ひとり回顧懐古 「座っとっ展」
第1回 2012年 5脚出品
出品椅子
1 ハイバックロッカー
2 ロッキングスツール
3 ウインドウシート
4 アローバックサイドチェア
5 ミルキングスツール
=====================================================
前回の記事(一つ下)で案内した通り 今回から8回に分けて『ひとり回顧懐古・「座っとっ展」』と題し私が過去に
製作出品した椅子の数々を紹介します。
本当の名称は「座っ展」ですが そのまま使うわけには行きませんので上記のようにしてみました。
展示会場のある「丹波年輪の里」(県の木の関連施設)は兵庫県の中央部あたりに位置し 初回の出展者は
その周辺で工房を開いている15名ほどでした。
同じ「木を扱う仕事」とは言え そこには私のような家具製作者や木のおもちゃなどのクラフト小物がメインの人
挽物加工(ろくろ)の人や椅子だけを作る人などなど様々でした。それは現在でも変わっていないと思います。
(今年は館の指導員の方もいたような)
私が独立し木工の仕事として椅子(家具全般)を作り始めたのが1990年で 「座っ展」が始まった2012年の時には
既に何脚かの在庫の椅子があったので初回の展示会用には新たに製作はしていませんでしたが
あまり椅子作りの経験が無い参加者の人たちには結構大変だったと思います。
開催の半年ほど前に工房に当時の館長がやって来て説明を聞いたところ どうも既に神戸の街なかで10数名でしていた
「一脚展」の展示を見てそれと同じようなことをGWのイベントの一環として「丹波年輪の里」でも開催し集客をしたい
との意向でした。
私は「一脚展」のことは知っていましたが(参加はしていない)そのような『これが木工作家が作った椅子でござーい』
という見せ方には興味が無かったので 館長には「一脚だけの展示なら参加しない」と伝えて「都市部ではない丹波地方の
田舎で15名が一脚ずつ持ち寄って同じような展示をしても淋しいだけで集客の訴求力に欠けるのでできれば50脚ぐらいを
展示してドーンと見せましょう」と提案したのですが なにぶん前述の通り主に椅子を作っている人ばかりではなかったので
それは叶いそうにありませんでした。。
しかし2012年5月にいざ蓋を開けてみると展示の数が35脚ぐらいではなかったかなと思います。(引っ越しにより資料を紛失した)
大勢の来場者に恵まれ あれやこれやと実際に腰を掛けて頂いて アンケートの記入により椅子を使う人がどのようなことを
考えて座っているのか等などを知ることができて貴重な財産となりました。
初回の2012年は5脚出品しました。
下に私が出品した椅子の写真を掲載していますが 実は会場当番の日はとても慌ただしく ほぼすべての来場者に
アンケート用紙を手渡ししたり各出展椅子の説明などでお客さんの応対に時間を取られて当日の自分の展示椅子の写真を
撮ることができませんでした。
よって今回はアルバムやデータ保存してある他所で撮った写真を載せています。(物はほぼ同じ)
1 ハイバックロッカー(ロッキングチェア) ナラ材 (座板はセン材)

寛ぐため(何も作業をしない)の椅子で 少し揺れることにより小さな快楽を得ることができます。
居眠りをすることもあるので頭部を支えるために背凭れが高くなっています。
アームを付けることによって立座りが楽になり姿勢が崩れても落下防止になります。
製作のポイントの一つに座面の高さとソリのカーブにあります。
座面が高くソリのカーブがきつ過ぎると後方に揺らした時に足が宙に浮いてしまい(安楽のために座面の奥行きも深いので)
且つ 揺れが激しくなって遊具のようになってしまいます。
私は ソリを比較的緩いカーブにして背凭れへの重心の移動により自然と後方に傾くように作っていました。
前回の記事で「ロッキングチェアを展示すると子供の餌食になってしまう!」と書いたのは
子供は 揺れることで享楽を得るための遊び道具としてしか見ていないのでこういった展示方法には向いていないからです。
実際 私はこの後年の展示で何度か「揺れる椅子」を出品しましたが椅子の前に「子供✕(✕は赤字)」の木札を置いて
子供が座ることを禁止していました。
それは「大人用のサイズで作っているので子供が座っても意味がない。これは遊び道具ではない。
足が床に付かないので危険である。」という理由からでした。
2 ロッキングスツール ナラ材 (座板はセン材)

