デ某の「ひょっこりポンポン山」

腎がんのメモリー(術後10年クリアーし"卒がん")、海外旅行記、 吾輩も猫である、人生の棚卸しなど。

吾輩も猫である 92 ( なにもない日常 )

2015-04-03 18:12:34 | 吾輩も猫である



  なにもない日常
 『とり敢えず今が潮どき辞めるとき12月26日はサラバ記念日』。そう詠んで主人がリタイアして3年余、さすがに此頃はなにもない日常に飽いている風情だ。「なにもなければいいじゃない?」と言うと、「それとは意味がちがう」んだそうだ。細君も「こう一日じゅう家に居られたんではねぇ」と、やや不満顔。さあ主人、ど~する?

  自然体とは・・・
 コスモスはにんまり風に甘え居り自然体とは無頼なること』。主人が敬愛する歌人、道浦母都子さんの歌である。自然体とは無頼なること・・・う~む、難しい。難しいが、わからないではない。わからないではないが、やっぱり難しい。主人に感想をきくと、「おまえはコスモスといっしょやろなぁ。俺もコスモスやおまえになりたいよ」。

  

 旅立ちの装い
 主人がリタイアしたその職の前任者は7年前の4月1日に亡くなった。毎年4月1日を迎えると、彼女の「もういちど桜が見られるかなぁ」の言葉が甦る。桜をこよなく愛し桜が開花する時期に限り渋めの桜色のスーツを召されたそうな・・・。旅立ちの日も、彼女は桜色のスーツで颯爽と虹を渡ったにちがいないと、主人は思う。 末尾に「補遺」 

 もう一つの旅立ち
 4月2日は、主人の腎がん手術のちょうど1年後、主人と同じ出術を受けたmさんの命日。初期に発見されながら術後3月で肺に、更に骨に転移。術後1年半の昨年3月半ば、「いつ呼吸停止してもおかしくない」状況で医師に終末期医療について問われ、『私、死ぬ気がしないんですけど』と・・・。その2週間後、彼女は虹の彼方に旅立った。
 
 この旅が終わる頃には・・・
 4月は出発(たびだち)の月。多くの若人がすぐそれとわかる姿で街を歩く。やがて夏を迎え秋を迎える頃には周りにすっかり同化、「それとわかる」姿は見られなくなる。そうした年月を20年、30年、40年・・・誰もみな「なにもない日常」を迎える。
 北川賢一「大切なもの」の一節・・・『あたたかい人の優しさに/僕はこたえられているだろうか/この旅が終わる頃には/そのこたえも見えてくるだろう・・・この空の下/かけがえのない大切なもの』。

 

  補遺・・・「お別れの会」における弔辞より
 友人代表として弔辞を述べたのは彼女の出身大学で同期の、当時その大学の学長だった方。以下は、原稿なしに語られた弔辞を、当時メモをもとに再現したものですが、途中、感極まりメモをとれなくなったため一部が抜けています。

 『弔辞』 

 〇っちゃん、今日は頑張って泣かんと言うから、マジメに聞いてくれ。
 〇っちゃんが一時退院して入ったホテルのスウィートルーム、なんちゅう豪華な部屋やったんや。一晩でええから泊めてくれ!言うたら、あんた、ベッドがない!言うたな。 それでオレ「あんたのベッドで寝てやるから」って言うたら、「私にはその気はない」って。「オレかてその気はない!」言うて、あとは二人で大笑いやったなぁ。

 夜、急に〇っちゃんに会いたくなって、「今から行ってもええか?」って電話したら、 「来てもええけどイチゴのケーキ買って来な、部屋入れへんで!」って…。
 去年のクリスマスイブ…。例によってオレの家でやるパーティに〇っちゃんも来てくれたな。ええんか?言うたら、ええねん!って。その日、アンタいっぱいみんなと写真とってたな、ニコニコ笑いながら…。お別れ写真のつもりやってんなぁ。

 〇っちゃんのホテルの部屋で開いた年末の忘年会には、オレ、行けへんかった。すると夜中に、「早よ来い!」って。しかも、「お酒が足りひんからワインと焼酎もってこい!」って。オレ、ビンテージもんのワインと幻のナントカ言われる焼酎もって行った。あたりまえやけど、オレ、ちっとも惜しい思わんかった。
 
