デ某の「ひょっこりポンポン山」

腎がんのメモリー(術後10年クリアーし"卒がん")、海外旅行記、 吾輩も猫である、人生の棚卸しなど。

喝采

2017-03-11 18:51:01 | 新聞・TV・映画・舞台・書籍etc.
 喝采の中・・・姿を消す
 ちあきなおみさん。1970年代初めに「喝采」でレコード大賞に輝きました。歌い始めるや瞬く間に彼女の歌の世界に魅きこまれる素晴らしい歌手でした。しかし1990年代初め(おつれあいが亡くなるのと時を同じくして)突然!その世界から姿を消されました。

いつものように幕が開き/恋の歌うたう私に/届いたしらせは/黒いふちどりがありました・・・あれは三年前/止めるあなた駅に残し/動きはじめた汽車に/ひとり飛び乗った・・・ひなびた町の昼下り/教会の前にたたずみ/喪服の私は/祈る言葉さえ失くしてた

 ドラマの幕開け
 この歌は中村泰士さんの作曲(メロディ)が先に出来、後で吉田旺さんが作詞しました。最初のフレーズ『いつものように~黒いふちどりがありました』に、抜き差しならぬドラマの幕開け...「黒いふちどり」の電報が届けられ心凍えるシーンがフラッシュします。

 何があったのか、なぜ別れたのか... 
 つぎのフレーズは『あれは三年前~動きはじめた汽車にひとり飛び乗った』。現在!の彼女の脳裏に、過ぎ去った、しかし忘れ得ない時間が甦ります。何があったのか、なぜ別れたのか...。男の制止を振り切り去り行く女。わずか三年前の出来事ではあります。
 
 降りそそぐライトのその中
 喪服で教会の前に佇み、やがて暗い待合室に案内され話す人もない彼女。その心の中を彼女自身がうたう歌が通り過ぎる。『降りそそぐライトのその中/それでも私は/きょうも恋の歌うたってる』。その虚しさを背に彼女はこの世界を去ったのでしょうか。



 二度と帰らないの そして帰らないの
 「喝采」は「劇場」「夜間飛行」とともに彼女の代表作とされます。「夜間飛行」の歌詞の最後は『そして今...翼に身をゆだね/私は旅立つ/この夜の果て/二度と帰らないの/そして帰らないの』。彼女がこの世界を去る日のために用意された言葉のようです。

 私もいっしょに焼いて
 彼女のおつれあい(郷鍈治)が1992年に亡くなり、その葬儀で彼女は棺にとり縋り「私もいっしょに焼いて」と泣き崩れたと言われています。その心のままにその年を最後に彼女は一切の芸能活動を停止し、引退宣言のないまま今日なお姿を現していません。

 彼女の生き様のように
 彼女の最後の歌「紅い花」は、『あの日あの頃は今どこに/いつか消えた影ひとつ...今日も消える夢ひとつ』で終わります。『とどいたしらせは/黒いふちどりがありました』『私は旅立つ...そして帰らないの』とともに、彼女の生き様を象徴しているようです。

 初めてのキス
 彼女の歌で私が一番好きなのは(オリジナルは水原弘ですが...)「黄昏のビギン」。『夕空晴れた黄昏の街/あなたの眸/夜に潤んで/濡れたブラウス 胸元に/雨のしずくか ネックレス/こきざみに震えてた...二人だけの黄昏の街/並木の陰の/初めてのキス』。