スツールなのに揺れるというちょっと違和感のあるデザインです。
これはさすがに危険ですので最初から「座ると足が床に付かない子供は使用禁止」の札を置いていたと思います。
大人の場合 座面横に付いているグリップを握って座りますが向きはどちらでも良いようになっています。
家の中では両足先をソリの端に乗せることで揺れを楽しむことができます。
座面は普通にスツールとして座ることができる高さになっています。
3 ウインドウシート ナラ材 座面は牛革張り

背凭れが無くアームの付いたベンチシートです。
参考にしたデザインは イギリスの田舎に建てられた「カントリーハウス」と呼ばれる貴族などの石造りの大豪邸の中で
分厚い壁の際の小さな窓辺に置かれた重厚なベンチシートです。(その部分だけ壁が薄くなっていて座って暖を取る)
これは私のオリジナルデザインで各部分のモチーフにはスペインの様式を採用しています。(アーム ろくろ 足の先のカーブなど)
家具を作るときには使い方や大きさや装飾などを考えてデザインしますが これは
「背凭れが無くアームの付いた二人掛けのベンチ」というところから始まり 形についてはあれやこれや自由に考えることができました。
強度については座面下の横幕板(長く幅の広い板 前後2枚 座板の裏側には根太が三カ所入っている)で充分(脚の角材に
通しほぞで組んで楔止めしている)なのですが
『二人掛ということでかなりの重力が掛かる。座り方によっては横揺れも考えられる』等々考えた挙句強度のことを考えて
両側の足をつなぐ床近くに貫を取り付けました。
職業として木の家具作りを始めたときのパンフレットには
『100年以上使い手の傍にあり続けるための方法として 丈夫さと 飽きられない美しい形 人が触れて心地よい』
というような言葉をを心構えとして書き記していました。
木の家具は部屋の乾燥や湿気や使い方によって将来ガタが来ることが考えられるのでどうしても過強度に作ってしまうことが
多々あります。
パンフレットに書いた初心は仕事を辞めるまで何とか続けることができましたがこのベンチの1本の貫の棒が今も悔やまれます。
4 アローバックサイドチェア ナラ材 (座板はセン材)

これは通称「ウインザーチェア」と呼ばれている椅子です。
ウインザーチェアは18世紀にイギリスで生まれ後にアメリカで多く作られたスタイルで主に庶民が使用する椅子として
爆発的に発展しました。
ウインザーチェアの定義は
「お尻の形に削られた厚い座板に主にろくろ挽きの脚や背柱や背もたれの棒が直接にホゾ(主に丸ほぞ)で組み込まれている」
と言ったところでしょうか。
イギリスの時代は座板もそれほど厚くはなく脚の組み込みの角度も緩やかな傾斜だったので現在残っているアンティークの椅子は
座ると少しぐらつくものが多いように思います。
それに対してアメリカの形は座板も厚く脚の挿入角度も大きいものが資料に多く見て取れますが強度的にはこちらの方が
優れていると思います。 アメリカの古い時代のウインザーチェアは日本ではあまり見かけません。
私は座板に約50ミリの板を使い約30ミリの深さでお尻の形に削り込んでいました。太腿の裏が当たる部分も削ります。
なぜ座板をお尻や太ももの形に削るのかというと 尾てい骨や大腿骨のまわりの肉をクッションの代わりにして
骨が強く座面に当たることを和らげるためです。
座面は削る部分の深さによって掛け心地が全く変わってきますがそれ以上に神経を注がなければならないのが背凭れです。
現代では人間工学の研究により背中が椅子の背凭れに当たると気持ちが良い(しんどくない)とされている部分が
二箇所の高さにあり 背中を一箇所の高さだけで支える時の椅子と二箇所の高さで支えるときの椅子ではデザインが
全く異なり座り心地も変わってきます。
背凭れの「笠木」(横板)のカーブも取り付け位置(高さ)によって曲率が変わってきます。
ウインザーチェアでも一箇所の高さで支えるスタイルの椅子もあります。(ローバックアームチェア)
ウインザーチェアは座板も背凭れもクッションが無く木部のみで作ることが多いので座って気持ちの良い椅子を
格好良く丈夫に仕上げるには各部分の寸法と角度の検討が最重要の課題になります。
因みに このアローバックサイドチェアの「アロー」は矢のことで ウインザーチェアにはこのように背凭れの形から
名付けられたものや主に製作されていた地域の名前がついたものが多いです。
イギリスでは「ワイコムチェア」(ハイ・ウィカム) アメリカでは「ボストンロッカー」等々。
上のロッキングチェアもウインザーチェアのスタイルでハイバック(背高)となっていますが背凭れが竿(ロッド)や
紡錘(スピンドル)に似た形をしているのでロッドバックやスピンドルバックように名付けても構いません。(自由)
アメリカの資料では 特に特徴が無い物はただ「ロッカー」とだけ記しているものもあります。
5 ミルキングスツール ハート (ウォルナット)

