と言うと、それもだめなんですって、と再び言われました。

 無口な様子の利用者さんは少し残念そうに離れて、畑周辺の草取りを始めます。

 畝の方では、若くて手作業が安定した2,3名の利用者と、研修生、それに正規とパートの職員が1名づつ、草取りやただ座って過ごすその他大勢の利用者(15名ほど)の所在を確認しながら、黙々と植え付けをしていきます。

 作業をしながら私は心の内で、その他大勢の利用者も苗を植えたいし、その手入れをして収穫したい気持ちがあるんじゃないか?と感じていました。

 午前に厨房で使う葉菜を少し収穫した際も、根を切り落として見栄えを良くする作業は、利用者にさせないでいるということでした。

 こうした障害者の施設で生産性を課題とした園芸活動になると、どうしても商品価値を維持するために、
効率性や見た目を考えた利用者の能力の活用ということになってしまうようです。
 特に、障害者自立支援法への移行後は地域での生活・就労の機会拡大を目指さなければならないという流れがあり、
支援する側は利用者の生活の質の確保と自立との両立に悩んでいる様子です。

 そのなかで、“療法的な園芸”の良さはわかっても、そうは言ってられない、という本音を、ボランティアをしていた頃にも聞いたことがありました。

 あらためて実習の立場で入り、職員でそれをやることの時間的・制度的な制約を実感しながらも、なんとかして参加する喜びを味わってもらうには、ボランティアのような方法の活用になってくるのかな、と思うことでした。


 ひとつ前の記事でコメントを寄せてくださったkさん、patycoさんへの、また新たな私のボランティア感をお伝えしたいと思いつつ、話が広がってしまいました。


写真と記事は関係ありませんが…
園芸療法を意識し始めた頃に手にした文庫本『園芸家12カ月』カレル・チャペック と
県立図書館の駐車場でひろった桜の紅葉。