 ・・・中略・・・ ここで話したいことはなんぼでもある。なんぼでもあるけど、それより何よりもう一回、〇っちゃんと話したい。ここでなんぼ話しても尽きないし、なんぼ話してもむなしゅうなるだけやから、もうやめにする。あとは、オレかて、早く行きたいとは思わんけど、いずれそっちに行くことになるんやから、その時また語り合おう。それまでのお別れや。ありがとう。ほんまにありがとう。


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【過去ログ目次一覧】
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
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12 コメント

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・・・・ (Rarudo)
2015-04-04 11:10:48
シマ君、おはよう

このごろ漠然と感じてたことがあります。
今日のタイトルを見て、やっぱりって思いました。
この病気になってなかったら、その桜色のスーツの君から引き継いだ要職を、ご主人はまだまだ続けることが出来ていたはずですね。
体力が思いのほか今も持続できているということが、嬉しくもありせつなくもありですね。もったいないなあと思ってしまう私をお許しください。

「なにもない日常」という言葉に胸がざわつきましたが
ご主人の両膝に挟まれたかわいいシマ君の表情にはとても癒やされました。
いつもありがとね、シマ君
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弔辞 (六花)
2015-04-04 15:11:13
こんな哀切きわまりない弔辞を語りかけられたら・・
誰もメモなんて取れないわ。パソの前で涙あふれています。
この哀しみ 胸の中にギューッと凝縮させて 一生懸命生きていこう!
六花も 毎日一緒だと奥さまのように鬱陶しくなるけれど
もしも。。なんて考えたら・・やりきれなくて そんな考えなんて直ぐ消えちゃうよーーみんな同じだねーd(~o~)b
dもbもピアスのつもり・・今琥珀のピアスしてるんですよ
魔除けにネ~「何から?」 フー。。オシエナ~イ
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Rarudoさんに感謝をこめて (デ某のちシマジロウ)
2015-04-04 23:50:43
Rarudoさん
コメントありがとうございました
今日は午後から、私が外を「ほっつき歩いていた」ためシマジロウはご機嫌ナナメ、
シマに!とのことですが、私からコメレスさせていただきます。

> このごろ漠然と感じてたことがあります。
> この病気になってなかったら・・・引き継いだ要職を・・・まだ続けることが出来ていたはずですね。
術後に「G3」「3月毎にCTと骨シンチ」と診断され辞めることにしました
「仕事をほっぽり出した」とのご批判もありましたけど、適切な判断だったと思います。

> 体力が思いのほか今も持続できているということが、嬉しくもありせつなくもありですね。
問題はフィズィカルより寧ろメンタルにありました
診断を聴いた瞬間、自分でも不思議なほどきっぱり!決断しました。
「なにもない日常」はごく最近になって生まれた思いです。
考えようによっては、メンタルが漸く以前に戻ったのかなぁと・・・。

> もったいないなあと思ってしまう私・・・
仕事は、残念ながら「自分一人」では出来ませんからねぇ
自信があっても、もったいないと思っても、
自分本位に考える自分がいることを「なんて情けない」と思った瞬間、辞めよう!

> 「なにもない日常」という言葉に胸がざわつきました
前記のとおり、メンタルが漸く甦った証しのような気がします
ですから沈んだ気持ちではなく、結構!積極的な言葉かなぁと(笑)

> ご主人の両膝に挟まれたかわいいシマ君の表情にはとても癒やされました。
> いつもありがとね、シマ君
ここでシマが「代って!」と申しますので、代ります
Rarudoさん、いつもありがとうございます。
Rarudoさんのお蔭で主人が吾輩に一目置いてくれますので、心から感謝しています。
主人の膝によじ登ろうとすると、
「ほれほれっ」ってからかって ぎゅ~っと短足でしめるんです。
もぉ~っ!って厭になるんですけど、まぁこんなじゃれあいもそれなりに?面白くてね。
また主人の尻をぺんぺんしにお訪ねくださいね。
このごろちょっとブログ疲れ?が出ているようなので・・・。
ではでは・・・Rarudoさんに感謝をこめてシマジロウより。
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幸せを呼ぶピアス (デ某)
2015-04-05 00:26:37
六花さん
コメントいつもありがとうございます