実はこの「ハート形」の座板のほうの写真がどこを探しても見つからず同じ時期に作った「ビーンズ」(豆形)
を載せています。足先は同じ形です。
この椅子は「ミルキング」の名前の通り ヤギやヒツジの乳搾りのためのスツールで高さは30センチぐらいです。
乳搾りをする場所はたいてい土の地面ですので安定させるために足は三本脚になっています。(カメラの三脚と同じ)
座板は40ミリほどの厚さの板を使用し座った時に転げないように脚先ができるだけ座面の重心から外に出るように
かなりの角度を付けて座板に組み込んでいます。

赤丸の写真の左のほうは昔のアメリカのシェーカー教団が作っていた形を参考にして初めの頃に製作したものです。
足の形は3種類作り そのひとつが右側のスツールです。座板がハート形の方は私が色気で考案したものです。展示品もこのような感じです
赤丸の写真の材料は座板がセンで脚がナラ材です。
展示物は後年になって厚いウォルナット材が手に入るようになり座板もより厚く脚もより太くし少しふざけた形で新しくデザインしたものです。
現代では動物の乳搾りをする人も少ないので(笑)これらは家の中で普通の椅子と床との中間の高さで何かの作業するときに使用します。
マンションの上がり框の無い玄関で靴を履いたりするときなどに便利です。
【7月2日追記】
今になってハート形の写真が見つかりました。

第1回 2012年 5脚出品
出品椅子
1 ハイバックロッカー
2 ロッキングスツール
3 ウインドウシート
4 アローバックサイドチェア
5 ミルキングスツール
=====================================================
前回の記事(一つ下)で案内した通り 今回から8回に分けて『ひとり回顧懐古・「座っとっ展」』と題し私が過去に
製作出品した椅子の数々を紹介します。
本当の名称は「座っ展」ですが そのまま使うわけには行きませんので上記のようにしてみました。
展示会場のある「丹波年輪の里」(県の木の関連施設)は兵庫県の中央部あたりに位置し 初回の出展者は
その周辺で工房を開いている15名ほどでした。
同じ「木を扱う仕事」とは言え そこには私のような家具製作者や木のおもちゃなどのクラフト小物がメインの人
挽物加工(ろくろ)の人や椅子だけを作る人などなど様々でした。それは現在でも変わっていないと思います。
(今年は館の指導員の方もいたような)
私が独立し木工の仕事として椅子(家具全般)を作り始めたのが1990年で 「座っ展」が始まった2012年の時には
既に何脚かの在庫の椅子があったので初回の展示会用には新たに製作はしていませんでしたが
あまり椅子作りの経験が無い参加者の人たちには結構大変だったと思います。
開催の半年ほど前に工房に当時の館長がやって来て説明を聞いたところ どうも既に神戸の街なかで10数名でしていた
「一脚展」の展示を見てそれと同じようなことをGWのイベントの一環として「丹波年輪の里」でも開催し集客をしたい
との意向でした。
私は「一脚展」のことは知っていましたが(参加はしていない)そのような『これが木工作家が作った椅子でござーい』
という見せ方には興味が無かったので 館長には「一脚だけの展示なら参加しない」と伝えて「都市部ではない丹波地方の
田舎で15名が一脚ずつ持ち寄って同じような展示をしても淋しいだけで集客の訴求力に欠けるのでできれば50脚ぐらいを
展示してドーンと見せましょう」と提案したのですが なにぶん前述の通り主に椅子を作っている人ばかりではなかったので
それは叶いそうにありませんでした。。
しかし2012年5月にいざ蓋を開けてみると展示の数が35脚ぐらいではなかったかなと思います。(引っ越しにより資料を紛失した)
大勢の来場者に恵まれ あれやこれやと実際に腰を掛けて頂いて アンケートの記入により椅子を使う人がどのようなことを
考えて座っているのか等などを知ることができて貴重な財産となりました。
初回の2012年は5脚出品しました。
下に私が出品した椅子の写真を掲載していますが 実は会場当番の日はとても慌ただしく ほぼすべての来場者に
アンケート用紙を手渡ししたり各出展椅子の説明などでお客さんの応対に時間を取られて当日の自分の展示椅子の写真を
撮ることができませんでした。
よって今回はアルバムやデータ保存してある他所で撮った写真を載せています。(物はほぼ同じ)
1 ハイバックロッカー(ロッキングチェア) ナラ材 (座板はセン材)

