水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (27)我儘(わがまま)

2021年06月17日 00時00分00秒 | #小説

 子供とは妙なもので親の躾(しつけ)が甘(あま)いと我儘(わがまま)に育つ傾向がある。心理学者によれば、心そのものが発達過程にあり、未だ確立していないからだそうだ。だから、━ 三つ子の魂(たましい)、百まで… ━ とかなんとか言われる所以(ゆえん)だろう。まあ、大人になっても我儘な人はいるものだが、それはその人がそういう人だというだけのことで、性格上の問題に違いない。我儘に育った可能性も多分にあるのだろう。まっ! この件に関しては甘辛(あまから)に関係なく、考え方に個人差もあり、お話を書くだけにしたい。^^
 とある家庭である。日曜ということもあるのだろう。朝から賑(にぎ)やかな親子の声が響いている。
「俺のハンカチ、知らないかっ!? …あっ! あった、あった!」
「そりゃあるわよっ! ったくっ!」
「正也、話の続きっ!」
「そうは申されるがのう、母上。父上は毎日、千円でござるぞっ!」
「なによっ! その時代劇言葉はっ! パパは、ねっ! お勤めがあるのっ!!」
「お勤めならば、毎日、1000円、戴けるのでござるかっ!? どうも、合点(がてん)が参らぬっ!」
「パパはねっ! お付き合いがあるでしょ!!」
「拙者(せっしゃ)とて、同輩との付き合いがござるぞっ!」
「あんたは小学生でしょ!」
「軽輩(けいはい)と見て、侮(あなど)られるご所存かっ!」
「ったくっ! 育て方が甘かったのかしら…」
 そこへ、離れから祖父が現れた。
「お義父さま、おはようございますっ!」
「おはようござりまする、未知子殿。おう! 正也殿! お早いお目覚めでござるなっ!」
「これはこれはご老人! 今朝もご息災(そくさい)で何より…!」
「ご挨拶、痛み入るっ!」
 母親は、『我儘は二人ともか…。好きにやってなさいっ!』と辛く思ったものの口には出せず、思うに留(とど)めた。
 ご老人とお孫さんの話し方が我儘なのか? どうかは定かでない。^^


 ※ 風景シリーズに登場された湧水家の皆さんにスピン・オフでご出演して戴きました。^^

 
                  完


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