どんな葬儀だったのか・・・少しだけ記しておきます。
葬儀は遺言により「友人葬」とし、「無宗教」で「親族をまじえず」行われました。
ひとり娘さんが生まれてから一人で育ててこられ、
そのお嬢さんが学生時代に突然死されました(自死ではありません)。
そのため財産は予め弁護士さんに委託され、すべて寄付されました。
宝石類などは、後日行われた偲ぶ会で参会者に「ご縁分け」されました。

> こんな哀切きわまりない弔辞を語りかけられたら・・
> 誰もメモなんて取れないわ。
7年たった今でも お別れを述べられた光景が生々しく甦ります。

> パソの前で涙あふれています。
> この哀しみ 胸の中にギューッと凝縮させて 一生懸命生きていこう!
そう仰っていただくと ありがたく嬉しくなります
最後にお目にかかった時の(既に意識をなくされた)お顔、
病院(ホスピス病棟)から深夜、棺をのせて走り去る車のテールランプ、
そして葬儀の日のこの弔辞・・・生涯忘れ得ない光景です。

> 六花も 毎日一緒だと奥さまのように鬱陶しくなるけれど
> もしも。。なんて考えたら・・やりきれなくて 

弔辞の最後の言葉にもありますし、
そして六花さんの仰る「まわりばんこ」かなぁとも思います。
送るひともいつか送られ、送られるひともいつか迎える・・・。
やりきれないですけど やりきらなければなりませんね。

> そんな考えなんて直ぐ消えちゃうよーーみんな同じだねーd(~o~)b
> dもbもピアスのつもり・・今琥珀のピアスしてるんですよ
> 魔除けにネ~「何から?」 フー。。オシエナ~イ
かつて訪ねたバルト三国はいずれも琥珀の宝庫のような国でしたから
お土産に琥珀のペンダントをたくさん買いました。
琥珀って ダイヤとかルビーより 生きている!宝石のような気がします。
高価なものではありませんが、思いをこめるにはぴったり!
魔除けですか? 「幸せを呼ぶ」ピアスになさってください。
えぞおさんによれば六花さんはいま「読書病」に罹っていらっしゃる由。
私も 読書病になりたくなってきました(笑)
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Unknown (chika)
2015-04-05 01:20:42
桜のシーズンに大事な方とのお別れがあったのですね。
シマジロウ君の目を通した軽妙洒脱な文章で余計に切なく感じられました。
風にそよぐコスモスのように私もなりたいものです・・・。
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あべのハルカスのご縁 (デ某)
2015-04-05 12:04:02
chikaさん
コメントありがとうございました
「chikaさんて、誰だったかなぁ?」と思いながらリンクに・・・。
「あっ! あべのハルカスの」と・・・。
たいへん失礼いたしました。

> 桜のシーズンに大事な方とのお別れがあったのですね。
「出会い」の桜の筈なのにいつも桜には哀しみが伴います
ず~っと昔、電報が重宝された時代には「サクラチル」に泣きましたし(笑)
その所為でしょうか、私、葉桜のほうが余程!好きです。

> シマジロウ君の目を通した軽妙洒脱な文章で余計に切なく感じられました。
うちのシマジロウ、書いたり喋ったりするんですよ
生意気でこまります

> 風にそよぐコスモスのように私もなりたいものです・・・。
そうですね、ほんとうに・・・
道浦母都子さんの場合は無頼の如き自然体・・・ですが、
それぞれにふさわしい自然体があるように思います。
道浦母都子さんとは縁あって4年ほど仕事でご一緒しましたけど、
一般に言う「自然体」とはやや趣の異なる「烈しさ」をもった方、
「自然体とは無頼なること」は、まさに道浦さんにして表現された言葉でした。
chikaさんの自然体・・・お写真に醸し出されているように思います
背割堤の(とりわけ最初の)お写真、圧倒的なダイナミズムを感じました。
またお訪ねください。こちらからもお訪ねさせていただきたいと存じます
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Unknown (Anne)
2015-04-05 15:28:17
平均寿命も長くなった今、
リタイアの後の過ごし方は考えさせられます!
そして、その頃にはお別れしなければならない人も増えて…
私の母は長生きしてくれてるけれど、
流石にお別れのことも頭を過るようになりました!
長生きしてくれてることに、ただ、ただ、感謝です!