寛ぐため(何も作業をしない)の椅子で 少し揺れることにより小さな快楽を得ることができます。
居眠りをすることもあるので頭部を支えるために背凭れが高くなっています。
アームを付けることによって立座りが楽になり姿勢が崩れても落下防止になります。
製作のポイントの一つに座面の高さとソリのカーブにあります。
座面が高くソリのカーブがきつ過ぎると後方に揺らした時に足が宙に浮いてしまい(安楽のために座面の奥行きも深いので)
且つ 揺れが激しくなって遊具のようになってしまいます。
私は ソリを比較的緩いカーブにして背凭れへの重心の移動により自然と後方に傾くように作っていました。
前回の記事で「ロッキングチェアを展示すると子供の餌食になってしまう!」と書いたのは
子供は 揺れることで享楽を得るための遊び道具としてしか見ていないのでこういった展示方法には向いていないからです。
実際 私はこの後年の展示で何度か「揺れる椅子」を出品しましたが椅子の前に「子供✕(✕は赤字)」の木札を置いて
子供が座ることを禁止していました。
それは「大人用のサイズで作っているので子供が座っても意味がない。これは遊び道具ではない。
足が床に付かないので危険である。」という理由からでした。
2 ロッキングスツール ナラ材 (座板はセン材)

スツールなのに揺れるというちょっと違和感のあるデザインです。
これはさすがに危険ですので最初から「座ると足が床に付かない子供は使用禁止」の札を置いていたと思います。
大人の場合 座面横に付いているグリップを握って座りますが向きはどちらでも良いようになっています。
家の中では両足先をソリの端に乗せることで揺れを楽しむことができます。
座面は普通にスツールとして座ることができる高さになっています。
3 ウインドウシート ナラ材 座面は牛革張り

背凭れが無くアームの付いたベンチシートです。
参考にしたデザインは イギリスの田舎に建てられた「カントリーハウス」と呼ばれる貴族などの石造りの大豪邸の中で
分厚い壁の際の小さな窓辺に置かれた重厚なベンチシートです。(その部分だけ壁が薄くなっていて座って暖を取る)
これは私のオリジナルデザインで各部分のモチーフにはスペインの様式を採用しています。(アーム ろくろ 足の先のカーブなど)
家具を作るときには使い方や大きさや装飾などを考えてデザインしますが これは
「背凭れが無くアームの付いた二人掛けのベンチ」というところから始まり 形についてはあれやこれや自由に考えることができました。
強度については座面下の横幕板(長く幅の広い板 前後2枚 座板の裏側には根太が三カ所入っている)で充分(脚の角材に
通しほぞで組んで楔止めしている)なのですが
『二人掛ということでかなりの重力が掛かる。座り方によっては横揺れも考えられる』等々考えた挙句強度のことを考えて
両側の足をつなぐ床近くに貫を取り付けました。
職業として木の家具作りを始めたときのパンフレットには
『100年以上使い手の傍にあり続けるための方法として 丈夫さと 飽きられない美しい形 人が触れて心地よい』
というような言葉をを心構えとして書き記していました。
木の家具は部屋の乾燥や湿気や使い方によって将来ガタが来ることが考えられるのでどうしても過強度に作ってしまうことが
多々あります。
パンフレットに書いた初心は仕事を辞めるまで何とか続けることができましたがこのベンチの1本の貫の棒が今も悔やまれます。
4 アローバックサイドチェア ナラ材 (座板はセン材)

これは通称「ウインザーチェア」と呼ばれている椅子です。
ウインザーチェアは18世紀にイギリスで生まれ後にアメリカで多く作られたスタイルで主に庶民が使用する椅子として
爆発的に発展しました。
ウインザーチェアの定義は
「お尻の形に削られた厚い座板に主にろくろ挽きの脚や背柱や背もたれの棒が直接にホゾ(主に丸ほぞ)で組み込まれている」
と言ったところでしょうか。
イギリスの時代は座板もそれほど厚くはなく脚の組み込みの角度も緩やかな傾斜だったので現在残っているアンティークの椅子は
座ると少しぐらつくものが多いように思います。
それに対してアメリカの形は座板も厚く脚の挿入角度も大きいものが資料に多く見て取れますが強度的にはこちらの方が
優れていると思います。 アメリカの古い時代のウインザーチェアは日本ではあまり見かけません。
私は座板に約50ミリの板を使い約30ミリの深さでお尻の形に削り込んでいました。太腿の裏が当たる部分も削ります。
なぜ座板をお尻や太ももの形に削るのかというと 尾てい骨や大腿骨のまわりの肉をクッションの代わりにして
骨が強く座面に当たることを和らげるためです。
座面は削る部分の深さによって掛け心地が全く変わってきますがそれ以上に神経を注がなければならないのが背凭れです。
現代では人間工学の研究により背中が椅子の背凭れに当たると気持ちが良い(しんどくない)とされている部分が
二箇所の高さにあり 背中を一箇所の高さだけで支える時の椅子と二箇所の高さで支えるときの椅子ではデザインが
全く異なり座り心地も変わってきます。
背凭れの「笠木」(横板)のカーブも取り付け位置(高さ)によって曲率が変わってきます。
ウインザーチェアでも一箇所の高さで支えるスタイルの椅子もあります。(ローバックアームチェア)
ウインザーチェアは座板も背凭れもクッションが無く木部のみで作ることが多いので座って気持ちの良い椅子を
格好良く丈夫に仕上げるには各部分の寸法と角度の検討が最重要の課題になります。
因みに このアローバックサイドチェアの「アロー」は矢のことで ウインザーチェアにはこのように背凭れの形から
名付けられたものや主に製作されていた地域の名前がついたものが多いです。
イギリスでは「ワイコムチェア」(ハイ・ウィカム) アメリカでは「ボストンロッカー」等々。
上のロッキングチェアもウインザーチェアのスタイルでハイバック(背高)となっていますが背凭れが竿(ロッド)や
紡錘(スピンドル)に似た形をしているのでロッドバックやスピンドルバックように名付けても構いません。(自由)
アメリカの資料では 特に特徴が無い物はただ「ロッカー」とだけ記しているものもあります。
5 ミルキングスツール ハート (ウォルナット)

実はこの「ハート形」の座板のほうの写真がどこを探しても見つからず同じ時期に作った「ビーンズ」(豆形)
を載せています。足先は同じ形です。
この椅子は「ミルキング」の名前の通り ヤギやヒツジの乳搾りのためのスツールで高さは30センチぐらいです。
乳搾りをする場所はたいてい土の地面ですので安定させるために足は三本脚になっています。(カメラの三脚と同じ)
座板は40ミリほどの厚さの板を使用し座った時に転げないように脚先ができるだけ座面の重心から外に出るように
かなりの角度を付けて座板に組み込んでいます。

赤丸の写真の左のほうは昔のアメリカのシェーカー教団が作っていた形を参考にして初めの頃に製作したものです。
足の形は3種類作り そのひとつが右側のスツールです。座板がハート形の方は私が色気で考案したものです。展示品もこのような感じです
赤丸の写真の材料は座板がセンで脚がナラ材です。
展示物は後年になって厚いウォルナット材が手に入るようになり座板もより厚く脚もより太くし少しふざけた形で新しくデザインしたものです。
現代では動物の乳搾りをする人も少ないので(笑)これらは家の中で普通の椅子と床との中間の高さで何かの作業するときに使用します。
マンションの上がり框の無い玄関で靴を履いたりするときなどに便利です。
【7月2日追記】
今になってハート形の写真が見つかりました。