ハンブルグは北欧に近くて、日差しは春の暖かみを感じましたが、やはり空気は冷たいです!
風があったりしたら、日本なら、真冬の寒さかも( ´△`)
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くれぐれもお風邪など召されませんように (デ某)
2015-04-05 18:30:30
Anneさん
コメントありがとうございます
ハンブルク記、拝読しました。
現地から写真をふんだんに使ったブログUP、寝不足になられませんように・・・。

> 平均寿命も長くなった今、リタイアの後の過ごし方は考えさせられます!
リタイア後の長さ、高齢者雇用の少なさ、貰い始めて改めて実感する?年金の少なさ(笑)
また高齢者の病気の多さ、医療費の多さ、保険料の高さ・・・
国家レベルで「生涯」の基本設計をひき直すべき時期に来ていると思います。

> その頃にはお別れしなければならない人も増えて…
30代は結婚式が同窓会、そして60代を過ぎると葬式が同窓会と・・・
出会いの歓びの多さに比例する別れの辛さ、悲しさ・・・ですね。
かつては人間50年、間もなく人間90年!
「下天の内をくらぶれば夢幻の如くなり」とは行かなくなりました。

> 私の母は長生きしてくれてるけれど・・・お別れのことも頭を過るようになりました!
> 長生きしてくれてることに、ただ、ただ、感謝です!
ブロ友の六花さん風には「まわりばんこ」
親をみつめることは自身をみつめることでもあるようです。
お母さまの豊かな老後、幸せな日々を心よりお祈りします

> ハンブルグは北欧に近くて、日差しは春の暖かみを感じましたが、やはり空気は冷たいです!
> 風があったりしたら、日本なら、真冬の寒さかも( ´△`)
ドイツは、ヒトラーの僅か12年のために
音楽・文学・建築など輝かしい伝統と歴史を台無しにしましたけど、
やはりその文化の香り、精神性には圧倒される日々でありましょう。
大いにお愉しみくださいね(レポート、いつも楽しみにしています)
くれぐれもお風邪など召されませんように!
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 (リーのママ)
2015-04-05 20:06:08
雨のやみ間に桜を見て歩きました。
大きな桜の木の下は桜色の絨毯になっていましたが、まだまだ咲いている花もたくさんありました。
桜色はもともとは山桜の花の色だったとか。
はかなげな桜色が、桜が好きだった逝ってしまった人を思い出させます。
はかなく散ってしまうから、桜は逝ってしまった人を思い出させるのかもしれないと思ったりします。
そうして思い出させてくれる桜が、私は好きです。
返信する
それぞれの春、桜、思い・・・ (デ某)
2015-04-06 10:19:18
リーのママさん
コメントありがとうございました

> 雨のやみ間に桜を見て歩きました。
ブログ記、しみじみ拝読しました。
崖っぷちで無慚に斬られた桜の枝、その幹から這い出すように咲く桜花・・・。
リーのママさんの心の風景を少しだけ共にさせていただきました。

> 大きな桜の木の下は桜色の絨毯になっていました
私は、満開の艶やかで華麗な桜も然りながら
びしりと敷き詰められた桜の絨毯、生まれ変わったような葉桜の緑の方が寧ろ好きです。
愛でる人も少なくなり「宴の後」の観は否めませんが、
桜のほんとうの姿(気持ち)が顕れる光景に思われます。

> はかなげな桜色が、桜が好きだった逝ってしまった人を思い出させます。
私が「艶やかで華麗な」と前記した満開の桜も、
ひとひら ひとひらの 花びらに目を向ければ「はかなげな桜色」に・・・。
なるほど・・・桜に様々な表情を見ることができますね。

> はかなく散ってしまうから、桜は逝ってしまった人を思い出させるのかもしれないと思ったりします。
> そうして思い出させてくれる桜が、私は好きです。
はかなく散る姿、華麗に舞い散る姿・・・
それぞれの春、それぞれの桜、それぞれの思い・・・でしょうか。

漸く雨は上がったものの まだ暫くは雨模様がつづきそうです。
お仕事、この時期はいつにまして何かとご多忙のことと存じます。
くれぐれもお身体たいせつにご活躍されますようお祈り申し上げます
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